おしらせ

2026/08/12


リンホフの高級カメラに供給された
ローデンシュトック社のプレミアムモデル
G.Rodenstock HELIGON 90mm F2.8 Linhof用
ヘリゴン(Heligon)はドイツのG.Rodenstock社が市場供給した、大口径レンズ群の名称です。35mm判カメラ用やArriflexシネマ用、X線撮影用としても展開されていましたが、今回取り上げる焦点距離90mmのモデルは、リンホフの中判プレスカメラ用に1950年代初頭から供給されたものです。同カメラの1950年初頭のカタログには当初ZeissPlanar 100mm F2.8Schneider Xenotar 100mm F2.8が供給されていましたが、どういうわけか1953年頃のカタログ内からは消えています。理由はわかりませんが、これらの代わりとなる明るい標準レンズとして抜擢されたのがHeligonだったのではないかと考えられます[1,2]
同種の中判レンズで口径比F2.8を持つ製品には5枚構成の設計が多い中、本品は6枚構成のガウスタイプを採用しており、安定感のある描写を特徴としていました。流通品には「Linhof selected」の刻印が見られる個体があり、リンホフ社が自社基準で選別・調整した上で自社製品に組み込んでいたことが伺えます。シャッターにはSynchro-Compurが用いられ、絞り羽根10枚、B1/400秒程度という当時のプレスカメラ用レンズとして実用的な仕様を備えていました。主にリンホフ・スーパーテヒニカ23(6x9)に搭載され、携行性に優れた標準レンズとして活躍しました[2]
Rodenstock HELIGON 90mm F2.8(Linhof Super Techinica 23用): 絞り F2.8-F32, フィルター径 49mm, 設計構成 4群6枚ガウスタイプ

 
レンズの相場と入手の経緯
eBay ではおおむね 6001000ドル前後で取引されており、市場での個体は決して多くないものの、常にいくつかの出品が見つかる程度に流通が安定しています。海外ではプロフェッショナル向けとして長期にわたり一定の需要が続いていたため、極端に枯渇することがないのはありがたい点でしょう。また、適切に扱われ、大きく傷んだものが少ないのは大きな魅力です。実用品としての信頼性が高いのは、このクラスのレンズならではの強みと言えるでしょう。
一方で、国内での流通は極めて稀で、ヤフオクやメルカリなど主要なフリマ・オークションサイトを丹念に探しても、まず見かけることはありません。リンホフに供給されたレンズという性質上、一般ユーザーの手に渡る機会が少なく、結果として国内中古市場ではほぼ“幻”に近い存在になっています。
今回入手した個体は知人からお預かりしたもので、はじめからM42マウントへ改造されていました。光学系にはカビ・クモリ・傷といった劣化は見られず、レンズ本来の描写性能を存分に引き出せる、良好なコンディションを保っていました。
この種のレンズシャッター方式のレンズはそのままではデジタルカメラで使用することはできず、マウント改造がほぼ必須となります。M42 などの一眼レフ用マウントへ変換するのが定番のアプローチで、本品もレンズシャッターのマウント部にリバースアダプターリングを固定し、直進ヘリコイドに接続させていました。
 
収録資料
[1] Operating Instruction for Super Techinica 6x9, Precision Camera, Werke Munchen 25
[2] Linhof Precision Camera Super Techinica 23 マニュアル(1950年代のもの)
 
撮影テスト
 
開放から周辺部に至るまで滲みやフレアの兆候はほとんど見られず、全体として非常にクリアでコントラストの高い描写を示します。ピント面の解像力は優秀で、エッジの立ち上がりが鋭く、微細な質感までも緻密に描き出します。
描写の方向性としては、クセノタールのようなシャープネス重視のキレッキレな設計とは一線を画し、プラナーに通じる滑らかな階調表現を維持しています。ディテールと柔らかなトーンを両立させた、質感重視の設計といえるでしょう。リンホフのような最高級カメラメーカーへ供給されていたレンズであることを踏まえれば、この完成度の高さにも納得がいきます。
近接撮影では、背後のボケにわずかな渦巻き——いわゆるグルグルボケ——が現れます。これは古典的なガウスタイプのレンズにしばしば見られる特徴であり、設計思想を考えれば自然な挙動といえます。とはいえボケ味が硬質に転じることはなく、輪郭の主張を抑えた適度な柔らかさと、品位ある滑らかさを保っています。背景の階調も上品に溶け、被写体を立体的に引き立てる描写傾向が感じられます。
色再現については、ローデンシュトック製レンズに共通する寒色寄りの傾向が本レンズにもしっかりと受け継がれており、クールで澄んだ色調が被写体の質感を誇張なく描き出します。過度な色偏りではないため後処理での微調整もしやすく、作品づくりの幅を広げてくれる一本です。
総じて、開放から高い描写性能を発揮しつつ、クラシカルな光学設計ならではの味わいも併せ持つ、非常に完成度の高いレンズです。
  
f2.8(開放) FUJIFILM gfx100S (FS:CC) 

f2.8(開放) FUJIFILM GFX100S (WB:auto, FS:CC) 
 
F2.8(開放) Fujifilm GFX100S(WB:auto, FS: Standard)

F2.8(開放) Fujifilm GFX100S(WB:auto, FS: Standard)
F2.8(開放) Fujifilm GFX100S(WB:auto, FS: ETERNA) ここから下の写真はフィルムシミュレーションを入れていますので、色味にはかなりクセがあります

F2.8(開放) Fujifilm GFX100S(WB:auto, FS: Eterna)




F2.8(開放) Fujifilm GFX100S(WB:auto, FS: Eterna Bleach Bypass)




F2.8(開放) Fujifilm GFX100S(WB:auto, FS: St)







F2.8(開放) Fujifilm GFX100S(WB:auto, FS: St)

F2.8(開放) Fujifilm GFX100S(WB:auto, FS: St)

F2.8(開放) Fujifilm GFX100S(WB:auto, FS: St)


F5.6  Fujifilm GFX100S(WB:auto, FS: St)

0 件のコメント:

コメントを投稿

匿名での投稿は現在受け付けておりませんので、ハンドルネーム等でお願いします。また、ご質問を投稿する際には回答者に必ずお返事を返すよう、マナーの順守をお願いいたします。