おしらせ

2026/07/31

Olympus F.Zuiko 32mm F1.9 and F.Zuiko 32mm F1.7


名機PEN-Dに搭載されていた
ハーフサイズ用レンズ
Olympus F.Zuiko 32mm F1.9 and F.Zuiko 32mm F1.7 

いよいよ夏本番となりましたが、先日、東京都内の中古カメラ店でジャンクカメラを物色してきました。このときの最大の収穫が、1962年に登場したオリンパスの名機、PEN-Dシリーズです。

PEN-Dシリーズには、いわゆる「ハーフサイズカメラ」用レンズとしては頭一つ抜けた明るさを誇る、F.Zuiko 32mm F1.9/F1.7が搭載されています。ハーフサイズでありながら美しい背景ボケと、柔らかく味わい深い描写を楽しめるとあって、当時たいへん人気を博したカメラでした。レンズの設計構成は4群6枚のガウスタイプです。

以前からこのレンズをデジタルカメラでも使ってみたいと思っていたのですが、今回は機会に恵まれ、F.Zuiko 32mm F1.9を搭載した前期モデル(1962年発売)と、F.Zuiko 32mm F1.7を搭載した後期モデル(1967年発売)の2台のジャンク品を同時に入手することができました。両レンズの描写の違いにも注目してみたいと思います。

Olympus F.Zuiko 32mm F1.9の構成図:設計構成は4群6枚ガウスタイプ。Pen-D取扱説明書よりトレーススケッチした
 

当時のオリンパスは、他社と比較して球面収差をややアンダー気味にチューニングしている点が印象的です。解像力一辺倒ではなく、フレアを抑えたコントラスト重視の描写、スッキリとしたクリアな抜け感、そして鮮やかな発色が大きな魅力です。ハイアマチュアや玄人好みというよりは、「誰でも手軽に美しく撮れること」を追求した、一般アマチュア向けの描写設計と言えるでしょう。このカメラに搭載されたレンズにも、こうしたオリンパスらしい思想が凝縮されていると、私自身は捉えています。

今回は、ジャンクカメラから取り出した2つのレンズを直進ヘリコイドに換装し、マウント側をSONY EマウントとFujifilm FXマウントに変換しました。一般の方には難しい改造ですが、秋葉原のオールドレンズ店「2ndBASE」でも同種の改造レンズを取り扱っているそうなので、興味のある方は一度相談してみるとよいでしょう。

左がOlympus PEN-Dで、F.Zuiko 32mm F1.9を搭載しています。右はその後継機 Olympus Pen-D3で、レンズは少し明るくなったF.Zuiko 32mm F1.7です
 

撮影テスト 

後期型 F.Zuiko 32mm F1.7
開放ではハイライト部分に若干の滲みが入り、とても美しい質感表現となります。ただし、コントラストへの影響は限定的で、鮮やかな発色もしっかりと維持されています。きれいな写真を撮るために考え出された、優れた描写設計であるように思えます。F1.7に対応するため、球面収差をわずかに過剰補正気味にしているのがポイントではないかと思われます。少し絞り込むとスッキリと抜けの良い像となり、さらにシャープな描写が実現されます。人気があるのも頷けます。
F4, Fujifilm X-Pro1


F4, Fujifilm X-Pro1
F1.7(解放) Fujifilm X-Pro1
F4  Fujifilm X-Pro1
F2.8  Fijifilm X-Pro1

F4  Fujifilm X-Pro1

F1.7(開放) Fujifilm X-Pro1
F1.7(開放) Fijifilm X-Pro1
F1.7(開放) Fijifilm X-Pro1

F1.7(開放) Fijifilm X-Pro1






























 

前期型 F.Zuiko 32mm F1.9

F1.9は光学設計に無理がないのでしょう。開放から滲みはほぼなく、スッキリとシャープな像が得られる、安定志向型のレンズです。解像力は平凡ながら、絞りによる描写の変化は小さく、オリンパスらしい完全補正型の描写設計ではないかと思われます。ボケも安定しており、ザワザワとした硬いボケにならないことも、そのことを裏付けています。なお、開放では周辺光量落ちが目立ちます。
 
F1.9(開放) Fujifilm X-PRO1

F1.9(開放) Sony NEX-3


F1.9(開放) Sony NEX-3

F1.9(開放) Sony NEX-3


F1.9(開放) Sony NEX-3

F1.9(開放) Sony NEX-3

F1.9(開放) Fujifilm X-PRO1


F1.9(開放) Fujifilm X-PRO1


 

















2本のレンズの描写には、開放で若干の差が見られます。滲みを活かした柔らかい要素を取り入れたいならば後期型、スッキリとした抜けの良い描写を求めたいのならば前期型というチョイスとなります。

2026/06/07

Promar Anastigmat Nippon 105mm F3.5


 

旭光学初期の中判用レンズ

Promar Anastigmat Nippon 105mm F3.5

旭日光学工業合資会社(現リコーイメージング)は、1919年に創業した歴史ある光学機器メーカーです。もともとは眼鏡レンズの製造が中心でしたが、1938年に「旭光学工業株式会社」へと改称し、カメラや写真用レンズの生産に本格参入。戦後は一眼レフ「ペンタックスSP」の大ヒットにより、世界的なメーカーへと成長を遂げました。

今回ご紹介するのは、同社のカメラ事業がまだ黎明期だった1930年代の写真用レンズで、旧・千代田光学(ミノルタ)のフォールディングカメラ「Minolta Auto Press(1937年発売)」へ供給された「Promar Anastigmat」です[1,2]。本レンズはテッサータイプ(3群4枚)の光学系を採用し、6×9判のイメージフォーマットをカバーしていました。また、ミノルタの二眼レフ「Minoltaflex」に供給された姉妹レンズ「Promar 75mm F3.5(6×6判用)」も存在します。こちらも旭日光学製であり、海外のミノルタコレクターのレビューでは「当時としては非常に端正な描写を特徴とし、初期のミノルタ中判システムを語る上で欠かせない存在」と高く評価されています。のちのペンタックス(タクマー系)レンズのルーツを探る上でも極めて重要なシリーズで、珍しいレンズということもあり、コレクターの間で一時話題となりました。

残念ながら当時の構成図は見当たりませんが、現物を確認したところ、後群の反射からテッサー型であることは間違いなさそうです。

 

[1] クラシックカメラ専科「ミノルタカメラのすべて」

[2] Camera-wiki, "Actiplan": https://camera-wiki.org/wiki/Actiplan#cite_note-2

 
Promar Anastigmat Nippon 105mm F3.5: 絞り羽 10枚構成, 絞り F3.5-F25, 設計構成 3群4枚テッサー型 



 
入手の経緯
レンズはカメラとセットで流通しているケースが大半です。カメラ自体は現存するものが少なく、中古市場では全く見かけない製品となっています。このため決まった相場はなくカメラとセットでは、やはりそれなりの価格が付くように思われます。今回の個体はヤフオクにてレンズ単体で出品されているものを6500円で手に入れました。出品時の記載ではレンズ内に薄いクモリがあるとのことでしたが、少し拭いてみたところ綺麗になりましたのでブログで取り上げることに。 
 
 
撮影テスト
ノンコートレンズのため逆光ではゴーストが出やすく、条件が悪いとコントラストが急に落ちます。ゴーストを抑えたければフードは必須です。古いテッサータイプのレンズによくある古めかしい淡い発色が特徴で、軟らかいトーンを楽しむことができるレンズです。3枚玉のトリプレットほど高解像ではありませんが、解像感は十分にあり、開放から滲みはなく、端正な描写です。深く絞ればコントラストは良くなり、発色もこの時代のレンズにしては良好です。ボケは距離に依らず安定しており、四隅まで破綻はありません。ボケ味も滑らかです。
全体的に安定感のある、とても優秀なレンズだと思います。堅実なレンズを作ることのできるメーカーは、その後大きく飛躍することを、このレンズは実証しているように思えます。もちろん、現実は常にそうなるわけではありませんが。
  
F3.5(開放), Kodak Gold 200( 6x6 format)
F3.5(開放), Kodak Gold 200( 6x6 format)
F3.5(開放), Kodak Gold 200( 6x6 format)
  続いて、デジタルカメラGFX100Sでの撮影結果です。GFXで撮影するとイメージフォーマットの中央部のみを使用した写真となりますため、写真の解像度という意味では損をしています。写真作例は参考程度にしてください。フィルムシミュレーションはクラシッククロームに設定し、レンズ本来の軟調描写を更に際立たせた写真に仕立てています。
 
F4.5  Fujifilm GFX100S(WB:auto, FS: CC)



F 3.5(開放) Fujifilm GFX100S(WB:auto, FS: CC)