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KOWA-R 135mm F4: 最短撮影距離 1.7m, 重量(カタログ値) 580g, フィルター径 67mm, 絞り F4-F16, 絞り羽根 5m枚, 設計構成 5群6枚簡易ゾナー型, KOWA SER/SETRマウント |
おしらせ
2024/12/01
KOWA Co. Ltd., KOWA-R 135mm F4(KOWA-SER/SETR mount)
2023/02/19
試写記録: Sankyo-Kohki SUPER-KOMURA Uni AUTO 200mm F3.5 (M42 mount)
試写記録
SUPERを冠した特別なコムラー PART 2
SANKYO-KOHKI SUPER-KOMURA Uni Auto 200mm F3.5
このブログで扱うSUPER-KOUMRAはこちらの135mm F2.8の記事に続き2本目です。一体どこがスーパーなのか全くわかりませんが、スーパーのつかないKOMURA 200mm F3.5も存在するので、恐らくこれはスーパー・マリオみたいなものなのでしょう。今回は200mm f3.5を手に入れましたので、軽く試写を行い、記録としての作例を残します。
三協光機株式会社は1951年に東京都台東区で創業したレンズ専業メーカーで、1980年に倒産するまでコムラのブランド名で様々なマウント規格のレンズを市場供給していました[1]。製品展開は主に望遠レンズと広角レンズで、カメラとセットで標準レンズを購入した消費者に、リーズナブルなサードパーティ製レンズを供給するのが、このブランドの立ち位置でした。会社名の「三協」には技術、営業、資本の三部門が手を取り合って協力と均衡を保つ意味が込められてたそうです[2]。
レンズの設計構成は下図に示すような4群5枚で、ガウスとトリプレットの折衷にも見えます。エルノスター型なら第3群をもっと前方に置き第4群(後玉)と距離をとりますが、このレンズはやや異なり、ありそうであまり見ない構成形態です[3]。ちなみに、もう一つのSUPER KOMURA 135mm F2.8もこれと同一構成です。
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KOMURA 200mm F3.5構成図:文献[3]からのトレーススケッチ |
レンズは人気のない焦点距離200mmですので、中古市場では数千円で入手できます。一眼レフカメラ各種いずれかに対応できるマウントアダプターがついていますので、汎用性の高いM42マウントあたりの個体を探すのがおすすめです。
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SUPER-KOMURA Uni Auto 200mm F3.5(Komura Uni to M42アダプター付) : 絞り f3.5-f22, 最短撮影距離 3m, フィルター径 62mm, 絞り羽根 6枚構成, KOMURA Uni mount, 設計構成 4群5枚 |
★参考文献
[1] 「コムラーレンズと三協光機」粟野幹男 クラシックカメラ専科No.50(1999)
[2] 戦後日本カメラ発展史 日本写真工業会編(1971)
[3] KOMURA INTERCHANGEABLE LENS GUIDE 米国向けカタログ(EPOI INTERNATIONAL LTD., 1963 NY)
[4]Komura Product catalog for 4x5 Large format, 6x9 format and 35mm format camera(Feb.1970).
★撮影テスト
シャープで線の太い描写ですが、開放では逆光耐性が弱く、コントラストは低めで軟調、発色は淡く暗部は浮き気味です。対して順光ではコントラストが急に高くなります。ボケは安定しており、グルグルボケや放射ボケはみられません。背後のボケは柔らかく綺麗に拡散しています。開放で軸上色収差が目立つ事があり、像が色づいて見えますが、絞ればもちろん消滅します。歪みは糸巻き状です。
F3.5(開放) SONY A7R2(WB:日光) 開放では軸上色収差が目立ち、像が色づきますが、絞ればもちろん下の写真のように消滅します |
F5.6 SONY A7R2(WB:日光) |
F3.5(開放) SONY A7R2(WB:日光) 歪曲は糸巻き状です |
F3.5(開放) SONY A'R2(WB:日光) 背後のボケは穏やかで綺麗。乱れもありません |
F3.5(開放) SONY A'R2(WB:日光) 一つ前の写真と比べれば明らかなように、逆光と順光でコントラストに大きな差が生じます |
2021/08/14
A.Schacht Ulm Travenar 90mm F2.8 R (Rev.2)
シャハトの一眼レフカメラ用レンズ part 3
ベルテレが設計した
テレゾナータイプの美ボケレンズ
A.Schacht Ulm TRAVENAR 90mm F2.8 R
L.ベルテレがA.シャハトに提供したレンズ設計の中で、いかにもベルテレらしい設計のレンズがこのトラベナー90mmです[1-2]。レンズ構成は典型的なテレゾナータイプで、1954年に設計されました[3]。この構成の原型はベルテレが戦前のツァイス・イコン社在籍時代にエルノスタータイプからの派生として誕生させたゾナー(SONNAR)135mm F4で、レンズは1932年登場のコンタックスI型とともに市場供給されました。僅か4枚の少ない構成枚数ながらも諸収差を合理的に補正することができるコストパフォーマンスの高いレンズの一つです。描写には安定感があり、シャープなピント部と美しいボケを特徴としており、A.Schacht社の交換レンズ群の中で群を抜く人気モデルとなっています。レンズの発売は1962年で、対応マウントにはM42, Exakta, Practina II, Minolta MD, Leica L39などがあります。
A.Schacht社と言えば戦後に登場した新興メーカーでしたので、1960年代のドイツでのブランドイメージはZeissやLeitz、Schneiderよりも格下、MeyerやISCO, Ludwigよりは格上で、Steinheilと同程度の中堅的な位置にいました[4]。カメラは生産しませんでしたが、1950年代から1960年代にかけて、スチル撮影用レンズ、引き伸ばし用レンズ、プロジェクター用レンズ、マクロ・エクステンションチューブなどを生産しました。主力商品はやはりスチル撮影用レンズで、シュナイダーからレンズの生産を委託されたりライツからLeica Lマウントレンズの生産の正式認可をうけたりと、同業他社から高く評価されていたようです。
★参考/脚注
[1] Marco Cavina, Le Ottiche Di Bertele Per-Albert Schacht --Retroscena
[2] Erhald Bertele, LUDWIG J. BERTELE: Ein Pionier der geometrischen Optik, Vdf Hochschulverlag AG (2017/3/1)
[3] 特許資料 (1956年)L.J.Bertele, Switzerland Pat.2,772,601, Wide Angle Photographic Objective Comprising Three Air Spaced Components (Dec.4, 1956/ Filed June 13,1955)
[4] これはバックフォーカスを短縮させレンズを小さく設計できるようにした望遠レンズならではの性質で、レトロフォーカスとは逆の効果を狙っています。これは通常は後群全体を負のパワー(屈折力)にすることで実現しますが、テレゾナーやエルノスターなど前群が強大な正パワーを持つレンズでは後群側を弱い正パワー(屈折力の小さい凸レンズ)にするだけでも、ある程度のバックフォーカス短縮効果を生み出せるそうです
[5] 「レンズ設計のすべて」(辻定彦著) 電波新聞社 (2006/08)
[6] 1964年のドイツ国内におけるカメラ・レンズカタログを参照
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A.Schacht Ulm TRAVENAR 90mm F2.8 R: 重量(実測)232g, フィルター径 49mm, 最短撮影距離 1m, 絞り値 F2.8-F22, 焦点距離 90mm, 絞り羽 16枚構成!, 3群4枚テレ・ゾナー型, 1962年発売。本品はExaktaマウントのモデル, レンズ名は「遠くへ」または「外国への旅行」を意味するTravelが由来、本品はEXAKTAマウント |
★入手の経緯
近年A.Schachtのレンズはどのモデルも人気・相場共に上昇傾向にありますが、このレンズに限っては元々人気があり、2014年頃で既に400ドルを超える相場で取引されていました。Schacht社の交換レンズの中では、M-Travenarと共に当時もっとも高額の取引相場であったと認識しています。現在もそのあたりで安定しています。今回の個体は2020年にeBayを介して米国のセラーから入手しました。レンズにはホコリが多めにあるが、カビ、クモリ、傷は無いとのこと。自分で清掃し概ね綺麗になったのはいいのですが、その後でよく検査をしたところ、前群側の貼り合わせ部分に針の先で突いたようなピンポイントのバルサム剥離がみつかりました。実写には影響の出ない問題ですので、まぁ良しとしています。
★撮影テスト
このレンズを本ブログで取り上げるのは2回目です。7年前に取り上げた時とあまり変わらない評価になってしまいました。背後のボケは柔らかく滑らかで、水彩画のようなボケ味です。四隅まで像の流れを全く感じません。美ボケレンズを何本か紹介しろと言われれば、このレンズを取り上げると思います。ピント部の画質は四隅まで安定しており、テレゾナータイプらしい線の太い力強い描写を堪能できます。解像力はやや平凡ながらもコントラストとシャープネスで押し通すタイプで、発色も鮮やかです。力強い描写と鮮やかな発色、穏やかなボケが特徴の優れたレンズです。まぁ、オールドレンズは現代レンズに近づくにつれて、だいたいこんな感じの描写に画一化されていくんですよね。
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F2.8(開放) sony A7R2(WB:日光) |
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F2.8(開放) sony A7R2(WB:日光) |
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F2.8(開放) sony A7R2(WB:日光) |
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F2.8(開放) sony A7R2(WB:⛅) |
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F2.8(開放) sony A7R2(WB:⛅) |
★Travenar 90mm x Fujifilm GFX100S★
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F2.8(開放) Fujifilm GFX100S(WB: ⛅) |
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F2.8(開放) Fujifilm GFX100S(WB: ⛅) |
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F5.6 Fujifilm GFX100S(WB: ⛅) |
2019/01/20
Roeschlein Kreuznach TELENAR 90mm F3.8 (Braun Paxette M39 mount)
プリモプランの設計者が興した
レンズ専業メーカーの交換レンズ 後編
ソフトテレポート
Braun社のPAXETTEに搭載したTELENAR 90mm F3.8 |
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重量(実測)148g, フィルター径 40.5mm, 絞り羽の構成枚数 10枚, 最短撮影距離(規格) 1.5m, 絞り F3.8-F16, フランジバック44mm, paxette M39マウント
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★入手の経緯
★SONY A7へのマウント方法
まずM39-M42ステップアップリングを用いてレンズをM42ヘリコイド(25-55mm規格)に搭載します。あとはヘリコイドのカメラ側にM42-SONY Eスリムアダプターをつけるだけです。部品は全て市販品なので、誰でもできる改造でしょう。望遠レンズは伸長率の高いヘリコイドのほうが使いやすいので、伸長率の低いヘリコイドていったんライカマウントにするよりも、ダイレクトにソニーEマウントにするほうがよいとおもいます。
★撮影テスト
このレンズは前玉が大きいわりに後玉がとても小さく作られています。ビハインドシャッターの光路に光を通すことを念頭に設計されたので、無理をしたのでしょう。これによる反動が柔らかい描写傾向を生み出しているものと思われます。フレアっぽさを活かした描写表現を堪能できるレンズです。
F3.8(開放) sony A7R2(WB:auto) このとおり、いいかんじです。テレ・ゾナーらしからぬフレアっぽい柔らかい描写で、雰囲気のよくでるレンズです |
F5.6 sony A7R2(WB:auto) 少しハイライト気味に撮影するのがレンズの良さを引き出すポイントかな? |
F3.8(開放) sony A7R2(WB:auto) |
F5.6 sony A7R2(WB:auto) |
F5.6 sony A7R2(WB:auto) |
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F5.6 sony A7R2(WB:auto) |
F3.8(開放) sony A7R2(WB:日陰) 屋外での写真も参考までに・・・軟調です |
F3.8(開放) sony A7R2(WB:auto) |
続いて近接撮影の写真作例です。いずれも絞って撮っていますが、やはり絞ればシャープに写るレンズであることがわかります。
カメラ:SONY A7R2
クリエイティブスタイル→パートカラー(イエロー)で撮影
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F5.6 sony A7R2(WB:日光、クリエイティブスタイル:パートカラー、多重露光) |
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F5.6 sony A7R2(WB:日光、クリエイティブスタイル:パートカラー) |
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F8 sony A7R2(WB:日光、クリエイティブスタイル:パートカラー) |
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F5.6 sony A7R2(WB:日光、クリエイティブスタイル:パートカラー) |
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F8 sony A7R2(WB:日光、クリエイティブスタイル:パートカラー) |
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F8 sony A7R2(WB:日光、クリエイティブスタイル:パートカラー) |