おしらせ


2022/03/22

KMZ OKC1-50-4(OKS1-50-4) (OKC-1)50mm F2 (16SP)



シネレンズ最後の秘境!(番外編)
お買い得な穴場的シネレンズ
KMZ(クラスノゴルスク機械工場) OKC1-50-4  50mm F2 (OKS1-50-4) 
改SONY E from Kinor 16SP/Krasnogorsk-2 mount
焦点距離50mmのOKCシリーズにはレニングラードのLOMOが製造したOKC1-50-1, OKC1-50-3, OKC1-50-6があり、本ブログでも過去の記事(こちら)で紹介しました。これらは35mmシネマフォーマットに対応できるよう設計されています。一方で今回ご紹介するモデルは16mmシネマフォーマットに対応したレンズで、モスクワのKMZ(現ZENIT社)がレンズの設計と生産を行い、同じく同社が製造した16mm映画用カメラKinor 16SP(1958-1964年)に搭載する交換レンズとして市場供給しました。16mm用とは言ってもイメージサークルには余裕があり、APS-C機でもケラれる事なく使えます。LOMOのイメージが強いOKCシリーズですが、LOMOに限ったブランドではない事が今回の事例からわかります。
光学系は典型的な4群6枚のガウスタイプ(下図)で、先代のOKC1-50-1(OKC1-50-6)やPO3-3Mとは別設計、一回り狭いイメージサークルに最適化されているようです。光学系の各部の寸法はOKC1-50-1よりも、むしろPO3-3Mに似ており[1]、解像力は中心部、周辺部ともPO3-3Mと同等、レンズがPO3-3Mを製造したKMZからリリースされているという点も頷けます。なお、銘板に記されたレンズ名がOKC-1であることがありますが、中身は同一です。
 
OKC1-50-4の構成図:GOIレンズカタログ(1970年)からのトレーススケッチ。左が被写体、右がカメラの側で、設計構成は4群6枚のオーソドックスなガウスタイプです

参考文献
[1] GOIレンズカタログ(1970年)

 




重量(実測)240g, 絞り羽 8枚, 絞り F2(T2.3)-F16, 最短撮影距離 1m, フィルター径 52mm, 設計構成 4群6枚ガウスタイプ, イメージサークル 16mmシネマフォーマット(16-SP)
 
SONY Eマウントへの改造事例
16SPマウントはKrasnogorsk-2マウントと互換です。レンズをデジカメで使用するためには、どちらかのマウントアダプターを入手すればよいわけで、Rafcameraによる市販品がeBayで手に入ります。ただし、レンズ本体とあまり変わらない素敵なお値段なので、今回は改造で対応しました。ここではSONY EマウントもしくはFUJI Xマウントへの改造例を示します。はじめに、下の写真(1)から(3)までの手順でマウント部側面の突起を削り落とします。



続いて下のマイクロフォーサーズ用マクロエクステンションチューブ(写真・左)を手に入れます。レンズ側リングを外し、ドライバーを用いて写真・右のように裸の状態にします。




これを、レンズのマウント部に装着し、軽金属用のエポキシ接着剤で固定します。


あとは、M52-M42ヘリコイド(25-55mm)を装着し(下の写真・左)、カメラ側をM42-SONY Eスリムアダプターで末端処理すればSONYのミラーレス機で使用できます(写真・右)。1番リングとセットで少し軽いM52-M42(17-31mm)を装着するのもありかもしれません(写真・中央)。フジフィルムのミラーレス機(FUJI Xマウント)で使用するには1番リングは外し、M42-M39ステップアップリングとYEENONのM39-FUJIスリムアダプターで末端処理します。
 






 
レンズの入手
焦点距離50mmのシネマ用レンズとしてはたいへんお買い得な穴場的なレンズです。ただし、これはレンズが安物だからというためでは無く、単にマウントアダプターが存在しないうえ、改造するにしても鏡胴が太いため汎用性のあるライカマウントにはできないという制限によるものです。レンズは2019年にeBayを介してウクライナのセラーから120ドル+送料の即決価格で落札購入しました。オークションの解説は「美品(MINT CONDITION)。ガラスはクリアでクリーン。外観も未使用に近い状態を保っている。ヘリコイド、絞りの動作はスムーズ」とのこと。旧ソビエト連邦時代のレンズの相場は世界的なインフレの中で上昇傾向にあり、2022年現在ではこのレンズにも200ドル前後の値が付いています。また、ロシアのウクライナ侵攻が始まってからはロシアからの供給が途絶え、ウクライナからの荷物もなかなか届きません。決して流通量の少ないレンズではありませんが、旧ソビエト製レンズは全般的に入手困難な品薄状態が続いています。
 
撮影テスト
画質設計は16mmシネマフォーマットに準拠していますが、イメージサークルには余裕がありAPS-Cセンサーを完全にカバーできます。APS-C機で用いた場合でも、四隅の光量落ちは全くみられません。逆光で虹のゴーストが出るなど光に対して敏感に反応する性質は50mmのOKCシリーズに全般的に見られる共通点のようで、本レンズも例外ではありません。姉妹モデルのOKC1-50-1やOKC1-50-6に比べ良像域が中心部に偏重しており、先代のPO3-3によく似た画質設計になっています。ピント部が薄くピント合わせには慣れが必要かもしれませんが、うまくピントを捉えることが出来ればかなりの解像感が得られます。ボケは安定しておりグルグルボケや放射ボケが目立つことはありません。
 
F2(開放) sony A7R2(APS-C mode, WB:日陰)

F2.8 sony A7R2(APS-C mode, WB:日陰)

F2(開放) sony A7R2(WB:日陰)

F2(開放) sony A7R2(WB:日陰)

F2.8 sony A7R2(WB:日陰)
F2.8 sony A7R2(WB:日陰)

F2(開放) sony A7R2(WB:日陰)

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