X線CT装置で
レンズの構成を解明する
X線CTとはX線が物体を透過しやすい性質を利用し、内部構造を画像化することのできる撮影技術です。一般には人体内部の撮影に用いられる医療機器として認知されていますが、用途はもっと広範囲に及び、産業用に特化した装置もあります[1]。非破壊で内部構造を可視化できるため、よく知られている用途としては、貴重な仏像の内部を撮影し「像内納入品」を調べたり、ピラミットから出てきたミイラの撮影に用いた事例があります[2]。X線は物質の密度や組成によって透過度が異なります。密度が高くまた原子番号が大きいほど、X線は透過しにくくなります。この特性を利用して、X線CT法では異なる物質で構成された物体の内部構造を可視化することができます。ガラスと金属でできた写真用レンズはX線CT装置を活かすことのできるよい事例です。今回はガラスの部分を可視化してみることにしました。使用したレンズは長らく構成が不明だったアリフレックス版プリモプラン3cm F1.9です。
プリモプランと言えば、スチル用に供給された4群5枚(いわゆるプリモプラン型)が最も一般的な構成ですが、Cマウント用に供給された4群4枚のエルノスター型もあります。自分の知っているプリモプランはどれも収差が強く、グルグルボケがきつめに出るなどハッキリとした特徴がみられます。これに対し、今回取り上げるアリフレックス用プリモプランは収差による画質の乱れが殆ど見られず素直で高性能、業務用(映画用)の用途に耐えうる高い性能基準を満たしており、どこか毛色の異なる印象をうけます。おそらくガウスタイプかエルノスタータイプあたりではないだろうかと考えられますが、結果は後ほど。
[1] ZEISS: X線CT装置の内部構造と機能解説
[2] 「X線CTスキャン装置を用いた仏像調査」文化財のトビラ084, 文化庁
謝辞
tailさんらのご協力に感謝いたします。
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