サンクトペテルブルクからやってきた
ロモの映画用レンズ PART 0(Prologue)
LOMO(ロモ:レニングラード光学器械合同)は文学とバレエの都、そして白夜でも有名なロシア・レニングラード州の古都サンクトペテルブルクに拠点を置く光学機器メーカーです。日本ではロモグラフィーの名でも知られ、トイカメラの供給源としてクリエイティブな創作活動とコラボしているイメージが定着していますが、実態は製造業の90%が軍需光学機器と宇宙開発、産業用・医療用光学機器に向けられ30000人の技術労働者を抱え持つ強大コンビナートでした。カメラや映画用機材の生産は企業活動のほんの一部にすぎません。
創業は旧ソビエト連邦時代の1965年で、戦前から映画用機材や光学兵器を生産していたGOMZ(国営光学機械工場)を中心にLENKINAP(Leningrad Kino Apparatus:レニングラードシネマ器機)など複数の工場の合併と再編により誕生しました。LOMOのシネレンズには映画産業に供給されている業務用のOKCシリーズと、主に産業用や軍需品として供給されているЖシリーズ(Gシリーズ)の2系統があり、鏡胴のつくりや画質基準に差があります。
今回からはロモが旧ソビエト連邦時代に生産した映画用レンズを特集してゆく予定です。取り上げるレンズはOKC1-16-1 16mm F3, OKC1-18-1 18mm F2.8, Hydrorussar-8 3.5/21.6, Ж-21 28mm F2, OKC4-28-1 28mm F2, OKC1-35-1 35mm F2, OKC8-35-1 35mm F2, OKC11-35-1 35mm F2, OKC1-50-1 50mm F2, OKC1-50-3 50mm F2m OKC1-50-6 50mm F2, OKC1-75-1 75mm F2, OKC6-75-1 75mm F2, Ж-48 100mm F2です。レンズ銘が住所の番地みたいでややこしいのですが、OKCのうしろに続くX-YY-ZのうちXがレンズのモデル番号で、設計や仕様が異なるごとに異なる番号が付与されています。YYが焦点距離をあらわし、Zはモデルのバージョンを表しています。Sony α7IIIにたとえるなら、7がXでIIIがZとなり、EOS 5Dマーク3では5DがXでマーク3がZというわけです。採算性を度外視した共産圏の製品らしい怪物レンズも陸海空から何本か登場します。度肝を抜かれてください。
OKC1-16-1 16mm F3 陸(ランドスケープ用の広角シネレンズ) |
Hydro-Russar 21.6mm 海 (潜水艦搭載用の広角シネレンズ) |
Ж-48 100mm F2 空 (偵察機設置用の望遠シネレンズ) |