おしらせ


2019/12/15

LOMO OKC(OKS) 8-35-1 35mm F2 for KONVAS




LOMOの映画用レンズ part 7
ロモの第二世代1970's、
焦点距離35mmのシネレンズは
像面特性の改善と歪みの補正に力を入れる
LOMO OKC8-35-1 35mm F2
OKC8-35-135mmムービーカメラの最高峰、ロシア版アリフレックスのKONVASシリーズとロシア版ミッチェルのKSKシリーズに搭載する交換レンズとして、LOMO1971年に発売したOKC1-35-1の後継モデルです[1]OKC1-35-1の設計を見直し、中心部の解像度を維持したまま四隅の画質を大幅に向上させることで風景にも対応できるフラットな描写性能を実現しています[2]。このモデルではレンズのイメージサークルが前モデルよりも若干広くなり、光学ブロックの個体をフルサイズ機で用いる場合には暗角(ダークコーナー)の発生は僅かです。撮影フォーマットのアスペクト比を16:9に変えれば暗角は気にならないレベルに収まり、明るい広角レンズとして使う事ができます。この場合、本来は写真に写らない周辺部の領域が写るため、立体感に富んだ描写表現も可能です。
レンズの設計は下図のようなガウスタイプの後玉を2分割した7枚玉で、一段明るいF1.4のレンズに多く採用された構成です。明るさをF2に抑えることでワンランク上の描写性能を実現したのでしょう。本来はF2クラスのレンズに採用されることのない豪華な構成ですから、よく写るのは当然です、
このレンズがいつまで製造されていたのか確かな情報がありません。市場に流通している個体の大半は1970年代の製造ですが、1991年に製造された個体の存在を確認しています。
 
OKC8-35-1 35mm F2の構成図(文献[1]からのトレーススケッチ):左が被写体側で右がカメラの側。構成は5群7枚のLeitz-Xenon型
レンズの収差チャートを見ると輪耐部の球面収差がやや大きい分だけ中心部の解像度は前モデルよりも控えめですが、中心から四隅に向かって解像力の低下が緩やかで、広い画角領域にわたり解像力は逆に高くなっています[2]。像面湾曲と歪み、周辺部の光量落ちについても大幅に改善しています。LENKINAP PO4-1から続いてきたLOMOの焦点距離35mmの系譜は、このモデルの登場で一つの到達点を迎えたと言ってよいと思います。

参考文献・資料
[1]GOIレンズカタログ (1971年)
[2]RedUser.net : ロシアUSSRレンズ サバイバルガイド

レンズの入手先
20181月にウクライナのイーベイセラーからMINT CONDITION(美品)の個体を、それぞれ300ドル(光学ブロック)と275ドル(OCT-18マウント)で購入しました。LOMOOKCシリーズは日本での認知度がまだ低いため、国内でのレンズの流通は多くありません。レンズを入手するにはロシアやウクライナのeBayセラーから手に入れる事になります。eBayでの取引相場は状態の良い個体が300350ドルあたりです。流通しているモデルの大半は羽根の付いたOCT-18マウントのモデルですが、光学ブロックのモデルも僅かに流通しています。レンズの後玉が飛び出しているためガラスにキズの入っている個体が多くあります。状態の良い個体を探すのであれば後玉のコンディションに細心の注意を払う必要があります。
 
KONVAS OCT-18マウントのモデル: 重量(実測)165g, 絞り羽の枚数 10枚, 絞り値 F2(T2.2)-F16, 製造年 1974年, 最短撮影距離 1m
光学ブロック(M30ネジ), 重量(実測)43.8g, 絞り羽の枚数 10枚, 絞り値 F2(T2.3)-F16, 製造年 1980年製
   
SONY Eマウントへの変換方法
OCT-18マウントのレンズに対しては現在のところ使いやすい良いアダプターが存在しません。レラーレス機で用いるにはレンズを改造する必要があります。ここではロシアのRAFCAMERAから発売されているOCT18-M58 x0.75アダプターと46-58mmステップアップリングを使い、レンズをSONY Eマウントに変換する方法の一例をご紹介します。下の写真をご覧ください。RAFCAMERAのアダプターをステップアップリングを用いてM46-M42ヘリコイド(17-31mm)に装着します。ヘリコイドのカメラ側末端部はM42-SONY Eスリムアダプターを用いてソニーEマウントに変換してあります。通常よく用いられるM42-M42ヘリコイドではなく、一回り太いM46-M42ヘリコイドを採用したところが工夫点です。これはフォーカスを無限側に取る際に鏡胴が内部でヘリコイドの入り口に干渉するのを防ぐためです。ピント合わせは外部ヘリコイドの側でおこない、レンズ本体のヘリコイドはマクロ撮影時など必要な時以外には使用しません。
 
OCT-18マウントのレンズにRAFCAMERAのアダプターを装着しヘリコイドに搭載、末端をSONY Eに変換しています。ヘリコイドのレンズ側にあるM46ネジのネジピッチはフィルターネジと同じ0.75mmのようです。使用している部品はすべて市販品です

続いてレンズブロックの状態で手に入れたモデルをSONY Eマウントに変換する例です。このモデルはマウント部がM30ネジ(ネジピッチ0.75mm)になっています[2]GOIのカタログではM31(ネジピッチ0.5mm)と記載されていますので2種類の仕様があるのかもしれません。ネジピッチがフィルターネジと同じ0.75mmでしたのでステップダウンリング37-30mmが装着できます。下の写真のようにステップダウンリングを逆さ付けしオスネジ側にM37-M42変換リングを取り付ければ、レンズブロックをM42ヘリコイド(17-31mm)に搭載できるようになります。ヘリコイドのカメラ側末端部は先ほどと同様にM42SONY Eスリムアダプターを用いてソニーEマウントに変換してあります。

使用している部品は全て市販品で、改造と呼べるほど高度なものではありませんが、ステップダウンリングをレンズヘッドに逆さ付けするところが工夫点です






 
撮影テスト
レンズのイメージサークルはスーパー35シネマフォーマットに準拠しており、デジタルカメラで用いる場合にはAPS-Cセンサーを搭載したミラーレス機を選択するのが最適です。OCT-18マウントのモデルの場合、フルサイズセンサーでは四隅に暗角(ダークコーナー)が出ますが、光学ブロックのモデルの方は暗角が少なく、フルサイズ機でも充分に使用できます。
開放からシャープネスとコントラストは高く、発色も濃厚です。滲みやフレアは全く見られず、スッキリとした透明感のあるヌケの良い描写です。絞るとコントラストは更に高くなり、撮影条件によってはカリカリの描写になります。像面は前モデルのOKC1-35-1に比べ格段に平坦になり、非点収差も小さく四隅までしっかりと写り、歪みもよく補正されています。ボケは安定しておりグルグルボケや放射ボケは見られませんが、ポートレート域で背後のボケがやや硬くなることがあります。欠点の少ないたいへん高性能なレンズです。
ピント部の広い範囲にわたり画質が向上したため立体感は控えめですが、フルサイズ機で画角を拡大させると、再び立体感に富んだ画作りができるようになります。
 

CAMERA:SONY A7R2(FF mode, Aspect Ratio 16:9)
LENS: OKC8-35-1 (光学ブロック)
Location: Taman Ayun Temple, Indonesia
 
F2(開放) sony A7R2(FF mode, Aspect Ratio 16:9,  WB:日光)光量落ちが凄くいい感じです

F2(開放) sony A7R2(FF mode, Aspect Ratio 16:9,  WB:日光)コントラストの良いレンズです

F2(開放) sony A7R2(FF mode, Aspect Ratio 16:9,  WB:日光)
F2(開放) sony A7R2(FF mode, Aspect Ratio 16:9,  WB:日光)

F2.8 sony A7R2(FF mode, Aspect Ratio 16:9,  WB:日光)
F2(開放) sony A7R2(FF mode, Aspect Ratio 16:9,  WB:日光)





 
Fujifilmのカメラに搭載するには、レンズをいったんライカMマウントに改造するのが有効な手です。この場合にはライカM-FXヘリコイド付アダプターに搭載し、ピント合わせはアダプター側の外部ヘリコイドで行います。本体のヘリコイドはスピゴットマウント仕様のため使いにくいからです。マクロ撮影の時など繰り出し量が足らない場合のみレンズ本体のヘリコイドに頼ります。
 
CAMERA:FUJIFILM X-T20
LENS: OKC8-35-1 (OCT-18マウントモデル)

F2(開放)  Fujifilm X-T20(AWB)

F2(開放) Fujifilm X-T20(AWB, ISO1600)

F2(開放) Fujifilm X-T20(AWB, ISO1600)

 F2(開放) Fujifilm X-T20(AWB, ISO1600)


F2(開放) Fujifilm X-T20(AWB, ISO1600)



F2(開放) Fujifilm X-T20(AWB, ISO1600)


 F2(開放) Fujifilm X-T20(AWB, ISO1600)


OLD LENS LIFE 2019-2020にも掲載されているモバイル情報ブロガーの伊藤浩一さんがOKC8-35-1を所持されていますので、お写真を提供していただきました。ありがとうございます。なんとiPhoneまでも母機にしてしまうという変化自在な使い方を実践なさっています。下の写真をクリックするとWEBアルバムにジャンプできます。
  
Photographer: 伊藤浩一(Koichi Ito)
Camera: Sony A7II / iPhone 11 / Lumix GX7 / Nikon J5
  
LOMOの映画用レンズってカッコいいので、撮っててワクワクしますよね。ヘラジカのような大角も素敵ですが、鏡胴の色落ち具合が1本1本異なるのは素晴らしいと思います。次回のOKC11-35-1もお楽しみに!

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