おしらせ


2019/05/02

LOMO(GOMZ) Ж-48 G-48 100mm F2










サンクトペテルブルクからやってきた
ロモの映画用レンズ PART 3
旧ソ連の怪物。
こんなレンズを1960年に造ってしまうロシアの本当の底力を我々は正しく理解していない
LOMO(GOMZ)  Ж-48 G-48 100mm F2
LOMOのシネレンズには映画用に供給されたOKCシリーズと、映画用、産業用、軍需用に供給されたЖシリーズ(Gシリーズ)の2系統があります。両シリーズには鏡胴のつくりや画質基準に差があり、Gシリーズは中心解像力が一律100線/mm(GOI基準)に規格化されているなど、明らかにOKC/POシリーズの上位の製品として位置付けられていました。定評のあるPO3-3M 50mmF2の中心解像力が45線/mmであることを考えると、2倍のレンズ口径を持つ本レンズが2倍を超える解像力を叩き出しているのは尋常なことではありません。OKCシリーズの製造を担当したのは旧LNKINAP工場、Gシリーズは旧GOMZ(国営光学工場)です。ロシア製レンズの情報を扱った総合的な資料であるGOIのレンズカタログには映画用レンズやスチル用レンズ、プロジェクションレンズなどのテクニカルデータが網羅されていますが、Gシリーズについては一部のレンズに関する情報が収録されているのみで、入手できる情報は限られています。以下に私が独自に集めた製品ラインナップを列記しておきますので、これら以外の製品をご存知でしたらお知らせいただけると助かります。Gシリーズが日本で認知される足掛かりになれば幸いです。

G-5 75mm F2(Cinema lens) 
G-21 28mm F2(Cinema lens)
G-22 35mm F2(Cinema lens)
G-24 75mm F2(Cinema lens)
G-25 100mm F2(Cinema lens)
G-26 180mm F2.5(Projection lens)
G-32 90mm F2(Projection lens)
G-34 110mm F2(Projection lens)
G-48 100mm F2(Cinema lens)
G-49 22mm F2.8(Enlarging or Cinema)
G-53 75mm F2(Projection lens)
G-54 85mm F2(Projection lens)
G-55 95mm F2(Projection lens)
 
今回とり上げるのは1965年に合併しLOMOの一部となるGOMZ1960-1962年に生産した焦点距離100mmの大口径望遠レンズЖ-48(G-48です。確かなソースからの情報ではありませんが、製造本数は2500本に満たない数だったそうです。このレンズを手にすれば重量感と鏡胴のつくりの良さに誰もが驚くことでしょう。ネットにはエアクラフト用シネレンズとの未確認情報もありますが、確実な情報や具体性のある情報は何一つ見当たりません。確かに雲中で氷塊が当たろうが流れ弾が来ようが弾き返しそうな高耐久なつくりですし、流通量の少なさやマウント部の特殊なネジ径から考えても、本品は市販品ではなかったように思えます。映画用として認知されているシネレンズのPO2 / PO3/ PO4もかつてはエアクラフト用(空撮シネカメラのAKS-4に搭載)として供給されていた実績がありますので、あり得ない話ではありません。レンズは4群6枚のガウスタイプで、中玉にマゼンダコーティング、前玉と後玉にアンバーコーティングが蒸着されています。定格イメージフォーマットは他のЖレンズと同様であるとして、恐らくAPS-C相等の35mmシネマフォーマットですので、APS-C機で用いるのが画質的に最も相性の良い組み合わせです。ただし、包括イメージサークルはこれよりも遥かに広く、フルサイズフォーマットを余裕でカバーしています。これによく似たレンズとしてЖ-25(G-25) 100mm F2というシネマ用レンズがあり、1950年代半ばから1960年まで生産されていました。前後関係から考えると、おそらくЖ-48はЖ-25の後継モデルではないかと予想することができます。レンズに関する情報や手掛かりをお持ちの方がおりましたら、ご教示いただけると幸いです。


入手の経緯
eBayには若干数の流通があり、800ドル~900ドル程度で取引されています。私自身は20183月にeBayでロシアのレンズセラーから770ドル+送料30ドルで購入しました。商品の説明は「美品。ガラスはクリーンで絞り羽は正常に動作する。ソビエト連邦による1962年製でエアクラフト用。コーティングがある。イメージサークルはフルサイズセンサーのみならず6x6中判フォーマットもカバーできる。フロ ントキャップ付き」とのこと。僅かに拭き傷があるのみで十分なコンディションのレンズでした。本品はレンズヘッドのみの製品なので、デジタルカメラで使用するには改造してヘリコイドに搭載しなければなりません。レンズヘッド自体にかなりの重量があるため、今回は高耐久なM52-M42ヘリコイド(35-90mm)に搭載してM42レンズとして使用できるようにしました。

GOMZ(LOMO) Ж-48 G-48 100mm F2: 重量(実測) 650g(レンズヘッドのみ),  絞り羽 18枚,  絞り F2-F16, 設計構成は4群6枚ガウスタイプ, S/N: N62XXXX (1962年製造), 35mmシネマフォーマット(APS-C相等)準拠, 中心解像力は100 LINE/mm(GOI規格)で、PO3の中心解像力45LINE/mmの倍以上をたたき出している


  
撮影テスト
現代のレンズと比較しても性能的に何ら遜色はありません。1950年代にここまで高性能なレンズを作り出せたロシア(旧ソビエト連邦)が、宇宙開発や軍事技術のみならず、光学技術においても世界のトップランナーであったことは紛れもない事実です。
解像力はとても高くピント部の像はたいへん緻密で、シャープネスやコントラストは開放から高いレベルに達しています。滲みやフレアは全く見られずスッキリとヌケのよい描写で発色も良好、ボケにクセはありません。時代的にはシングルコーティングでしょうが、コッテリとしたマゼンダ系とアンバー系のコーティングは、いかにも良く写りそうな強いオーラを醸し出しています。1950年代でもコストを省みることがなければ、ロシアではここまで高性能なレンズが作れたのです。

F2(開放) sony A7R2(WB:日光)うーん。まいりました。現代レンズとしか思えない恐ろしい描写力です


F2(開放) sony A7R2(WB:日光)
F2(開放) sony A7R2(WB:日陰)
F2(開放) sony A7R2(WB:日陰)TORUNOのオープニングセレモニーのモデル撮影会で使いました
F2(開放) sony A7R2(WB:電球1)






F2(開放) sony A7R2(クリエイティブスタイル:セピア)

F2(開放) sony A7R2 (クリエイティブスタイル:セピア)
F2(開放) sony A7R2 (クリエイティブスタイル:セピア)








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