おしらせ

 
おしらせ
上野由日路x伊藤弘 オールドレンズ写真学校 写真展 vol.4
11月3-5日 場所は原宿 詳しくはこちら スタッフとして参加予定です。

オールドレンズ女子部
12月2日(土) 東京ドームシティ イルミネーション撮影散歩&お茶会 詳しくはこちら

TAIR-41Mのブログエントリーに写真を追加
Oo.ema.oOさんにオリンパスPENで撮影したタイ―ル41M(前記モデル)の写真を提供していただきました。

2013/12/09

KMZ VEGA-3 50mm F2.8 (Zenit 4/5/6 VIZ."Zenit-DKL")



銘玉の宝庫デッケルマウントのレンズ達
PART4: VEGA-3 50mm F2.8
やはり存在した!デッケルレンズのロシア版コピー
Vega-3(ベガ3)はロシアのKMZ社が旧ソビエト時代の1964年から1968年まで生産したZenit-4(ゼニット4)という一眼レフカメラに搭載したレンズである。カメラの方は4年間で19740台生産され、そのほぼ全てにVega-3が標準搭載されていた。Zenit-4はフォクトレンダー社が生産した一眼レフカメラ(デッケルマウント採用)のBessamatic (ベッサマティック)から産み出されたコピーカメラであり、Vega-3は紛れもなくロシア版デッケルレンズなのである。このカメラの交換レンズには他にRubin-1 37-80mm F2.8というズームレンズも存在していた。Rubin-1(ルービン1)はKilfitt(キルフィット)社がフォクトレンダーブランドとしてOEM供給した世界初のスチル撮影用ズームレンズのZoomar(ズーマー) 2.8/36-82mmから生み出されたコピー製品である。Vega-3にしろRubin-1にしろマウント部の形状はBessamaticと完全に一致するので、デッケルレンズ用アダプターに装着することが可能で、私の所持している中国製DKL-M42アダプターとDKL-Nikon Fアダプターでは絞りの連動も問題なく行えた。ところが通常のデッケルレンズよりもフランジバックが長く、正しい距離でフォーカスを得ることができない。レンズとカメラの間にスペーサーを入れフランジ長を補正する必要があることがわかった。さぁ、どうする。
重量(実測)100g, フィルター径 40.5mm, 絞り羽 5枚, 最短撮影距離 1m, 焦点距離50mm, 開放絞りF2.8, 構成4群5枚Xenotar型, Zenit-4/5/6マウント。レンズ名の由来は七夕の織女星(琴座の一等星)Vegaである

Vega-3の設計構成(下図)は高解像で硬階調な描写を特長とする4群5枚のXenotar /Biometarタイプである。構成図をよく見ると旧東独Zeiss JenaブランドのBiometarよりも旧西独のSchneider社が設計したXenotarに近い丸みを帯びたダルマのような形状になっていることがわかる(こちらを参照)。この丸みは元を辿ればXenotarタイプの母型となったTopogonの光学系から来ており、非点収差の補正効果を高める働きがある。Vega-3がXenotar同様にピント部の均一性と周辺画質(画角特性)を重視したレンズであることを意味している。
Vega-3の光学系。Zenit-4の技術資料からトレースした。左が前方で右がカメラ側となる。構成は4群5枚の典型的なXenotarタイプである
フランジバックの調整
Vega-3が採用しているZenit-4/5/6マウントは通常のデッケルマウント(Retina/Voigtlander-DKL)よりもフランジバックが2~3mm長く、そのままデッケルレンズとして用いると、無限遠の指標点でフォーカスがオーバーインフとなってしまう。指標どうりの正しい位置でフォーカスを拾うにはスペーサー(フランジ調整リング)を入れフランジバック長を補正しなければならない。レンズをミラーレス機で使用するならば解決ははやく、最近はやりのヘリコイドアダプターを用いてアダプターの伸縮によりフランジ長を補正すればよい。この場合は、例えばDKL-M42アダプターでレンズのマウントをいったんM42に変換し、M42ヘリコイドアダプターを介して各種カメラマウントに変換すればよいであろう。一方、レンズを一眼レフカメラで使用する場合には、いったんDKL-M42マウントアダプターを用いてマウントをM42に変換し、M42ネジに2~3mm厚のスペーサーを填めるのが簡単である。ネジマウントの構造はシンプルなのでスペーサーを填めるには好都合なのである。ただし、レンズをNikon Fマウントに変換する場合はM42-Nikon Fアダプター(補正レンズなし)を入れるだけで約2mm厚のスペーサーを入れることと同等になり、運がよければフランジ補正不要のままNikon Fマウントのカメラで使用できる。より精確なフランジ補正をおこないたいなら、ここから更にスペーサーを用いた0.1mmレベルの微調整が必要になる。この手のスペーサー(M42フランジ調整リング)はヤフオクで金属製のものが入手できる。プラ板やポリエチレン板などで自作してもよい。
DKL-M42アダプター(右)のマウントネジに自作のフランジ調整リング(黒い金属のリング)をはめ、その上からM42- Nikon Fアダプター(左)を用いてNikon Fマウントのカメラに搭載してみたところ、無限遠のフォーカスをほぼ精確に拾うことができた



入手の経緯
今回紹介するレンズは2013年11月に英国のeBayメンバー(個人出品者)から手に入れた。この出品者はレンズばかりを売っているので素人ではないと判断し購入に踏み切ることにした。レンズは45ポンド(75ドルくらい)+送料10ポンドの即決価格で売り出されていたが、買い手のつく気配は全くない。値切り交渉を受け付けていたので35ポンドでどうかとリクエストしたところ、直ぐに私のものとなった。商品の記述は「ベリーグッドコンディション。ガラスはクリーン、絞りはスムーズ、概観はグッドコンディション。ヘリコイドリングのギザギザに少し汚れがある。半世紀前のレンズにしては良好だ」とのこと。この出品者の他のレンズに対する紹介文を読む限りではオーバーな表現はない。届いた品はホコリや拭き傷すらない良好な状態であった。eBayでの相場は70ドル程度であろう。

撮影テスト
使用カメラ Sony A7(α7) AWB
Xenotar型レンズといえば、一般に四隅まで高解像で硬階調な写りを特長とし、鋭く硬質な解像感とともに被写体を細部まで緻密に描ききることを得意としている。Vega-3も確かに解像力は高く、開放でも四隅まで破綻のない画質である。しかし、Xenotarのような鋭さや硬さはなく、開放での写りは明らかに軟調気味で、絞っても適度な軟らかさが保たれている。こうした描写傾向はこのレンズのオールドレンズ的な長所として評価してよい点であろう。デジタル撮影の場合は開放で色収差の滲みがみられ、ハイライト部の周りが薄らと色づく事があった。ボケが硬く、ザワザワと騒がしく見えるのはXenotar型レンズによくある傾向である。距離によっては僅かだが背景にグルグルボケもみられる。
F8, sony A7, ISO4000 (AWB): 絞っても階調描写は硬くならず、なだらかな濃淡変化を維持している



F4, sony A7, ISO2000 (AWB): 軟調な階調描写はシルバーを美しく引き立たせる効果がある




F8, sony A7, ISO6400 (AWB): 最近のデジカメは高感度に強い。これがISO6400の画質なのかと自分の目を疑いたくなる写りだ



F2.8(開放), Sony A7(AWB):  ピント部は開放でも高画質だ。後ボケはザワつき気味で、若干グルグルボケも出ている

10 件のコメント:

  1. フランジバック長が、西側の製品と違うのはわざとでしょうか。何かの必然でしょうか。
    spiralさまのご意見うかがえますか?

    「あの国」は、何でもコピーするといっても、(西側カメラメーカ各社が)他社製造の量産レンズシャッターを採用する、という製造分担方式までコピーすることはなく、シャッターも自前でお作りになったでしょう。
    その設計あるいは商品企画で何があったのでしょうか。

    エグザクタ等が東西の壁をこえ、両側で作られた製品を組み合わせられるのをあわせ考えると、不思議に思えます。

    返信削除
    返信
    1. フランジを西側と同じにした場合、カメラには商品価値が生まれますので輸出できますが、レンズに関してはxenotarやズームレンズの特許があり、西側への輸出は簡単にはいきません。そもそもレンズはともかくとして、ロシアのカメラって、西側ではあまり売れなかったのではないでしょうか。フランジを西側のデッケル規格に合わせることにメリットがみいだせませんし、輸出する気などなかったのかもしれません。カメラもレンズもロシアものにしては、あまり大量にはつくられていません。なんで交換レンズが2本しかないのか…。不可解ですよね。

      あまり、スッキリとした考えが浮かびません。すみません。

      削除
  2. 近接性能が改善されているのでしょうか?
    レンズのフォーカス環指標をみる限り、西側のものよりも寄れるレンズになっているということはないようですが・・・

    返信削除
    返信
    1. 最短撮影距離は1mです。デッケルが寄れないのはマウント部の穴が小さく、シャッターの厚みの問題で、近接側に繰り出しすぎると穴の縁にケラれるからなのではないでしょうか?穴を大きくしたり、シャッターを薄く造れれば問題なしということで、製造技術の進歩により後期のレンズは寄れるようになったのでは?

      削除
  3. ふむ。
    とすると、「あの国」は、自前シャッターを薄く設計・製造することができず、それがカメラの寸法、レンズの位置、さらにはレンズのバリエーションに影響を与えた、という可能性はあるでしょうか。

    返信削除
    返信
    1. 私も同じことを考えてました。

      削除
  4. お教えありがとうございました。

    返信削除
    返信
    1. 最短撮影距離とシャッターの厚みの関係はあくまでも想像ですので、確かなことはわかりません。でも、あの小さな穴は繰り出す際にケラレの原因になることは容易に想像できますよね?コメントありがとうございました。

      削除
  5. 逆にいうと、Zenit-4に西側デッケルレンズを付けると無限遠はだせないが、後玉を繰り出さなくてもそこそこ寄れるものになる、ということですね。
    「あの国」の狙いは、RetinaやBessamaticの近接能力に不満をいだくマニアへの、ニッチな売り込みだったとか。(冗談)

    返信削除
    返信
    1. ただし、2~3mm程度繰り出したところでは、マクロ域には届きません(笑)。

      削除

匿名での投稿は現在受け付けておりませんので、ハンドルネーム等でお願いします。また、ご質問を投稿する際には回答者に必ずお返事を返すよう、マナーの順守をお願いいたします。