当時、F1.4クラスの大口径レンズは、絞り開放で滲みやフレアが出るのが常識でした。ところがこのレンズは、開放からピント面がシャープでコントラストも高く、描写は同時代の他社製品と比べても際立っていました[1]。とりわけ特徴的なのが、像にしっかりとした芯があることです。点像のまわりに余分な滲みがまとわりつかず、被写体の輪郭は線の細い繊細なタッチで描き出されます[2]。この芯のある描写を立体感へと結びつけているのがボケへの配慮です。東京光学は1950年代の早い時期から、ピント面だけでなく、その外側に広がるボケにまで目を配る評価軸を持っていました。文献[1]では収差曲線を元に、このレンズが特に立体的な描写において、他のF1.4クラスのレンズと比べ、突出していると評価しています。大口径レンズにおける「立体感」というのは、
レンズ構成は5群7枚の拡張ダブルガウス型です。これはF1.4クラスの大口径一眼レフ用レンズとしては定番の構成で、曲率等に僅かな差はあるものの、基本的には戦前のライツ・クセノンの流れを汲む系譜にあたります。一眼レフに不可欠な長いバックフォーカスを確保しながら大口径を実現できる構成として、当時はほとんど唯一の選択肢だったといえます。ただし、本レンズの場合にはエキザクタマウントの細い口径に光を通す必要があったため、前群に比べて後群の径がかなり小さく抑えられています。58mmというやや長い焦点距離も、エキザクタマウントに適合させるための、ぎりぎりの選択だったそうです。
東京光学の元エンジニアである白澤章茂氏の著書[3]によると、このレンズを設計したのは同社の岸本匡氏です。岸本氏は、広角レンズRE.Auto-Topcor 25mm F3.5の設計も手がけた人物でした。東京光学は1959年、国内の光学メーカーとして初めてレンズ設計用に電子計算機(米国カリフォルニア州リブラスコープ社のLGP-30型)を導入しています(文献[3]ではLPG-30と表記)。岸本氏は、この計算機を用いた光学設計計算の手法を開発するために入社した技術者だったそうです。こうした経緯を踏まえると、本レンズの光学設計にもこの計算機が活用された可能性が考えられます。
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| 岸本匡氏の似顔絵イラスト |
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| 製品番号 94B, 重量(実測)362.7g, 絞り羽 6枚, 最短撮影距離 0.45m, 絞り F1.4 - F16, フィルター径 62mm, EXAKTA/TOPCONマウント |
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| 製品番号 112B, 重量(実測)357.2g, 絞り羽 6枚, 最短撮影距離 0.45m, 絞り F1.4 - F16, フィルター径 62mm, EXAKTA/TOPCONマウント |
- 国内ネットオークション: おおよそ 40,000円〜50,000円前後 が目安となります。
- 中古カメラ専門店・海外オークション: 専門店による品質保証や海外での需要も手伝い、国内オークションよりもう一段高い価格帯で取引される傾向があります。
- 付属品(フード)の有無: 発売当時は純正のバヨネット式フードが付属していました。この純正フードがセットになっている個体は、相場より少し高値になります。ただし、レンズ先端にはフィルター用のねじ切り(62mm径)も備わっているため、こだわりがなければサードパーティ製の汎用フードで代用することが可能です。
- カラーバリエーション: カメラ本体と同様に、市場に出回っているのはシルバーカラーが圧倒的多数を占めます。ブラックカラーは流通量が非常に少ないため、もし見かけた場合は価格が高騰している可能性があります。
開放での滲みやフレアは同クラスの中でも際立って少なく、ピント面は四隅までクリアです。肌の質感などには程よい柔らかさを残しながら、コントラストとヌケの良さは高い水準を保っており、発色も良好です。そのぶん解像感も高いのですが、中央部の解像力(分解能)は中庸であるという印象を受けます。東京光学の設計理念はピント面全体で解像力を平均的に高水準にする事だったそうです[3]。
多くの人が指摘するように、ピント面から背景に向かってボケ量がなだらかに増えていくのも、このレンズの持ち味と言えます。これが線の細い輪郭描写と相まって、被写体に厚みのある立体的な写りをもたらします。背景のボケは適度に柔らかく、煩くなることはありません。非点収差の影響もほとんど見られないため、グルグルボケや放射状のボケの心配もないでしょう。高い人気を集めているのも頷けます。
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| F1.4(開放) Nikon Zf |































































