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BiotessarはTessarの改良モデルとして1929年に登場した3群6枚の中・大判カメラ用大口径レンズである。Tessarよりも構成枚数が2枚多く、レンズの貼り合わせも2面多くなっている。設計の自由度を増やすことで高度な収差補正を可能にしたレンズである |
Carl Zeiss Jena BIOTESSAR 10cm F2.9
Lens Test by DIGITAL CAMERA
前回のブログエントリーではBiotessarの撮影テストに中判カメラ(ネガ120フィルム)を用いたので、今回はデジタルカメラ(フルサイズ機)による撮影テストの結果を報告する。使用したカメラはSony A7とNikon D3である。描写の差異について要点から先に述べると、フルサイズ機で用いるほうが中判カメラで用いるよりも階調描写が軟調に転びやすく、屋外でコントラストが低下するケース(曇り空や逆光など)に出くわすと発色が濁る傾向がみられた。こうした傾向の原因がカメラの構造的な差にあるとすれば、考えられるのはミラーボックスやヘリコイドチューブの内部で生じる「迷い光」であろう。この問題を改善するにはヘリコイドチューブを内径が一回り大きなタイプに交換したり、ヘリコイドチューブの代わりに蛇腹を用いることが有効である。また、前玉のフィルター枠に適当なサイズのステップダウンリングを装着し、イメージサークルを必要最低限の大きさにトリミングすることにも一定の効果がある。
Biotessarの描写の特徴を一言で表すならば「芯のある柔らかい描写」であろう。開放ではフレアが顕著に発生し、ハイライト部の周囲がモヤモヤと薄いベールにつつまれる。解像力は高く細部まで線の細い繊細な描写表現が可能である。ただし、階調描写がコンディションに左右されやすいため、曇り日等におけるコントラストの低下には十分に注意したほうがよい。一方、天気が良い日はコントラストが安定し発色も良いので、絞りを開けコマフレアを活かしたドリーミーな描写表現を楽しむことができる。
今回はレンズをパーティ会場に持ち込み使用してみたが、これが大当たりで、予想以上にいい良い写真が撮れることがわかった。このレンズは発色が地味なので色鮮やかな表現には向かないものの、品のある落ち着いた描写表現を持ち味としており、結婚式の披露宴やパーティ会場ではとても雰囲気のある写真が撮れる。ここでも絞りを全開にすれば、コマフレアがテーブルセットや人の肌、ドレスを美しく描き出してくれるであろう。以下作例。
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F2.9(開放), Sony A7(AWB): 晴天時の撮影ではコントラストが高く発色も良好なので、絞りを開けフレア(コマ)を生かしたドリーミーな描写表現を狙うとおもしろい。開放でもピント部にはしっかりと解像力がある |
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F2.9(開放), Sony A7(AWB):フレアが背後のハイライト部(建物)を美しく覆っている。ポイントをつかめば素晴らしい写真表現が可能なレンズである |
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F4.5, Nikon D3(AWB):1段絞ればコマフレアはおさまるものの、依然として軟調である。中判カメラでレンズを使用した際にはもう少しコントラストが高くシャープな写りであった。ヘリコイドの側面やミラーボックス内で「迷い光」が生じ、ある程度のハレーションを引き起こしているためであろう |
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F4.5, Nikon D3(AWB): 軟調レンズはこうした被写体に強く、シャドー部が潰れずに階調が残ってくれる |
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F2.9(開放), sony A7(AWB)+ICTT(トリミング・ツール): 今度はパーティ会場での室内撮影である。発色は地味だが品のある写りが好印象だ。落ち着いた雰囲気を出したいときにはBiotessarはとてもいいレンズだと思う |
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F2.9(開放), sony A7(AWB)+ICTT: 肌が若干白っぽく綺麗に写り、とても好印象だ。コマフレアのおかげであろうか。若干ピントを外すくらいがちょうどよい |
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F4.5, sony A7(AWB)+ICTT: 解像力がほしいときには一段絞れば十分である。白の発色にパンチ力がある |
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F4.5, sony A7(AWB)+ICTT:女性陣に配慮し、ピントは男性側で拾う |
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F2.9(開放), Nikon D3(AWB): 再びD3。シャドー部への落ち際に思わずニコンぽさが出てしまった(笑) |
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F2.9(開放), Nikon D3(AWB): 発色が濁ってしまったケース。奥の立木の緑や衣服の色が不自然にくすんでいる。屋外ではコンディションに気をつけたほうが良い |
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F4.5, Nikon D3(AWB)+ICTT: 今度はイメージサークルをトリミングしている。多少の画質改善効果はあったのではないだろうか |