ハロウィーンの夜に魔力系レンズの力を解き放つ
富士フィルムの軟焦点レンズ
Fujifilm EBC FUJINON.SF 85mm F4(M42 mount) Rev.2
1930年にドイツのローデンストック社からひどく変わった不思議なレンズが登場します。それはIMAGON(イマゴン)という名のレンズで、まるでレンコンの断面のような多数の穴を持つ複雑な絞り「イマゴンディスク」を内蔵していました。このレンズの吐く写真も独特で、残存収差を故意に残し、写実的な画作りから大きくかけ離れた、甘くロマンチックな柔らかさと、毛糸のようなフワッとしたぼかし効果、写真というよりは絵画に近い描写を特調としていました。しかも、中心部の像は緻密で繊細です。たちまち世の肖像写真家達を魅了し、虜にしてしまいます。イマゴンは後に「ソフトフォーカス(軟焦点)レンズ」という新しいジャンルを切り拓くパイオニア的な存在となります。富士フィルムはこの伝説的なレンズを研究し、1970年代当時の最新のレンズにイマゴンディスクを内蔵させたEBC FUJINON.SF 85mm F4を開発、1970年から1979年まで市場供給しています。レンズの設計構成はIMAGONが単玉1群2枚で収差のオンパレードであるのに対し、FUJINON.SFは4群4枚のアナスティグマートです。球面収差を意図的に残存させながらも他の収差を確実の補正することができ、イマゴンディスクの作用を最大限に活せるよう最適化されています。同社のFUJINON SF 250mm F5.6とともに、IMGON
EBC Fujinon SF 4/85の構成図(トレーススケッチ)左が被写体側で右がカメラ側。構成は4群4枚で、第2レンズが正で第3レンズと第4レンズの感覚がもう少し長いならばエルノスター型に近い設計となります |
フジノンSFのソフトネスコントローラー
ソフトフォーカスレンズの目指す軟調描写とは、いわゆるピンボケとは異なり、被写体の1点から出た光がイメージセンサーやフィルム面で像を結ぶ時に、その点像が周囲にハロと呼ばれる滲みを纏いながらも、中心には鋭く強い明るさの核(結像核)を持ちます。この核があるおかげでピントの合っている部分はしっかりと解像され、周囲のハロと相まって、ぼんやりとした柔らかく幻想的な味付けの中に緻密な像を宿した、繊細な描写表現が得られるのです。今回取り上げているEBC FUJINON.SFには更に「ソフトネスコントローラー」という特殊な機能があり、結像核とハロのバランスを微調節することができます。大小様な大きさの穴があいたイマゴンディスクを絞りの直ぐ後ろに配置し、絞りの開閉によってディスクの効果(ハロの出方と発生量)をコントロールすることができるのです。このレンズはFUJI PHOTO FILM CO.(現FUJIFILM CO./富士フィルム株式会社)のフジカSTシリー
参考文献・資料
[1] 「写真レンズの基礎と発展」小倉敏布著 クラッシックカメラ選書2 朝日ソノラマ
[2] The History of FUJINON -the heritage of XF Lenses- / FUJIFILM
[3] A
History of the Imagon lens by Dr. Alfons Schultz
(archived)
F4(開放) Fujifilm GFX 100S(WB:AUTO, F.S.:EB) |
F4(開放) Fujifilm GFX100S(WB:auto, F.s.: CC) |
F5.6 Fujifilm GFX100S(WB:auto, F.S.: CC) |
F8 Nikon Zf(WB:Auto) |
F4(開放) Fujifilm GFX100S(WB:auto, F.S.: EB) |
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