おしらせ

2024/12/29

KOWA Opt. Works, Prominar 100mm F4

興和光器の写真用レンズ  part 7
コーワの中望遠レンズ、人気の秘密に迫れるか!?
KOWA Opt. Works, PROMINAR 100mm F4
興和光器のレンズは海外で人気が高く、広角と中望遠の交換レンズはいずれも10万円を超える値段で取引されています。どうしてそんなに人気が集まるのか、いったいどこにそんな魅力があるのか、ずっと知りたいと思っていました。中望遠レンズには幾つかのモデルがあり、レンズ固定式カメラのKallo T(1959年発売)に搭載されたProminar 85mm F3.5と同100mm F4、レンズ交換のできるレンジファインダー機のKallo 140用に供給されたProminar 85mm F3.5(1959年発売)、ライカスクリューマウントを採用しレンズ単体でごく少量だけ生産されたProminar 100mm F2(1959年発売)、一眼レフカメラ用の交換レンズとして供給されたkowa-R 100mm F3.5などがあります。いずれも希少性が高くコレクターズアイテムとなっています。私はコレクターではないので、これらレンズを大枚はたいて手にする動機が今までありませんでしたが、今回は縁あってKALLO Tのジャンク品を手に入れましたので、カメラから摘出した中望遠レンズを改造して用いることにしました。レンズと真っ直ぐに向き合うことで何が見えてくるのか・・・。はたして、人気の秘密に迫れるのかな?。
 
 
今回、取り上げるのは興和光器製作所が1959年に発売したレンジファインダー機のKALLO T100に固定装着されていたPROMINAR 100mm F4です。設計構成は公開されておらず手に入りませんが、近い構成図を下図に提示しました。3群4枚のテレ・ゾナー2枚接合型で、2群目の分厚いレンズエレメントで屈折力を稼ぎ、曲率を緩め、高画質を実現しています。明るさこそF3.5あたりまでという制約はありますが、コントラストが良く、スッキリとしたヌケのよさ、線の太い力強い描写と安定感のあるボケがこの種の高性能一般的な特徴です。少ない構成枚数ながらも良好な性能が出せ、望遠系の中では合理性の極みにある設計構成です。
 
本レンズの構成図ではありませんが近いものを提示しました。設計構成は3群4枚のテレ・ゾナー2枚接合型です
 
入手の経緯
中望遠の交換レンズはもちろんですが、kallo T自体も中古市場に多く流通しているわけではありませんので、状態の良い製品個体には希少価値からそれなりの値がつきます。チャンスは2024年12月に訪れました。ヤフーオークションにKallo T100が「難あり品」「部品取りなどにどうぞ」との触れ込みで即決価格6800円にて出品されたので、直ぐに反応、無事に入手できました。送られて来たカメラはシャッターの動かない故障品で、レンズにはカビがありましたので分解しクリーニングしました。クモリはないのですが前玉には実写に影響のないレベルの拭き傷が少しありました。
 
KOWA PROMINAR 100mm F4(Kallo T100): フィルター径 49mm, 絞り F4-F22, 絞り羽 5枚構成, 設計構成 3群4枚(テレ・ゾナー2枚接合型), Leicaスクリューマウント(L39)に改造されている
 
マウント改造
理想を言えば本体のヘリコイドを生かしたままM42マウントやライカマウントあたりにしたいところですが、今回のレンズではどちらも不可能でした。SONY Eマウントなどフランジバックの短いミラーレス機マウントなら何ら問題なく改造できます。しかし、使用できるカメラは限られてしまい、売却時に貰い手が見つかりにくくなります。しかたなく打つ手を変え、本体のヘリコイドを捨てたうえで外部ヘリコイドに搭載しなおし、ライカスクリューマウントにすることにしました。本レンズの場合には、これが最も合理的な改造プランです。使用した部品は42mm-52mmステップアップリングとM42-M39ヘリコイド(17-31mm)のみです。まず、光学ユニットとヘリコイド部分を分離します。続いて、光学ユニットの鏡筒部分に42mm-52mmステップアップリングを取り付けネジまたは接着で固定し、最後にヘリコイドにのせて完成です。
 
撮影テスト
構成図からの見立て通り開放から滲みはなく、スッキリとした透明感のある描写でコントラストが高く、線の太い力強い描写が特徴です。ボケは四隅まで安定しており柔らかく滲むように拡散し、グルグルボケや放射ボケはみられません。ピント部の像はシャープですが解像力は平凡。色収差はよく補正されておりフリンジは全く見られません。歪みは糸巻き状ですが、あまり目立つことのないレベルです。わずか4枚構成ですが、よくまとまったレンズです。
 
F4(開放) Nikon Zf (BW mode)

F4(開放)Nikon Zf (BW mode)

F4(開放)Nikon Zf (BW mode)

F4(開放)Nikon Zf (BW mode)

F4(開放)Nikon Zf (BW mode)

F4(開放)Nikon Zf (BW mode)

F4(開放)Nikon Zf (BW mode)

F4(開放)Nikon Zf (BW mode)

F4(開放)Nikon Zf (BW mode)













































































































興和光器製作所というメーカーの魅力はどこにあるのでしょうか。あまり語られることのない話題ですが、自分は光学設計力の高さだと思います。興和の技術力は帝国海軍・豊川海軍工廠の技術者から継承したものです。日本光学にしろ東京光学にしろ、戦後の日本カメラ産業を牽引したメーカーは日本帝国軍の兵器工場との結びつきの中で光学技術を高めてゆきますが、興和もその一つだったという事は忘れられがちです。今回取り上げたレンズはレンズシャッター方式に対応する仕様上の制約のためF4よりも明るくできなかったと思われますが、この制約を満たす中で最も合理性の高いテレゾナー2枚接合型を持ってくるあたりは、さすがとしか言いようがありません。しかも、テレゾナーの長所が十分に引き出された素晴らしい描写性能です。ただし、クイックリターンミラーやフォーカルプレーンシャッターの自社開発がスムーズにできなかった点を踏まえると、機械には明るくなかったメーカーだったのでしょう。まぁそれでも、オールドレンズマニアの視点から言えば、光学系についてどれだけのことが出来たのかがとても重要ですので、そういう意味では日本のマニアの間でコーワ製品が再評価され、今よりもっと人気が出てもよいのではと思っています。

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