市塚光学の16mmシネマムービーレンズ
Ichizuka Opt. Professional KINOTAR 50mm F1.4
市塚光学工業株式会社(Ichizuka Opt.)は1951年より東京都新宿区下落合2丁目にてシネマムービー/CCTV用レンズを生産していた光学機器メーカーです[1]。主力製品は8mm/16mmフォーマット用レンズで、主に米国と日本に市場供給されました。OEM生産にも積極的に取り組む傍ら自社ブランドのCosmicarやミモザ社の登録商標であるKinotar/Kinotelでもレンズを製造[2]、広角から望遠、明るい大口径レンズまであらゆる種類のシネレンズを手掛けていました[3]。同ブランドには広角のWide-Angle KINOTAR、標準レンズのKINOTAR、望遠のKINOTEL、明るいハイエンドモデルのProfessional KINOTARなどがあります。同社は1967年にCosmicar Optical Co.に改称、COSMICARブランドやIZUKARブランドで産業用CCTVレンズを供給しますが、その後は経営不振に陥り旭光学(後のPENTAX / RICOHイメージング)の子会社となっています。旭光学の傘下ではCOSMICARブランドでCCTVレンズを生産し、現在もRICOHイメージングの傘下で生産を続けています。雑誌や広告に掲載されている情報をたよりに、中古市場に出回っているKINOTARブランドのレンズを列記しておきましょう[1,3]。これが全てではないかもしれませんので、もし他にもありましたら、お知らせいただければ追加してゆきたいと思います。
Wide-angle Kinotar
1.9/6mm(Dマウント); 1.5/15mm(Cマウント)
Kinotar
1.9/13mm(D); 2.5/7mm(D); 1.9/38mm(D); 1.4/38mm(D); 1.9/25mm(C); 1.9/12.7(C); 1.9/75mm(C) ; 1.9/15mm(C)
Kinotel
1.5/75mm(C); 2.5/75mm(C); 3.5/75mm(C); 1.9/25mm(C) ; 1.5/38mm(D); 1.9/38mm(D); 2.5/38mm(D); 3.2/38mm(D); 3.5/38mm(D)
Professional Kinotar
1.4/12.5(C); 1.4/25mm(C); 1.9/50mm(C); 1.4/50mm(C); 2.5/75mm(C); 1.4/75mm(C)
今回は最近ヤフオクで手に入れたProfessional KINOTAR(プロフェッショナル・キノター) 50mm F1.4を取り上げます。設計構成は光の反射を見る限り4群6枚のガウスタイプと推測でき、同社のレンズの中では75mm F1.4に次ぐボケ量の大きなレンズです。イメージサークルはフルサイズセンサーこそカバーしていませんが、APS-Cフォーマットは充分にカバーしており、暗角(ダークコーナー)は全く出ません。
Professional KINOTAR 50mm F1.4: 重量(実測) 274g , フィルター径 40.5mm, 絞り羽 10枚, 絞り f1.4-f22, 最短撮影距離 1.5m強, cマウント, 定格イメージフォーマット 16mmシネマフォーマット
★参考文献・資料
[1]アサヒカメラ 1958年10月広告
[2] United States Patent and Trademark Office
[3]Popular Photography ND 1957 4月; 1957 1月(米国)
★入手の経緯
★撮影テスト
最後にフジフィルムのX-T20での写真です。コントラストの高い描写であることがわかるとおもいます。四隅での光量の落ち具合がなだらかで、雰囲気ありますね。
[3]Popular Photography ND 1957 4月; 1957 1月(米国)
★入手の経緯
普通のKinotarはどれも安く手に入りますが、Professional KinotarのF1.4クラスは別格で、日本よりも海外での評価が高く、eBayでは高値で取引されています。75mm F1.4と50mm F1.4は特に珍しいモデルでコレクターズアイテムとなっています。マイクロフォーサーズユーザーならProfessional Kinotar 25mm F1.4はまだ安くてオススメです。
本レンズは2019年12月にヤフオクに出品されていたものを競買の末に落札しました。オークションの記載はではレンズにクモリがあるとのことでしたが、ただの汚れで軽く拭いたところ完全にクリアになりました。
本来は16mmシネマフォーマットに準拠した設計のレンズですが、今回はAPS-Cフォーマットで試写しまた。本来は写らない写真の四隅を拾うので画質的に乱れるのは当然ですが、ガウスタイプのためか、このレンズは開放でも四隅まで安定感があります。開放ではピント部ハイライトが微かに滲む適度に柔らかい些細な描写ですが、解像感は充分にあります。トーンはとてもなだらかで繋ぎ目がなく、開放付近ではオールドレンズらしい軟調な描写を堪能できます。発色は開放でやや淡くなるものの濁るほどではありません。絞ればフレアは消えスッキリとした透明感のある描写で、発色も鮮やかになります。グルグルボケや放射ボケはなくボケは安定しており、やや硬めの歯応えのあるボケ味で、なだらかなトーンを纏い良い味を出しています。逆光では簡単に虹が出ますので、活かすもよし、フードをつけて抑えるのもよし。フルサイズセンサーこそカバーしませんが、これだけ明るければAPS-Cセンサーでもフルサイズ換算で75mm F2相当の画作りができます。魅力的なレンズだと思います。
モデル 彩夏子さん
F1.4(開放) sony A7R2(APS-C mode, WB:曇天) |
ここまでかなり優等生ですが、逆光での写りはどうでしょう。最初の1枚目(下の写真)はフードをつけた場合ですが、ピント部をフレアが纏い、キラキラとした素晴らしい描写となります。続いてがフードをとった場合の写真です。ハレーションが盛大に発生し、なかなかの面白い画になります。虹が出ることもありました。このレンズはハマります。
F1.4(開放) sony A7R2(APS-C mode, WB:日光) |
最後にフジフィルムのX-T20での写真です。コントラストの高い描写であることがわかるとおもいます。四隅での光量の落ち具合がなだらかで、雰囲気ありますね。
F1.4(開放) FUJIFILM X-T20(WB:曇空) APS-Cは完全にカバーします。コントラストがいいですね |
F1.4(開放) FUJIFILM X-T20(WB:曇空)縦写真を2枚貼り合わせました。ボケには安定感があります
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