おしらせ


ラベル Miranda の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル Miranda の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2022/07/23

Auto MIRANDA 5cm F1.9 and 50mm F1.8



マイナーなマウントに平凡なスペックなど、わざわざここにゆく理由がなければ手にする事もないミランダカメラのF1.8 / F1.9クラスのレンズですが、使ってみると案外と特徴がある事に気付かされます。記事化することにしました。

ぺンタレフカメラのパイオニア
ミランダの交換レンズ群 
part 6

ミランダカメラ初の自社製レンズ

AUTO MIRANDA 5cm F1.9

F2前後の標準レンズといえば軒並み開放からシャープで高性能(無個性)なものが多いのですが、この安いレンズは滲みが多く、コントラストも低く、ぼんやりとした柔らかい描写が特徴です。このモデルはミランダカメラが交換レンズの自社生産にのり出して間もない頃の製品でしたので、技術的にまだ発展途上だったのかもしれません。レンズホリックの輩には千載一遇の機会ですので、取り上げない手はありません。

Auto MIRANDA 5cm F1.9:  S/N: 456XXXX, フィルター径 46mm, 最短撮影距離 0.45m, 絞り値 F1.9-F16, 絞り羽 6枚構成, MIRANDAバヨネットマウント, 重量(実測) 193g

 ミランダカメラがレンズの自社供給を始めたのは1963年からで、それまで自社の一眼レフカメラに標準搭載するレンズはZUNOWや興和、藤田光学などから供給してもらっていました。その頃のレンズにはシリアル番号の先頭に"K", "T", "Y"など供給メーカー各社の属性を表す頭文字が記されていましたが、1963年10月に登場した一眼レフカメラのMIRANDA F以降では、こうした頭文字が記されなくなっています[1,2]。これ以降の標準レンズは全て自社で生産し供給することとなったためです。最初の自社製レンズはKOWA製MIRANDA 5cm / F1.9(AUTOMEX II用)の後継モデルとして1963年に供給された標準レンズのAUTO MIRANDA 5cm F1.9でした[1]。レンズは1963年に登場したMIRANDA F用としてカメラとセットで供給が始まり、1966年登場のMIRANDA FV/GTまで供給されました。ちなみにカタログには1968年まで掲載されています。1966年に登場した一眼レフカメラのMIRANDA SENSOREXで新設計のAUTO MIRANDA 50mm F1.8に置き換えられ、カタログから姿を消しています。

レンズ構成はこのクラスの製品では一般的な4群6枚のガウスタイプで(下図)[3]、口径比がF2程度であれば無理なく収差補正ができるところですが、実際に使用してみると滲みが多く、柔らかい描写であることに驚かされます。F2クラスの柔らかい描写のレンズは探しても少ないので、今後ますます人気の出そうなオールドレンズです。オートミランダでドミロンの夢を見られるかな?

AUTO MIRANDA 5cm F1.9構成図:文献[3]からの見取り図(トレーススケッチ)
 
 
レンズの市場価格
比較的多く流通しているレンズですし、今のところ値段も安いので、特徴のあるレンズを探している方におすすめしたいです。レンズの日本国内での中古相場は、コンディションにも左右されますが5000円~7000円程度と気軽に手を出せる価格帯です。私は2020年春に国内のネットオークションにて即決価格5000円+送料で落札購入しました。アダプターの入手が難しいため全く注目されてこなかったレンズだったようで、ネットには作例が全く出ていません。
 
撮影テスト
開放ではフレアが画面全体を覆い、コントラストは低下気味で、滲みを伴うボンヤリとした雰囲気のある描写となります。レンズのコンディションは良好ですし、鏡胴への光学ユニットの据え付けが緩んでいるわけでもないので、もともとこういう描写のようです。ボケは四隅で像が流れることがありますが、回転ボケ(グルグルボケ)までには至らない一歩手前です。背後のボケは硬めで、距離よってはザワザワとします。近接撮影時の方が遠方撮影時より滲みが少なめでした。もちろん絞ればフツーにシャープな描写になります。開放で積極的に使ってゆきたいレンズですね。
  
F1.9(開放) Sony A7R2(WB: 日陰) 開放では滲みを伴うソフトな像です。オールドレンズとしては嬉しい結果ですね

F4 Sony A7R2(WB:日陰)もちろん絞ればスッキリ写ります

F1.9(開放) SONY A7R2(WB:日陰) 再び絞りを開けるとソフトな描写になります

F1.9(開放) Sony A7R2(WB:日光)

F4, Sony A7R2(WB:Auto)

F1.9(開放) SonyA7R2(WB:Auto) ボケは回転ボケの一歩手前で四隅が流れています。近接撮影時の方が遠方撮影時より滲みが少なめです
 
続いて後継モデルのAuto MIRANDA 50mm F1.8を紹介します。こちらの方がF1.9のモデルより幾らかシャープに写る新設計のレンズで、やはりミランダカメラが生産しました。このレンズは一眼レフカメラのMIRANDA SENSOREXとのセットで1966年に市場供給が開始されています。初期ロットの個体はフィルター径が46mmでしたが、直ぐに52mm径に変更となりました。1972年に同社が発売した一眼レフカメラのSENSOREX EEではEE(Electric EYE)に対応したAUTO MIRANDA E 50mm F1.8(タイプEとも呼ばれる)も登場しますが、設計構成は従来型と同一です。レンズは1975年に登場したSENSOREX RE-II用とdx-3用に供給された新設計のAUTO MIRANDA EC 50mm F1.8に置き換えられ生産終了となっています[4]。今回は比較も兼ねてフィルター径46mmの初期ロットと後期ロット(タイプE)を入手しました。
 
Auto MIRANDA 50mm F1.8:  S/N: 191XXXX, フィルター径 46mm, 最短撮影距離 0.45m, 絞り値 F1.8-F16, 絞り羽 6枚構成, MIRANDAバヨネットマウント, 重量(実測) 205g


Auto MIRANDA E 50mm F1.8:  S/N: 113XXXX, フィルター径 52mm, 最短撮影距離 0.45m, 絞り値 F1.8-F16, 絞り羽 6枚構成, MIRANDAバヨネットマウント, 重量(実測) 228g




















 
ンズ構成は下図に示すような4群6枚のオーソドックスなガウスタイプです。F1.9のモデルからの明らかな改良点がみられ、特に第2群の接合面の形状とガラスの厚みに大きな差があります。
  
AUTO MIRANDA 50mm F1.8の構成図:文献[5]からの見取り図(トレーススケッチ)
  
レンズの市場価格
これらも比較的多く流通しているレンズで、今のところ安値で取引されています。レンズの中古市場での相場は、コンディションにも左右されますが5000円~7000円程度と気軽に手を出せる価格帯です。
 
参考文献・資料
[1]クラシックカメラ専科64ミランダの系譜, 2002年9月
[3] MIRANDA F instruction manual(English)
[4] MIRANDA SENSOREX RE-II manual; dx-3 manual (English)
[5] MIRANDA SENSOREX instruction manual(English) 
  
撮影テスト
2本の50mm F1.8(Type EとNon-Type E)はカタログに掲載されている構成図を見比べる限り同一設計のレンズですが、写真を撮り比べた結果からも写りに差はありませんでしたので、やはり同一設計のモデルであることを再確認することができました。F1.8のモデルはF1.9のモデルよりもフレアの発生量が少なく、シャープネスやコントラストに改善がみられ、より高性能なレンズとなっています。開放でもピント部はスッキリとした描写です。ミランダカメラの技術力が日々向上していた事の証でしょう。ただし、歪みは樽型で目立つレベルでした。
 
F1.8(開放) Sony A7R2(WB:⛅) 時間帯的に良い写真が取れそうな予感です。ピントは赤い橋。F1.9のモデルよりもシャープネスは明らかに高くフレアも少なめです


F1.8(開放) Sony A7R2(WB:⛅)
F1.8(開放) Sony A7R2(WB:日陰)

F1.8(開放) Sony A7R2(WB:日陰)けっこう樽型歪みがあります

F8, Sony A7R2(WB:日陰)

2022/07/17

Auto MIRANDA 21mm F3.8


















ぺンタレフカメラのパイオニア
ミランダの交換レンズ群 part 5

フレクトゴン20mmを手本にした

MIRANDAマウントのウルトラワイド

AUTO Miranda 21mm F3.8

MIRANDAブランドのレンズの中で焦点距離25mmに次ぐポピュラーなモデルが今回取り上げるAuto Miranda 21mm F3.8です。レンズメーカー各社のOEM製品であるSOLIGORブランドにもミランダマウントの同一モデルがありますが、販売時の価格設定はミランダ純正モデルより若干安価でしたので、Auto MIRANDAはSOLIGORの上位ブランドという位置づけであったようです [1]。レンズの発売年は不明ですが1972年には既に発売されていました。AIC Photo Inc. ARRIMATSU CORP.(1972年) から出ているSoligorレンズのカタログに構成図付きで掲載されており、1972年に印刷された米国小売業者のプライスリストでも確認できます[1,4]。焦点距離が20mmではなく21mmであることを中途半端だと受け止める人も多くいると思いますが、これは対角線画角がライカ版35mmでちょうど90度であるところから決まっています。切りの良い焦点距離よりも、本質的に重要な切の良い画角が重視された結果が21mmだったのです。いかにもドイツ人的な発想であることは容易に想像ができます。21mmの起源は1958年に登場したスーパー・アンギュロン 21mm F4だったのでしょうか?。

Auto Miranda 21mmを供給したメーカーがどこであったのか、エビデンスとなる資料は見つかっていません。鏡胴のよく似たRIKENON 21mm F3.8の存在が確認でき、ミランダ研究会によると同等のトミノンやヤシノンもあるそうなので(これについて当方は未確認)、今回取り上げるAUTO Mirandaを富岡光学製であるとする仮説はとても有力です[2]。もうひとつの対抗仮説はTOKINAが製造したというものです。同社はかつてT4マウントのSOLIGOR 21mm F3.8を生産していました[3]。ただし、MirandaマウントのSOLIGOR 21mm F3.8とは鏡胴のデザインが異なっておりピントリングが金属のローレット加工ではなくゴムです。決定的な資料がない状況を考えると検証のためには中を開け、部品レベルで分析するしかないでしょう。エビデンスのある情報をお持ちの方から情報提供が寄せられるのをお待ちしています。

AUTO MIRANDAには焦点距離の更に短い17mm F4があり、同一レンズでM42マウントのNoritar 17mm F4が発見されていますので、ノリタ光学が製造したことは間違いありません。製造本数は極めて少なく入手は困難のため、現実的に入手が可能なモデルの中では今回取り上げる21mm F3.8が最も画角の広いレンズであると言えます。

レンズ構成は下図・左のような8群9枚で、第7群にはり合わせユニットを持った複雑な構成形態になっています[4]。時代的にはコンピュータ設計のレンズですが、やはりコンピュータによる設計で1961年に発売されたフレクトゴン20mm F4前期型(下図・右)を意識した構成であることは、この比較図から見ても明らかです[5]。この設計では広角レンズで一般的にみられる樽型歪曲収差を、前群に設けた2枚の発散性メニスカス(2群目と3群目のレンズ)を利用して抑えています。この設計はVEB Zeiss JenaのDannbergらが1956年に考案したもので、はじめは1955年の広角化アタッチメントの開発に利用されました[6]。

 

参考文献・資料

[1] 1972年の米国小売店でのプライスリスト

[2] ミランダ研究会 Ultra wide angle lenses

[3] トキナー交換レンズ価格一覧表

[4] Soligor Universal Automatic T4 Lens systm, AIC Photo Inc. ARRIMATSU CORP. (1972)

[5] Flektogon 20mm特許 DDR Pat.30477 (1963) 

[6] Pat. GDR No.17177, 22nd Dec.1956

Auto MIRANDA 21mm F3.8: フィルター径 72mm, 絞り羽 6枚構成, 絞り F3.8-F16, 最短撮影距離 0.3m, 重量(実測) 312g, MIRANDAバヨネットマウント , 設計構成 8群9枚






 ★入手の経緯 

レンズは2022年春にeBayを介して米国の撮影機材を専門に扱うセラーから200ドル(27000円)+送料で入手しました。オークションの記載は「ファインコンディションで未使用に近い。ケースとキャップが付属する」とのこと。ホコリも僅かの美品でした。オークションでの相場はコンディションにもよりますが150~200ドル程度でしょう。Soligorブランドの同等品の方がもう少し安値で(100~150ドルあたりで)流通していますので、ブランド名に拘らないのであれば、そちらでよいと思います。私は敢えて拘ってみましたけれど。
 
撮影テスト
この時代のウルトラワイドレンズは絞って撮ることを前提に設計されていますので、敢えて開放で使用すると、中央から少し外れたところで像が明らかに甘くなります。四隅の光量落ちも少し出ますが1段絞れば均一な光量になります。四隅までシャープな像を得たいなら2段絞る必要があるでしょう。このレンズの設計に影響を与えたフレクトゴン20mm F4と比較すると、逆光ではやはりゴーストはでるものの、フレクトゴンよりは出にくい印象です。逆に薄いベールのようなハレーション(グレア)は多めに発生し、強い逆光時はコントラストが落ちて発色が若干濁ります。フレクトゴンは深く絞ってもトーンが硬くなることはなかったのですが、ミランダは2段しぼると急にシャープになり、暗部の締りが強めに出るようになりました。発色に癖があるという噂を耳にしていたのですが、デジタル撮影(SONY A7R2)で特に気になることはありませんでした。歪みの補正については定評のあるフレクトゴンと遜色はなく、1970年代のウルトラワイドレンズとしてはまぁまぁ良好な補正レベルだと思います。

F8, Sony A7R2(WB:日光)













F3.8(開放)続いて開放。四隅で光量落ちが若干みられる。参考までにF8に絞った写真はこちらです

F8, Sony A7R2(WB:日光)














F3.8(開放) Sony A7R2(WB:日光)

F8, Sony A7R2(WB:日光)



































F8, Sony A'R2(WB:日陰)
F8, Sony A7R2(WB:日陰)

F8, Sony A7R2(WB:日陰)

F8, Sony A7R2(WB:日陰) 歪みもこのクラスのレンズとしては良好に補正されている印象です
F8, Sony A7R2(WB:日陰)

F5.6, Sony A7R2(WB:日光)
F8, Sony A7R2(WB:日光)

2022/07/01

Auto MIRANDA /AUTO MIRANDA E 50mm F1.4 and AUTO MIRANDA EC 50mm F1.4 :ペンタレフカメラのパイオニア、ミランダの交換レンズ群 part 4


ぺンタレフカメラのパイオニア

ミランダの交換レンズ群 part 4

ミランダのハイスピード・スタンダード

AUTO Miranda E 50mm F1.4 ( 2nd Generation ) 

AUTO Miranda EC 50mm F1.4 ( 3rd Generation )

1966年にAUTO MIRANDA 50mm F1.4(第1世代・初期型)を豪華な8枚構成で製品化したミランダカメラですが、1972年に同社が発売した一眼レフカメラのSENSOREX IIとSENSOREX EEでは新設計の後継製品(第2世代)を投入します[1,2A-2C]。第2世代での変更箇所は鏡胴がやや太くなりフィルターのネジ径が46mmから52mm変更されている点と、レンズ設計が同クラスの標準レンズとしては一般的な5群7枚構成に変更された点です(下図を参照)。8枚構成から7枚構成への設計変更は製造コストを削減し利益率を引き上げるためと思われがちですが、そうではありません。2つのレンズを使い画質を比べてみると後継製品には明らかに改良が見られます。初期型の設計構成(8枚玉)には長所・短所がそれぞれありますが、それらを差し引いても総合的なアドバンテージはあまり大きくはないと判断されたのでしょう。8枚玉は補正パラメータが多いことや各屈折面の曲率を緩めることができるなど長所もあり中心解像力は良好でしたが、ペッツバール和が大きく、高価な新種ガラスを用いても非点収差を十分に抑える事ができませんでした[4]。初期型では背後に回転ボケが顕著にみられることがありますし、鏡胴が細長い分だけ四隅の光量落ちがそれなりに目立ちました。一方で1枚少ない7枚構成でも合理的な設計を行えば、諸収差を十分に補正することができたのです[5]。8枚玉から7枚玉への変遷はミランダカメラのレンズ設計技術の成熟を意味しているのでしょう。ちなみに同時代のMinoltaやKonicaの同クラスのモデルは7枚構成から6枚構成へと変更されています。これらのレンズを使ってみればわかることですが、6枚構成の後継モデルでは明らかなフレアの増大がみられます。合理性の追求というよりはコストの削減を目的とした設計変更であったのでしょう。もちろん、この種の柔らかい描写がオールドレンズフリークには大歓迎である事は間違いありません。

ミランダのレンズはどんなエンジニアがどんな理念で設計していたのでしょう。日本語や英語の文献を読み漁ってみたものの、この部分に関して踏み込むような記事が全く見当たりません。AUTO MIRANDA EC 50mm F1.4はPETRIカメラで55m F1.4や21mm F4, 55mm F1.8(新型)などのレンズ設計を手掛けミランダカメラに移籍してきた島田邦夫氏による設計であることがわかっています[12]。カメラの情報は少しあるのですがレンズについては情報が僅かです。ミランダカメラは倒産から46年が経ちます。関係者との連絡が途絶えてしまう前に、社内の事情やエンジニアのエピソードがもっと世に出てくることを願っています。また、このブログがそうした役割を果たせるのであれば、いつでも大歓迎です。

 

Auto MIRANDA 50mm F1.4(2nd Gen.)構成図:文献[2B]からのトレーススケッチ(見取り図)です。構成はF1.4クラスの高速レンズの典型である5群7枚(ガウス発展型)









 

レンズの相場

第2世代(タイプE)のeBayでの値段は100ドルから150ドル程度(送料は別)で、第3世代のタイプECはこれよりも若干安い80ドルから100ドル程度でしょう。日本国内でのレンズの流通は海外よりも少な目なのですが、それにも関わらずレンズの値段は日本国内で買う方が確実に安いです。裏技としてカメラとセットで買うとレンズ単体で買うよりも安く入手できることがあります。カメラが不要なら売ってしまえばよいわけです。ただし、レンズ単体て購入する場合よりも博打性が高いことは覚悟しなければなりません。コンディションの悪いレンズが来てしまった場合に自分でガラス等のメンテナンスができる人ならばよいとおもいます。

第2世代の2本はeBayにて米国のレンズセラーから購入しました。両方とも状態の良い個体でした。2本ともレンズ単体で110ドル前後でした。第3世代のMIRANDA ECはブロガーの伊藤浩一さんにお借りしました。いつもありがとうございます。

Auto MIRANDA 50mm F1.4(2nd Generation): フィルター径 52mm, 最短撮影距離 0.43m, 絞り羽 6枚構成, 絞り値 F1.4-F16, 設計構成 5群7枚(ガウスタイプからの発展型), 重量(実測)315g, S/N: 28XXXXX 

Auto MIRANDA E 50mm F1.4(2nd Generation): フィルター径 52mm, 最短撮影距離 0.43m, 絞り羽 6枚構成, 絞り値 F1.4-F16, 設計構成 5群7枚(ガウスタイプからの発展型), 重量(実測)340g  S/N: 139XXXX


Auto MIRANDA EC 50mm F1.4(3rd Generation): フィルター径 49mm,最短撮影距離 0.43m, 絞り羽 6枚構成, 絞り値 F1.4-F16, 設計構成 5群7枚(ガウスタイプからの発展型), 重量(実測)275g, S/N: 256XXXX, フィルター枠の内側に振出式の内蔵フードが隠されています




















参考文献・資料等

[1] MIRANDA研究会

[2A] MIRANDA SENSOMAT manual (英語版) :構成図引用元

[2B] MIRANDA SENSOREX II Instructions (英語版)

[2C] Miranda SENSOREX EE Instructions (英語版)

[3] Miranda dx-3 Instructions (英語版)

[4] 「レンズ設計の全て」辻定彦著 電波新聞社(第一版)P96頁 2006年

[5] ニッコール千夜一夜物語 第七十七夜: Nikkor-S 50mm F1.4

[6] カメラ毎日 別冊「レンズ白書」1969年

[7] カメラ毎日 別冊 カメラ・レンズ白書 1971年 : 寒冷色

[8] 「幻のカメラを追って」白井達男著 現代カメラ新書

[9] クラシックカメラ専科(1982年) 「ミランダカメラのすべてとその歴史」 日比孝著

[10]クラシックカメラ専科 (2004年)「ミランダの系譜」

[11]カメラスタイル13:今語る初期ミランダカメラ開発秘話:小さな町工場が踏み出した大きな一歩:ミランダを創った男たち

[12]ペトリカメラ元社員へのインタビュー(2013年) 2chペトリスレ リバースアダプター氏

 

撮影テスト

第1世代(初期型)に比べ、第2世代と第3世代には画質における改良点がみられ、よりバランスを重視した画質設計になっています。非点収差が無理なく補正できるようになり、背後の回転ボケ(グルグルボケ)はほぼ見られなくなりました。また、光学系が短くなった分だけ写真の四隅にみられた光量落ちや口径食が目立たなくなっています。第1世代のモデルが課題としていた逆光耐性が改善しゴーストが発生しづらくなるとともに、コントラストも良くなり、逆光時でも発色がより鮮やかになっています。中心部の解像力は可もなく不可もなく平凡で、このクラスとしては平均的です。開放で遠方を撮影するとピント部をフレアが覆い、輪郭部に滲みが生じます。近接撮影とポートレート撮影時では開放でもスッキリとした描写で、コントラストやシャープネスはこのクラスのレンズとしては良好です。デジタルカメラで用いる場合には第2世代に比べ第3世代の方が軸上色収差が目立ちます。


AUTO MIRANDA 1.4/50(第2世代) x SONY A7R2

2nd GEN @ F1.4(開放) sony A7R2(WB:⛅) 背後のボケがグルグルと回転しないのは初期型からの改善点です

2nd GEN @ F1.4(開放) SONY A7R2(WB:⛅) 開放でも中心部の解像感は、なかなかのものです
 

AUTO MIRANDA E 1.4/50(第2世代) x SONY A7R2

続いて第2世代のEタイプです。設計はnon-Eタイプと同じなので描写性能に差はありません。モデルさんは白川うみさんです。いつもありがとうございます。

2nd GEN @ F1.4(開放) SONY A7R2(WB:⛅)コントラスとは良好で、開放からスッキリとヌケのよい描写です










2nd GEN @F1.4(開放) SONY A7R2(WB:⛅)初期型に比べて開放での周辺光量落ちが、だいぶ改善されています
2nd GEN @F1.4(開放) SONY A7R2(WB:⛅)

AUTO MIRANDA EC 1.4/50(第3世代) x SONY A7R2

 
F2.8 SONY A7R2(WB: 日陰,  Cropped to 16:9 ratio) 絞るとキリリと高コントラストだが、絞りを開けると下のように



F1.4(開放) SONY A7R2(WB: 日陰) 夏らしいぼんやりした絵を狙い、開放にて前ボケのフレアを生かしました。絵画風な仕上がりを楽しむことができます





F1.4(開放) SONY A7R2 (WB: 日陰)薄いフレアが覆いボンヤリと写りで、雰囲気があります

F8 SONY A7R2(WB:日陰)もちろん絞ればカッチリとフツーによく写ります

F1.4(開放) SONY A7R2(WB:日光)開放の柔らかい雰囲気が好きです







F8 SONY A7R2(WB:日陰)



















F5.6  SONY A7R2(WB:日陰)


























































 
 
第2世代(Type E)と第3世代(Type EC)の描写性能の比較
 
第2世代(TYPE E)と第3世代(TYPE EC)は光学的に異なる設計ですが、様々なシーンでの比較にも関わらず基本性能(シャープネスや解像力)に差は見られませんでした。どちらのレンズも被写体の背後に回転ボケは起こらず、四隅までボケは安定しています。開放ではどちらのレンズもピント部を微かなフレアが覆い少し柔らかい描写となり、四隅には光量落ちがみられますが、いずれもF1.4クラスのレンズとしては平均的な性能です。発色の再現性に癖はありません。強いて言えば第2世代の方が微かに温調、第3世代の方が軸上色収差が目立ちました。また、第3世代の方が前ボケが大きいようなので、球面収差は第2世代よりも、より過剰補整に設定されているように思えます。


ひとつ前の写真の赤枠部を100%でクロップしたもの。ピントは手すりのあたりです。左が第2世代で右が第3世代。第3世代の方が軸上色収差が目立ちます。また、前ボケが大きいので、球面収差はより過剰補正のようです。


ピントの位置はパンダの左目です。この距離では両レンズの描写の違いが全くわかりません。