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NEW オールドレンズポートレートワークショップ(6月9日) ~シネレンズ編~

2019/01/20

Roeschlein Kreuznach TELENAR 90mm F3.8 (Braun Paxette M39 mount)




プリモプランの設計者が興した
レンズ専業メーカーの交換レンズ 後編
ビハインドシャッターへの適合が生んだ
ソフトテレポート
Roeschlein Kreuznach TELENAR 90mm F3.8 (Paxette mount)

ロシュライン特集の後編は中望遠レンズのTELENAR(テレナ90mm F3.8です。このレンズはBraun社のPAXETTEというレンジファインダー機に搭載する交換レンズとして、1954年に約4000本が供給されました。F3.8とやや口径比が暗いのはPAXETTEに搭載されたビハインドシャッターの狭い光路にどうにか光を通すためで、後玉径を大きくすることができなかったことによります。しかし、高感度特性の良好な現代のデジカメで使う分には、これが弱点になることはありません。ISO感度を高めに設定しておけばシャッタースピードは十分に稼げますし、ボケ量についても焦点距離が長いので50mm F2相当と十分です。デジカメの性能の進化がTELENARを魅力あるレンズに変えたのです。
小さな後玉とは対照的に前玉はかなり大きく、前群側にかなり大きな屈折力の偏りがあるように思えます。レンズ構成を調べてみると4群4枚の変形テレ・ゾナーで、テレ・ゾナーのはり合わせ面をはずし空気間隔を設けた形態なので、構成内容だけでみれは凹レンズをテレゾナー並みに分厚くしたエルノスター型とも言えます。線が太くコントラストの良好な力強い画作りを想像していましたが、これがロシュラインの手にかかると一体どういう味付けになるのか、とくと拝見することにしましょう。
Braun社のPAXETTEに搭載したTELENAR 90mm F3.8




重量(実測)148g, フィルター径 40.5mm, 絞り羽の構成枚数 10枚, 最短撮影距離(規格) 1.5m, 絞り F3.8-F16, フランジバック44mm, paxette M39マウント


 
入手の経緯 
eBayでのレンズの取り引き相場は200~250ユーロあたりです。本品は2018年9月にeBayを介し、ドイツのレンズセラーから落札しました。オークションの記載は「マウント部はライカとは異なる規格のM39スクリューマウントである。コンディションは良好で、動作も問題ない。APS-C機で撮った写真作例もつけるので見てくれ」とのことで問題はなさそう。ところが、届いた品には絞りの直ぐ後ろのガラス面に僅かなクモリ(汚れ)があり、検査落ちでした。ただし、後群全体が鏡胴にねじ込まれているだけの簡単な構造だったので光学系を開けることなく清掃ができ、問題の個所を少し拭いたところクリアになりましたので一件落着です。

SONY A7へのマウント方法
このレンズの規格であるPAXETTEスクリューマウントはライカと同じM39のスクリューマウント(ネジピッチ1mm)ですが、フランジバックが44mmもありライカとは異なります。SONY A7で使用するためのマウントアダプターの作成方法を一つをご紹介します。
まずM39-M42ステップアップリングを用いてレンズをM42ヘリコイド(25-55mm規格)に搭載します。あとはヘリコイドのカメラ側にM42-SONY Eスリムアダプターをつけるだけです。部品は全て市販品なので、誰でもできる改造でしょう。望遠レンズは伸長率の高いヘリコイドのほうが使いやすいので、伸長率の低いヘリコイドていったんライカマウントにするよりも、ダイレクトにソニーEマウントにするほうがよいとおもいます。


撮影テスト
なにしろテレ・ゾナータイプのレンズですから、線の太い、高コントラストな描写を想像していましたが、予想は完全に外れました。いかにもオールドレンズっぽい、雰囲気を重視した画づくりのできる貴重なレンズです。開放ではモヤモヤとしたフレアが画面全体を微かに覆い、柔らかい雰囲気に包まれます。解像力は明らかに低くシャープネス(解像感)も低いのですが、そんなことは大きな問題ではないことを教えてくれます。少しハイライト気味に露出を持ち上げ軽いトーンに仕上げると、浮遊感が強調され、このレンズの持ち味が引き立ちますので、ふんわりとした画作りを好むカメラ女子が使いこなしそうなレンズです。逆に引き画で細部まできっちりと写したり、質感を重視する物撮りのような使い方には向いていません。発色は落ち着いていて、あっさり気味な大人のテイスト。モノクロにも合いそうです。
このレンズは前玉が大きいわりに後玉がとても小さく作られています。ビハインドシャッターの光路に光を通すことを念頭に設計されたので、無理をしたのでしょう。これによる反動が柔らかい描写傾向を生み出しているものと思われます。フレアっぽさを活かした描写表現を堪能できるレンズです。
 
F3.8(開放) sony A7R2(WB:auto) このとおり、いいかんじです。テレ・ゾナーらしからぬフレアっぽい柔らかい描写で、雰囲気のよくでるレンズです
F5.6  sony A7R2(WB:auto) 少しハイライト気味に撮影するのがレンズの良さを引き出すポイントかな?
F3.8(開放) sony A7R2(WB:auto) 
F5.6 sony A7R2(WB:auto) 
F5.6 sony A7R2(WB:auto) 
F5.6 sony A7R2(WB:auto) 



F3.8(開放) sony A7R2(WB:日陰) 屋外での写真も参考までに・・・軟調です
F3.8(開放) sony A7R2(WB:auto) 

続いて近接撮影の写真作例です。いずれも絞って撮っていますが、やはり絞ればシャープに写るレンズであることがわかります。

カメラ:SONY A7R2
クリエイティブスタイル→パートカラー(イエロー)で撮影

F5.6 sony A7R2(WB:日光、クリエイティブスタイル:パートカラー、多重露光)
F5.6 sony A7R2(WB:日光、クリエイティブスタイル:パートカラー)
F8 sony A7R2(WB:日光、クリエイティブスタイル:パートカラー) 



F5.6 sony A7R2(WB:日光、クリエイティブスタイル:パートカラー)
F8 sony A7R2(WB:日光、クリエイティブスタイル:パートカラー)

F8 sony A7R2(WB:日光、クリエイティブスタイル:パートカラー)




2019/01/14

Roeschlein Kreuznach LUXON 50mm F2 (Braun Paxette M39 mount)




何しろこのレンズを設計したのは、復刻版が出るほど有名な収差レンズのPrimoplan(プリモプラン)を設計した人物ですから、凄まじい個性が宿っているに違いありません。旧西ドイツのレンズ専業メーカーのRoeschlein(ロシュライン)社が1950年代中半に供給したLUXON(ルクソン) 50mm F2です。
  
プリモプランの設計者が興した
レンズ専業メーカーの交換レンズ 前編
Roeschlein Kreuznach LUXON 50mm F2 (Paxette mount)

Roeschlein社は第二次世界大戦の終戦直後にドイツのバート・クロイツナッハでStephan Roeschlein(シュテファン・ロシュライン)[1888 - 1971]が興したレンズ専業メーカーです。創業者のStephanは会社設立に至るまで英国ロチェスターの光学メーカー、ドイツ・ラーテノーの光学メーカー(おそらくEmil Bushでしょう)、ゲルリッツのHugo-Meyer社、バート・クロイツナッハのScheider社に在籍し、数多くのレンズを設計した人物です。Hugo-Meyer社ではPrimoplan(初期型)5cm f1.5、望遠レンズのTelemegor(テレメゴール)シリーズ、広角レンズのAriststigmat(アリストスティグマート)などの設計を手掛けています。自身の会社を立ち上げた後は準広角レンズのLUXAR 38mm F2.9POINTAR 45mm F2.8COLOR ARRETAR 45mm F2.8、標準レンズのLUXON 50mm F2POINTAR 75mm F3.5、望遠レンズのTELENAR 90mm F3.8LUXON 105mm F4.5, TELENAR 135mm F5.6などを設計、また、プロジェクター用レンズや工業用レンズも手掛けており、同じBad Kreuznachに本社を置く古巣のSchneider社に望遠レンズのOEM供給もおこないました。本ブログでは2回にわたる記事でRoeschlein社の標準レンズLUXON 50mm F2と望遠レンズTELENAR 90mm F3.8を取り上げ紹介します。

1回目の今回は同社が供給した最も明るいレンズのLUXNON(ルクソン) 50mm F2です。このレンズは1950年代初頭に登場し1960年代中半まで作られたBraun(ブラウン)社のPaxette(パクセッテ)というレンジファインダー機に搭載する交換レンズとして市場供給されました。

  
レンズファインダーカメラのBraun PaxetteにLUXONを搭載してみたところ。なかなかコンパクトでお洒落なカメラです。マウント部はM39スクリューネジとなっており、フランジバックは44mmです。カメラのマウント部にシャッターを据えたビハインドシャッター方式を採用しているため、シャッター速度の高速性を保つ観点からマウント径を大きくすることができず、後玉の大きなレンズを搭載することができませんでした
 
レンズの設計構成は公開されていませんが、Paxetteのカタログに5枚構成と記されており、ガウスタイプではないことが判断できます。正体を明らかにするため前群と後群を鏡胴から取り外し(光学系を分解せずとも簡単にscrew offできます)、光を通して反射面の様子を丁寧に調べてみました。すると、前群側が正負正の3枚構成で2枚目と3枚目の間に暗い反射(張り合わせ)が確認でき、後群側は負正の2枚構成になっています。明らかにLUXON4群5枚のプリモプラン型なのです(下図)。ロシュラインは戦後に自分の会社を興し、別所でコッソリとプリモプラン初期型の改良版モデルを供給していたのです。マニアならビックリして跳びあがるところでしょう!。
  
LUXONと同一構成であるPrimoplanタイプのレンズ構成図。左が前方(被写体側)で右がカメラ側
 
 
創業者シュテファン・ロシュライン

参考:Wikipedia:Stephan Roeschlein
シュテファン・ロシュラインは1988年6月にドイツ・バイエルン州の南部で生を受けます。不幸にも彼の誕生時に母親が死去し、彼は1つ上の兄ウィリーとミュンヘンの孤児院に預けられます。孤児院で彼は中等科を卒業し、初めミュンヘンの保険会社でアクチュアリーとして働きはじめます。しかし、直ぐに英国ロチェスターの光学メーカーに転職し、レンズ設計士の道に進みます。ここでは約10年勤務しますが、ドイツ人であった彼は第一次世界大戦勃発間際の1914年に退職し、英国を離れることを余儀なくされます。ドイツに帰国後はブランデンブルク州ラーテノーの光学メーカー(おそらくEmil Bushでしょう)にレンズ設計士として再就職します。その後はゲルリッツのHugo Meyer(ヒューゴ・メイヤー)社に移籍、更に1936年にはBad KreuznachSchneider(シュナイダー)社に移籍しA.W. Tronnier(トロニエ)の後継者としてテクニカルディレクターの座についています。第二次世界大戦の終戦後はシュナイダー社を離れ、レンズ専業メーカーのRoeschlein社を興します。ただし、会社は短命に終わり、1964年に光学メーカーJulius Ernst Sill(現Sill Optics/ジル・オプティクス)に買収され消滅しています。Stephan1971年1月、最初の孫が誕生する直前に82年の生涯を閉じています。



ROESCHLEIN LUXON 50mm F2 (Paxette M39マウント): フィルター径 40.5mm, 重量(実測)85g , 絞り羽 15枚,  絞り値 F2-F16, 最短撮影距離(規格) 1m,  設計構成 4群5枚プリモプラン型, フランジバック44mm

 
レンズの取引相場
流通量の少ないレンズですから、まともなコンディションの個体に出会う機会は極めて少ないとおもいます。希少価値がある一方で、もともとは安価な大衆機に搭載されていたレンズですので取引相場は安定していません。ただし、プリモプラン型であるという情報が広まれば、今後は現在のプリモプラン58mm並みの値段(50000円程度)かそれ以上の値で取引される事になるでしょう。ちなみにロシュラインが設計した5cm f1.5のプリモプラン初期型(ライカ/コンタックス用)にはとんでもない値段がつきます。
   
マウントアダプター
レンズはBraun(ブラウン)社のPaxette(パクセッテ)というカメラ(上の写真)に搭載する交換レンズとして供給されました。Paxetteには独自のM39スクリューマウント(ねじピッチ1mm)が採用されており、フランジバックは44mmです。eBayにはマウントアダプターの市販品が流通していますので、これを用いればLUXONのようなpaxetteマウントのレンズをデジタルミラーレス機で使用することができます。アダプターは市販部品の組み合わせのみでも簡単に自作できますのでレシピを披露しておきましょう。高性能なヘリコイド付アダプターですので、近接撮影も可能です。
   
左がPaxette - Leica Lアダプター、右がPaxette - Sony Eアダプターの制作例。アダプターはヘリコイド付きなので、レンズ本体のヘリコイドとともにダブルヘリコイド仕様となります。最短撮影距離はライカLマウントの側が約0.3m、SONY Eマウントの側が約0.2mです

 
撮影テスト
プリモプラン同様に個性の強いレンズで、設計構成がレンズの性格を決める大きな要因であることを改めて実感させられます。奥行きのある場所で撮るとレンズの真価が発揮でき、被写体の背後にグルグルボケが発生するとともに、四隅に向かって像が崩壊しながらボケてゆきます。不思議な立体感を楽しむことのできるレンズです。絞り羽根が何と15枚もあり、アウトフォーカス部の点光源はどの絞りでも綺麗な真円になります。非点収差がかなり大きいようで像面が大きく分離しており、開放では良像域が写真中央部の狭い区域に限られています。中央でピントを合わせても周辺では大きく外れてしまいます。だし、通常は平面を撮るわけではないので、これで普段使う分には不満もなければ問題もありません。少し絞ればピント部の良像域は四隅に向かって拡大します。被写体の配置を中央から外す場合は何段か絞ったほうがいいでしょう。ピント部は開放からヌケの良いスッキリとした描写で、滲みはなく、シャープネスやコントラストは程よいレベルです。開放でのヌケの良さは兄弟レンズのプリモプランより良い印象です。一方、遠方撮影時とは対照的に、近接撮影時ではソフトな描写に変わります。逆光ではハレーションが出やすく写真がモヤモヤと白濁しますので、コントラストや鮮やかな色ノリを維持したいのでしたらフードは必須です。
プリモプラン同様に初めのうちは激しい収差に振り回されて、あたふたするかもしれませんが、とても遊び甲斐のある面白いレンズだとおもいます。良い子はこんな魔性のレンズではなく、もっと大人しいレンズで撮りましょう!


F2(開放) sony A7R2(WB:日光) 

F2(開放) sony A7R2(WB:日光) 

F2(開放) sony A7R2(WB:日光) 



撮影機材 SONY A7R2(フードの装着は無し)
F2(開放) sony A7R2(WB:日陰)  かなり強烈なグルグルボケが出ています。中央はシャープでヌケがよい

F2(開放) sony A7R2(WB:日陰)ボケはかなり妖しく、いかも崩壊気味です


F2(開放) sony A7R2(WB:日光) 

F2(開放) sony A7R2(WB:曇天)  開放でピントが合うのはごく中央部のみで、四隅ではピントが外れてしまいます。像面が曲がっているようで、このレンズの描写には妙な立体感があります

F2(開放) sony A7R2(WB:曇天)  








F2.8   sony A7R2(WB:曇天)
F4  sony A7R2(WB:曇天)

F2(開放) sony A7R2(WB:曇天)

F2(開放) sony A7R2(WB:曇天)

2019/01/12

LOMO OKC(OKS)1-18-1 18mm F2.8

 
1950年代に活躍した超広角シネレンズと聞いて直ぐに浮かぶのは、レトロフォーカス型レンズのパイオニアメーカーである英国テーラー&テーラーホブソン社のSpeed Panchro 18mmとフランスのAnagenieux Type R2 18.5mmです。一方で東側諸国に目を向けるとロシア(旧ソビエト連邦)には高い光学技術があり、1950年代中半には両社の広角シネレンズに対抗できる製品がつくられていました。レニングラードのLENKINAP工場が1950年代中半から1960年まで生産したPO711960年にリリースした後継モデルのOKC1-18-1です。
 
サンクトペテルブルクからやってきた
ロモの映画用レンズ PART 1
LOMO OKC1-18-1(OKS1-18-1) 18mm F2.8

1952年に映画用カメラのKONVAS-1M(カンバス1M)が登場すると、これに搭載する交換レンズとしてPOシリーズのラインナップが大幅に強化されました。この時にリリースされた新しいレンズの供給元となった工場が、後に合併しLOMO(ロモ)の一部となるレニングラードのLENKINAP(レニングラード・シネマ器機)です。LENKINAPからは、旧来から存在したシネレンズ(PO2 75mm, PO3 50mm , PO4 35mm)の改良モデルにあたるPO60, PO59, PO56などがリリースされ、更にPO71 18mm, PO70 22mm, PO59 28mm, PO63 80mm, PO18 100mmなど、それまでにない新しい焦点距離のレンズも登場しました。1950年代末にこれらは再設計され、解像力を一層向上させたLENKINAP OKCシリーズへと姿を変えてゆきます。
今回取り上げるのは、その中で焦点距離の最も短いPO71RO71)の後継モデルOKC1-18-1です[1]。ここまで広角のシネレンズともなると、常用ではなく室内など狭い空間でのシーンや、パースペクティブを強調したいシーンに限定して使われたに違いありません。市場に流通している個体数が極僅かなのは、このような事情を反映しており、探すとなるとなかなか見つけるのは難しい希少レンズです。
レンズの設計構成は下図に示す通りで、当時のレトロフォーカス型レンズで最高レベルの性能を誇ったVEB Zeiss JenaFlektogon 35mm(フレクトゴン)をベースにしています。Flektogonは初期のレトロフォーカス型広角レンズにおいてコマ収差を有効に補正することのできる唯一無二のレンズでしたので、これを設計ベースに据えることは手堅い選択でした。OKC1-18-1には開放からフレアや滲みのない、Flektogonらしい描写性能が備わっています。
このレンズの外観の特徴は何と言っても巨大な前玉です。見ているだけでワクワクしてしまうのは、恐らく私だけではないとおもいます。なにしろコンピュータによる設計法が確立される前の時代の製品ですから、まず基本となるマスターレンズを設計し、前方に凹レンズを据えてバックフォーカスを延長させ、マスターレンズとの空気間隔をズームレンズのように伸縮させることで、画角を拡大させるアプローチがとられました[2,3]。基準となるマスターレンズは原則いじらないので、最終的に前玉がデカくなるのは当然です。その後のコンピュータに頼る設計技術の進歩がレンズ設計に自由度をもたらし、より小型で高性能なレンズがつくれるようになっていきます。


OKC1-18-1の構成図(文献[4]からのトレーススケッチ):設計構成は6群8枚のレトロフォーカス型で、ビオメタールタイプのマスターレンズの前方に凹メニスカスを1枚、さらにその前方に張り合わせの凹レンズを設置し、バックフォーカスの延長と包括画角の拡大を実現しています。ちなみに2群目から後ろはZeiss JenaのFlektogon 35mmと同一構成です。前身モデルのPO71も同一構成ですが細部の寸法に若干の差があります[4]

参考文献
[1] 市場に流通している製品の独自調査により、PO71の最も新しい個体のシリアル番号が1960年製(N60XXX)であることを写真で確認しています。また、OKC1-18-1の最も古い個体のシリアル番号がやはり1960年製(N60XXXX)であることも写真で確認済です。
[2] 写真レンズの歴史 ルドルフ・キングズレーク著(朝日ソノラマ: 1999年)
[3] Joseph Bailey Walker, US.Pat.XXX(1932)
[4] GOI lens catalog 1970

Lomo OKC1-18-1 18mm F2.8: 重量(実測) 407g, マウント部ネジ径 M21, 絞り指標 T3.3(F2.8)-T22, 設計構成は6群8枚のレトロフォーカス型, 定格イメージフォーマット  35mmシネマ(APS-C相当)



 
入手の経緯
eBayでは状態の良い個体に500~600ドル程度の値が付きます。今回、私が手に入れた個体は20182月にeBayでウクライナのレンズセラーが400ドル代で売っていたものですが、値切り交渉の末に385ドル+送料の即決価格で手に入れました。オークションの記載は「レンズは完全な作動品で、未使用のようなガラスである。カビ、クモリ、拭き傷はなく、パーフェクトなコンディションだ」とのこと。届いた個体は記載通りの素晴らしいコンディションで、おそらくオールドストックであったものと思われます。レンズには下の写真のような美しい純正ケースとベークライト製キャップがついてきました。

レンズはこんな感じのお洒落なペーパーケースに入って届きました。ケースや前玉・後玉用キャップにはLOMOのロゴが入っています



デジタルカメラで使用する
レンズにはヘリコイドが付いていないので、ピント合わせをおこなうには外部のヘリコイドに頼る必要があります。マウント部は特殊な21mm(M21x0.5)のネジですが、これをライカL39マウントに変換するためのマウントアダプター(写真・下)が市販されていますので、これを用います。ちなみにこのネジは少し前に取り上げたOKC1-22-1と同じ規格ですのでOKC1-22-1用で大丈夫です。このアダプターでライカL、更にはライカL→ライカMアダプターを用いてライカMマウントに変換し、そのままライカM→ミラーレス機アダプター(ヘリコイド付)に搭載すれば各社のデジタルミラーレス機で使用することができます。アダプターを3枚も使用していますがスクリューマウントなのでガタは出ず、快適に使用することができます。

M21-L39アダプター。eBayでOKC1-22-1用として販売されている

撮影テスト
35mmシネマフォーマット用レンズなので、イメージサークルはAPS-Cセンサーをカバーできます。中心部の解像力は良好で、開放から滲みやフレアはなく、スッキリとした描写の高性能なレンズです。ただし、軟調でトーンはなだらかなうえ、深く絞り込んでもシャープになりすぎることがないなど、絶妙なポジショニングです。ガラス境界面が多いからなのでしょう。おなじロモの広角レンズでもOKC1-22-1  22mm F2.8は、これよりも更にシャープなレンズでした。レトロフォーカスタイプなので、写真の四隅で光量落ちが顕著に目立つことは性質的にありませんし、ボケも安定しています。倍率色収差は少なく、デジカメで使用した場合でも像の輪郭が四隅で色付くことはほぼありませんでした。歪みは僅かに樽型です。ゴーストやハレーション(ベーリング・グレア)はこのクラスのレンズにしては出にくく、逆光時の描写には安定感があります。

Camera: Sony A7R2(APS-C mode)
TORUNOオープニングセレモニーにて

F2.8(開放) SONY A7R2(APS-C mode) モデルの清水ゆかりさん。接触するんじゃないかと思われるくらいに寄って、やっとここまでの構図になります。清水さんもこのレンズの存在感に驚いていた様子でした

F4  SONY A7R2(APS-C mode) 解像力は良好です

F4  SONY A7R2(APS-C mode)
F5.6  SONY A7R2(APS-C mode) 歪みは僅かに樽側ですが、良好なレベルです
SONY A7R2(APS-C mode)






Camera: SONY A7R2
場所:伊豆大島
F5.6 sony A7R2(APS-C mode WB: 曇天)

F5.6 sony A7R2(APS-C mode WB:曇天)

F4 sony A7R2(APS-C mode WB:日陰)
F4 sony A7R2(APS-C mode  WB: 日陰)
F4 sony A7R2(APS-C mode, WB:日陰)
F5.6 sony A7R2(APS-C mode, WB:日陰)

F5.6 sony A7R2(APS-C mode, WB:日陰)





Camera: SONY A7R2

場所:三浦半島 観音崎灯台


F5.6 sony A7R2 (APS-C mode WB:曇天) 


F8  sony A7R2 (APS-C mode WB:晴天) 





F5.6 sony A7R2(APS-C mode WB:auto)
F4 sony A7R2(APS-C mode  WB:auto)


Camera: FUJIFILM X-T20
場所:和歌山県 高野山

F8  Fujifilm X-T20(WB:Auto)

F2.8(開放) fujifilm x-t20(WB auto)






F8 Fujifilm X-T20(WB:auto, Aspect Ratio 16:9)