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2021/08/25

LOMO/GOMZ G-21 Ж-21, 28mm F2 Konvas OCT-18 mount

 

LOMOの映画用レンズ part 12

ガウスタイプに帰着した
ロシア製シネレンズ 28mm

LOMO/GOMZ Ж-21 (G-21) 28mm F2 (KONVAS OCT-18 mount)

LOMOのシネレンズには映画用に供給されたOKCシリーズと、映画用、産業用、軍需用に供給されたЖシリーズ(Gシリーズ)の2系統があります。両シリーズには鏡胴のつくりや画質基準に差があり、Gシリーズは中心解像力がOKCシリーズより高い値に設定されるなど、上位の製品に位置付けられていました。OKCシリーズの製造を担当したのは旧LNKINAP工場、Gシリーズは旧GOMZ(国営光学工場)で、両工場は統合されLOMOの一部となっています。ロシア製レンズの情報を統合的に扱ったGOIレンズカタログには映画用レンズやスチル用レンズ、プロジェクションレンズなどのテクニカルデータが網羅されていますが、Gシリーズについては一部のレンズに関する情報が収録されているのみで、入手できる情報は限られています。エビデンスのある情報をお持ちの方は、お知らせいただければ幸いです。
今回取り上げるのはロシア版アリフレックスの異名を持つ映画用カメラのKONVASに搭載する交換レンズとして、1980年代に供給されたЖ-21(G-21) 28mm F2です。レンズの設計は4群6枚のガウスタイプ(下図)で、それまでの焦点距離28mmのレンズとは比べものにならないほど軽量かつコンパクトに作られています。本体にヘリコイドを内蔵しているにも関わらず、重量はたったの75gしかありません。当時の焦点距離28mmのロシア製シネレンズと言えば設計はレトロフォーカスタイプが主流でOKC4-28-1やOKC7-28-1など大型で重量級のモデルばかりでしたので、G-21の登場はガウスタイプの設計に再び回帰することで、携帯性の向上、製造コストの圧縮を狙ったのでしょう。実はこのクラスのロシア製シネレンズには古くはPO13-1 28mm F2(1940年代に登場)とPO61 28mm F2.5(1950年代に登場)があり、もともとはガウスタイプの設計が主流で、コンパクトで軽量なレンズでした。
解像力(GOI基準)については中心が58 line/mm、エッジが35 line/mmと良好で、OKCシリーズの同等スペックの製品と比較しても全く遜色ありません。
 
Ж-21(G-21)の構成図: 左が前方で右がカメラの側。LOMOのテクニカルシートからのトレーススケッチ。設計構成は4群6枚のオーソドックスなガウスタイプ
   
入手の経緯 
2017年10月にebayを介してロシアのカメラ屋から落札購入しました。はじめ199ドル+送料15ドルの即決価格を提示していましたが、値切り交渉を受け付けていたので158ドルを提案したところ、私のものとなりました。オークションの記載は「レンズはエクセレントコンディション(写真を見てくれ)で、フォーカスリングと絞りリングはスムーズに動く。レンズに傷、クリーニングマーク、カビ、ホコリなどはない」とのこと。数は多くないもののeBayでの流通は安定しており、じっくり探せば150ドルあたりでも買えると思います。
 
LOMO/GOMZ Ж-21(G-21) :  KONVAS OCT-18マウント , 絞り羽根 6枚構成、絞り F2-F16、設計構成 4群6枚ガウスタイプ, 重量(カタログ値) 75g, 解像力 中心 58 line / mm, エッジ 35 line /mm。鏡胴にはレンズ名が記されていません














  
 
撮影テスト
光に敏感に反応するレンズのようで、開放で逆光撮影を行うとハレーション(ベーリンググレア)が多めに発生し、写真全体がモヤモヤとした光のベールに覆われるとともに、軟調気味の描写傾向となります。こういう効果を利用した作品作りを実践している人にG-21は最適なレンズなのだと思います。場の雰囲気を情緒的にとらえる事ができるのですが、日光の下では発色が濁る時がありますので使い方を選びます。中心部は開放から緻密に描写しフレアのないスッキリとした写りです。一方で四隅は開放で若干の滲みが入ります。F2.4まで絞ればフレア、ハレーションは共に消え、コントラストが向上するとともに発色は鮮やかになり、現代レンズのようなシャープな描写となります。イメージサークルはフルサーズセンサーをカバーすることができず、トンネルのように大きくケラレてしまいますが、APS-Cセンサーならば充分にカバーすることができ、光量落ちも全くありません。ポートレート域では背後に若干のグルグルボケが出ます。
 
F2(開放) Fujifilm X-T20(ISO1600): 光に敏感で光源が入るとボンヤリと写り、このレンズならではの軟調描写が得られます

F4 Fujifilm X-T20  絞ると急にパッキリとシャープに写る




F2.8, sony A7R2 (APS-C mode, WB:日光)

F2.8, sony A7R2 (APS-C mode, WB:日光)

2019/05/02

LOMO(GOMZ) Ж-48 G-48 100mm F2










サンクトペテルブルクからやってきた
ロモの映画用レンズ PART 3
旧ソ連の怪物。
こんなレンズを1960年に造ってしまうロシアの本当の底力を我々は正しく理解していない
LOMO(GOMZ)  Ж-48 G-48 100mm F2
LOMOのシネレンズには映画用に供給されたOKCシリーズと、映画用、産業用、軍需用に供給されたЖシリーズ(Gシリーズ)の2系統があります。両シリーズには鏡胴のつくりや画質基準に差があり、Gシリーズは中心解像力が一律100線/mm(GOI基準)に規格化されているなど、明らかにOKC/POシリーズの上位の製品として位置付けられていました。定評のあるPO3-3M 50mmF2の中心解像力が45線/mmであることを考えると、2倍のレンズ口径を持つ本レンズが2倍を超える解像力を叩き出しているのは尋常なことではありません。OKCシリーズの製造を担当したのは旧LNKINAP工場、Gシリーズは旧GOMZ(国営光学工場)です。ロシア製レンズの情報を扱った総合的な資料であるGOIのレンズカタログには映画用レンズやスチル用レンズ、プロジェクションレンズなどのテクニカルデータが網羅されていますが、Gシリーズについては一部のレンズに関する情報が収録されているのみで、入手できる情報は限られています。以下に私が独自に集めた製品ラインナップを列記しておきますので、これら以外の製品をご存知でしたらお知らせいただけると助かります。Gシリーズが日本で認知される足掛かりになれば幸いです。

G-5 75mm F2(Cinema lens) 
G-21 28mm F2(Cinema lens)
G-22 35mm F2(Cinema lens)
G-24 75mm F2(Cinema lens)
G-25 100mm F2(Cinema lens)
G-26 180mm F2.5(Projection lens)
G-32 90mm F2(Projection lens)
G-34 110mm F2(Projection lens)
G-48 100mm F2(Cinema lens)
G-49 22mm F2.8(Enlarging or Cinema)
G-53 75mm F2(Projection lens)
G-54 85mm F2(Projection lens)
G-55 95mm F2(Projection lens)
 
今回とり上げるのは1965年に合併しLOMOの一部となるGOMZ1960-1962年に生産した焦点距離100mmの大口径望遠レンズЖ-48(G-48です。確かなソースからの情報ではありませんが、製造本数は2500本に満たない数だったそうです。このレンズを手にすれば重量感と鏡胴のつくりの良さに誰もが驚くことでしょう。ネットにはエアクラフト用シネレンズとの未確認情報もありますが、確実な情報や具体性のある情報は何一つ見当たりません。確かに雲中で氷塊が当たろうが流れ弾が来ようが弾き返しそうな高耐久なつくりですし、流通量の少なさやマウント部の特殊なネジ径から考えても、本品は市販品ではなかったように思えます。映画用として認知されているシネレンズのPO2 / PO3/ PO4もかつてはエアクラフト用(空撮シネカメラのAKS-4に搭載)として供給されていた実績がありますので、あり得ない話ではありません。レンズは4群6枚のガウスタイプで、中玉にマゼンダコーティング、前玉と後玉にアンバーコーティングが蒸着されています。定格イメージフォーマットは他のЖレンズと同様であるとして、恐らくAPS-C相等の35mmシネマフォーマットですので、APS-C機で用いるのが画質的に最も相性の良い組み合わせです。ただし、包括イメージサークルはこれよりも遥かに広く、フルサイズフォーマットを余裕でカバーしています。これによく似たレンズとしてЖ-25(G-25) 100mm F2というシネマ用レンズがあり、1950年代半ばから1960年まで生産されていました。前後関係から考えると、おそらくЖ-48はЖ-25の後継モデルではないかと予想することができます。レンズに関する情報や手掛かりをお持ちの方がおりましたら、ご教示いただけると幸いです。


入手の経緯
eBayには若干数の流通があり、800ドル~900ドル程度で取引されています。私自身は20183月にeBayでロシアのレンズセラーから770ドル+送料30ドルで購入しました。商品の説明は「美品。ガラスはクリーンで絞り羽は正常に動作する。ソビエト連邦による1962年製でエアクラフト用。コーティングがある。イメージサークルはフルサイズセンサーのみならず6x6中判フォーマットもカバーできる。フロ ントキャップ付き」とのこと。僅かに拭き傷があるのみで十分なコンディションのレンズでした。本品はレンズヘッドのみの製品なので、デジタルカメラで使用するには改造してヘリコイドに搭載しなければなりません。レンズヘッド自体にかなりの重量があるため、今回は高耐久なM52-M42ヘリコイド(35-90mm)に搭載してM42レンズとして使用できるようにしました。

GOMZ(LOMO) Ж-48 G-48 100mm F2: 重量(実測) 650g(レンズヘッドのみ),  絞り羽 18枚,  絞り F2-F16, 設計構成は4群6枚ガウスタイプ, S/N: N62XXXX (1962年製造), 35mmシネマフォーマット(APS-C相等)準拠, 中心解像力は100 LINE/mm(GOI規格)で、PO3の中心解像力45LINE/mmの倍以上をたたき出している


  
撮影テスト
現代のレンズと比較しても性能的に何ら遜色はありません。1950年代にここまで高性能なレンズを作り出せたロシア(旧ソビエト連邦)が、宇宙開発や軍事技術のみならず、光学技術においても世界のトップランナーであったことは紛れもない事実です。
解像力はとても高くピント部の像はたいへん緻密で、シャープネスやコントラストは開放から高いレベルに達しています。滲みやフレアは全く見られずスッキリとヌケのよい描写で発色も良好、ボケにクセはありません。時代的にはシングルコーティングでしょうが、コッテリとしたマゼンダ系とアンバー系のコーティングは、いかにも良く写りそうな強いオーラを醸し出しています。1950年代でもコストを省みることがなければ、ロシアではここまで高性能なレンズが作れたのです。

F2(開放) sony A7R2(WB:日光)うーん。まいりました。現代レンズとしか思えない恐ろしい描写力です


F2(開放) sony A7R2(WB:日光)
F2(開放) sony A7R2(WB:日陰)
F2(開放) sony A7R2(WB:日陰)TORUNOのオープニングセレモニーのモデル撮影会で使いました
F2(開放) sony A7R2(WB:電球1)






F2(開放) sony A7R2(クリエイティブスタイル:セピア)

F2(開放) sony A7R2 (クリエイティブスタイル:セピア)
F2(開放) sony A7R2 (クリエイティブスタイル:セピア)








2018/10/30

LOMO cinema movie lenses part0 (prologue) ロモの映画用レンズ



サンクトペテルブルクからやってきた
ロモの映画用レンズ PART 0(Prologue)
LOMO(ロモ:レニングラード光学器械合同)は文学とバレエの都、そして白夜でも有名なロシア・レニングラード州の古都サンクトペテルブルクに拠点を置く光学機器メーカーです。日本ではロモグラフィーの名でも知られ、トイカメラの供給源としてクリエイティブな創作活動とコラボしているイメージが定着していますが、実態は製造業の90%が軍需光学機器と宇宙開発、産業用・医療用光学機器に向けられ30000人の技術労働者を抱え持つ強大コンビナートでした。カメラや映画用機材の生産は企業活動のほんの一部にすぎません。
創業は旧ソビエト連邦時代の1965年で、戦前から映画用機材や光学兵器を生産していたGOMZ(国営光学機械工場)を中心にLENKINAP(Leningrad Kino Apparatus:レニングラードシネマ器機)など複数の工場の合併と再編により誕生しました。LOMOのシネレンズには映画産業に供給されている業務用のOKCシリーズと、主に産業用や軍需品として供給されているЖシリーズ(Gシリーズ)の2系統があり、鏡胴のつくりや画質基準に差があります。
今回からはロモが旧ソビエト連邦時代に生産した映画用レンズを特集してゆく予定です。取り上げるレンズはOKC1-16-1 16mm F3,  OKC1-18-1 18mm F2.8,  Hydrorussar-8 3.5/21.6,  Ж-21 28mm F2,  OKC4-28-1 28mm F2,  OKC1-35-1 35mm F2,  OKC8-35-1 35mm F2,  OKC11-35-1  35mm F2,  OKC1-50-1 50mm F2,  OKC1-50-3 50mm F2m  OKC1-50-6 50mm F2, OKC1-75-1 75mm F2,  OKC6-75-1 75mm F2,  Ж-48 100mm F2です。レンズ銘が住所の番地みたいでややこしいのですが、OKCのうしろに続くX-YY-ZのうちXがレンズのモデル番号で、設計や仕様が異なるごとに異なる番号が付与されています。YYが焦点距離をあらわし、Zはモデルのバージョンを表しています。Sony α7IIIにたとえるなら、7がXでIIIがZとなり、EOS 5Dマーク3では5DがXでマーク3がZというわけです。採算性を度外視した共産圏の製品らしい怪物レンズも陸海空から何本か登場します。度肝を抜かれてください。


OKC1-16-1  16mm F3  陸(ランドスケープ用の広角シネレンズ)





Hydro-Russar 21.6mm 海  (潜水艦搭載用の広角シネレンズ)

Ж-48 100mm F2 空 (偵察機設置用の望遠シネレンズ)