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2011/07/13

Schneider-Kreuznach Jsogon (Isogon) アイソゴン 40mm F4.5(M42) Rev.2






クールトーンな西独のレンズ達 2:
シュナイダー・ファンにも知る人は少ない
小さなヴィンテージレンズ

今回はいよいよ「シュナイダー・ブルー」の発色特性で知られるSchneider-Kreuznach社のレンズが登場だ。青に特徴のあるこの種の発色特性を好まない人は恐らくこんな体験をしたのであろう。「シュナイダーのレンズをカメラにつけて森林に分け入り風景を撮る。すると、撮影結果の中の草木の緑が、どうもいつもとは違う発色であることに気付く。光の当たる部分は黄緑に転び影の部分は青緑になるなど緑の発色に連続性が無く、照度に応じて色彩が不安定にコロコロと変化するのだ。あまり気にせずに撮影を続けると、今度は木々の隙間の奥深くにあるシャドー部がどうもおかしく見えてくる。やや青味がかったようにも見え、薄暗い辺りに何かあるような気味悪い感覚に陥るのだ。もう風景撮りはいやだと人を撮影することに。すると、今度は肌が青白く美しい死体のように血色感がない。背景もろとも、まるで映像の中のテレビ画面を見ているような感覚になり・・・。ひゃ~、こんなレンズもういやだ!」とまぁ、こんなふうになるわけだ。しかし、使い方を心得れば良い部分もいっぱいあるので、第2弾では、そこらあたりを伝えたい。
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今回再び紹介するJsogon(アイソゴン[注1])はドイツのSchneider(シュナイダー)社が1950年代初頭に生産した一眼レフカメラ用の準広角レンズである。生産総数は僅か725本であり、1950年9月29日に最初の製造ロット125本の一部、もしくは全てがM42マウントとして生産された。残る600本は全てExaktaマウントとして生産されている。入手した個体は希少価値の非常に高い初期ロット125本の中の1本である。Exaktaマウント用のJsogonは本ブログで過去に取り上げているが、残念ながらその時の個体にはガラスに薄らとクモリが入っていたため、100%の描写性能を紹介することができなかった。今回のJsogonは状態がよく、本来備わっている実力を紹介できる。
Jsogonの光学系は4群4枚と珍しく、3群4枚のテッサーよりも1面多い構成を持つ。4群4枚でF4.5あたりの開放絞り値と言われ直ぐにピンと来るレンズはGOERZ社の開発したCELOR型(対称型レンズCELOR F4.5)である。画質的にみても、この構成が最有力候補だ。この種の構成をもつレンズとしてはMEYERのHELIOPLAN 40mm F4.5がある。他にはE.Boschが1900年に考案したトリプレットからの発展形(後群を2枚の凸レンズに分割したもの)やエルノスター型も考えられるが、もっと明るくできる構成だし、これらの構成で焦点距離40mmを実現すると非点収差が大きく、酷いことになる。あとはテッサーの後群を分離した変形テッサーというケースも考えられるが、こんなに暗いレンズにはならない。構成面が8面と多いのはテッサーやトリプレットに比べてコントラスト性能で不利な立場となるが、収差の補正効果では逆に有利な立場になる。F4.5という無理のない口径比ならば、この種の構成も悪いものではない。テッサーやトリプレットにはない別次元の可能性を感じる。なお、JsogonはTessar 40mmに次ぐ一眼レフ用広角レンズの第二号といわれている。面白そうなレンズだ。ウホホホホホホ・・・・・・。
レンズの鏡胴は真鍮ベースのクロームメッキ仕上げで造りが非常によい。鏡胴のメッキに傷の入った部分からは地金の真鍮ゴールドが露出し、これがたまらなく良い味をだしている。前玉がフィルター枠よりもだいぶ奥まったところに位置しているので、鏡筒がフードとしての役割を兼ねているようだ(このレンズにはフィルター用のネジ切りが無い)。40mmという焦点距離はAPS-Cセンサーで使用してもフルサイズ機や銀塩カメラで使用しても標準レンズに近い使いやすい画角が得られ万能だ。本ブログで過去に扱ったJsogonとは鏡胴のデザインが少し事なり、本品の方が全長が少し短く、重量も100g弱軽いなど軽量でコンパクトにできている。何か差別化する理由でもあったのであろうか。

[注1] JSOGONとかいてアイソゴンと読むそうだ。ドイツ語では単語の先頭にあるJとIの読みが入れ替わることがあり、例えばエキザクタで有名なイハゲー社はJHAGEEと記される。

★入手の経緯
2011年6月にドイツ版eBayを介して個人の出品者から送料込みの総額165.5ユーロで購入した。商品出品時の解説は「シュナイダー・クロイツナッハ社が製造したM42マウントの品。レンズは経年にしてはとてもよい状態だ。絞りはグッド。ピントリングの回転もグッド。ガラスもグッド。少しホコリがあるようだ。キャップが付属する」とのこと。この出品者はビックリするようなレアなレンズをポツリ・ポツリと出す人物なので個人的にマークしている。たぶん大物コレクターではないかと勝手に想像している。商品は初め175ユーロ+送料5.5ユーロで発売されていたが、値切り交渉を受け付けていたので、160ユーロでどうかと交渉したところ、私の物になった。1週間後に出品者から届いた個体には解説どうりに軽度のホコリの混入が見られたが、この程度なら描写には全く影響はない。今回は良い買い物であったと思う。
本品は珍しいレンズなのでEXAKTA版でも相場価格はやや高く、米国版eBayではケビンカメラがプライスリーダーとなり400ドル~500ドル程度で出品している。このJsogonにM42マウントの個体がある事を今回の出品で初めて知ったので目にした瞬間は驚いた。シュナイダーの製造台帳で確認を取ると、Jsogonの生産が始まった1950年9月の最初の製造ロット(125本)の中の1本であることがわかった。マウント規格の表記が空欄になっているので、この時にM42を含む複数のマウント規格の個体が試作的に生産されたのではないだろうか。

絞り値 F4.5-F22, 手動絞り, 焦点距離 40mm, フィルター径 ねじ切り無し, 最短撮影距離 0.5m, 絞り羽枚数 8枚, 重量(実測) 180g, 光学系は4群4枚。本品にはM42マウントとExaktaマウントの2種が存在する

★撮影テスト
このレンズには、味のある優れた描写力が備わっている事がわかった。解像力はあまり高くないため拡大すると像の甘さが出るもののバリッと鋭く張りのある撮影結果が得られる。ボケ味は硬めで背景にゴチャゴチャしたものが入ると距離によってはザワザワ煩くなるが大きく乱れることは無い。F4.5という控えめな設計が功を奏したのか周辺画質の低下が目立つことはなく、開放撮影時においても像の流れや歪みが気になることはなかった。シュナイダーらしく冒険のない手堅い描写設計といえる。注目の発色特性については色温度が高くクールトーンな仕上がりとなる。黄色がレモン色、レモン色が白、白が青白く変色する様子が確認できる。また、照度に応じて緑が黄緑や青緑にコロコロ不安定に変色し、撮り方次第でとても面白い作例になる。暗部が青みを帯びる傾向が強く、他のシュナイダー製レンズと比較しても、Jsogonは青転びの特性をかなり強く示すレンズのようだ。以下、作例。
★銀塩撮影(Pentax MZ-3 + Euro Print 100)

F5.6 銀塩撮影(EuroPrint100): 日光のあたる部分で竹林の葉の緑の色が黄緑に転び、まるで燃え盛る炎のように見える。このレンズの特性をうまくいかせた作例だ。竹林の奥のあたりを見てほしい。森林のシャドー部が薄気味悪いとは、こういうことなのだ。だが、涼しげにも見える

F8 銀塩撮影(EuroPrint100): あれれ凄いな!夕日の逆光で黄色を補色してみたが、結構いい味だすレンズではないか!光の滲みかたといい、石畳の雰囲気といい、奥の樹木の発色など・・・素晴らしい。もしかして、このレンズは久々の大当たりであろうか・・・。
上段・下段ともF4.5 銀塩撮影(EuroPrint100): 袖口から肩にかけての質感が素晴らしい。描写はかなり鋭くボケ味は硬めのようだが大きな乱れはない。周辺画質の低下も少ない
F8  銀塩撮影(EuroPrint100): 最短撮影距離は0.5cm弱なので近接撮影も難無くこなす。ハイライトの飛び方がとてもいい。やはり表現力の豊かなレンズだ


F11  銀塩撮影(EuroPrint100): 変な色が出たケース(その1)。こちらも逆光撮影だがシャドー部が真っ青だ!根元のあたりに青緑の深みがしっかり残り穂の部分と好対照。ある種のメリハリを生んでいる

撮影条件が夏の晴天日だったのでコントラストが高く、フィルム撮影ではシャドー部の黒潰れが顕著に出てしまった。こういうコンディションではデジタルカメラの方が有利だ。 以下はデジタル撮影による作例。

★デジタル撮影(Sony NEX-5 digital, AWB)

F4.5 NEX-5 digital(AWB): 玉ボケが青(水色)に変色している。緑の発色が照度に応じて黄緑や青緑へとコロコロと変化し綺麗だ
F5.6  NEX-5 digital(AWB): デジタル撮影の柔らかな階調表現では明確に識別できる。やはりこのレンズは絞りを開けたときの解像力があまり高くない。ボケ味は硬いが大きな乱れもなく良好だ
F8  NEX-5 digital(AWB): 絞るとスッキリと写りシャープだ。左下の影の部分が青に転んでいる

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Jsogonは味のある描写で勝負するタイプのレンズといえるだろう。理由は分からないが、デジタル撮影よりもフィルム撮影の方が表現力が滲み出ているように感じた。しっかりと自己主張をする優れたレンズのようだ。

2011/07/06

Wollensak-Dumont CRO Oscillo-Amaton 75mm F1.9(modified M42)


米国生まれのUFOレンズを
狭いラボから外の世界へ解き放つ

Wollensak Optical Company(ウォーレンサック社)は1972年まで存在していた米国ロチェスターの総合映像機器メーカーだ。大判カメラ用レンズ、シネマ用レンズ、プロジェクター用レンズに加え、工業用、軍事用、核実験記録用にレンズを供給していた。他にもテープレコーダーや双眼鏡の製造で知られる。古くはボシュロム社で絞り機構付きシャッターを設計していた機械工のAndrew Wollensakが、Union Brewing Companyの元社長S.Rauberの支援を得て1899年に創業したRauber and Wallensak社を起源としている。その2年後にRauberが死去したため、社名をWallensak Optical Companyへと変更した。翌1902年にはカメラ用シャッターに加えレンズの生産も開始、1905年にはRochester Lens Companyを買収するなど事業を拡大していった。会社としての最盛期は1950年代であり、この頃の従業員数は千人を超えた。ベル研究所が発明したプリズム回転式ハイスピードカメラの原理を採用し、1秒間に10000フレームの撮影を実現したWollensak FASTAXはハイスピードカメラの草分け的存在として人々の記憶に残る映像アーカイブを数多く残している。同社は後にリビア・カメラ社や3M社など幾つかのメーカーに買収され、1972年に企業活動を停止している。Wollensak社が生産したレンズのブランド名にはAmaton, Optar, Raptar, Verito, Velostigmatなどがあり、米国のムービーカメラブランドには同社のVelostigmatが多く採用された。また、Raptarは同社の最上級ブランドに位置付けられており、軍や研究所に納入された工業用レンズに多く見られる。

左がOscillo-Amaton 1.9/75(改造済)で右がOscillo-Raptar 1.9/75。両者は鏡胴長や前玉/後玉径が異なる。フランジバックはOscillo-Amatonの方が長くNikonの一眼レフカメラにも適合するほどだが、Oscillo-Raptarはかなり短いため一眼レフカメラには適合しない
私が今回入手したのは同社がDUMONT社のCROというオシロスコープの出力波形を記録するために供給したOSCILLO-AMATONというレンズである。第一印象はまるでUFO。紐でつるせば特殊撮影にも使えそうな独特の外観だ。このレンズには同社のAlphaxという名の機械式シャッターが内蔵されており、独特な外観を生みだす一因となっている。このシャッターを生かせば何とデジタル一眼カメラで多重露光を楽しむことができるというオマケつきだ。シャッター部まわりの造りは実に素晴らしく、工業用レンズということもあり、製造コストはかなり高かったのであろう。光学系は4群6枚のダブルガウス型で、オシロスコープの記録レンズにしておくにはもったいない75mmの焦点距離とF1.9の大きな口径比を実現している。イメージサークルは近接域で中判6x6cmフォーマットをカバーし遠方では四隅がケラれるとのこと。遠方を撮るなら6x4.5cmまたは35mm判フルサイズフォーマットで用いるのがよいだろう。よぉ~し、こうなったら私が狭い実験室から風通しの良い草原に連れ出してあげよう・・・。しかし、いきなりの問題が発生。このレンズはマウント規格が特殊なため、このままでは普通のカメラで使用することができない。

★M42マウントへの改造
幸いにもこのレンズはバックフォーカスとフランジバックが長く、Nikonを含む大半の一眼レフカメラに補正レンズ無しでも適合する事がわかった。後群側のレンズ鏡胴をグラインダーで研磨すると別途購入したM52-M42ヘリコイドユニットにピッタリと収まるので、このままエポキシ合体!!!。見事にM42マウント化してしまった。しかも、後玉の出っ張りがないので、フルサイズセンサー機でもミラー干渉の心配がいらない。せっかくだからNikonのフルサイズセンサー機で使うことにした。

フィルター径 48mm, 絞り値 F1.9--F16, 絞り羽根 15枚, 重量(ヘリコイドユニットを含む改造後の実測) 438g, シャッター速度は1s-1/100sに加えTとBモードがある。写真は光学系をばらした様子で4群6枚ダブルガウス型レンズ(1+2+2+1= 6elements/ 4groups)となっている。前方の左から2番目と4番目は張り合わせレンズである。左から3番目にある後玉ユニットの鏡胴部金属面をグラインダーで研磨しM42ヘリコイドユニットにすっぽりと収まるよう改造している

★入手の経緯
本品は2011年5月にeBayを介して米国ニュージャージーの中古カメラ業者から105ドルの即決価格(総額140ドル)で落札購入した。オークションの記述は「珍しい名のレンズだ。ガラスはクリーン、シャッターは全スピードで正確に動作する。クリーニングマークがあるがイメージクオリティには影響ない」とのこと。届いた商品は一見綺麗であったが、強い光をあててガラスを観察するとコーティングに薄い拭き傷がパラパラとあった。レンズ本体に加え改造用ヘリコイドユニットの新品が86㌦かかったので火遊びにしては想定外の出費である。えーい、なるようになれ!

★撮影テスト
OSCILLO-AMATONは本来、オシロスコープの波形を記録するために造られたレンズなので、一般撮影用レンズとは設計理念が異なる。この種のレンズに求められる描写力とは解像力が高く、像面の湾曲や歪曲がしっかり補正されているといった程度であろう。ところが実際に使ってみると、色乗りが良く、階調変化が丁寧に表現されるなど、なかなか良く写るレンズであることがわかってきた。まず色のりであるが、黄色や赤などの原色が濃く表現され、時には気持ち良いくらいスカッと、あるいは時に気持ち悪いくらいに高彩度になる事がある。諧調表現は丁寧で暗部に向かってなだらかに落ちてゆくのが好印象であった。ボケ味については距離によってゴワゴワと、やや滑らかさを欠いた硬めの像になるが、二線ボケやグルグルボケが顕著に表れることはなく概ね穏やかである。解像力は予想どうり高く、輪郭部の線が細く引き締まり、狙った被写体がフッと浮き上がるような像が得られる。近接撮影では結像がやや甘くなるが、中遠距離に対しては開放絞りから高いシャープネスが得られる。屋外での使用時、とくに曇り空のコンディションではコントラストの低下が顕著なのでフードは必須となる。外観も迫力満点だし、面白いレンズを発掘することができた。
F1.9?, F2.8?? Nikon D3 コントラストは良好で色のりも良い。
もうすぐ七夕です。娘はパンダに会えますようにとお願いをした
F2.8 Sony NEX-5 digital  少し絞るだけでビシッとこんな調子。近接撮影時でも細部まできっちり解像する。花の発色がしっかり出た感じで、とても濃厚だ。ときどき色飽和もある

F4 Nikon D3 digital: こちらも解像力が高く、緻密な描写である


F4 コントラストは現代のレンズに比べれば平凡だが、オールドレンズとしては悪くない。諧調変化もなだらかで黒潰れも回避されている。背景にジャギーが見えるのはアウトフォーカス部に網戸が入っているため
★撮影機材
カメラ本体 

Nikon D3+ M42-Nikon adapter(補正レンズ無し)
Sony NEX-5+ M42-NEX adapter
UFOレンズの姉妹品Oscillo-Raptar。
こちらの方が後群の鏡胴が太く、
フランジバックとバックフォーカスが
短いので改造の難易度は高い。
このままでは、死蔵レンズになって
しまう。どうしましょ
今回は勢い余って上位ブランドの姉妹品Oscillo-Raptar(オシロ・ラプター)まで購入してしまった。こうなったらUFOレンズ第二弾でOscillo-Raptarの改造にも挑戦したるわい!ちなみに、こちらの方が改造の難易度は高い。悶々・・・・。