おしらせ


2019/11/28

LOMO/LENKINAP OKC/OKS 35mmF2 cine-lens family: OKC1-35-1, OKC8-35-1, OKC11-35-1

KONVAS(OCT-18マウント)用に供給された羽根つきの製品:左からOKC11-35-1, OKC8-35-1, OKC1-35-1

レンズヘッドで供給された製品:OKC8-35-1(左), OKC1-35-1(手前), OKC11-35-1(右奥)
 
LOMOの映画用レンズ part 6-8 (プロローグ)
LOMOが改良に最も力を入れた
焦点距離35mmの主力レンズ群
LOMO/LENKINAP OKC(OKS) 35mm F2 family: 
OKC1-35-1, OKC8-35-1, OKC11-35-1
今回からLOMOが市場供給した焦点距離35mmの製品群を取り上げます。ポピュラーなものとしてはOKC1-35-1, OKC8-35-1, OKC11-35-13種があり、それぞれ設計構成や描写の味付けが異なります。初代のOKC1-35-1(LENKINAP時代の1962年頃に登場)は中心部に偏重した描写設定で立体感に富み、ポートレート向きであるのに対し、2代目のOKC8-35-1(1971年に登場)は中心部の性能をやや抑える代わりに像面特性と歪みを大幅に改善、風景にも対応できるフラットな描写性能を実現しています。3代目のOKC11-35-1(1980年代初頭に登場)は構成枚数を5枚に落とし製造コストと空気境界面数を同時に削減するとともにコーティングをマルチコート化、コントラストとシャープネスを合理的に向上させ、発色は鮮やかになっています。5枚構成のまま描写性能はなるべく落とさず、中心部を重視した初代OKC1-35-1に近い設定になっています。それぞれ鏡胴に羽根のついた製品(上段写真)とレンズヘッドとして供給された製品(下段写真)が市場に流通しています。せっかくなので全部入手し各モデルの違いを比べてみたいと思います。前者の羽根つきの方がシネレンズっぽさが出ており独特な外観で格好良いのですが、後者の方がコンパクトなうえケラれが少ない分だけイメージサークルは大きく、中にはフルサイズ機でも使える製品があります。







2019/11/26

三宝カメラ2nd BASE 12.12OPEN予告


オールドレンズフェスでもお馴染みの三宝カメラが12月12日に2号店 2nd BASEを秋葉原にオープンさせるそうです。新しいお店はオールドレンズ、オールドカメラの専門店になる模様です。12月1日(日)から29日(日)まではオープン記念セールで、値引きがあるそうです。

Sanpo Camera "2nd BASE" will open in Akihabara, Tokyo on December 12th. The new store will be a specialized shop for old vintage lenses and cameras.

Sanpo Camera“ 2nd BASE”将于12月12日在东京秋叶原市开业。新店将是一家专门店,出售旧的老式镜头和相机。

HP: https://www.2ndbase-tokyo.com/

2019/11/19

LOMO/LENKINAP OKC(OKS) 1-16-1 16mm F3


技術の黎明期や発展期には足りない部分を力づくで成立させてしまうような、規格外の製品が登場する事があります。多くの場合、そういう類の製品は採算性が悪く市場経済には受け入れられませんので、メーカーに開発できる技術力があっても試作止まりで日の目を見ることがありません。あるとすれば製造コストを度外視できる国・・・そう共産圏の製品です。

LOMOの映画用レンズ part 5 
フロント径134mm、リアM29のクレイジーガイ!
サイズも写りも規格外のモンスターレンズ
LOMO/LENKINAP OKC(OKS)1-16-1  16mm F3
前玉に直径134mmの巨大なレンズユニットを据え付けたモンスター級シネレンズOKC1-16-1は、1960年代初頭にソビエト連邦(現ロシア)レングラードのLENKINAP工場(LOMOの前身団体の一つ)で開発されました。当時の西側諸国には焦点距離が18mmよりも短いシネレンズがありませんでしたので、これは画期的なことでした。焦点距離を更に短縮させる場合、当時の光学技術ではレンズが大型化してしまい、アリフレックスのターレット式マウントに同乗させると他のレンズの視界を遮ってしまいます。有名なSpeed Panchro(スピードパンクロ)18mm F1.7でさえ既にかなりの大型レンズでしたが、パンクロシリーズに焦点距離16mmのモデルはありませんでした。おそらくこのあたりが限界だったのでしょう。今回取り上げるOKC1-16-1もデカくて重いうえ、コストパフォーマンスは劣悪ですが、写りは驚くほど秀逸なうえ、何よりも焦点距離を16mmまで短縮させ未踏の領域に到達した先駆的なシネレンズでした。
レンズの設計は下図に示すような豪華な6群9枚構成で、前群に配置した屈折力の大きな2つの凹レンズで入射光束をいったん発散光束にかえバックフォーカスを延長させるとともに、正の屈折力を持つ後群で集光させながら収差の補正を同時に行うレトロフォーカス型レンズの典型です。マスターレンズが何であるのか、後群側をよく見ても複雑でよくわかりませんので、コンピュータで設計されていたのかもしれません。レニングラードには光学設計で有名なITMO大学があり、1958年からリレー式コンピュータのLIMTO-1を運用しています[1]。同大学とLOMOとは協力関係にありましたので、あり得ない話ではありません。
  
OKC1-16-1 16mm F3(T3.5)の構成図(文献[2]からのトレーススケッチ):左が被写体側で右がカメラ側。初期のレトロフォーカス型レンズは前玉の大きな凹レンズと前・後群間の広い空気間隔を利用してバックフォーカスを稼ぐ仕組みでしたので光学系は巨大でした
 
レンズが発売された1960年当時、レトロフォーカス型レンズの設計技術は急激な進歩の中にいました。西側諸国でもAngenieuxがすぐ後の1960年代前半に軽量でコンパクトなType R62 14.5mm F3.5を発売しています。デカいことがこのレンズの最大の弱点であったのは確かで、レンズを映画用カメラのKONVASにマウントする場合はカメラに3つのレンズを同時にマウントすることができず他の2つは取り外さなくてはなりませんでした。ただし、描写性能はOKC1-16-1の方が格段に現代的で先を行っていました。OKC1-16-11962年に少量が製造されたのみで、直ぐにコンパクトで軽量な後継製品のOKC2-16-1へとモデルチェンジしています。OKC2-16-1は前玉径が75mmで重量は350gと携帯性が大幅に向上し、KONVASのターレット式マウントにも問題なく搭載できました。
描写性能を維持したまま小型化することは可能だったのでしょうか?。小さく設計することと引き換えに失われたものが何かあるとするならば、それは何だったのでしょうか?。まだまだわからない事だらけです。
 

重量(実測)1.51kg, イメージサークル: スーパー35シネマフォーマット(APS-C相当), 対応マウント: KONVAS OCT-18(OST-18)とKONVAS KINOR-35(M29 thread)の2種, 設計構成: 6群9枚レトロフォーカス型, マウント: M29ネジマウント,  絞り: F3(T3.5)-F16, 解像力(GOI規格): 中心60LPM, 周辺25LPM, 絞り羽: 9枚構成, コーティング:単層Pコーティング
入手の経緯
ここまで広角のシネレンズともなると、常用ではなく室内など狭い空間でのシーンや、パースペクティブを強調したいシーンに限定して使われたに違いありません。市場に流通している個体数が極僅かなのは、このような事情を反映しており、探すとなるとなかなか見つけるのは難しい希少レンズです。
レンズは2018年8月にロシアのシネマフォトグラファーがeBayに出品していたものを450ドル(送料込み)の即決価格で購入しました。オークション記載は「レンズのコンディションは5段階評価の5。ガラスにカビ、クモリ、キズ、バルサム剥離などはない。鏡胴は腐食やびびなど見られずとても良い状態。各部のリングはスムーズに回り、全ては適正に動く。絞り羽もドライかつスムーズに開閉する」とのこと。提示写真には若干のコバ落ちがみられたものの全体的な状態は大変良さそう。レンズには純正のフロントキャップとM29リアキャップが付いていました。落札から2週間、手元には記載どうり状態の良いレンズが届きました。
届いたレンズを手に取り、ここまでデカいとは思っていませんでしたので、驚きと共に開いた口がふさがりませんでした。初期のレトロフォーカス型レンズはどれも大きくインパクトのある前玉が特徴ですが、インパクトでこのレンズの右に出る製品はないと思います。
 
参考文献
[1] Outstanding Scientific Achievements of the ITMO Scientists, ITMO University
[2] GOI lens catalog 1970
 
撮影テスト
レトロフォーカス型レンズの長所は像面が平らなことと四隅でも光量落ちが少ないことで、これらはレンジファインダー機用に設計された旧来からの広角レンズに対する大きなアドバンテージです。一方で初期のレトロフォーカス型レンズはコマ収差の補正と樽状の歪みを抑えることが課題でした。優秀なレトロフォーカス型レンズはこれらが十分に補正されています。
本レンズは開放でもコマ収差は全くみられず、ピント部はシャープで歪みも極僅か。解像力(GOI規格のカタログ値)は中心60線、周辺25線とかなり高く、シネマ用の標準レンズと比べてもなんら遜色のないレベルです[2]。この時代の製品としては描写性能の高い非常に優秀なレンズです。レトロフォーカス型レンズらしく光量落ちは少ないうえ、四隅の色滲み(倍率色収差)は全く目立たず、像面も平らなので、四隅にメインの被写体を置いても画質的に不安になることはありません。逆光ではゴーストが出ますがハレーションにはなりにくく、ド逆光でも少し絞れば耐えられます。階調は軟らかくトーンの変化はなだらかで、深く絞ってもカリカリになることはありません。風景の中の濃淡をダイナミックに捉えるレンズだと思います。

レンズのイメージサークルはスーパー35シネマフォーマットですので、APS-C機で用いるのが最も相性のよい組み合わせです。今回はSONY A7R2に搭載しAPS-Cモードに設定変更して使用しました。
F5.6  sony A7R2(APS-C mode, WB:日光) さっそくド逆光で太陽を入れましたが、フツーに撮れます
F5.6  sony A7R2(APS-C mode, WB:日光) 
F8 sony A7R2(APS-C mode, WB:日光)


F8 sony A7R2(APS-C mode, WB:日光)

F3(開放)sony A7R2(APS-C mode, WB:日陰)

F4  sony A7R2(APS-C mode, WB:日陰)

F4  sony A7R2(APS-C mode, WB:日陰)

2019/10/06

Meyer-Optik DOMIRON 50mm F2 (exakta mount)



DOMIRON(ドミロン)と言えばマニアの間ではフローティング機構を搭載した旧東ドイツで唯一(おそらく史上初)のマクロ撮影用レンズという事で名が通っています[1]。フローティングとはフォーカシングの際に光学系の幾つかのレンズ群をそれぞれ異なる繰出し量で動かし、撮影距離に応じて最適な画質を保つ機構です。マクロ撮影時の性能劣化を抑え、総繰り出し量を小さくすることができるなどの長所があります。この機構をどうにか実現させ1960年に登場したドミロンは、代償として巨大なヘリコイドを身にまとうことになります。
 
女子力向上レンズ part 6
日差しの柔らかさを幻想的に捉える
美しい描写のマクロ撮影用レンズ
Meyer-Optik DOMIRON 50m F2(exakta mount)
ほのかに滲む美しいピント部、ざわざわと騒がしい背後のボケ、軟調でなだらかなトーンなど、いかにもMeyerらしい味付けを持ち合わせたレンズが今回取り上げるDOMIRONです。中遠景でのこのような描写はオールド・マクロレンズならではのアグレッシブなセッティング(強い過剰補正)による反動(副作用)なわけですが、それを知らずに使う人々から見れば、ある種の確信犯的な描写設計にしかみえないわけで、一気に人気レンズとなってしまいました。近接撮影時にはシャープでスッキリとしたヌケの良い描写となり本領を発揮、背後のボケ味も柔らかく大きな拡散に変わります。DOMIRONは近年の人気で資産価値を著しく上昇させたオールドレンズの代表格と言えます。
レンズは旧東ドイツのMeyer-Optik(マイヤー・オプテーク)1958年頃に開発し、1960年に開催されたLeipzig Spring Fairライプツィッヒ春の見本市)で発表しました[2]。一眼レフカメラのExakta VX(エキザクタVX)やExa(エクサ)に搭載する交換用レンズとして1961年にごく短期間だけ製造され、196212月から19634月までカメラを供給したJHAGEE(イハゲー)社のプライスリストに掲載されました[3]。しかし、この頃の標準レンズは口径比F2の時代からF1.8の時代に移行してゆく最中で、当時は廉価品扱いだったMeyerブランドでは、口径比F2のままツァイスなど他社と勝負することはできませんでした。Meyerは2年後の1965年春に明るさをF1.8とした後継製品のORESTON(オレストン)を登場させDOMIRONの製造を中止しています。DOMIRONは市場に供給された個体数が少なく希少価値の高いレンズとして、現在では10万円近い高値で取引されています。
レンズには2色のカラーバリエーションがあり、シルバーを基本色とするゼブラ柄のモデルとブラックカラーの単色モデルが流通しています。ブラックカラーのモデルがどのような理由で登場したのか明確な事はわかっていませんが、その後の東ドイツ製レンズはMeyerにしろZeissにしろブラックカラー一辺倒になってゆきますので、メーカーが消費者の嗜好に対応する過渡期の中でMeyer-Optikは素早い対応をみせたのでしょう。レンズの設計構成は上図に示すようなオーソドックスなガウスタイプですが、6つのエレメントのうちの3つに当時まだ画期的だった屈折率1.645を超える高屈折クラウンガラスが用いられた意欲作でした[2]。マクロ撮影時の性能を維持するため、当時はどのメーカーのレンズにも実装事例の無いフローティング機構が導入されており、エレメント間隔が撮影距離に応じて変化する複雑で高度な仕掛けを持っていました。光学系は誰が設計したのでしょう。情報がありません。1960年代にPrakticar 50mm F2.4を設計したWolfgang GrögerWolfgang Heckingでしょうか?それとも Otto Wilhelm LohbergHubert Ulbrichあたりでしょうか。情報ありましたら、ご提供いただけると幸いです。
 
Meyer-Optik DOMIRON 2/50の構成図(トレーススケッチ[4])。4群6枚のオーソドックスなガウスタイプですが、6つのエレメントのうちの3つに当時まだ画期的だった屈折率1.645を超える高屈折クラウンガラスが用いられていました。

Meyer-Optikは現在のオールドレンズ・ブームを牽引するメーカーと言っても過言ではありません。かつて日本では「ダメイヤー」などと呼ばれ、シャープネス偏重主義のもとで迫害された時期もありましたが、オールドレンズに対するユーザーの価値観は大きく変わりました。ブランドに惑わされず写りでレンズを評価する人が増え、特にオールドレンズ女子の進出がこの分野で新しいブームを巻き起こしています。メイヤーのレンズ群の中でも特にドミロン、トリオプラン、プリモプランはここ6~7年で再評価がすすみ、現在では大変な人気ブランドとなっています。
 
参考文献
[1]  MFlenses: who made the first floating element design?
[2] 実用新案: "Photographic lens according to the Gaussian type", Utility model protection in GDR , No. 1,786,978 (Nov.7, 1958)
[3] Jhagee Photo equippment price list(Jhagee 1962)
[4] DOMIRON Ad. Macro and Standard Objectiv(マクロ標準レンズ); It is specified as "Hervorragend geeignet fur Makro-Aufnahmen feinster Struktur". 

 
  


マクロ撮影用ということでヘリコイドピッチは大きく設定されており、ヘリコイドを少し回すだけで光学系がビューンと飛び出します

 
レンズの相場価格
私がこのブログを書き始めた2009年頃には3万円代で買えたレンズですが、2012年頃からメイヤーブランドのレンズが人気になり、eBayでの国際相場はあっという間に8万円~10万円程度まで跳ね上がってしまいました。現在もレンズ相場は高値で安定しており下がる気配はありません。メイヤーのレンズの中でPrimoplanTrioplanは復刻モデルが登場していますがDOMIRONはフローティング機構があるので復刻は困難かと思われます。


Meyer-Optik DOMIRON 50mm F2: 重量(カタログ値)310g, フィルター径 55mm, 絞り値 F2-F22, 最短撮影距離 34cm, 4群6枚ガウスタイプ, フローティング機構搭載, EXAKTAマウント, マニュアル絞り/半自動絞り切り替え式
 
撮影テスト
DOMIRONが本来の性能を発揮するのはマクロ撮影の時で、近くの被写体をとる場合にはスッキリとヌケのよいシャープな像が得られます。一方で、人物のポートレート撮影や遠景を撮る場合には、開放で微かに滲みを伴う柔らかい描写となります。マクロ域で最も好ましい補正が得られるよう、遠方時は強めの過剰補正をかけているためです。ボケ味にもこの設定による影響/効果がよく表れており、ポートレート撮影ではバブルボケ(点光源の輪郭部が明るく縁どられる現象)や二線ボケが生じ、背後はザワザワとうるさく歯ごたえのあるボケ味になることがあります。一方で近接時では柔らかく大きくボケるようになります。ぐるぐるボケや放射ボケは距離に寄らず、あまり目立ちません。開放ではやや口径食が目立ちますが、光学系が鏡胴の奥まった所にあるためかもしれません。オールドレンズならではの軟らかいトーンも、このレンズの持ち味です。
人物のポートレート撮影や風景撮影で、滲みを生かした柔らかい描写を利用するのが、このレンズの美味しい使い方なのだと思います。
   
スナップ写真
Camera: sony A7R2
Location: インドネシア
   
F2(開放)Sony A7R2(aspect ratio 16:9, WB:日光) 日差しが弱まる朝夕には人物の肌が絶妙な柔らかさ、微かに輝いて見える美しい質感で描かれます


F2(開放)SONY A7R2(WB:日光, APS-C mode) 遠景描写は柔らかく滲みます。早朝の逆光は霞がかったような幻想的なシーンに!






F2(開放)Sony A7R2(WB:日光) これくらいの距離だとスッキリとしてヌケの良い描写です。日差しが強くなるとコントラストが上がり、よりシャープな像になりますが、このレンズならカリカリにはなりません。背後のボケはこの距離でも依然として硬く、2線ボケ傾向が見られます
F2(開放)sony A7R2(WB:日光)これくらい離れると滲みが顕著になってきます
F2(開放)SONY A7R2(WB:日光) これぐらい寄れば背後のボケは大人しくなりますが、激しいボケ癖からの回帰を微かに感じる、絵画のようなボケ味です

F2(開放)sony A7R2(WB:日光)  背後の点光源は輪郭を残し、バブルボケのようになることもあります


F2(開放)sony A7R2(WB:日光)  逆光ではシャワー状のハレーションもしっかりでます
ポートレート写真
Camera: sony A7R2
Location: TORUNO主宰のモデル撮影会
Model: 彩夏子さん

F2(開放) sony A7R2(WB:日光) 白っぽいものが柔らかく滲みます




F2(開放)sony A7R2(WB: 日光)中央より左側に左右反転像を用いている。やはりこういうシーンは線の細い描写のドミロンが大活躍します

  

再びスナップ撮影
Camera: Sony A7R2
Location: 川崎市日本民家園
 
F2(開放)sony A7R2(WB:日陰) 


F2(開放)sony A7R2(WB:日陰) 


F2.8 sony A7R2(WB:日光) 

F2.8 sony A7R2(WB:日陰) 


 
今回も写真家のうらりんさん(@kaori_urarin)にDOMIRONで撮ったお写真をご提供していただきました。力強いボケ味を活かしたダイナミックな写真ですね。ありがとうございます。うらりんさんのインスタグラムにも是非お立ち寄りください。こちらです。
  
Photographer: うらりん(@kaori_urarin)
Camera: SONY A7II
  
Photo by うらりん (@kaori_urarin)  sony A7II


Photo by うらりん (@kaori_urarin)  sony A7II
Photo by うらりん (@kaori_urarin)  sony A7II
Photo by うらりん (@kaori_urarin)  sony A7II
  

2019/09/20

Cinématographes Pathé Paris Projection lens (Front diameter=25mm)



パテ社のプロジェクションレンズ
Cinématographes Pathé Paris Projection lens 50mm

Pathé社(Pathé Frères社)はシャルル・パテを筆頭とするパテ4兄弟が1896年にフランスのパリで創業した映画製作・配給会社です[1]。後にレコード制作や映画用機材の製造にも乗り出し、第一次世界大戦の開戦直前までには世界最大規模の映画機材製造会社となっています[2-4]。同社のプロジェクションレンズはとてもアーティスティックなデザインなので、いつか使ってみたいと思っていましたが、2019年8月に川崎で開かれた「non-tessar 四枚玉の写真展」にこのレンズを使って撮ったある方の写真が出ているのをみて、いよいよその気持ちが強くなりました。写真展の帰り路にeBayを覗いてみると何本か出ています。直ぐに購入・・・、迷う余地などありません。レンズって出会いですよね。

レンズ構成は下の図で示すような3群4枚のPetzval(ペッツバール)と呼ばれるタイプです。この設計構成は1840年にジョセフ・ペッツバール博士により考案され、19世紀半ばから20世紀初頭にかけて多数のレンズに採用されました。ペッツバールタイプと言えば像面湾曲が大きいことで集合写真や平坦物は苦手としていますが、立体感が強調されるためポートレート撮影には好んで用いられました。また、非点収差が大きくグルグルボケや放射ボケが派手に出るのも特徴です。しかし、中心部に限れば球面収差は少なく非常にシャープな像が得られるため、画角の狭いプロジェクションレンズや天文用にも、この種のレンズが多く採用されました。

今回手に入れたレンズは鏡胴にF=25mmの刻印があり、口径比(F値)は記されていません。実はF=25mmは焦点距離ではなく前玉径を表しており、19世紀のレンズにはこういう表記のものをよく見かけます。レンズの焦点距離はおおよそ50mmくらいで、露出計を用いた他のレンズとの比較から割り出した口径比はだいたいF2前後と、ちょっと信じられない明るさです。シリアル番号はなく製造された時期については推測でしかありませんが、同社が映画用機材の製造を積極的に手掛ける1900年代初頭から第一次世界大戦の勃発する1914年頃までにつくられた製品であろうと思われます。
 
典型的なPetzval typeの構成図。左が前玉側で右がカメラ側

参考文献
[1] Establissements Pathe Freres, Le LIVRE D'OR de la Cinematographie
[2] wikipedia: パテ(映画会社)
[3] wikipeida: シャルル・パテ(Charles Pathé)
[4] Who's Who of Victorian Cinema: Charles Pathe
 
入手の経緯
レンズは2019年8月にフランスの個人出品者がeBayに出していたものを265ユーロ+送料の即決価格で購入しました。オークションの記載は「35mmシネマ用のプロジェクションレンズ。鏡胴径は42mm」と簡素。掲載されていた写真が鮮明でコンディションがよくわかるレベルでしたので、やや博打でしたが思いきって入札、届いたレンズは状態のよい素晴らしいコンディションでした。

重量:145g(実測), 焦点距離:約50mm,  開放F値: F2前後, レンズ構成:3群4枚Petzval型, 鏡胴径42mm, 前玉径25mm

 
ライカMマウントへの改造
デジタルカメラに搭載して使用するため、今回は汎用性の高いライカMマウントへの改造に挑戦しました。鏡胴径は約42mmありますので、後玉側にM39-M42ステップアップリングを接着し、ライカL-M変換アダプターに接続させました。ところが、バックフォーカスを1mm弱切り詰めないと無限が出ません。いろいろ考え、ライカL-M変換アダプターのマウント面(天板部)を削り落とすことで1mmを稼ぎ、ギリギリで無限遠のフォーカスを拾うことができるようにしました。マウント時にロックはかかりませんが、問題なく使用できます。


撮影テスト
イメージサークルはフルサイズセンサーを余裕でカバーできますが、像面湾曲が大きく四隅がピンボケするなど画質的に無理があるので、APS-C機もしくはMFT(マイクロフォーサーズ)機で使用するのがおすすめです。ピント合わせにはコツがあり、はじめのうちは全くピント合わせができません。これはソフトフォーカスレンズ全般に言えることですが、ピントの合う位置(コントラスト最大の位置)と解像力が最大になる位置が大きくずれており、普通にピントを合わせてもピンぼけしてしまうのです。フォーカスピーキングは全く使い物になりませんので、設定を切り、拡大して自分の目でピントを合わせをおこないながら像が最も緻密に描かれる位置を探ります。コツを掴めば、中央は繊細な像を描いてくれるようになります。
描写はとてもソフトで、ピント部全体が大量のフレアに包まれます。ピント部の背後ではグルグルボケ、前方では放射ボケが目立ちます。立体感のあるレンズですので、ポートレート撮影には向いているとおもいます。
  
フィルターネジのないレンズなので、フードは被せ式を用いている。マミヤの中判カメラ用フードに少し加工を施し装着できるようにした

CAMERA: Fujifilm X-T20 / SONY A7R2(APS-C mode)

SONY A7R2(WB:日光, APS-C mode, 露出+2.0) モデル:彩夏子さん



Fujifilm X-T20(WB: 日光)放射ボケも使い方ひとつで、ダイナミックな写真になります
SONY A7R2(WB:日光, APS-C mode, 露出+2.0) モデル 莉樺(リカ) さん

SONY A7R2(WB:日光, APS-C mode, 露出+2.0) モデル 莉樺(リカ) さん
Fujifilm X-T20(WB: 日光)




 
オールドレンズ女子部にも所属しているMiyu Yoneさんにイングリッシュガーデンでレンズを使っていただき、お写真を提供していただきました。ありがとうございます。
 
Photographer: Miyu Yone
Camera: Olympus OM-D E-M1
カメラ内でWB、トーンカーブ、露出補正(‐1〜2)を変更し、ピクチャーモード(ビビット)で撮っています。下の写真をクリックするとWEBアルバムにジャンプできます。
 

Click and Go to Web Album

2019/09/12

LOMO HYDRORUSSAR-8 21.6mm F3.5
















水中撮影用カメラと言えば1963年に登場した日本光学のNikonos(ニコノス)が有名ですが、ロシア(旧ソビエト連邦)ではその10年前にカメラとレンズを防水・耐圧プロテクター(ハウジング)に入れて使用する技術が確立されており、水中撮影用レンズのHydrorussar(ハイドロルサール)シリーズが開発されました。Hydrorussarには1番から23番まで23種類ものモデルが設計され、その一部がLOMOにより製品化されています[0]Hydrorussar 8は同シリーズの中でも市場流通量の多い、最もポピュラーなモデルです。

LOMO特集 Part 4 
深海のドラマに光をあてる
ロモの水中撮影用レンズ

LOMO HYDRORUSSAR-8  21.6mm F3.5

Hydrorussar-8(ハイドロルサール8)は1950年代初頭に旧ソビエト連邦(現ロシア)のレニングラード州サンクトペテルブルグにあるLITMO(レニングラード機械光学研究所)で設計され、同州のLOMO(レニングラード光学器械合同)で製造された水中撮影用レンズです。ダイバーがカメラと共に耐圧防水ケース(ハウジング)に入れて用いたり、潜水艦に搭載され動画撮影に使用されました。焦点距離は21.6mmですが、水中で使用する際には4/3倍の28.8mm換算になります。レンズを設計したのは広角レンズの名玉Russar(ルサール)の開発者として知られるM.Rusinov(M.ルシノフ)博士[1909-2004]です[3]
Rusinov博士は戦前に光学デザイナーとしてLOMOKMZ393番プラント、航空測地学研究所に勤務し、戦後はITMO大学の研究機関で様々な種類のレンズを開発した人物です。ITMO大学では1958年にロシア初の大型コンピュータLITMO-1の運用が始まり、レンズの自動設計も行われるなど先駆的な研究が行われていました。Rusinov博士の設計した代表的なレンズには超広角のRussar MR-2(1956年完成) 20mmをはじめ、映画用のKinorussar、水中撮影用のHydrorussar、特殊ミラーレンズのRefleksrussar、核物理学用の写真計測システム、そして双眼鏡のBinorussarなどがあります[1,3]。ちなみに、今回紹介するレンズ名のHYDRO(ハイドロ)はギリシャ文字由来の「水」を表す接頭語です。
博士は作曲家でもあり、ピアノの達人でもありました。父親が高校の数学教師、母親がピアニストでしたので、両親の才能を余すところなく受け継いでいたのでしょう。真偽まではわかりませんが、彼のレンズ設計には作曲のノウハウがいかされているそうです[3]Rusinov博士には深い海の音が聞こえたのかもしれませんね。

参考文献・資料
[0] Underwater Photographic Lenses HydrolensPhotohistory.ru, G.Abramov
[1] Wikipedia: Mikhail Rusinov
[2] Outstanding Scientific Achievements of the ITMO Scientists, ITMO University
[3] Russar+(歴史), Lomography
 
入手の経緯
本品はロシアのレンズ専門業者が2018年秋にeBayに出品していたもので、360ドルの即決価格で購入しました。オークションの記載は「光学系はMINT(美品)。カビ・クモリ・バルサム剥離・傷などはみられず、コーティングの状態も良い。レンズヘッドのネジは32mmのスクリューマウント。純正の真鍮キャップが付属している」とのこと。めちゃくちゃ格好いいので、反射的に即決購入のボタンを押してしまいました。ガラスは記載どうりに拭き傷ひとつなく、ホコリもないクリーンな光学系でした。思っていた以上にバックフォーカスが長かったので、ヘリコイドに搭載しM42マウントレンズとして使用できるようにしました。後ろ玉が出ていないので一眼レフカメラでもミラー干渉なく使用できます。

重量(実測)774g, 絞り羽 8枚, フィルター 52mm,  マウントネジ 32mm(0.75ピッチ), 定格撮影フォーマット 35mmフルサイズ, 焦点距離 21.6mm(水中撮影時は換算28.8mm), 口径比 F3.5, 対角線包括画角 2β=70°









HYDRO RUSSAR-8の構成図:左が被写体側で右がカメラの側。光学系は4群6枚のレトロフォーカス型。耐圧ガラスの向こうは水中。水中用プロテクター(ハウジング)に格納して用いられた



撮影画テスト
このレンズが真価を発揮できるのは水族館などの耐圧ガラス越しに水中を撮影する時です。大気中での通常撮影の際は樽状の歪みと四隅で被写体の輪郭部が色付く現象(色収差)が目立ちます。ただし、中央は開放から十分にシャープで発色も鮮やかですので、全く使い物にならない描写ではありません。水中撮影時なら歪みはだいぶ収まり、色収差も気にならないレベルまで改善します。まずは水中撮影、続いて街中のスナップ撮影の写真をお見せします。
 
F5.6 水上部分(水槽の枠)は樽状に歪んでいるのに対し、水中部分のポールは少し糸巻き状に歪んでいます。水中撮影用レンズの補正の秘密を垣間見た気がします
F5.6 sony A7R2(AWB, ISO6400)  開放からとてもシャープで発色は鮮やかです
F5.6 sony A7R2(AWB, ISO6400) 水中撮影時は四隅の色滲みが収まり、歪みもよく補正されています


F5.6 sony A7R2(AWB, ISO6400) 近接時になると再び四隅で色滲みが目立つようになります
F3.5(開放) sony A7R2(AWB, ISO6400) 





F3.5(開放)sony A7R2(AWB)
F3.5(開放)sony A7R2(AWB)

F3.5(開放)sony A7R2(AWB) 開放でも大変シャープな像です

通常の撮影(水中外)で用いた場合
F8 sony A7R2(WB:日光) 歪みは大きく、電柱が曲がって見えます


F5.6, SONY A7R2(WB:曇天): 四隅での色滲み(倍率色収差)が大きく、被写体の輪郭部が赤っぽく色づいています

F5.6, SONY A7R2(WB:曇天): 

F5.6, sony A7R2(WB:日陰):ただし、全く使い物にならない描写というわけではありませんね