おしらせ


ラベル Tool の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル Tool の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2018/07/17

Leica M, a new universal mount emerged in the mirrorless-camera era

LEICA-M、それはミラーレス機時代に見直され始めた
古くて新しいユニバーサルマウント
私が写真撮影に用いるカメラはソニーのフルサイズ機、フジフィルムのAPS-C機、オリンパスのマイクロフォーサーズ機の3台のミラーレス機で、これらをオールドレンズの撮影フォーマットに合わせて使い分けています。レンズの方は一眼レフカメラの全盛期に作られた製品が中心で、M42マウント、ライカMマウント、ライカRマウント、エキザクタマウント、アリフレックスSTマウント、ニコンFマウントなど6種類のマウント規格にわたります。仮にこれら6種のレンズをマウントアダプターを用いて3台のカメラ全てで使用できるようにした場合、図1に示すように必要なアダプターの数は18にもなります。これだけの数のアダプターを揃えるのはかなりの出費ですし、持ち出す機材も大きく重くなります。そして、何よりも大きな問題は、撮影現場でレンズを付け替える際に混乱が発生することです。18もの組み合わせを管理するのは大変なことなのです。混乱を避ける良い方法はないものでしょうか。
従来のシステム:6つのレンズと3つのカメラをつなぐ全組み合わせをアダプター(矢印で表記)で繋いだ概念図

実は良い方法が一つあり、全てのレンズとカメラをライカMマウントに変えてしまうというのが今回ご紹介するアイデアです。手順から話しましょう。
まず初めに3台のカメラ全てにアダプターを装着し、マウント部をライカMマウントに変換します。図2をご覧ください。用意するマウントアダプターはLEICA(M)→SONY E(SE), LEICA(M)→FUJIFILM X(FX), LEICA(M)→OLYMPUS(M4/3)の3種類です。続いてレンズの側にもアダプターを装着し、全てのレンズをライカMマウントに変換します。レンズの1つは初めからライカMマウントなので、残る5本のレンズに対して5個のアダプターを用意すれば十分です。ここまでの準備で用意したアダプターの数はカメラの側が3、レンズの側が5ですから、新システムには合計8個のアダプターが導入されています。アダプターの数を従来のシステムの半数以下に削減できたのです。

新システム:6つのレンズと3つのカメラをライカMマウント経由でつないだ概念図



そうは言っても依然として8個のアダプターを管理するわけで、これで本当に混乱は避けられるのでしょうか。改めて図2で示した新システムを見てみましょう。新システムではライカMマウントをハブにして、6本のレンズと3台のカメラが1点で繋がっています。レンズもカメラも全てライカMマウントになっているので、レンズ交換時にカメラやレンズからアダプターを取り外したり、付け替えたりする必要ないことがわかります。実はこれが狙いだったのです。従来のシステムで発生したレンズ交換時の混乱は新システムでは原理的に発生しません。アダプターの数が減る分だけ機材全体の総重量も軽くなり、同時に機材への出費も軽減されます。このシステムを採用している人同士ならレンズの貸し借りも容易におこなえるはずです。
新システムはカメラやレンズを機種変更する際にも有利です。従来のシステムではレンズの機種変更毎に3個のアダプター、カメラの機種変更毎に6個のアダプターを入れ替える必要が発生しました。これに対し、新システムではそれぞれの機種変更に対して、入れ替えるアダプターは僅か1個で済みます。長期的に見ても運用コストの大幅な低減につながるのです。
運用中の3台のカメラのうち1つが故障した場合、従来のシステムでは特定のレンズが使用不可能になる可能性がありました。しかし、新システムでは全てのレンズを全てのカメラで使用できますので、そのような事態に陥ることはありません。アクシデントにも強いことがわかります。
カメラの側にヘリコイド機能付きの高性能アダプターを当てると、レンズの最短撮影距離が短縮され近接撮影力が向上しますが、新システムではその効果を6本のレンズ全てで享受できます。また、カメラの側にTECHART LM-EA7のようなAFアダプターを当てると、6本のレンズ全てでAF撮影が可能になります。
このようにライカMマウントをハブにするという考え方にはメリットしかありません。ただし、いくつかの注意点を挙げておきましょう。
まず、レンズとカメラの間に2種類のアダプターを噛ませる場合、アダプターの精度が悪いとガタが出ることがあります。この種のガタは画質にも影響を及ぼします。これを回避するため、少なくともカメラの側に高品質なアダプターを使う必要があります。たとえば日本製のrayqualブランドやコシナ製フォクトレンダーブランドのアダプターは作りの良さと高い精度に定評があります。2種類のアダプターを繋いでもガタが出ることは極めて稀です。

カメラの側に装着するアダプターの一例。右はrayqualブランドのライカM-SEアダプター、左はフォクトレンダーブランドのライカM-FXアダプター。いずれも造りの良さと精度の高さに定評のある製品です。アダプターの連結によるガタを防止するためにも、少なくともカメラの側にこのような高い精度を誇る高級アダプターを使用することをおすすめします



新システムではアダプターを用いて個々のレンズをライカMマウントに変換します。左はLeitz Summicron-R 50mm F2(ライカRマウント)にK&FブランドのライカR―ライカMアダプターを装着しています。中央はKinoptik Apochromat 50mm F2(アリフレックスSTマウント)にHAWK’S FACTORYブランドのアリフレックスST-ライカMアダプターを装着、右はCarl Zeiss Planar 85mm F1.4(コシナ製ニコンFマウント)にrayqualブランドのNikon F―ライカMアダプターを装着しています
 
追記 ライカMマウントの仕様のためと思われますが、焦点距離135mmを超えるレンズをフルサイズ機で使用する場合は、レンズによってはケラレが出ることがあるようです。ご注意ください。

本記事は2018年6月にオールドレンズのポータルサイトLENS HOLICに掲載された記事の再掲載です。

2017/08/03

Leitz 22232 x Techart LM-EA7

私は最近テックアート(Techart)のAFアダプターLM-EA7をSony A7Riiにとりつけ、オールドレンズをAF化して撮影を楽しんでいる。40代も半ばになると動体視力が衰え、老眼が始まるなどMFレンズでの撮影が厳しさを増してくる。そんな中、AFアダプターの登場はとても嬉しい知らせとなった。今回はAFアダプターLM-EA7との組み合わせて使用できる、おススメのマウントアダプターを1本紹介したい
ライカ純正のM42-LMアダプター。無限遠もok!
Leitz 22232 M42-Leicina M adapter x Techart LM-EA7
ライカが自社のカメラにM42レンズをマウントするための純正アダプターを出していた!。そんなことあり得るのだろうかと耳を疑いたくなる話だが、実はホントのことで、製品名はLeitz 22232である。このアダプターはライキナスーパー(Leicina Super)というMマウント(厳密にはライキナMマウント)の8㎜ムービーカメラにM42レンズを装着するためのアクセサリーとして、ライツが1970年代に供給していたものだ。ライキナのマウント部はライカMマウントと同一であるがフランジバックは0.1mm短く、このアダプターでM42レンズをライカのスチルカメラに装着しても、無限遠のフォーカスをギリギリのところで拾うことができない。しかし、0.1mmはわずか紙一重分なので、この程度ならTechartのLM-EA7はもちろんのこと、オーバーインフ気味に作られている中国製アダプターとの組み合わせの多くで、無限遠のフォーカスを問題なく拾える。このアダプター、実は使えるアイテムなのだ。
Leitz 22232 M42-LM(Leica M) ADAPTER: 重量(実測)50g, レンズ側 M42x1mm(Praktica/Pentax thread), カメラ側 Leica Mマウント, Leicina Super(8mm movie camera)用, 鏡胴内は内面反射塗料が塗布され、遮光線が切ってあり、光の反射を抑える仕様になっている。ドイツ版ebay にて99ユーロ+送料で入手した



私が所持しているレンズ資産の中でM42レンズは大きな勢力なので、M42-LMアダプターはAFアダプターの次に入手しなくてはいけない必須アイテムなのだが、現在市場で手に入る製品を見回すと中国製ブランドのKiponがLM-EA7に正式対応したアダプターを出している。日本製のrayqualブランドは工作精度の抜群に良いアダプターであるが、LM-EA7への対応は不明で、ユーザーからの報告も今のところ見当たらない。そうした中でrayqualに決めようか検討していたところ、今回のアダプターの存在を知り、面白そうなので入手することにしたのだ。
実はLM-EA7に組み合わせるアダプターを選ぶ際に注意しなければならないことが一つあり、モーターカバーへの干渉である。LM-EA7はレンズ側にモーターカバーが飛び出しているため、鏡胴径の太いマウントアダプターではこの部分に引っかかってマウントすることができないのだ。鏡胴径の小さな細身のアダプターなら何ら問題のないことではあるが、何でもよいというわけではないので、事前に対応をよく調べる必要がある。
今回手に入れたLeitz 22232は鏡胴が細身なうえライツブランドなので造りがよく、工作精度もたぶんよい。鏡胴内にはまともな反射防止塗料が使われており、安価なアダプターを用いるよりもハレーションの発生量は少ない。LM-EA7との組み合わせにおいてもガタつきは全くない。とてもおススメのアイテムだ。ebayでの購入額は99ユーロ+送料と高級アダプターと変わらない額で手に入った。相場は不明だがドイツ版eBayには自分が手にいれた個体以外に4~5個出ており、値段は100~250 ユーロ程度であった。
マニアやプロがアダプターの工作精度に拘るのは、サードパーティーのアダプターを介することによる光軸からの偏芯を極力抑えたいためで、これはレンズ本来の力を維持するために重要なことなのだ。工作精度の高い日本製アダプターが支持されるのはこうした理由からによる。ただし、工作精度が一般的な中国製アダプターの10倍であることが実写においてどれだけ意味のある効果を生むのか、ここについてはもっと踏み込んだ検証結果をアダプターメーカーや関連の専門紙が示してゆく必要がある。単なる気休めや幻想ではないということを示さなければ、本物思考のマニア達の心はいずれ離れて行く。日本のアダプター製品が世界のみならず、国内市場においても安価な中国製アダプターに飲み込まれてしまうのは、まさにその時なのであろう。私は日本人なので、そうなってほしくはない。アドバンテージはとても小さいのかもしれないが、それでもアドバンテージを示すことには幻想を打ち破る大きな意味があるのだと思う。これは重要なこと。だって、みんなメード・イン・ジャパン好きでしょ?

(2017年12月追記)
rayqualブランドのアダプターで知られる宮本製作所がアダプターの工作精度と画質の関係を公式ページに掲示してくれました。アダプターに0.2mm(紙一枚分)の傾きがあるだけで、写真の四隅における画質の低下が目立っています。
rayqualのアダプターは工作精度が抜群に高く、ガタのない気持ち良いアダプターをつくっており、レンズの無限指標のところで無限遠のフォーカスを精密に拾うこともできます。アダプターを何枚か組み合わせるとわかりますが、工作精度の低いアダプターでは装着したレンズにガタつきが目立ち、光軸ズレを起こしているため、レンズ本来の性能を発揮できません(こちらのページ参照)。工作精度の低いアダプターは安価な製品に多く見られます。
私はrayqualとコシナのつくるフォクトレンダーブランドのアダプターが大好きで、両ブランドのアダプターを何枚か所持しています。もちろん安価なブランドもいろいろ使っていますが、rayqualの記事を見て使いまわしの効くアダプターにこそお金をかけなければならないという思いがますます強くなりました。rayqualブランドは価格的にも勝負しているところがスバラシイと思います。

2017/07/14

Unknown technique to reduce the optical path length of M42 focusing helicoid

M52 x1-M42 x1 Male thread screw adapter(手前)と中国製のM52-M42フォーカッシングヘリコイド(後ろ)
M42フォーカッシング・ヘリコイドの光路長を1mm削減するウラ技
レンズの改造を趣味にしている人達の間ではお馴染みのM42フォーカッシング・ヘリコイド。日本製のBORGブランドや中国製品がマウントアダプター店やネットショッピング、ネットオークションなどで手に入り、プラスティック製の廉価品から真鍮製のコアを用いた高級品まで様々なモデルがある。これまで日本製のヘリコイドは品質面で中国製よりも優位であると考えられてきたが、最近の中国製ヘリコイドは設計精度が確かであったり反射防止塗料が塗布されているなど、日本製に勝る品質の製品が出てきた。日本製品のアドバンテージは壊れにくい耐久性と最短光路長11mmを実現した薄型モデル(BORG OASYS 7840 11-18mm)が存在することくらいである。ところが、この最短11mmの光路長を中国製ブランドの一回り大きな製品(M52-M42ヘリコイド 12-17mm)で実現できるウラ技がある事に突然気が付いた。必要な部品はeBayで1000円程度で手に入る"M52 x1-M42 x1 Male thread screw adapter"である(写真・上)。これを中国製のM52-M42ヘリコイドにはめると、下の写真のようにM42ネジのマウント部が1mm沈み込む。ここに鏡胴径(マウント部)が52mm未満のレンズを搭載すると、最短光路長が1mm削減できるのだ。ちなみに、マウント径が小さなレンズでなければ最短光路長が11mmにできない点については、日本製のBORGブランドも同じである。
市販で手に入る中国製M52ヘリコイドの各製品は、以下のような仕様に変わる。

   M52-M42 Focussing Helicoid
        12-17mm → 11-16mm
        17-31mm → 16-30mm
        25-55mm → 24-54mm
        35-90mm → 34-89mm
 
まぁ、こんな記事を書き残したところで、ごく一部の人にしか役に立たない情報だとは思うが。1mmの光路長に泣いた経験のある方は、この方法を実践してみるとよいかもしれない。




2015/02/06

M52-M42 focusing helicoid*


M52-M42ヘリコイド(左)とM42-M42ヘリコイド(右)。どちらもマウント側(カメラ側)はM42ネジとなっている。M52-M42ヘリコイドの方が内径が広いためマウント側で大きくすぼんでいて、いわゆる土手にあたる部分の面積も広く造られている

 
太いヘリコイドによる照り返しの軽減効果を検証する
M52-M42フォーカッシング・ヘリコイド
今、私の中で一押しのホットなアイテムになるつつあるのがM52-M42直進ヘリコイドです。これまで用いてきたM42-M42ヘリコイドに比べ、①内径が広く、②カメラ側(マウント側)の出口が大きくすぼんでおり、③出口の土手に当たる部分が薄く造られているというのが構造上の特徴です。このためイメージサークルの大きなレンズを長丈ヘリコイドに搭載する際に懸念されていた「内部での照り返し」が緩和され、コントラストの悪化を防止できます。強い光を前方から当てると効果の差がよくわかりますので、早速見てみましょう。
下の写真の上段はM42-M42ヘリコイド、下段はM52-M42ヘリコイドをカメラのマウント側からみたものです。いずれもヘリコイドは丈の長い36-90mmのモデルで、前方に中版用レンズ(6x6フォーマットをカバーできるヘリアー)を搭載し、その前方から強い光を当てています。角度をいろいろ変え、照り返し光が一番きびしい(強い)状態を写真に収めました。双方の結果にかなりの差があることがわかります。M42-M42ヘリコイドによる結果では内部の側面と出口の土手にあたる部分で明るい光の反射がみられます。これに対し、M52-M42ヘリコイドは内部の側面までの懐が深く、土手も薄いため、顕著な光の反射はみられません。このような照り返し光はハレーションの発生原因となり、コントラストや発色などの写真画質に甚大な影響を及ぼします。M52-M42ヘリコイドの方が好ましい結果であることは一目瞭然です。同様の観測を35mm版レンズを搭載した場合でも試しましたが、この場合は双方のヘリコイドとも側面での顕著な照り返しはみられませんでした。したがって、ここでの結果はM42-M42ヘリコイドを貶めるものではなく、使用上の注意があることを明らかにしているだけです。中判用レンズや大判用レンズを丈の長いヘリコイドに搭載する機会がありましたら、ご参考になさってください。主に長丈ヘリコイドに頼る機会の多いミラーレス機での用途において発生する問題になろうかと思われます。

M42-M42フォーカッシング・ヘリコイド36-90mm(上段)とM52-M42フォーカッシング・ヘリコイド36-90mm(下段)における照り返し光の比較。搭載したレンズはHeliar 7.5cm F3.5(6x6 medium format)です。




M52-M42ヘリコイドのカメラ側は52mmネジ(1mmピッチ)になっていますので、ここにレンズを搭載するには工夫がいります。今回用いた中国製のヘリコイドには52mm-42mmのフィルター用ステップダウンリング(ネジピッチ0.75mm)の装着が可能です。また、このステップダウンリングの先にはレンズのマウント改造によく用いられるM42(ネジピッチ1mm)リバースカプラーも装着可能でした。中国製のアイテムはいずれもネジピッチの工作精度が悪いので公証規格が合わなくても装着できてしまいます。ある意味スバラシイと思えるファジィなアイテム達です(笑)。なお、M52-M42フォーカッシング・ヘリコイドは現在eBayから入手可能です。

2013/12/19

Camera Mount for Helicoid Tube(CMHT) and Focusing Helicoid Tube

ヘリコイドチューブ用カメラマウント(中央・シルバー色の金具)、フランジ調整リング(前方・右2枚)、各種ヘリコイドチューブ(後列)

 
マニアの野望を叶えるレンズ遊びの究極ツール
ヘリコイドチューブ用カメラマウント x フォーカッシング・ヘリコイドチューブ
ヘリコイドチューブ用カメラマウントとはショートフランジのミラーレス機にフォーカッシング・ヘリコイドチューブというレンズの繰り出し機構を搭載するためのジョイントアダプターである。一般的なマウントアダプターとは異なり、カメラとレンズの間にヘリコイドチューブを内挿させるために用いる道具である。ヘリコイドチューブを導入すればレンズ本体が内蔵ヘリコイドを持つ必要はないため、活用できるレンズの範囲が広がる。バーレルレンズやエンラージングレンズ、複写用レンズ、プロジェクター用レンズ、工業用レンズなどにヘリコイドの繰り出し機構を提供し、これらをミラーレスカメラの交換レンズに変えてしまうマニア御用達のツールなのである。ヘリコイドチューブ用カメラマウント(以下ではCMHTと略称)のオス側は各種ミラーレス機のマウント規格、メス側はヘリコイドチューブのマウント規格(M42やM39などのネジマウント)になっており、搭載したヘリコイドチューブの先端にレンズやレンズヘッドを装着して使用する。最大の難所は使用したいレンズをヘリコイドチューブの先端部のネジ(M39/ M42/ M52ネジ)に取り付けることができるかどうかである。
ヘリコイドチューブには丈の長さ(最短光路長)や繰り出し長の異なる様々なバリエーションがある。ショートフランジのミラーレス機にCMHTを用いれば、使用するレンズのフランジバックに合わせヘリコイドチューブを自由に交換することができる。この種のツールはこれまでも一般的なマウントアダプターと一眼レフカメラの組み合わせにより実現できたが、搭載できるレンズはフランジバックの長いものに限られていた。この制限はミラーレス機の普及とCMHTの登場により大幅に緩和され、フランジバックの短いレンズでも使用できるようになった。最も短い11-18mmのヘリコイドチューブをEマウント機に用いる場合、先端に搭載することのできるレンズの最短フランジバックは30mmである。
CMHT(シルバーカラーの金具)をM42ヘリコイドチューブに装着するところ
ヘリコイド・チューブへの装着例:左がマウント側、右がレンズ側から見た様子である。ヘリコイドはいっぱいまで繰り出してある。外観は普通のヘリコイド付きアダプターと変わらない
CMHTとヘリコイドチューブの組み合わせがヘリコイド付マウントアダプターと大きく異なる点は、ヘリコイド部を交換することができる自由度の高さである。もちろん普通のヘリコイド付マウントアダプターとして用いることも可能で、ヘリコイドを繰り出せば搭載するレンズの最短撮影距離を強制的に短縮させることができる。
今回私が入手したCMHTはM42マウントのヘリコイドチューブをSonyのα7やNEXなどEマウント機に装着するための製品である。搭載できるヘリコイドチューブの市販品には下記のようなものがある。

ヘリコイド・チューブの市販品
ネジ規格:M42(レンズ側)-M42(カメラ側)
伸縮範囲      製品(入手先)
11mm - 18mm  日本製BORG OASYS 7840(Oasis Direct)
12mm - 17mm  中国製ノンブランド(eBay)
15mm - 25mm  日本製BORG OASYS 7842(Oasis Direct)
15mm - 26mm  中国製ノンブランド(eBay)
17mm - 31mm  中国製ノンブランド(eBay)
25mm - 55mm  中国製ノンブランド(eBay)
27mm - 47mm  日本製BORG OASYS 7841(Oasis Direct)
35mm - 90mm  中国製ノンブランド(eBay)

最近は中国製ヘリコイドチューブにも伸縮率の高い製品が次々と現れている。中国製のヘリコイドは筒の出口がややすぼんでおり、Sony A7で中望遠よりも長い焦点距離のレンズに搭載する場合にはケラレが生じることがわかっている。ケラレを避けたいならば日本製BORGブランドの使用をオススメする。BORGブランドでM42-Emountアダプターを構築する場合には、OASYS 7842に1cm長のM42マクロチューブを組み合わせるとよい。

ネジ規格:M42(レンズ側)-M39(カメラ側)
必要に応じてM42-M39ステップアップリングを用いる。
伸縮範囲       製品(入手先)
13.5mm - 23mm  中国製Yeenonブランド(eBay)
15.5mm - 29mm  中国製Yeenonブランド(eBay)
17.0mm - 34mm  中国製Yeenonブランド(eBay)
20.5mm - 45mm  中国製Yeenonブランド(eBay)
22.5mm - 48.8mm 中国製Yeenonブランド(eBay)

ネジ規格:M52(レンズ側)-M42(カメラ側)
伸縮範囲      製品(入手先)
12mm - 17mm  中国製ノンブランド(eBay)
17mm - 31mm  中国製ノンブランド(eBay)
25mm - 55mm  中国製ノンブランド(eBay)
35mm - 90mm  中国製ノンブランド(eBay)

ヘリコイドチューブ用カメラマウント(CMHT)は現在のところ国内での入手ルートがなく、eBayからのみ購入できる。私は中国製のYeenonブランドの製品(ソニーEマウント用)を14.19ドル+送料20ドルで購入した。この製品はマウント部の厚みが1mm(公証値)なので、仮に25-55mmのヘリコイド・チューブと組み合わせEマウント機(フランジ長18mm)に搭載すると、最短フランジ長の合計は44mm (1+25+18mm)となる。M42マウントのフランジ長は45.46mmなので、この組み合わせなら普通のヘリコイド付マウントアダプター(M42-Eマウント)として使用することも可能だ。下のスクリーンキャプチャーは実際にeBayで売られていたCMHTの製品販売ページである。Eマウント用以外の製品ではマイクロ・フォーサーズ用やFuji Xマウント用、EOS Mマウント用があった。
eBayに掲示されているヘリコイドチューブ用カメラマウントの製品販売ページ(画面キャプチャ)











萌えあがれレンズマニア達!以下では様々なジャンルのレンズに対する装着例を示す。最初は下の写真に示すような、ごく普通(?)のスチル撮影用レンズである。左側はデッケルマウントのSEPTON (ゼプトン)、中央はやはりデッケルマウントであるがロシア仕様の特殊なフランジ長を持つVEGA-3(ベガ3)、右側はMECAFLEX(メカフレックス)用望遠レンズのTELE-KILAR(テレ・キラー)である。デッケルマウント用レンズやレンジファインダー機用レンズは最短撮影距離が1m前後と長く、これまで花や虫などのマクロ的な撮影は諦めなければならなかった。ここにあげた3本のレンズの場合、最短撮影距離はSeptonが0.9m、Vega-3が1m、Tele-kilarが1.5mとなっている。3本ともヘリコイド機構を内蔵したレンズのため、ヘリコイドチューブに搭載するとダブルヘリコイド仕様となり、マクロレンズ並みの近接撮影が可能になる。
VEGA-3はフランジバックが通常のデッケルマウントのフランジよりも2~3mm長く、そのままデッケルレンズとして用いると指標どうりの正しい位置でフォーカスを拾うことができない。こうした製品固有の規格に依存する悩ましい事情も今回紹介するツールを用いれば全く問題にはならない。このレンズに用いるヘリコイドチューブは繰り出し長が最大で3cmにも達するため、2~3mm程度のズレは十分に吸収できるのである。
Tele-kilarはフランジバックが3本のレンズなかで一番短い。このようなレンズには丈の短いヘリコイドチューブを使う。一眼レフカメラには搭載できなかった組み合わせであるが、CMHTとミラーレス機の組み合わによって切り拓かれたレンズの新しい活路である。
左はVoigtlander Septon 50mm F2(デッケルマウント), 中央はKMZ Vega-3 50mm F2.8(Zenit-4/5/6ロシア版デッケルマウント), 右はKilfitt Tele-Kilar 105mm F4(MECAFLEX用/改M42) 。SeptonとVEGA-3はDKL-M42アダプターを用いてM42に変換後、ヘリコイドチューブ(25-55mm)に搭載している。Tele-kilarはM42ネジに改造してあるので、そのままチューブに搭載した





ミラーレス機Sony A7へのTele-kilarの搭載例

続いて複写用マクロレンズとエンラージングレンズ(引き伸ばし用レンズ)への装着例である。この種のレンズは一般にヘリコイド機構を内蔵しておらずレンズヘッドのみの製品である。フランジバック長の規格が製品モデル毎に不統一なので、ヘリコイドチューブをいろいろ試し最適な組み合わせを模索する必要がある。レンズのマウント部がM39ネジになっているケースが多く、M42-M39ステップアップリングを用いればヘリコイドチューブへの取り付けは容易である。
左はエンラージングレンズのBoyer Saphir 《B》 85mm F3.5、右は複写用マクロレンズのLeitz Macro Summar 8cm F4.5である。Saphir《B》はマウント部がM39ネジになっているので、M42-M39ステップアップリングを用いてM42に変換することでヘリコイドチューブに搭載している。SummarはCマウントなのでC-M42ステップアップリングを用いてM42に変換することでヘリコイドチューブに搭載している



ミラーレス機Sony A7へのSaphir Bの搭載例。Saphir Bは珍しいPlasmat/Orthometarタイプのレンズである

最後に中・大判撮影用レンズへの装着例である。この種のレンズも一般には内蔵ヘリコイドを持たないレンズヘッドのみの製品が大半である。フランジバック長の規格が製品モデルごとに不統一なので、ヘリコイドチューブをいろいろ試し最適な組み合わせを模索する必要がある。中・大判撮影用レンズは一部の広角レンズを除きフランジバックの長いものが多いので、ミラーレス機で使用する必要はなく、一眼レフカメラで使用した方がバランス的には快適である。この場合は普通のマウントアダプター(例えばM42-EOSアダプターなど)がCMHTの役割を果たす。CMHTを用いたミラーレス機への搭載はあくまでもフランジバックの短いレンズに対する活路を拓くものであり、フランジバックの長いレンズに対しては必ずしも最良の方法ではない。 
左はCZJ Biotessar 10cm F2.9, 中央はDallmeyer Dalmac 4inch(100mm) F3.5, 右はCZJ Doppel-Protar 128mm F6.3への搭載例である。各レンズとも大判撮影用レンズであり、さまざまな部品を組み合わせM42に変換している。この手のレンズをヘリコイドに搭載するには工夫や経験がいる。自分で手に負えない場合にはレンズ改造店に持ち込みマウント部を変換してもらえば、極端な仕様のレンズを除き大抵はうまくゆく(必ずうまくゆく保証はない)。私はこの手の改造が大好きなので自分でやらなきゃ気がすまない

せっかくなので最後に写真作例をお見せしよう。100年前に製造された古いレンズを現代のデジタルカメラに装着し楽しむことができるのは、とても幸福なことだと思う。新しい道具の登場が様々な可能性を押し広げてくれる事を今後も楽しみにしたい。
Doppel-Protar 128mm F6.3, 絞りF11, ISO2400, EOS 6D使用(AWB): 戦前に生産された2群8枚の大判撮影用レンズ。マクロ域でも良く写る。このレンズは開放付近で線の細い描写を楽しむことができる。いずれ本ブログでも紹介する予定である
Dallmeyer Dalmac 4inch(100mm) F3.5, 絞りF11, ISO, Sony A7'AWB): Dalmacはテッサータイプと言われている。こちらも戦前の製品だが良く写るレンズである




2013/07/02

EXAKTA-EOS mount adapter part2(フルサイズ機)


EXAKTA-EOSアダプター 
PART2(フルサイズ機編)

EXAKTA用レンズをCANON EOSシリーズの一眼レフカメラに装着するためのアダプターがEXAKTA-EOSマウントアダプターである。市場にはわけあって無限遠のフォーカスを拾うことのできる約0.7mm厚モデルと、無限遠に届かない約1mm厚モデルの2種が出回っている。実は無限遠のフォーカスを拾うことのできるモデルは、私の知る限り全ての製品がEOS 5D/6D系のフルサイズ機や銀塩カメラにおいて例外なくミラー干渉を起こす。しかも、ミラーが当たる場所がレンズの後玉ではなくアダプターの裏面もしくはレンズのかぎ爪なのである。ミラーがレンズの後玉に当たる場合には、レンズのヘリコイドを近接側に繰り出すことで引っかかったミラーを解除できるが、アダプターの裏面に引っかかる場合、解除は簡単ではない。ミラーを解除するにはアダプターをカメラから外さなければならず、ミラーを引っ掛けた状態でそれを行うと、最悪の場合にはミラーに大きなダメージを与えてしまう。センサーサイズやミラーサイズの小さいAPS系カメラならばミラーの干渉問題は起こらないが、大きなフルサイズセンサーを搭載したEOS 5D/6D系カメラや銀塩カメラでは、1mm厚の後者のタイプを導入しなければなならない。このタイプのアダプターは無限遠のフォーカスを犠牲にすることでミラー干渉を回避できるように設計されているのである。ちなみに、現在、eBayなどの中古市場に出回っている中国製品では、どちらのモデルにおいても無限遠のフォーカスを拾うことができると記載されている。EXAKTAとEOSのフランジ長の差は0.7mmなので、1mm厚のモデルに関しては「絞れば無限遠点も被写界深度に入りますよ」という意味なのであろう。厳密には嘘の記載である。

0.7mm厚のモデル
このカテゴリーに日本製は存在しないので、eBayなどから中国製品を入手することになる。価格は18ドル(2013年7月の時点)あたりからあり、黒色のアルミ製モデルが多く出回っている(下の写真)。ノギスで厚みを測ると0.65mmとなっており、EOS kiss digitalに装着したところ無限遠のフォーカスを拾うことができた。



1mm厚のモデル
近代インターナショナルの販売する日本製品(宮本製作所製)のrayqual/HANSAブランドと中国製品(下の写真)の2種が入手可能である。ただし、日本製は最近生産終了となってしまい、現在はショップの在庫からのみ入手可能である。いずれも真鍮製であるが、日本製はブラックカラーとなり、メーカー希望小売価格は1.8万円。中国製はシルバー色のみで、eBayでは18ドル辺りから売られている。EOS 5D/6D系のフルサイズ機や銀塩カメラでは、この1mm厚のモデルを使用しなければならない。もちろん、無限遠のフォーカスを拾うことはできないが、焦点距離100mmのレンズで50~100m先辺りまでのフォーカスを拾うことができた。


参考
[1] "An Exakta to Canon EOS Adapter that Allows Infinity Focus", Lens Bubbles, Yu-Lin Chan





2013/01/21

M42 Helicoid-hood M42ヘリコイド・フード


フォーカッシング・ヘリコイドをレンズフードにしてしまう逆転の発想

最近のM42フォーカッシング・ヘリコイドには伸縮率の高いものがあり、丈の長さが35mmから90mmまで変化する製品も出てきている。このヘリコイドにM42リバースリング・アダプターを取り付けると、何と丈の長さを自由に変えることのできる伸縮自在のフードになる。こんな製品を今まで待ち焦がれていた方も多いのではいだろうか。なお、フォーカッシング・ヘリコイドと言えば日本製ならBORGブランド、世界的にはeBayで入手できる中国製のノンブランド製品が主流となっている。
 私はイメージサークルの大きな中・大判用レンズをフルサイズ・フォーマットのカメラで用いる機会が多く、純正フードよりも丈が長く、口径の細いフードを探して使っている。しかし、市販のフードでは長さの規格が数限られているため、都合良くケラレの起きないギリギリの長さのフードが見つかる機会は極稀である。その困難をいっぺんに解決してくれるのが、今回発案するM42ヘリコイド・フードというわけだ。

前列の2枚はM42リバースリングで、後列の4本はM42フォーカッシング・ヘリコイド。後列左からBORG OASYS 7840(11-18mm)、BORG OASYS 7842(15-25mm)、中国製M42ヘリコイドユニット(25-55mm)、中国製M42ヘリコイドユニット(35-90mm)である
M42フォーカッシング・ヘリコイドの市販品
伸縮範囲     製品
11mm - 18mm  BORG OASYS 7840(日本製)
12mm - 17mm  中国製(eBay)
15mm - 25mm  BORG OASYS 7842(日本製)
17mm - 31mm  中国製(eBay)
25mm - 55mm  中国製(eBay)
27mm - 47mm  BORG OASYS 7841(日本製)
35mm - 90mm  中国製(eBay)

M42リバースリングアダプターはいろいろな規格のものがオークションやショップで購入できる。ステップアップリングやステップダウンリングと組み合わせれば装着できるレンズの幅が広がる。
M42リバースリングアダプターを介してM42フォーカッシング・ヘリコイド(35-90mm)をCarl Zeiss Jena Tessar 80mm F2.8の前方に取り付けるところ。M42リバースリングアダプターは片側がフィルタースレッドの雄ネジであるため、レンズのフィルターネジに装着できる。もう片側はM42マウントネジになっている。このレンズは35mm判のレンズとして販売されていたが、光学系自体はもともと中判撮影向けに設計されたものなので広いイメージサークルを持つ。深いフードを装着し徹底したハレ切り対策をとる必用のあるレンズだ
Meyer Primotar 80mm F3.5に中国製M42フォーカッシング・ヘリコイド(25-55mm)を装着したところ。このレンズも35mm判として販売されていたレンズであるが、上のTesssar同様に光学系自体は中判撮影用にも対応できる広いイメージサークルを持つものからの流用である。やはり深いフードを必用とするレンズだ


  本稿では2本のレンズ(Carl Zeiss Jena Tessar 80mm F2.8とMeyerのPrimotar 80mm F3.5)に対するヘリコイド・フードの装着例を示している。これら2本はもともと中判撮影用に設計されたレンズをメーカーが35mm判レンズとして売っていたものだ。不思議なことにTessarタイプの中望遠レンズには中判用からの流用が目立つ。何か深い意味でもあったのだろうか。イメージサークルが大きいので光学系が取り込む光の量も通常の35mm判レンズに比べると遙かに多い。35mm判レンズとして用いる場合には、その大半が不要光として内面反射光の供給源になってしまう。深いフードを用いて徹底したハレ切り対策を施さないとレンズ本来の描写力(シャープネスや発色)を損ねることになりかねない要注意レンズだ。
 なお、この手のフォーカッシング・ヘリコイドには内壁に内面反射防止のためのペイントや凹凸構造が施されているのでフードとしての性能も充分である。フロント部が不細工でデザインには改善の余地を残すが、機能や性能は充分のはずである。M42の口径よりも細いフードが必用な場合にはM39リバースリングを介してM39(L39)エクステンションチューブを用いるという手もある。フード用キャップにはM42マウントのリアキャップをそのまま流用すればよい。