Bell & Howell - Angenieux Type M1 1inch(25.4mm) F0.95 (C mount)
★宇宙船レンジャー7号
レンジャー7号(P-54/Ranger-B)についてはこちらに船体図の詳細があります[3]。宇宙船に興味のない人は読み飛ばしてください。船体は全高3.6m、総重量は366kgで、幅1.5mの六角形のアルミフレームでできた基部(コアユニット)に推進装置と動力装置を内蔵、基部の左右には0.74m x 1.54mの発電用ソーラーパネルがあり、基部の一角には指向性アンテナが備わっていました。また船体後方に無指向性アンテナを内蔵した円筒形の塔を持ち、アンテナ塔の中央部に6台のTVカメラシステム(全てRCA-Vidicon社のスロースキャンTVカメラ)が設置されていました。このTVカメラシステムは2つの独立したチャンネルを持ち、各チャンネルがそれぞれ独立した電源、タイマー、トランスミッターを備えることで、トラブルに強い構造となっていました。このうちの第1チャンネルは2台のフルスキャン用カメラ(AカメラとBカメラ)が設置され、Aカメラには広角レンズとしてAngenieux社の25mm F0.95、Bカメラには望遠(狭角)レンズとしてBausch & Lomb社Baltar 75mm F2(T2.3)が搭載されていました。また、第2チャンネルには4台のパーシャルスキャン用カメラが設置され、これらには同じくA社の広角レンズ2台、B社の望遠(狭角)レンズ2台が搭載されていました。宇宙船は月面への下降を始める3日前の7月28日にアトラス・アジェナ大型2段ロケットに搭載され、フロリダ州のケネディ宇宙センターに併設されたケープカラベル宇宙軍基地の発射台(LC-12)から打ち上げられました[4]。打ち上げは順調に進み、予定どうり1段目のアトラスロケットを分離した後、2段目のアジェナロケットとレンジャー7が宇宙待機軌道に投入されました。続いてアジェナへの2度目の点火と切り離しにも成功、宇宙船レンジャー7は月遷移軌道へと投入されたのでした。
Bell & Howell - Angenieux 1inch F0.95(関東カメラ塗装モデル): 焦点距離 約25.4mm, 絞り F0.95-F22, 最短撮影距離 約0.45m, 重量 166g, フィルター径 約39mm, マウント規格 Cマウント, 6群8枚(ガウス発展型), 16mm /Super 16mm シネマムービーフォーマット |
★Angenieux Type M1
今回取り上げるのはレンジャー7号に搭載され月面探査で活躍したフランス製16mmシネマ用レンズのP.Angenieux Type M1です。レンズは1953年にピエール・アンジェニューの手で設計され、市販品としてはBell & Howell社の16mmシネマムービー用カメラ B&H Filmo 70シリーズに搭載する交換レンズとして、A社の広角10mm, 望遠75mmと共に供給されました[5,6]。レンズ構成は下図に示す通りで、F0.95の明るさを実現するためスタンダードなガウスタイプの前後に正の凸レンズを一枚ずつ追加し、屈折力を稼ぎながら各面の曲率を緩めバランスさせています。この種のレンズ構成は傑出した明るさと引き換えにペッツバール和の増大が問題となりますので、像面湾曲をある程度許容しても非点収差を十分に補正しきれない問題が残ります。ただし、画角を広げすぎなければ弱点にはなりません。Type M1の画角はは25°が定格で、これは35mmフォーマットに換算すると約100 mmの望遠レンズに相当しますので、画質的に無理のない設計であったと言えるでしょう。
Angeniux Type M1 F0.95 / 1inch の光学系:設計構成は6群8枚(ガウス発展型)。球面収差は強力に補正されるようですが、画角を広げると正レンズ過多によるペッツバール和の増大が問題になり、像面湾曲をある程度許容しても非点収差を十分に補正しきれないそうで[7]、グルグルボケと写真の四隅での解像力の低下を引き起こします |
★参考文献
[1] 米国ジェット推進研究所資料:Ranget
VII Photographs of the Moon Part O: Camera "A" Series, JET
PROPULSION LABORATORY, CALIFORNIA INSTITUTE of TECHNOLOGY, Aug. 27 (1964)
[2] AFCINEMA.COM, Remember 50 years ago… A famous lens made by Angénieux... (2022)
[3]NASAアーカイブ: Ranger7, Solar system Exploration, NASA
[4] 「スペースガイド1999」(財)日本宇宙少年団編 丸善株式会社刊
★入手の経緯
★撮影テスト
F0.95(開放)Pen E-P3(WB:auto, Aspect ratio 16:9) 前ボケの滲みがうつくスィ~ |
F0.95(開放)Olympus Pen E-P3(WB:auto, Aspect ratio 16:9) 開放0.95でも、この通りにピント部は緻密に描かれ、素晴らしい! |
F2.8 Olympus Pen E-P3(WB:auto, Aspect ratio 16:9) |
Dear Spiral,
返信削除It is good to see new articles from you. This article is helpful to me as I have a copy of this lens too.
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削除I see. Just whatever you feel more comfortable with.
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