おしらせ

2026/06/07

Promar Anastigmat Nippon 105mm F3.5


 

旭光学初期の中判用レンズ

Promar Anastigmat Nippon 105mm F3.5

旭日光学工業合資会社(現リコーイメージング)は、1919年に創業した歴史ある光学機器メーカーです。もともとは眼鏡レンズの製造が中心でしたが、1938年に「旭光学工業株式会社」へと改称し、カメラや写真用レンズの生産に本格参入。戦後は一眼レフ「ペンタックスSP」の大ヒットにより、世界的なメーカーへと成長を遂げました。

今回ご紹介するのは、同社のカメラ事業がまだ黎明期だった1930年代の写真用レンズで、旧・千代田光学(ミノルタ)のフォールディングカメラ「Minolta Auto Press(1937年発売)」へ供給された「Promar Anastigmat」です[1,2]。本レンズはテッサータイプ(3群4枚)の光学系を採用し、6×9判のイメージフォーマットをカバーしていました。また、ミノルタの二眼レフ「Minoltaflex」に供給された姉妹レンズ「Promar 75mm F3.5(6×6判用)」も存在します。こちらも旭日光学製であり、海外のミノルタコレクターのレビューでは「当時としては非常に端正な描写を特徴とし、初期のミノルタ中判システムを語る上で欠かせない存在」と高く評価されています。のちのペンタックス(タクマー系)レンズのルーツを探る上でも極めて重要なシリーズであり、珍しいレンズということもあり、一時期コレクターの間で話題となりました。

残念ながら当時の構成図は見当たりませんが、現物を確認したところ、後群の反射からテッサー型であることは間違いなさそうです。

 

[1] クラシックカメラ専科「ミノルタカメラのすべて」

[2] Camera-wiki, "Actiplan": https://camera-wiki.org/wiki/Actiplan#cite_note-2

 
Promar Anastigmat Nippon 105mm F3.5: 絞り羽 10枚構成, 絞り F3.5-F25, 設計構成 3群4枚テッサー型 



 
入手の経緯
レンズはカメラとセットで流通しているケースが大半です。カメラ自体は現存するものが少なく、中古市場では全く見かけない製品となっています。このため決まった相場はなくカメラとセットでは、やはりそれなりの価格が付くように思われます。今回の個体はヤフオクにてレンズ単体で出品されているものを6500円で手に入れました。出品時の記載ではレンズ内に薄いクモリがあるとのことでしたが、少し拭いてみたところ綺麗になりましたのでブログで取り上げることに。 
 
 
撮影テスト
ノンコートレンズのため逆光ではゴーストが出やすく、条件が悪いとコントラストが急に落ちます。ゴーストを抑えたければフードは必須です。古いテッサータイプのレンズによくある古めかしい淡い発色が特徴で、軟らかいトーンを楽しむことができるレンズです。3枚玉のトリプレットほど高解像ではありませんが、解像感は十分にあり、開放から滲みはなく、端正な描写です。深く絞ればコントラストは良くなり、発色もこの時代のレンズにしては良好です。ボケは距離に依らず安定しており、四隅まで破綻はありません。ボケ味も滑らかです。
全体的に安定感のある、とても優秀なレンズだと思います。
 
F3.5(開放), Kodak Gold 200( 6x6 format)
F3.5(開放), Kodak Gold 200( 6x6 format)
F3.5(開放), Kodak Gold 200( 6x6 format)
続いて、デジタルカメラGFX100Sでの撮影結果です。GFXで撮影するとイメージフォーマットの中央部のみを使用した写真となりますため、写真の解像度という意味では損をしています。写真作例は参考程度にしてください。フィルムシミュレーションはクラシッククロームに設定し、レンズ本来の軟調描写を更に際立たせた写真に仕立てています。
 
F4.5  Fujifilm GFX100S(WB:auto, FS: CC)



F 3.5(開放) Fujifilm GFX100S(WB:auto, FS: CC)



2026/05/19

KOMURA lens MFG.LTD KOMURANON 35mm F2.5 and 24mm F2.5

Brief Report

やはり毛色の違うコムラノン28mm・・・。兄24mmと弟35mmはフツーに高描写

KOMURA lens MFG.LTD KOMURANON 35mm F2.5 and  KOMURANON 24mm F2.5

KOMURANON(コムラノン)は三協光機が1970年代から会社倒産の1980年まで販売した35mm一眼レフカメラ用の交換レンズ群です。広角レンズや望遠レンズ、ズームレンズなどがあり、他社との差別化を意識し、口径比F2.5を積極採用したことが特徴です。前回の記事では同シリーズの中でも描写に特徴があると前評判の高い、コムラノン28mm F2.5を取り上げ紹介しました。期待どうり、このレンズはフレアが多く、ボケも暴れ気味になるなど面白かったので、今回は焦点距離の近い35mm F2.5と24mm F2.5を入手し、軽く取り上げてみることにしました。先に結論から述べると、両レンズとも28mm F2.8ほど収差は多くありません。開放からスッキリとシャープに写る、よくまとまった"ふつう"のレンズです。35mm F2.5がこうであるのはわかります。しかし、設計難度の高そうな24mm F2.5が28mm F2.5よりも高性能というのは、どうにも解せません。両モデルはいずれも 28mm F2.5 より明らかにコンパクトで、光学系の枚数が少ない分だけ 重量も大幅に抑えられています。こうして比較してみると、28mm F2.5 がシリーズの中でも 際立って特異な存在であることが、あらためて浮き彫りになります。

レンズの中古相場 

三協光機のレンズは、同社の創業初期に製造された希少モデルや、一部の大口径レンズ・高性能レンズを除けば、現在の中古市場では総じて非常に手頃な価格帯で流通しています。今回取り上げるコムラノンの2本もその例に漏れず、国内中古店では状態の良い個体でも 1万円以内、ネットオークションでは 5千円前後から入手できます。市場に出回る個体の多くには、三協光機独自のコムラ・マウントシステムを各社一眼レフ用マウントに接続するためのアダプターが付属しています。対応マウントは Nikon FCanon FDOlympus OMM42Minolta SRMDPentax K など多岐にわたり、非常に柔軟なシステムを構築していました。


KOMURANON 35mm F2.5: フィルター径 58mm, 絞り値 F2.5-F22, 最短撮影距離 0.5m, 絞り羽 6枚構成, 重量(実測) 272g
KOMURANON 24mm F2.5: フィルター径 58mm, 絞り値 F2.5-F22, 最短撮影距離 0.28m, 絞り羽 6枚構成,重量(実測) 286g
 

撮影テスト

まずは KOMURANON 35mm F2.5 から触れてみたいと思います。

本レンズは、前回取り上げた 28mm F2.5 と比較すると、開放から描写が安定しており、コマ収差由来のモヤつきやフレアも控えめです。画面全体にわたってコントラストが素直に立ち上がり、解像感も十分に確保されているため、いわゆるクセ玉というよりは、実用性を重視したバランス型の広角レンズといった印象です。

周辺部の描写は破綻が少なく、倍率色収差や歪曲も目立たないレベルに抑えられています。ただし、周辺部の光量落ちはレトロフォーカス型レンズとしては目立つ印象です。1970年代のサードパーティ製広角レンズとしては堅実な設計思想が感じられる一本で、当時の三協光機が目指した「口径比F2.5を軸にした差別化」の中では、最もまとまりの良さが際立つモデルと言えるでしょう。


F2.5(開放)Zikon Zf(WB:日光)


F2.5(開放)Zikon Zf(WB:日光)


F2.5(開放)Zikon Zf(WB:日光)


































続いて KOMURANON 24mm F2.5 について触れておきます。
焦点距離が短くなる分、28mm F2.5 よりも収差が増えるだろうと予想していましたが、実際にはその逆で、むしろ本レンズのほうが描写は安定しています。開放から画面全体のコントラストが素直に立ち上がり、細部の解像も破綻しません。1970年代のサードパーティ製24mmとしては、意外なほど“まとまりの良さ”が感じられる一本です。
周辺光量はやや大きめに落ち込みますが、これは当時の広角レンズとしては自然な挙動で、むしろ味として受け取れる範囲でしょう。倍率色収差や歪曲は控えめで、極端なクセが出ないため、スナップから風景まで幅広く使える実用的な描写を見せてくれます。
設計難度の高い24mmでありながら、28mm F2.5 よりも総合的に優れた性能を示す点は興味深く、三協光機の光学設計が単なる「F2.5の差別化」に留まらず、実際の描写バランスにも配慮していたことを感じさせます。

 
F4 Zikon Zf(WB:日光)

F2.5(開放)Nikon Zf(WB:日光)

F2.5(開放) Nikon Zf(WB:日光)