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2023/11/24

Konica Hexar AR 28mm F3.5: 中判デジタル機で35mm判広角レンズを使う



中判デジタル機で35mm判広角レンズを使う:

ローエンド製品が超広角レンズに化ける反則技

Konica Hexar AR 28mm F3.5 (Konica AR mount)

最近あまり話題にはならなくなりましたが、写真用語の一つに「35mm判換算」というものがあります。35mm判とは俗に言う「ライカ判(36mmx24mm)」を指す写真フィルムの規格で、デジタル撮影が全盛期を迎えた今では、フルサイズセンサーがこれに相当します。この用語が多く使われるようになったのは、APS-C規格やマイクロフォーサーズ規格のイメージセンサーを搭載したカメラが先行して普及したためです。

よく知られているように、50mm F2の標準レンズに対する35mm判換算での焦点距離はAPS-C規格のカメラで約75mm相当、マイクロフォーサーズ規格のカメラでは約100mm相当と、いずれも少し望遠寄りになります。要は50mm F2のレンズをAPS-C規格のカメラにマウントして使用すると、35mm判カメラ(フルサイズセンサー機)75mm F3(1.5倍を乗じた焦点距離と開放F値)のレンズを用いた場合と同等の写真(同じ画角、同じボケ量の写真)が撮れ、マイクロフォーサーズ規格のカメラにマウントして使用した場合には、35mm判カメラに100mm F4(2倍を乗じた値)のレンズを用いた場合と同等の写真が撮れるという意味です。用いるレンズが35mm判ならば、中心の良像域のみを利用した贅沢な使い方になるなんて言われた時期もありました。しかし、レンズは四隅まで均一な画質を得る目的から中心解像力を抑えるよう設計されているため、この認識は幻想でしかありません。四隅と中心は画質的にトレードオフの関係にあり、概して35mm判レンズの中心画質は、これより小さなフォーマットに最適化されたレンズの中心画質より劣るのが実情です。

さて、ここまでの理屈を中判イメージセンサー(44x33mm)を搭載したFujifilm GFXシリーズに当てはめると一体どうなるでしょうか。50mm F2の標準レンズをGFXにマウントして使用した場合の35mm判換算値は、0.78倍を乗じた39mm F1.56となります。35mm判レンズの場合にはケラれていまう可能性がありますが、運良くケラれずに使う事ができれば理論上はフルサイズ機で39mm F1.56の超ハイスペックレンズを使用した場合と同等の写真が撮れるという見立てになります。注目したいのは、このような使い方をした場合に中判用レンズを用いる場合に比べ、概して中心部の画質はより高く、周辺部の画質はより低くと、大きな「画質の勾配」が生じる点です。このような大きな画質勾配を持つレンズに個性の際立つものが多いのは、オールドレンズユーザの間では周知の事です。では、本題に入りましょう。


広角35mm判レンズを中判デジタル機にマウントする

広角レンズにはイメージサークルのマージンが小さなものが多く、35mm版レンズを中判デジタル機に搭載して流用する場合には写真の四隅が暗くなる、いわゆる「ケラレ」が生じるケースが多くあります。しかし、運良くケラレの出ない製品に出会う事ができれば、ある意味で穴場的な使い方ができます。先に経験的な事柄を抑えておきましょう。

1.焦点距離がより短い製品ほどケラレの発生頻度は高く、中判デジタル機での流用はより困難になる。

2.ケラレの出ない広角レンズに出会える可能性があるギリギリのラインは焦点距離28mm辺り。ただし、発見できる製品は少なく、全体の1/5にも満たない。

ちなみに、焦点距離28mmのレンズをデジタル中判機で使用した場合の35mm判換算値(焦点距離)は22mmです。運良くケラれない製品を見つけることができれば、かなり広大な画角を持つ超広角レンズとなります。焦点距離28mmのレンズに対しては、この焦点距離を好む愛好者が一定数いる一方で、「スナップ撮影にはやや広角過ぎる」「広角レンズとして使うにはパースが不足気味」など中途半端である点を指摘する声が昔から絶えずあり賛否両論でした。こうした評判に呼応しているのか定かでありませんが、28mmの広角レンズには不遇な扱いをうけている非常に安値の製品が現在の中古市場にゴロゴロとあります。一つの事例として今回の記事ではKONICA HEXAR 28mm F3.5を取り上げてみることにしました。このレンズのイメージサークルは広く、GFXのイメージセンサーを完全にカバーすることができますが、中古市場では極めて安値で取引されており、私は美品クラスの個体を国内のネットオークションにて2500円で入手しました。他にもMINOLTA W.Rokkor 28mm F2.8がケラれの出ない製品であるという事前情報を得ています。チープなレンズの代表格であるKOMURA 28mmとPETRI 28mmは残念ながらケラれてしまいました。焦点距離28mmの広角レンズは数多くのメーカーから製品供給されていますので、探せばGFXで使用できるレンズがまだまだ発掘できると思います。

 

重量(カタログ値) 195g, 最短撮影距離 0.3mm, 絞り F3.5-F16+AE, 設計構成 5群5枚, フィルター径 55mm, 絞り羽 6枚構成, 市場供給期間 1975-1978     

KONICA HEXAR AR 28mm F3.5の基本情報

HEXARはコニカのローエンド製品につけられたブランド名称で、上位のブランドにはHEXANONがあります。レンズは1975年に発売され、当時AEに対応した一眼レフカメラのオートフレックスT3(1973年登場)やAcom1(1976年登場)に搭載する広角レンズとして市場供給されました。1978年に後継製品のNEW HEXANON AR 28mm F3.5が登場したことで、発売から僅か3年で生産中止となっています。ただし、後継製品と光学系が同一ですので、ブランド名称が変わっただけで存続していたという見方もできます。設計構成は下図に示すように非常にシンプルな5群5枚構成のレトロフォーカスタイプです。製造コストの面から見ると、これで焦点距離28mmをカバーできたのは凄い合理性だと思います。

今日HEXAR 28mmは上位モデルのHEXANONと同等かそれ以上の値で取引されています。これは主に90年代にコニカのレンジファインダー機でHexarブランドが名声を得たことと、HEXAR 28mmがHEXANONの同等品より希少であるためです[2]。

KONICA HEXAR AR 28mm F3.5 構成図:KONICA公式パンフレット[1]からのトレーススケッチ。設計構成は5群5枚のレトロフォーカス型

参考文献・資料

[1] 公式パンフレット(2ページ折込):Englisch, Deutsch, Französisch, Schwedisch, Italienisch und Spanisch言語

[2] The Konica AR System: http://www.konicafiles.com/

[3] Aperturepedia "Konica Lens database"

 

撮影テスト

まずはカメラの設定でアスペクト比を65:24に変え、35mm判(フルサイズセンサー)に近い対角線画角で撮影してみることにしました。設計規格に近い使い方ですので、当然ながらケラれることはありません。こんな使い方ができるのは中判デジタル機ならではの醍醐味でしょうね。このアスペクト比であれば35mm判レンズのほぼ全てをケラレ無しで使用できます。いつか機会があれば、このクロップモードで超広角レンズのHOLOGON 16mmを使ってみたいと思います。

さて、HEXANONは開放からシャープに写るレンズです。歪みは樽型で少し目立ちますが、十分に実用的な写真画質が得られます。後半からは規格外のフォーマットで使いますので、性能評価についてはこのくらいにしておきましょう。写真作例をどうぞ。

F8, Fujiflm GFX100S(AWB, Aspect Ratio 65:24, FS: CC)


F8, Fujiflm GFX100S(AWB, Aspect Ratio 65:24, FS: CC)
F8, Fujiflm GFX100S(AWB, Aspect Ratio 65:24, FS: CC)

 

続いてクロップ無しのフルフレーム写真です。すぐ見てわかるように全くケラれていませんし、光量落ちも気にならないレベルに収まっています。

GFXシリーズでケラレ無しで使える広角レンズがありましたら、ぜひ紹介してください。その際は、こちらもご覧になってください。

F8,Fujifilm GFX100S(WB:auto, FS: CC) 
F8, Fujifilm GFX100S(WB:auto, FS: CC) 
F5.6, Fujifilm  GFX100S(WB:auto, FS: CC) 











F8, Fujifilm GFX100S(WB:auto, FS: CC) ちなみに開放F3.5での同じ場面ですとこんな感じになります。本来は写らない部分に滲みが出ていますが、本来の画角でカバーされる部分は滲みのない像で、開放でも十分にシャープですね。絞れば全画面でシャープ




F8 Fujifilm GFX100S(WB auto, FS CC)








2021/02/04

試写記録:KONICA HEXANON 30mm F1.9 and Helios-89 30mm F1.9

 
FED Micron 1とHelios-89 30mm F1.9
  




試写記録
Konica Hexanon 30mm F1.9(Konica Eye)
FED Helios-89 30mm F1.9 (FED Micron 1)
シャッターの壊れた2台のハーフサイズカメラ、Konica Eye(1964年発売)とFED Micron 1(1968年発売)を手に入れました。Micron 1はロシア製ですがKonica Eyeのコピーと言われており、外観も内部構造もそっくりです。どうして、ここまで似せる必要があったのか理解に苦しむところですが、たぶん設計図を作る手間を省略したかったのでしょう。Konica EYEを解体し部品1点1点を精巧にコピーすることで、設計図に頼ることなく製造ラインを確立してしまったのでしょう。
両カメラに搭載されている30mm F1.9のレンズはハーフサイズカメラ用として設計されました。Konica HEXANONは5群6枚の拡張ダブルガウス型[1]ですが、HELIOS-89は4群6枚のオーソドックスなガウス型[2]で構成がやや異なります。両レンズとも画質的にはAPS-Cセンサーのデジタルカメラで使用するのが最も相性の良い組み合わせです。ただし、イメージサークルには余裕があり、フルサイズセンサーで用いた場合でもケラレなく撮影できます。
詳しい解説はいずれ書くこととし、今回は試写記録のみを残します。後半のHelios-89の写真はオールドレンズ女子部にも所属していらっしゃるMiyu Yoneさんからご提供していただきました。
 
HEXANON 30mm F1.9の構成図(KONICA EYE マニュアルより引用)






[1] コニカミノルタ製品のアフターサービス(Kenko Tokina):Konicaの歩み 1964
[2] Heliosの名称はロシア製レンズの4群6枚ガウス型につきます。これが5群6枚の拡張ガウス型ですとVOLNAの名称となります。一部に構成の亜種に対する例外もありますが、ロシア製レンズの構成と名称の対応は厳密です。
 
カメラからレンズ本体を取り出したところ。これをM42-M39 ヘリコイド12-19mmの懐に沈胴させライカLマウントに改造することにしました
 
 
Konica HEXANON 30mm F1.9
Photographer: spiral
 
 
Hexanon 1.9/30 + Sony A7R2(WB:日光)

Hexanon 1.9/30 + Sony A7R2(WB:日光)

Hexanon 1.9/30 + Sony A7R2(WB:Auto) 中央は解像感、解像力ともに優れています。トーンはなだらかで、ダイナミックに変化しています


Hexanon 1.9/30 + Sony A7R2(WB:Auto) 背後のボケにはかなり特徴があり中央はボケが深く周辺部は浅くなり、中間域で僅かにグルグル気味にもなる複雑なボケ方で、像が動いているように流れます。像面が大きく曲がっているみたいです。ピント部中央の解像感は凄いです

Hexanon 1.9/30 + sony A7R2(WB:日陰)もとはハーフサイズカメラ用ですので、四隅は画質的にかなり妖しくなります

Hexanon 1.9/30 + sony A7R2(WB:日陰)立体感が強調される感じに写ります



Hexanon 1.9/30 + sony A7R2(WB:日陰)
Hexanon 1.9/30 + sony A7R2(WB:日光)背後のボケはちょっとグルっとなることもあります




FED HELIOS-89 30mm F1.9
+ sony A7II
Photographer: Miyu Yone
 
Helios-89 + Sony A7II(WB: Auto) 逆光ではゴーストやハレーションが発生します
Helios-89 + Sony A7II(WB: Auto)
Helios-89 + Sony A7II(WB: Auto)
Helios-89 + Sony A7II(WB: Auto)

Helios-89 + Sony A7II(WB: Auto)
Helios-89 + Sony A7II(WB: Auto)

Helios-89 + Sony A7II(WB: Auto)

Helios-89 + Sony A7II(WB: Auto)

 
Helios-89は逆光時にゴーストが出やすく、太陽や電球などの点光源を入れると虹のサークルゴーストが簡単に発生します。コントラストはHexanonの方が高く、色も鮮やかに写ります。

FED HELIOS-89 30mm F1.9
+ sony A7RII
Photographer: SPIRAL

FED Helios-89 + sony A7R2

 
FED Helios-89 + sony A7R2: 逆光では物凄いサークルゴーストが出ます

FED Helios-89 + sony A7R2: 中央を拡大したのが下の写真です

上の写真の中央を拡大したクロップ画像。中心はしっかりきています

FED Helios-89 + sony A7R2


2020/12/31

KONICA HEXANON AR 50mm F1.7 and MINOLTA MC ROKKOR-PF 55mm F1.7

 

揺るぎない設計理念を感じる

光学メーカーの2本

Konica HEXANON AR 50mm F1.7 vs Minolta ROKKOR-PF 55mm F1.7

F1.7レンズの特集は第1回戦の最終組となりました。今回もコニカとミノルタの対決です。この2社のレンズは前回のF1.4の記事でも取り上げ比較しましたが、改めて考えさせられたのは、光学メーカーには描写の味付けと言いますかレンズの描写設計に、一貫した揺るぎない理念があるという事です。コニカの設計は解像力を重視した過剰補正で、フレア(滲み)を許容しながらも線の細い繊細な画作りを持ち味としています。レンズが登場したのは1971年で、コニカの一眼レフカメラNew FTA に搭載する交換レンズとして発売されました。この時代のレンズは大方どのメーカーも、解像力重視から抜け出しコントラストにも配慮したバランス志向の描写設計に軸足を移しています。時代の潮流に流されることなく、個性をはっきりと打ち出した製品を堂々とリリースできたコニカというメーカーには、きっと強い自社哲学があったのでしょう。レンズを設計したのは、有名なKonica 40mm F1.8を設計した下倉敏子氏と言われています。オールドレンズ女子達に受け入れられやすい柔らかい開放描写のレンズです。対するミノルタはコントラストにも配慮した画質設計で、Konicaほど過剰な補正はかけず、スッキリとしたヌケの良さと力強い発色を持ち味としています。Hexanonほどの緻密な画作りはできませんが、線の太いキリッとした画作りが特徴です。Minoltaは何と言っても世界で初めてマルチコーティングを実用化した光学メーカーですので、その強みを最大限に生かした描写設計に至ったのでしょう。レンズは同社の一眼レフカメラSR-Tに搭載する交換レンズとして1966年に発売されました。これはHEXANONより5年も古い発売ですが、いかにもミノルタらしい前衛的で革新性に富む描写設計です。両レンズともレンズ構成は下図に示す5群6枚で、前群の貼り合わせを外し球面収差の補正力を向上させた拡張ガウスタイプの典型です。設計自由度が高く、メーカー独自の味付けができる構成と言えます。アプローチの異なる2本なので、描写に対する評価は難しそうですが、どうにか頑張りたいと思います。






入手の経緯
HEXANON AR:ネットオークションでは状態の良い品を4000~5000円程度と手ごろな値段で入手することができます。流通量が豊富なのでコンディションの良い個体のみに照準を絞り、その中から買いやすい値段のものを選ぶのがよいとおもいます。アダプターはKONICA ARマウントから各種ミラーレス機に接続するための市販品が入手できます。オススメはAR-LMアダプターでいったんライカMマウントに変換することです。ライカMマウントから各種ミラーレス機用のアダプターにジョイントしミラーレス機にマウントします。
ROKKOR-PF: ネットオークションではコンディションの良い個体が5000~8000円程度から入手できます。このレンズも流通量は豊富ですが、中古市場には状態の悪い個体が安値でゴロゴロと犇めいていますので、そいつらを掻き分けコンディションの良い個体を狙い打ちすることをおすすめします。安易に安値で探しても無駄なので、適正価格帯の中で良いものを探すことが肝心です。アダプターはminolta MDマウントから各種ミラーレス機に接続するための市販品を選びます。いったんライカMマウントを経由する事もできますが、この場合、中国製の安価なアダプターには無限の出ないものが多いと噂なので、安全のためK&Fブランドなどを選ぶとよいでしょう。

撮影テスト
HEXANON AR 1.7/50: 開放で引き画を撮る際はフレア(滲み)を伴う柔らかい描写傾向になります。少しボンヤリする時もありますが、これがオールドレンズならではの何とも言えない雰囲気を醸し出してくれます。一方でポートレート域で人物を撮る際には不思議とボンヤリ感が収まり、適度な柔らかさと緻密さが被写体を美しく描き出してくれます。バストアップくらいの撮影距離になると、ヌケの良い描写となります。たぶん、収差変動が起こり過剰補正が緩むのでしょう。計算高いしたたかなレンズですね。コントラストはミノルタに比べると低めで、発色も少し淡くなる傾向がありますが、解像力は高く緻密な画作りができます。繊細な味付けと軟調なトーンで勝負する味わいのあるレンズだとおもいます。ボケは安定しており、グルグルボケや放射ボケが気になる事はありませんでしたが、開放で像面湾曲と光量落ちが感じられる場面がありました。

Konica HEXANON AR 50mm F1.7
+
SONY A7R2

HEXANON @F1.7(開放)+sony A7R2(WB:日光) 柔らかく緻密・・・いいレンズです。中央の一部を拡大したのが次の写真

上の写真の中央部を拡大したもの。オールドレンズならではの柔らかい描写です

HEXANON @F1.7(開放) +SONY A7R2(WB:日陰) 階調もまんべんなく良く出ています。引き画で少しボンヤリとする開放描写が、何とも言えない雰囲気を出します。でも中央は緻密ですね
HEXANON @F1.7(開放)+sony A7R2(WB:電灯)
HEXANON @F8 + SONY A7R2(WB:日陰)


ROKKOR-PF 1.7/55: ミノルタは革新性を売りにしていたメーカーで、レンズの描写設計にも10年先を行く味付けを感じます。解像力は控えめですがコントラストを重視した時代の潮流の先頭を走っています。開放からフレアは出ず、スッキリとした写りと発色の鮮やかさのある力強い描写傾向のレンズで、絞ればカリッと写ります。半逆光で帯状のゴーストが出やすい点はROKKOR-PF 1.4/58に似ていますが、はっきりとした虹になるのはF1.4のモデルの方ですボケは安定しており、背後の像が乱れることはありませんでした。HEXANONよりも、より現代的な味付けに近いレンズと言えます。
 
Minolta ROKKOR-PF 55mm F1.7
+
SONY A7R2
 
ROKKOR-PF @F1.7(開放)+sony A7R2(WB:日陰) 開放からコントラストは良好で滲みもありませんが、解像力は控えめです。フィルム写真で使うには充分な解像力でしたが、デジタル高画素機ですと、HEXANONに比べ細部の質感表現で差がでます

ROKKOR @F1.7(開放) + Sony A7R2(WB:日陰) 薄いのですが、よく見ると虹のゴーストが出ていました。

ROKKOR @F1.7(開放)+ sony A7R2

ROKKOR @F1.7(開放)+ sony A7R2

ROKKOR @F1.7(開放)+ sony A7R2(セピア)
ROKKOR @F1.7(開放)+ sony A7R2(セピア)
ROKKOR @F1.7(開放)+ sony A7R2(セピア)
ROKKOR @F1.7(開放)+ sony A7R2(セピア)


HEXANON AR  vs ROKKOR-PF

さて、ジャッジの時間です。両レンズは描写設計が異なるため、解像感(シャープネス)へのアプローチも全く異なります。判断は微妙になる事は間違いありません。

まず引き絵で比較した下の写真を見てみましょう。明らかにROKKORの方が解像感に富むシャープな描写であることがわかります。SNSでアンケートをとってみても、ROKKORの方がシャープだとする回答の方が圧倒的に大多数でした。HEXANONの方はフレアが発生しておりボンヤリとしていて、発色も少し淡い感じがします。周辺画質がやや甘く(おそらく像面湾曲)、光量落ちもみられます。引き絵ではROKKORの圧勝です。

HEXANON @ F1.7(開放), sony A7R2(WB:日陰, Aspect Ratio 16:9)
ROKKOR @ F1.7(開放), sony A7R2(WB:日陰, Aspect Ratio 16:9)   Win!

 


中央部(ピント部)を拡大した写真も見ておきましょう。下の写真です。HEXANONの方がフレアが多くモヤモヤしていますが、細かなディテールをよりよく拾っており、解像力を重視したクラシックな画づくりが特徴です。対するROKKORはスッキリとしていてコントラストがより高く、メリハリのがありますが、ディテールを省略したややベタッとした画作りです。解像力ではHEXANON、ヌケの良さとメリハリの良さではROKKORに軍配があがります。

 
続いてポートレート域での比較です。下の2枚の写真を見てください。不思議なことに、被写体にこの位の距離まで近づくとHEXANONの写真に滲みは見られず、引き画の時とは異なるスッキリとした描写になります。コントラストはやはりROKKORの方が上で発色もより鮮やかなど、どんな人がとっても理解を得やすい写真になります。ただし、HEXANONの方が解像力に富む緻密な画作りができ、適度な柔らかさと相まって、より優れた質感表現ができるように思えます。ポートレートの人物撮影で最も要視されるのは質感表現だと聞いたことがありますので、ここはHEXANONの勝利としました。

HEXANON @F1.7 + sony A7R2(WB:日陰)このままROKKORが逃げ切るかと思っていましたが、順光でポートレート撮影の場合、描写が一変し、滲みが完全に消えています。コントラストはややROKKORに及びませんが、十分な解像感が得られています Win
ROKKOR @F1.7(開放) sony A7R2(WB:日陰)ROKKORはこの通りにコントラストがより高く、スッキリとしたヌケの良さがありキリッと写ります。顔の発色もいい。端的に言えば線の太い描写と言われるものが当てはまります
 
引き画ではROKKOR、ポートレート域ではHEXANONに軍配を上げましたので、最終評価はもつれています。HEXANONにもう少しコントラストがあれば、前のRE TOPCORの記事のような判断で勝利させることができましたし、ROKKORにもう少し解像力があれば、前のZENIAR-Mの記事のように勝利させることができましたが、解像感(シャープネス)に対するアプローチの違いで今回の対決は両者互いに一歩も譲らない結果となりました。完全な引き分けです。ただし、トーナメント戦ですので勝者をどちらか一方に決めなければなりません。現代のレンズの描写理念により近い方を高性能レンズとするのが正論ですので、ROKKORを勝者にしたいと思います。オールドレンズらしい味のあるレンズとしてはHEXANONを推薦しますが、ここはトーナメントのルールを順守しなければなりません。
さて、これで第1回戦A-F組の対戦が全て終了しました。第2回戦は2021年度に実施します。より頻差の微妙なジャッジが要求されるものと思いますが、楽しみにしていてください。それでは、来年もどうぞよろしくお願いいたします。