おしらせ

2026/01/15

Cooke SPEED PANCHRO and its Origins

スピード・パンクロとその源流を辿る

プロローグ

テーラーホブソン社のスピード・パンクロ(Speed Panchro)は、1930年代から50年代にかけてハリウッドの映画業界を魅了し続けた、英国生まれの伝説的シネマレンズです。いわゆる “Cooke Look” と称される温かみのある描写、なだらかなトーン、美しいフレアは、人物の肌を自然かつ上品に引き立てることで知られ、今日に至るまで映画制作者たちの憧れの存在であり続けています。

2026年の新企画では、このスピード・パンクロに焦点をあてます。同社が生み出したシネマ用レンズを数本取り上げ、その魅力を紹介したいとおもいます。ブログで扱うモデルは、以下の6本です。

  • KINIC 76mm(3 inch) F2
  • Speed Panchro Series I 50mm F2
  • Deepfield Panchro 100mm F2
  • Speed Panchro Series I 25mm F2
  • Kinetal 50mm F2
  • Speed Panchro Series II 75mm F2

2026/01/02

Sida GmbH, Turf EXTRA Anastigmat 7cm F3.5


シーダ社のフォールディングカメラ用レンズ

Sida GmbH, Turf EXTRA Anastigmat 7cm F3.5

大晦日の我が家の大掃除で、もう一本珍しいレンズが姿を現しました。その名も「Turf EXTRA Anastigmat 7cm F3.5」。一般にはあまり知られていないレンズですが、調べてみると、1939年にドイツのSida GmbH(シーダ社)が発売した中判フォールディングカメラ「Turf EXTRA」に標準搭載されていたものだと判明しました。シーダ社は1934年にフリッツ・カフタンスキーという人物によりベルリンで設立されたカメラメーカーです[2]。

Turf EXTRAは、4.5×6cm判のフィルムを使用する中判カメラで、ベークライト製の流線形ボディとストリームラインを特徴とする、当時としては先鋭的なデザインでした。技術的挑戦とモダンスタイルの融合を体現したこのカメラは当時の工業製品の最前線を走る特筆すべき存在の一つです。

レンズのバリエーションは 1938年に登場した初期モデル「Turf」用にTurf Anastigmat 7cm F3.5およびF4.5が市場供給されており、翌年の「Turf EXTRA」では、Turf EXTRA Anastigmat 7cm F3.5F3.8F4.5が供給されています。レンズの設計はいずれも3群3枚のシンプルなトリプレットで、前玉回転式のフォーカス機構を備えています。


 

 

デジタルカメラでの使用例

上の写真のように、シャッターのマウント部に25mm-M39アダプターリング(下段・右)とM39-M42アダプターリング(下段・左)を装着し、M42直進ヘリコイド25-55mm(上段・左)にのせればM42レンズとして使用することが可能です。レンズ本体にもヘリコイドがありますので、これでダブルヘリコイド仕様となります。レンズ側のヘリコイドを操作すると前・後群の間隔が変化し、それに伴って描写も変わります。遠距離側では過剰補正、近距離側では補正不足となり、ボケ味やコントラストを意図的に変化させることができます。こうした“可変描写”を楽しめるレンズは使いこなし甲斐があります。


参考情報

[1] FEX: FOTOFEX CAMERA; Fritz KAFTANSKI  

[2] Camera Wiki: SIDA GmbH 

 

入手の経緯

このレンズは、ずいぶん前にチェコのフォトホビーから7080ドルほどで入手したものです。状態の良い美品との触れ込みで、何かのついでに同封していただいた記憶があります。本命の購入品に気を取られていたせいか、そのまま存在を忘れ、我が家の棚の奥でタイムカプセルのように長らく眠っていました。

eBayでは時折見かけるものの、流通量は少なく、特にカメラとのセットではそれなりの価格が付くと思います。そうした中で、レンズ単体で手に入れられたのは、今思えばなかなかの幸運だったと思います。

Turf Extra Anastigmat 7cm F3.5: 絞り F3.5-F32, フィルターネジなし, 絞り羽 10枚, 重量(実測)58g, 設計構成 3群3枚トリプレット, フォーカス機構 前玉回転式


 

 

撮影テスト

ピント面はトリプレットらしい高い密度感を備えつつ、戦後型のトリプレットよりも柔らかく繊細な描写で、非常に魅力的です。背後のボケは硬質でざわつきがあり、明確に過剰補正寄りの設計であることがうかがえます。撮影距離によっては非点収差由来のグルグルボケが現れ、荒々しさと繊細さが同居する、まさにオールドレンズらしい個性を存分に味わえる一本です。コントラストは控えめで発色も淡泊ですが、トーンは柔らかく、階調の移ろいを丁寧にすくい上げます。

逆光では太陽光が画面に直接入ると一気に白飛びするため、木々や建造物で光源を隠すなど、フレーミングにひと工夫が求められます。 

F3.5(開放) Fujifilm GFX100S(WB: 日陰)

F3.5(開放) Fujifilm GFX100S(WB: 日陰)

F3.5(開放) Fujifilm GFX100S(WB: 日陰)

F3.5(開放) Fujifilm GFX100S(WB: 日陰)
F5.6  Fujifilm GFX100S(WB:日光)