おしらせ

2019/03/21

LOMO OKC4-28-1(OKS4-28-1) 28mm F2(OCT-18 mount)



数あるLOMOOKCシリーズの中でユーザーレビューの評価が高く、人気のあるレンズが、今回紹介するOKC4-28-1です。海外のWEBサイトにはとても素晴らしい写真作品が数多く掲載されており、それはもう気になって仕方ありません。

サンクトペテルブルクからやってきた
ロモの映画用レンズ PART 2
広角でF2の世界を切り拓いた豪華な9枚玉
LOMO OKC4-28-1(OKS4-28-1) 28mm F2

焦点距離28mmの最初のロシア製シネレンズはレニングラードのKINOOPTIKAファクトリーが1946年前後までの短い期間に少量を生産したPO13-1 28mm F2です。このレンズはLENKINAPファクトリーが製造を引き継ぎ、アイモのロシア版コピーにあたる映画用カメラのKS-50BやAKS-1に搭載される交換レンズとして1950年代中頃まで市場供給されていました。その後は後継モデルの登場を待たず口径比をF2.5まで抑えたPO61がリリースされ、製造中止となっています。28mm F2の系譜はここでいったん途絶えてしまいます。

フィルムのロールスピードを一定に保つ観点から見れば、開放F値は他のシネレンズと同じF2に合わせるほうが好都合です。しかし、当時はまだ機が熟しておらず、焦点距離28mmで口径比F2のレトロフォーカス型レンズを映画撮影にも耐えうる充分な性能にすることは、優れた光学技術を擁するロシア(旧ソビエト連邦)でさえ、まだ技術的に困難だったのです。PO13はコマフレアの抑制が不十分なレンズでした。

レトロフォーカス型広角レンズを取り巻く光学技術は1960年前後に大きく発展し、この時期にコマ収差を抑える有効な方法が確立されます。さらにコンピュータによる自動設計の普及が困難だった光学設計の諸問題に解決の道を拓きます。1970年に本レンズがリリースされ、焦点距離28mmのロシア製シネレンズにもようやく口径比F2の高性能モデルが出揃ったのです。

レンズの設計構成は下図に示すような6群9枚のレトロフォーカス型で、ガウスタイプの前方に空気間隔を空け、はり合わせダブレットを置くことで、バックフォーカスの延長、周辺光量落ちの緩和、倍率色収差の補正などが図られています。また、後方にも凸レンズが1枚追加され、屈折力の補強とバックフォーカスの延長が図られました。映画の撮影に求められる充分な画質基準を満たすため、製造コストを度外視して作られたのでしょう。豪華な9枚構成のレンズです。
 
OKC4-28-1の構成図:構成図はCatalog Objective 1971(GOI)からトレーススケッチした見取り図です。レンズの設計はガウスタイプから発展した6群9枚のレトロフォーカスタイプです

入手の経緯
LOMOのシネレンズは日本で全く認知されていませんので、本レンズも入手となるとeBayなど海外のオークションを通じてロシアやウクライナのセラーから買うルートしかありません。eBayには常時数本が出品されていますので、入手難度の高い製品というわけではないようです。ただし、人気のためかコンディションの良い個体には4~5万円の値がつきます。本レンズの場合は前玉と後玉が大きく出っ張っており、市場にはキズがパラパラとある個体を多くみます。入手の際には焦らずコンディションの良い個体の登場を待つのがよいでしょう。私は20189月にeBayを介してウクライナのレンズセラーから落札購入しました。外観には傷が多くありましたが、ガラスのコンディションや各部の機能は充分な個体でした。

絞り羽 10枚 重量(実測)390g(フード込み)/32.5g(フード無), 絞り値 F2(T2.3)-F16, 最短撮影距離 1m(規格), OCT-18マウント, S/N 723***(1972年製), 定格イメージフォーマットは35mm判シネマフォーマットなので、イメージサークルはAPS-C機との相性がベスト 設計構成 6群9枚レトロフォーカス型


マウントアダプター
本レンズはアリフレックス35のロシア版コピーにあたる映画用カメラのKONBAS(カンバス)に搭載する交換レンズとして市場に供給されました。マウント部はカンバスの前期型に採用されたOCT-18マウントです。デジカメでこのマウント規格のレンズを使用するには、RafCameraeBayで販売しているOCT18 - M58x0.75アダプターやOCT18-Canon EOS(EF)アダプターを使います。私はOCT18 - M58x0.75アダプターを手に入れ下の写真に示すような部品の組み合わせでレンズをM46-M42ヘリコイド(17-31mm)に搭載、末端をEマウントに変換してSONY α7Rで使いました。
 

 
撮影テスト
このレンズの質感表現はとても好きです。解像力が良好なうえ開放描写には品のある微かな柔らかさがあります。階調は軟らかく中間階調が豊富にでるので、トーンの変化をダイナミックに捉えることができ、曇りの日に用いると強まる軟調描写と、線の細い繊細で緻密な画作りが相まって、とても雰囲気のある写真に仕上がります。ピント部は中央から周辺部まで良像域が広く、写真の四隅でも画質はかなり安定しています。背後のボケは穏やかで安定しており、グルグルボケや放射ボケが目立つことはありません。四隅での光量落ちは開放で引き画を取る際に少し出るくらいで、受け取り方は人にもよりますが、私には気になるレベルではありませんでした。絞り開放で積極的に取りたくなるレンズです。逆光になるとレトロフォーカスタイプには定番のゴーストとシャワー状のハレーションが出ます。
  
F2(開放) SONY A7R2(APS-C mode, WB:曇天) 
F2(開放) SONY A7R2(APS-C mode, WB:曇天)
F2(開放) SONY A7R2(APS-C mode, WB:曇天) 


F2(開放) SONY A7R2(APS-C mode, WB:曇天)








F4  SONY A7R2(APS-C mode, WB:日陰) 
F2(開放) SONY A7R2(APS-C mode, WB:日陰)

















F2(開放) SONY A7R2(APS-C mode, WB:日陰)
F2(開放) SONY A7R2(APS-C mode, WB:日光)

2019/02/09

試写記録:E.Krauss Planar 4cm F3.6(No.6)

F3.6(開放) sony A7R2(WB:日陰)  
F3.6(開放) sony A7R2(WB:日陰) 

F3.6(開放) sony A7R2(WB:日陰) 

F3.6(開放) sony A7R2(WB:日陰) 

F3.6(開放) sony A7R2(WB:日陰) 

F3.6(開放) sony A7R2(WB:auto)ポートレート用ということもあり、このくらいの距離ではコマフレアがよく抑えられています
F3.6(開放) sony A7R2(WB:auto)
F3.6(開放) sony A7R2(WB:auto)近接域はシャープにうつります


試写記録:E.Krauss paris Planar(プラナー) 4cm F3.6(No.6)
知人から珍しい焦点距離40mmのポートレート用プラナー(初期型) F3.6をお借りしたので、試写結果をこちらにも追加しました。カール・ツァイスがフランスのE.Krauss社にライセンス生産させた製品です。シリアル番号は5万番台なので1903年から1907年の間につくられた個体ですが、シャッターは新しいものに置き換えられています。このレンズにピッタリの古いダイアルコンパ―00番を探しているところです。
イメージサークルは30mmx30mm(カタログ記載)で対角線長43mmのフルサイズセンサーをジャストサイズでカバーしています。ただ、建物の陰など暗い場所で撮影する場合のみ光量落ちが目立つようになりました。雰囲気が出るので全く問題ではありません。ピント部には絶妙な柔らかさがあります。解像力は現代のレンズのようにはいきませんが、品のある写りはやはりツァイスのレンズならではのものです。開放絞りでの作例をどうぞ。