おしらせ


2020/11/25

MINOLTA AUTO/MC ROKKOR-PF 58mm F1.4



赤いコニカ緑のロッコール 

虹も飛びだすロッコーラー自慢の
高速レンズ
MINOLTA Auto/MC ROKKOR-PF 58mm F1.4(Minolta SR mount)
1960年代のROKKOR(ロッコール)ブランドにはミノルタが世界で初めて実用化したマルチコーティング(2層のアクロマチックコーティング)が施されており、ガラス面の反射光が緑に輝くことから「緑のロッコール」と呼ばれ親しまれてきました[1]。今年は10月にロッコールのみによるグループ写真展もあり、そろそろブームに火が付きそうな予感がしますので、代表的なレンズであるROKKOR-PF 58mm F1.4を取り上げ紹介したいと思います。この製品は数あるF1.4の大口径標準レンズの中で、いま最も安く手に入れることのできる穴場的なレンズです。安い理由は単によく売れたからで、ミノルタの一眼レフカメラに搭載するキットレンズとして大量に市場供給され、レンズは今も中古市場に豊富に流通しています。オールドレンズの今の値段は、かつての人気と反比例する変なところがあります。

ROKKOR-PFには1961年に登場したAUTO ROKKOR-PFと1966年に登場した後継のMC ROKKOR-PFの2つのモデルがあり、細かな仕様の変更まで考慮すると、AUTOには更に4種類、MCには2種類のバージョンが存在します[2]。2つのモデルは設計が異なるため、描写にも若干の差があります。AUTO ROKKOR-PFは前の記事で取り上げたヘキサノ(HEXANON AR 1.4/57)よりもコントラストに配慮した描写設計のため解像力は控えめですが、そのぶん開放でもフレアは少なく発色は鮮やかで、スッキリとヌケのよい写りが特徴です。バランスの取れた使いやすいレンズだと思います[4]。一方で後継モデルのMC ROKKOR-PFは、再設計による改良で像面湾曲が大幅に補正されるとともに、解像力が前モデルに比べ15%ほど向上しました。前モデルよりも強い過剰補正となり開放ではやや滲みが出ますが線の細い繊細な描写が持ち味となっています。この設計変更は解像力重視からコントラスト重視へと切り替わる時代の潮流と逆行しているかのようにも見えますが、AUTOから一層のマルチコート化が進み、コントラストが向上したことによる画質設定の見直し(微調整)だったと考えれば理解できます。ちなみにMCロッコールのMCはマルチコーティングではなく、メーターカプラーの略です[1]。

両モデルとも半逆光で撮影すると、オールドレンズ女子達の間で今ブームとなっている虹のゴーストが、細く大きな弧を描くように発生します。一芸のある面白いレンズではないでしょうか。

 
ロッコールのレンズ構成は、上図に示すようなガウスタイプを基本とする5群6枚の拡張ガウスタイプで、前群に空気間隔を設けることで中間絞りで膨らむ球面収差(輪帯球面収差)を抑え、解像力の維持とボケ味の改善に取り組んでいます。ただし、F1.4の明るさでこれを実現しているため、曲率の大きな屈折面からは大きな収差が発生しました。どうにも補正しきれない輪帯球面収差を抑え込む最後の手段として、球面収差の補正を過剰にかけますが、代償として開放ではフレアが生じコントラストが低下します。AUTOロッコールPFは過剰補正を緩め、フレアをある程度抑えることでコントラストを稼ぎながらも最低限の解像力を確保したバランス型の設計、MCロッコールPFはコーティング性能の更なる向上でコントラストを稼ぎながら、やや過激なセッティングにチャレンジ、ある程度のフレアを許容しつつ解像力をもう一歩底上げした過剰補正型の設計です[4]。

Auto Rokkor-PF 1.4/58(前期型):重量(実測)316g, 絞り羽 8枚構成, 絞り F1.4-F16, フィルター径 55mm, 最短撮影距離 0.6m, MINOLTA SRマウント, 5群6枚(拡張ガウス型), 1961年登場

Auto Rokkor-PF 1.4/58(後期型):重量(実測)258g, 絞り羽 8枚構成, 絞り F1.4-F16, フィルター径 55mm, 最短撮影距離 0.6m, MINOLTA SRマウント, 5群6枚(拡張ガウス型), 1965年登場
MC Rokkor-PF 1.4/58(前期型):重量(実測)276g,  絞り羽 6枚構成, 絞り F1.4-F16, フィルター径 55mm, 最短撮影距離 0.6m, MINOLTA SRマウント, 5群6枚(拡張ガウス型),1966年登場
MC Rokkor-PF 1.4/58(後期型):重量(実測)284g,  絞り羽 6枚構成, 絞り F1.4-F16, フィルター径 55mm, 最短撮影距離 0.6m, MINOLTA SRマウント, 5群6枚(拡張ガウス型), 1968年登場


 
Auto Rokkor-PF 1.4/58はMINOLTAの一眼レフカメラSR-1/SR-2/SR-3シリーズに搭載するキットレンズとして1961年に登場しました[1]。初期のモデルはフィルター枠の周りがシルバーカラーでしたが、1962年のマイナーチェンジでこの部分がブラックに代わり、1965年のマイナーチェンジではローレット部が長く鏡胴径が一回り小さくなったコンパクトな後期型に変わっています[2]。1966年に登場した一眼レフカメラのSRT-101から新設計で後継モデルのMC ROKKOR-PF 1.4/58が供給されます[3]。MC ROKKOR-PFにも前期・後期モデルがあり、設計は若干異なるようです。ピントリングの指かけ部分(ギザギザの部分)の面が平坦な形状のものが前期モデル、アーチ状に丸く窪んでいるものが後期モデルです。
 
参考文献・資料
[1] アサヒカメラ ニューフェース診断室:ミノルタの軌跡(2001年)
[2]「出品者のひとりごと」MINOLTA(ミノルタ)AUTO RKKOR-PF
[3]「出品者のひとりごと」 MINOTA(ミノルタ)MC ROKKOR-PF
[4] レンズテスト 第1集 中川治平, 深堀和良 クラシックカメラ選書(朝日ソノラマ)

レンズとアダプターの入手
レンズは現在も中古市場に大量に流通しており、値段もこなれています。2020年11月時点のヤフオクでの相場はコンディションによりますが、AUTOが4000円~8000円(送料別)、MCが5000円〜9000円辺りで、MCの方が流通量が少ない分だけ高めのようです。中古店での価格は両モデルとも、もう少し高めの設定でしょう。ただし、発売から50年以上の歳月が経っているため、オーバーホールされないままの来ている場合には、後玉のコーティングがカビに侵食されていたり、ヘリコイドの回転が重くグリスの交換が必要など、コンディション的に厳しい状況にあります。状態の良い個体やオーバーホールされた個体は、それなりの値段になると考えた方がよさそうです。
マウントアダプターはミノルタSRマウント(MD/MC)のものを選びます。ただし、ライカMに変換するMD-LMアダプターには思わぬ落とし穴がありますので注意してください。eBayやヤフオクなどで手に入るこの種の廉価アダプター(中国製のノンブランド)は軒並みフランジバック調整幅が規定の15.7mmより0.3mm長い16.0mmですので、無限がでません(2019年1月に確認し2020年11月にも再確認。改善する気はないみたいです)。さらに、これをベースにリブランドされた製品(NEWYI、YIYO)もやはり16.0mmのため無限が出ません(2020年11月時点)。同じリブランドのFOTOFOXは無限が出ましたので検査・調整されているようです。AMAZONで購入できるK&F ConceptのMD-LMアダプター(中国製)については調整幅15.6mmで無限が出ました。もちろんRayqual(日本製)やKipon(中国製)などの老舗高級ブランドであれば、全く問題はありません。
 
撮影テスト
AUTOとMCは同じ設計構成ですが、開放描写の味付けはやや異なります。AUTOの方は解像力こそ平凡ですが開放からフレアの少ないスッキリとしたヌケの良い描写で、反対にMCの方は緻密で繊細、滲みが入りますが高解像な描写です[4]。どちらのレンズもコントラストは良好で、開放から鮮やかな発色が得られます。ここはミノルタが拘ったところなのでしょう。逆光時はさすがに軟調ですが濁りはでませんので、トーンの軽い軟調気味の描写傾向を楽しむ事ができます。どちらのレンズも半段絞ればスッキリとした描写でコントラストや解像力は更に高く、シャープな像が得られます。ボケ味には癖があります。背後のボケ味は両レンズとも硬めでポートレート域ではワザワザと騒がしくなることがあり2線ボケも出ますが、両レンズとも近接撮影時には収差変動が起こり柔らかいボケ味に変化します。前ボケはMCの方がフレアを纏う妖しいボケ味になり、AUTOの方が素直です。両レンズともグルグルボケや放射ボケが顕著に出ることはありません。逆光時はゴーストやハレーションが出やすいので、避けたいならレンズフードは必須です。

虹のゴーストを出すには晴れた日に①絞りを開放に固定し、②レンズフードはつけず、③太陽を12時の方向に据え2時または10時の方向を向いて撮影すればよいだけです。綺麗な虹を出すにはベストな撮影角度がありますので、少し練習したほうがよいと思いますが、コツを掴めば思いどうりの虹が出せるようになります。フルサイズ機で用いると写真に虹以外にもゴーストの断片がゴチャゴチャと入ってしまいますので、虹をメインで撮る場合にはAPS-C機もしくはマイクロフォーサーズ機の方がよいと思います。

LENS: AUTO ROKKOR-PF 1.4/58
CAMERA: SONY A7R2
DATE: 2020/11/23

Auto Rokkor-PF: F1.4(開放) sony A7R2(APS-C mode, WB:日光)
Auto Rokkor-PF @ F1.4(開放) sony A7R2(WB:日光)
Auto Rokkor-PF @ F2 sony A7R2(WB:日光)
Auto Rokkor-PF @ F1.4(開放) sony A7R2(WB:日光)
Auto Rokkor-PF @F1.4(開放) sony A7R2(WB:日光)

Auto Rokkor-PF @F1.4(開放) sony A7R2(WB:日光)

Auto Rokkor-PF @F1.4(開放) sony A7R2(WB:日光)



Auto Rokkor-PF @F1.4(開放) sony A7R2(APS-C mode, WB:日光)

Auto Rokkor-PF @F1.4(開放) sony A7R2(WB:日光)

Auto Rokkor-PF @F5.6 sony A7R2(WB:日光)
 
未だ半日しか使っていないビギナーですが、これで私もロッコーラーの仲間入りでしょうか(笑)。写真は横浜イングリッシュガーデンで撮りました。
続いてMCロッコール(前期型)での写真です。先輩ロッコーラーでオールドレンズ女子部所属の写真家のどあ*さんにお写真を提供していただきました。MCロッコールの描写はやはり線が細く繊細な感じがします。ボンヤリとした前ボケや形を留めた硬めの後ろボケ、開放での滲みやフレア感などレンズの性質が上手に活かされており、どれも素晴らしいお写真です。虹も綺麗にでていますね。

Photographer: どあ*
Camera: Olympus PEN E-PL6
LENS: MC ROKKOR-PF 1.4/58(前期)
Click and Go to Web Album
 
最後にMCロッコール(後期型)の写真です。なかなか撮りに行く時間がないので、用意ができましたら公開します!

2020/11/17

KONICA HEXANON AR 57mm F1.4

 
赤いコニカ緑のロッコール 前編
繊細な開放描写を楽しむことができる
小西六の六枚玉
KONICA HEXANON AR 57mm F1.4(Konica AR mount) 
F1.4の明るさを僅か6枚のレンズ構成で成立させたKONICA (コニカ)のHEXANON(ヘキサノン)。それを可能にするために用いられた技術が「過剰補正」です。これは収差の補正を過剰にかけることで特に球面収差の増大を抑え、解像力だけでもどうにか維持しようとしたもので、言ってしまえば強い薬を使って見た目には健康そうにみせる対処療法的な技術です。少し絞ったところで最高水準の画質が得られますが、この方法に頼ると反動で開放ではフレアの滲みが出ますし、コントラストも低下、ポートレート域では背後のボケがザワザワと煩くなるなど副作用が生じます。6枚玉でF1.4の明るさを実現した大口径レンズともなれば更なる劇薬を使いますので、収差が大好物のオールドレンズファンが声高々に狂喜する瞬間が目に浮かびます。 この種の大口径レンズが通常の7枚や8枚ではなく6枚で生み出された背景には製造コストを安く抑えたいというメーカーの思惑がありました。メーカーが市場でシェアを勝ち取るにはレンズを他社の競合製品より1円でも安く市場供給する必要があったのです。 ヘキサノンのレンズの構成は下図に示すようなガウスタイプを基本とする5群6枚の拡張ガウスタイプで、前群に空気間隔を設けることで中間絞りで膨らむ球面収差(輪帯球面収差)を抑え、解像力の維持とボケ味の改善に取り組んでいます。ただし、F1.4の明るさでこれを実現しているため、曲率の大きな屈折面からは大きな収差が発生します。このレンズなら、かなり期待ができそうです。
 
KONICA AR 1.4/57の構成図見取り図。公式カタログよりトレーススケッチしました。黒鏡胴の後期モデルが掲載されていたカタログです

 
HEXANON AR 57mm F1.4は1965年12月の歳末商戦で発売されたKONICAの新型一眼レフカメラAutorexに搭載する交換レンズとして登場しました。このモデルから同社の一眼レフカメラは先代のKONICA Fマウントに代わる新規格のKONICA ARマウントを採用しています。レンズは初期のプリセット絞りのモデル、EE機能に対応した前期モデル、AEロックボタンを搭載した後期モデルの3つのバージョンに大別されます。どのモデルもレンズのガラス表面には赤褐色かアンバー色のいずれかのコーティングが蒸着されており、独特の光彩を放つ強い印象を受けます。バージョンごとにコーティング色の配置が少しずつ異なり、後期モデルの方が赤褐色のエレメントの配分が多くなります。
初期のモデルはAutorexの発売に合わせて登場したプリセット絞りのバージョンで、自動絞りには未対応でした。間もなく自動絞り(EE機能)に対応した前期モデルが登場、一眼レフカメラのKONICA FTA(1968年登場)などに供給されます。EE(Electric Eye)機能とは被写体の明るさに応じて絞りとシャッタースピードをカメラが自動で判断する機能です。この機能を使う場合、レンズの側では絞り値を絞り冠上のEEの位置に合わせておき、カメラに絞り値の選択を委ねます。その後、絞り冠上にEE機能のロックボタンが装備された後期型が登場、一眼レフカメラAutoreflex T3(1973年登場)とAcom-1用(1976年登場)に供給されます。後期型では途中から鏡胴のデザインがオールブラックに変更されています。1979年にKonica FS-1と後継レンズのHexanon AR 50mm F1.4が発売され、供給終了となっています。
前期型 フィルター径 55mm, 重量(実測) 280g, 最短撮影距離 0.45m, 絞り F1.4-F16, 絞り羽 6枚構成, 設計構成 5群6枚拡張ガウスタイプ, コニカARマウント




後期型 フィルター径 55mm, 重量(実測)278g, 最短撮影距離 0.45m, 絞り F1.4-F16, 絞り羽 6枚構成, 設計構成 5群6枚拡張ガウスタイプ, コニカARマウント

後期型(オールブラック) フィルター径 55mm, 重量(実測)278g, 最短撮影距離 0.45m, 絞り F1.4-F16, 絞り羽 6枚構成, 設計構成 5群6枚拡張ガウスタイプ, コニカARマウント


 
入手の経緯
中古市場にはやや数は少ないものの、常時流通しているレンズです。ヤフオクでの取引相場はコンディションにもよりますが7000~12000円辺りでしょう。ショップではもう少し上の値段設定です。私は2020年9月に前期型の個体を7000円(+送料)で入手しました。オークションの記載は「カビやクモリのない美品。撮影に影響のないレベルでのホコリやチリの混入はある」とのこと。届いたレンズには中玉にピンポイントでカビが発生しておりヘリコイドはかなり重めでしたので、自分でオーバーホールしました。カビの方は清掃で綺麗になり、カビ跡も残らず良好な状態となっています。 続く後期型のモデルは2020年10月にヤフオクで8500円+送料で落札購入しました。オークションの記載は「チリやホコリはあるがカビやクモリはない。ヘリコイドは重め」とのこと。届いたレンズは絞りを挟むガラス面に少しクモリがありホコリも多めでしたが、拭いたところ綺麗になりました。 後期型のブラックモデルは2020年10月にヤフオクで即決価格7480円+送料で落札購入しました。オークションの記載は「超美品。綺麗な光学です!。カビやクモリはなく、程よい視認性です」とのこと。このセラーは自分でオーバーホールができるようですので有難いです。届いたレンズはガラスがたいへん綺麗、ヘリコイドはグリスが交換されており動きはスムーズで、素晴らしいコンディションでした。
発売から50年以上が経過しているレンズですので、カビやホコリが混入している個体、ヘリコイドが重くグリス交換が必要な個体か数多く流通しています。少し値段が高くても、オーバーホールされている個体を狙うことをオススメします。
 
撮影テスト
オールドレンズらしい繊細な開放描写を持ち味とするレンズです。開放ではピント部を薄い滲みが覆う柔らかい味付けですが、解像力は高く、薄いベールの中に緻密な像を宿したような線の細い描写を楽しむ事ができます。繊細な開放描写を実現するにはF2でピント合わせをおこない、それから絞りを開けて撮影します。いったんフレアを排除したうえでピントを合わせたい部分(ピントの山)に、しっかりと芯をつくっておくのです。発色は開放でも予想に反し鮮やかで、コントラストもフレアが多いわりに良好、使いやすいレンズだと思います。露出を少しオーバーに振ったくらいでは白ぽくなることはなく、ある程度の逆光に耐えてくれます。この種のレンズは開放からF2までの描写性能の立ち上がりが大きく、絞りが良く効くところも大きな特徴で、マニアの言葉を借りるなら「一粒で二度おいしい」などと評されることがあります。少し絞れば滲みは消え、すっきりとしたヌケの良い描写で解像力やコントラストも更に向上、高性能なレンズとなります。
背後のボケは開放でポートレート域を撮る際にザワザワとしますが、2線ボケに至らないのは、このレンズの長所だと思います。グルグルボケや放射ボケについても、よく抑えられています。反対に前ボケはモヤモヤしたフレア(滲み)がたっぷりと入り、被写体前方側のピントの外れた部分では柔らかい像が得られます。前ボケが大きく滲むのは過剰補正レンズならではのものですが、これを見越し、バストアップ位の撮影距離にてピントを意図的に少し後ろ側にずらすと、被写体をフンワリとしたベールで包み込むことができます。歪みは微かに樽型ですが、ほぼ感知できないレベルでした。
今回の試写はオールドレンズ女子部所属の本多さんにも手伝ってもらいました。

前期型@F1.4(開放) +sony A7R2(WB:日陰) photo by spiral
後期型@F1.4(開放)+SONY A7R2(WB:日光)  photo by spiral

前期型@F1.4(開放) SONY A7III photo by Masako Honda

前期型@F1.4(開放) + sony A7III  photo by Masako Honda



後期型@F1.4(開放) +SONY A7R2(WB:日光) photo by spiral


前期型@F1.4(開放)+ SONY A7III  photo by Masako Honda
前期型@F1.4(開放) + SONY A7III photo by Masako Honda
前期型@F1.4(開放)+SONY A7R2(WB:日光) photo by spiral

後期型@F1.4(開放) +SONY A7R2(WB:日陰)photo by spiral
後期型@F1.4(開放) +SONY A7R2(WB:日陰) photo by spiral

後期型@F2.8 +SONY A7R2(WB:日陰)photo by spiral

後期型@1.4(開放) +SONY A7R2(WB:日陰) photo by spiral

後期型@F1.4(開放)+SONY A7R2(WB:日陰) photo by spiral


後期型@F1.4(開放)+ SONY A7R2(WB:日光)photo by spiral

後期型@F1.4(開放)SONY A7R2(WB:日光)

前期型@F1.4(開放) +SONY A7R2(AWB)

前期型@F2.8+SONY A7R2(WB:日光)

同じ場面にて前期型と後期型の撮り比べもしています。後期型はコーティングに改良が加えられており、コントラストの向上が見られるはずですが、実写による比較からは違いがよく判りませんでした。

2020/11/11

赤いコニカと緑のロッコール:プロローグ

赤いコニカ緑のロッコール プロローグ
6枚構成でF1.4に到達した
国産大口径レンズ
コニカとミノルタは、それぞれHEXANONとROKKORのブランドで数多くのレンズを市場供給した光学機器メーカーで、2003年に経営統合しコニカミノルタとなっています。コニカのレンズは赤褐色に輝くマゼンダ系コーティングとアンバー系コーティングの混合、ミノルタはグリーンに輝くアクロマチックコーティングが特徴で、特にミノルタのロッコールは「緑のロッコール」の愛称で親しまれてきました。

両社のレンズの中でいま特に注目したい製品は、F1.4の明るさをシンプルな6枚のレンズ構成で実現したHEXANON AR 57mm F1.4とROKKOR-PF 58mm F1.4の2本です。画質的な観点からみれば、F1.4の明るさのレンズは7枚や8枚で設計されているものが多く、現代レンズにより近い性能になります。事実、F1.4の明るさを実現した高速標準レンズは多くが、かつては7枚で設計され、今は8枚が主流です。一方、オールドレンズらしい個性溢れる描写に価値基準を置くならば、6枚で設計されている方が断然魅力的で、収差の魔力を求める事ができます。ところがF1.4の明るさで6枚構成のレンズは実は数えるほどしかありません。それだけに、このヘキサノンとロッコールはプレミアム・オールドレンズなのです。海外の製品では有名なAngenieux Type S21 50mm F1.5がやはり6枚玉です。

photographer: どあ*, model: 莉樺 & Re:Say(リセ),  赤と緑のカップ麺の元祖どん兵衛の「赤いうどん、緑のうどん」です。ロッコールユーザの写真家どあ*さんには緑のロッコールの使い手ですので、一活躍していただく予定です

2020/11/10

TAIR-62T 95mm F2.5


ミサイルの弾頭に搭載された
テレビジョンレンズ
TAIR-62T 95mm F2.5
ロシア製レンズの中にはHelios-40TやMIR-1Tなど、レンズ名の末尾にTの頭文字がつくものがあり、テレビシステム用に生産されたレンズを意味しています。今回取り上げ紹介するTAIR-62Tもテレビシステム用ですが、用途がかなり特殊で、ロシア軍のTV誘導ミサイルKAB-500に搭載され用いられました。ミサイルの弾頭部に設置されたレンズからTV映像を送り、目標に向かってミサイルを誘導・着弾させるのです。レンズは着弾とともにミサイルもろとも爆破されてしまいますので、儚い命でしたが、この子は運よく私のところにやって来て、写真用レンズとしての第2の人生を歩むことになっています。ただし、フツーの写真用レンズ(民生品)に比べると良い意味でも悪い意味でも、耐久性が高く、作りがよく、飾りっ気がありません。護身用にもなるくらいの重量感がありますので、これを持って気軽に旅に出ようという気にはなれませんが、近所をスナップ撮影で回るくらいなら問題ありません。
レンズの特徴はマイクロフォーサーズをギリギリで包括できるイメージサークルを持つところです。じつはマイクロフォーサーズ用の望遠オールドレンズには選択肢が多くありません。マイクロフォーサーズ機でオールドレンズを用いる方の多くは、フルサイズ用につくられた標準レンズや中望遠レンズなどを望遠レンズに転用していますが、これですとイメージサークルが広すぎるためレンズ内に余分な光を多く取り込んでしまいます。コントラストは落ち、写真にシャープネスや鮮やかな色を求める際にはデメリットです。イメージサークルにジャストフィットするレンズを使うことは時にとても重要なのです。しかし、一方でレンズは望遠になるほどイメージサークルが大きくなる傾向がありますから、小さなイメージサークルの望遠レンズはマイクロフォーサーズ用としては大変貴重な存在です。
ロシア軍のTV誘導ミサイルKAB-500(出展:Wikimedia Commons; Author:Евгений Пурель; 写真はwikimedia commonsのライセンス規則に則り借用しています)


KAB-500の弾頭部。ガラス内の下の方にTair-62Tが確認できます(出展:Wikimedia Commons; Author:Евгений Пурель; 写真はwikimedia commonsのライセンス規則に則り借用しています)

レンズの構成は下図に示すようなヘンテコな形態で、タイール型と呼ばれています。解像力やコントラストがやたらと高いのが特徴です。この基本構成は第二次世界大戦中にロシアの光学設計士David Volosov教授と彼の共同研究者であるGOI(State Optical Institute)のエンジニアたちの手でトリプレットからの派生として開発されました[1]。軍からの要望で暗い場所でも使用できる高速望遠レンズを開発することが目的でしたが、終戦後はシネマ用望遠レンズの基本構成としても積極的に採用されています。既存のレンズのどの構成にも似ていないロシア発祥の設計形態の一つといえます。 レンズ名の語源はわし座のアルタイール(日本では彦星)から来ています。ちなみにパートナーの織姫もレンズ名になっていて、こと座のベガにちなんだVEGAシリーズです。eBayなどでは彦星レンズと織姫レンズがセットで売られていることも多く、これはもう運命的としか言いようがないペアのようですね。
Tair-62Tの構成図。GOIレンズカタログ[2]からのトレーススケッチ(見取り図)


参考文献

[1] TAIRの光学系特許:USSR Pat. 78122 Nov.(1944)

[2] Catalog Objectiv 1970 (GOI): A. F. Yakovlev Catalog,  The objectives: photographic, movie,projection,reproduction, for the magnifying apparatuses  Vol. 1, 1970


入手の経緯・カメラへのマウント

ンズば2018年9月にeBayを通じてロシアのレンズ専門セラー(アンディさん)から21000円+送料の即決価格で購入しました。イーベイではこの方のみがレンズを出しているので、決まった相場はなく、彼の設定額が相場です。レンズのコンディションは「NEW  オールドストック」とのことで、完璧なコンディションの個体が届きました。まぁ、オールドストックでない中古品が万が一あるとすれば、一度はミサイルに搭載されながらも発射されずに廃棄されたミサイルから出てきた個体なのでしょう。中古品が滅多に存在しないことは容易に想像ができます。

レンズにはヘリコイドがついていませんので、カメラにマウントするには改造が必要です。私はM52-M42ヘリコイド(25-55mm)のカメラ側をライカMマウントに改造し、これをレンズに装着してライカMレンズとして使用できるようにしました。マイクロフォーサーズ機で用いる場合、大きく突き出した後玉がカメラの内部(センサーハウスの土手)に干渉しますので、後玉先端部のレンズガードを少し削らないといけません。とても厄介な改造です。


重量(実測) 454g, 絞り羽 11枚, 絞り F2.5-F22, フィルター径 52mm, 構成は3群4枚のタイール型


 

撮影テスト

レンズのイメージサークルは16mmシネマムービーに準拠していますので、マイクロフォーサーズ機で用いる場合、写真の四隅は本来は写らない領域です。四隅には光量落ちが出ますし、深く絞るとトンネル状のダークコーナーがあらわれ、ハッキリとケラれます。また、距離によっては背後にグルグルボケが出ますし、糸巻き状の歪みが生じ、真っ直ぐなものが曲がって見えます。マイクロフォーサーズ機では、こうした破綻を活かす方向で考える必要があります。もちろん、アスペクト比を変えたりセンサーサイズの小さいカメラを使えば、これらの破綻は回避できます。また、歪みや光量落ちは現像時にある程度補正できます。

レンズの描写は開放からスッキリとしていてヌケがよく、高解像で高コントラストです。ただし、トーンはなだらかで中間階調もよくでており、くもり日でも空の濃淡の微妙な変化までもしっかりと拾うことができます。発色は鮮やかでコンディションによっては気持ち悪いくらい鮮烈に写る事があります。ボケは前ボケも後ボケも均一に拡散し、バブルボケにはなりません。普通は前か後ろのどちらか一方が硬く、反対側は柔らかく写るのるのですが、このレンズの場合はいろいろな部分で普通のレンズの描写とは異なるようです。逆光には強く、ゴーストやハレーションはでません。

F?(少し絞っています) Olympus E-P3(AWB)

F2.5(開放) Olympus E-P3(AWB)

F2.5(開放) Olympus E-P3(AWB)

F2.5(開放)Olympus E-P3(AWB)

F2.5(開放)Olymus E-P3(AWB)


F2.5(開放) Olympus E-P3(AWB)