35mm判オールドレンズ × 中判デジタル機:
新たな撮影スタイルの魅力
近年、35mm判(フルサイズフォーマット)向けに設計されたオールドレンズを、マウントアダプターを介して中判デジタルカメラ(Fujifilm GFXシリーズやHasselblad Xシステムなど)で使用する撮影スタイルが、静かに注目を集めています。
かつては一部のマニア層だけが楽しんでいたこのスタイルですが、中判デジタル機の中古価格の低下よりハイアマチュア層にも広がりつつあり、新たな表現領域を切り開く可能性にも注目が集まっています。
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| 図1 35mm判と中判イメージフォーマットの比較。画像フォーマットの対角線長を赤矢印で表示している |
画像フォーマットとアスペクト比の柔軟性
写真用レンズには、設計時に定められた「撮影フォーマット(画像フォーマット)」という規格があります。これはイメージセンサーやフィルムなど撮像部の対角線長(または対角線画角)によって規定されています。例えば撮影フォーマットが35mm判(36mm × 24mmの長方形)の場合、対角線長は約43.3mmです(上図・赤矢印)。この場合、写真用レンズは、この対角線を直径とする外接円の内部に収まる像に対して、画質を一定水準に保つよう設計されています。
ここで重要なのは、レンズの使用にあたり「対角線長さえ守れば、撮影フォーマットの縦横比(アスペクト比)は自由に選べる」という点です。つまり、撮影フォーマットの形状は、映画のような横長でも、スクエア(正方形)でも構わないのです。これは構図設計における大きな自由度を意味します。
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| 図2 中判イメージセンサー(灰色)、撮影フォーマット65:24および1:1、35mm判対角線の外接円(赤円) |
中判デジタルがもたらす表現の拡張
中判デジタルカメラは、35mm判より広い撮像部を持つため、撮影モードを変更することで、35mm判の対角線長にフィットするような、さまざまなフォーマットでの撮影が可能です(上図)。撮影フォーマットには、例えば以下のような選択肢があります:
- スクエアフォーマット(1:1):静謐で均衡のある構図を提供:線長は約46.7mmで、35mm判の43.3mmよりもやや大きめですが、図2のように35mm判対角線の外接円(赤円)から大きくはみ出しているわけではありません。画質的に無理のない撮影結果が期待できます
- 横長フォーマット(例:65:24や16:9):映画的な広がりと遠近感を強調し、視線誘導を活かしたダイナミックな写真表現を強化。対角線長は それぞれ、約46.9mm(65:24)と約50.5mm(16:9)と35mm判よりもやや大きめ。ただし、撮影モード65:24であれば、35mm判対角線の外接円(赤円)から大きくはみ出しているわけではなく、無理のない撮影結果が期待できます
- 縦長フォーマット(3:4): 最近、GFXでも選択可能になった撮影フォーマットで、35mm判に近い対角線長のまま、マイクロフォーサーズと同じアスペクト比を実現できる、唯一無二の撮影モードです。ライカ判3:2よりも4:3が好きな人におすすめします。対角線長は約41.2mmと35mm判よりも少し小さめ
- 35mm判の定格より一回り大きなフォーマット(3:2や4:3):レンズの収差特性を更に引き出し、フルサイズ機では得られない写真表現を可能にします
本記事で取り上げた撮影スタイルは、中判デジタルカメラと35mm判レンズの融合によって生み出された比較的新しい手法です。35mm判オールドレンズの潜在性能を最大限に引き出しながら、フルサイズ機では実現し得ない構図の柔軟性を享受できる点に、大きな魅力があります。



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