清涼感のある上品な写りが魅力の高性能レンズ
Lens Test by Medium format CAMERA
3年前に書いたXenotarのブログ記事ではレンズの撮影テストに35mmフォーマットのデジタルカメラと銀塩カメラを用いたが、今回はいよいよ中判カメラによる撮影テストである。このレンズは推奨イメージフォーマットが中判フィルム(6x6フォーマット)に指定されており、規格どうり用いると35mm版換算で焦点距離43mm相当の標準レンズとなる。また、口径比F2.8は画質的に無理がなく、35mm換算でF1.5相当の大きなボケ量が得られるなど表現力も充分である。中判カメラで用いればレンズの潜在力を存分に引き出すことができるであろう。
今回、レンズをはじめて中判カメラで用いたところ、自分の知っているシュナイダーらしい色味がこのXENOTARでも顕著にみられるようになった。それは、ほんのりと青味がのり上品で清涼感のあるクールトーンなまとまり方をする描写のことである。この描写傾向はシュナイダー製レンズではクセノンの戦後型にもよく見られる。上手く使いこなせば見慣れた日常のワンシーンを良く晴れた日の清々しい朝の風景に変えてくれるに違いない。階調描写は中判カメラで用いる方がなだらかで軟らかく、35mm版カメラで用いる方が鋭くシャープな写りであった。では、写真作例を見てみよう。
CAMERA: BRONICA S2(中判6X6フォーマット)
FILM(ブローニー判・銀塩カラーネガ): FUJIFILM PRO160NS / KODAK PORTRA 400
露出計: SEKONIC Studio Delux L-398
クセノタールのフランジバックはブロニカ本体の規格より短いため無限遠のフォーカスを拾うことはできず、撮影は近接域のみとなる。無限遠のフォーカスを拾うにはレンズをカメラ本体の内部に沈胴させるかテレコンを使うなどの工夫が必要である。沈胴させる場合は鏡胴の細い前期型のみ可能で、鏡胴の太い後期型ではブロニカのマウント開口部に収まらない。
F5.6, 銀塩撮影( Fujifilm Pro160NS, 6x6)+Bronica S2:マクロ域にもかかわらず解像力は良好で四隅まで安定感のある写りである。階調はなだらかに推移しており暗部には締りがある |
F5.6, 銀塩撮影(Fujifilm Pro160NS, 6x6)+Bronica S2:全体的にほんのりと青味がのり美しい仕上がりになっている。このネガフィルムは本来はノーマルな発色で知られているものの、クールな仕上がりとなった |
F2.8(開放), 銀塩撮影( Fujifilm Pro160NS, 6x6) +Bronica S2:開放で近接域にも関わらず、収差的に安定しており、滲みの付け入る隙がない |
F8, 銀塩撮影( Kodak Portra 400, 6x6)+Bronica S2:近接域に限定した撮影では一般に収差変動の結果からボケ味はどの作例でも柔らかくなる。Xenotar本来のボケ味を見るにはポートレート域で撮影しなければならないが、今回はその願いはかなわなかった。ポートレート域ではもう少しザワザワするものと思われる |
★35mm版カメラでの作例
2年前に撮影した35mm版カメラによる撮影結果も参考までに少しだけ示しておこう。1枚目が銀塩カラーネガによる作例、2枚目がデジタルカメラによる作例である。
F5.6 Black model,銀塩撮影(Fujicolor Superior 200, pentax MX) : やはり35mm判カメラでは、より鋭くシャープな写りになる印象をうける |
F4, Compurシャッター搭載モデル, Nikon D3 digital, AWB: 一段絞るだけで衣類の質感やホコリなどが細部までしっかりと解像されている |