興和光器の写真用レンズ part 8
異色のエントリーモデル、
コーワ製テッサー型レンズ
KOWA Co. Ltd., LOWA 48mm F2.8
興和の製品ラインナップは中級機が主軸のため、今回のレンズのようなエントリーモデルは異色の存在です。このレンズは同社が1963年に発売したKOWA Hという一眼レフカメラに固定装着されていたもので、もともとブログて扱う予定はありませんでしたが、次回取り上げるKOWA SET-R 50mmをネットオークションで購入した際にセット販売で付いてきてしまったため、軽く取り上げることにしました。カメラは故障品でしたのでレンズのみ取り出し、ライカMマウントに変換してデジタルカメラで使用することにしました。設計構成は下図に示す通りの3群4枚テッサータイプです。開放F値が2.8の場合、後群に新種ガラスを導入することで、開放でもコントラストが高くシャープな描写性能が実現します。焦点距離が50mmではなく48mmという中途半端な設定になっているのが謎ですが、ピント機構が前玉回転式なので無限遠側と近接側で焦点距離が少し変化することを見越した上での製品仕様なのかもしれませんね。
KOWA 48mm F2.8(KOWA H)の構成図:取扱説明書からのトレーススケッチ。構成は3群4枚のテッサータイプ。左が被写体側で右がカメラの側です |
フィルター径 49mm, 絞り 2枚構成(シャッター羽を兼ねる), 絞り値 F2.8-F22, ピント機構は前玉回転式, 最短撮影距離 1m, 設計構成 3群4枚(テッサータイプ), 発売年 1963年(KOWA H発売) |
★撮影テスト
開放からピント部はシャープで、コントラストも良好です。滲みは遠方撮影時に像を拡大するとうっすらと微かにみられる程度で、きれいな質感表現を実現しながらもコントラストには影響のない絶妙なレベルとなっています。滲みが出るのは前玉回転により無限遠撮影時に収差の補正が過剰になるためであろうと思います。近接撮影やポートレート撮影ではスッキリとしたヌケのよい像が得られ、コントラストも向上します。背後のボケは最短撮影距離あたりの近接撮影でもまだ硬く、点光源がザワザワと煩い感じになることがあります。この種のテッサータイプは四隅のボケが少し流れることがありますが、このレンズも同様でした。テッサータイプの長所がよく出ているレンズだと思います。
富士フィルムの中判デジタル機でもケラレは出ません。35mm換算で焦点距離38mm, 開放F値2.2相当の画角とボケ量が得られます。グルグルボケがやや顕著になり、背後のボケは崩壊気味です。
F2.8(開放) Fujifilm GFX100S(WB:Auto, FS.St) |
F2.8(開放) Fujifilm GFX100S(F.S: Classicl Chrome, WB: auto) |