試写のみ
名機ELECTRO 35の主力レンズを
デジタルミラーレス機で試す
YASHICA YASHINON-DX 45mm F1.7
ELECTRO 35はヤシカが1960年代に市場供給していたレンズ固定方式のレンジファインダー機です。発売からすでに60年が経過し、電子回路の寿命によって故障した個体が、カメラ店のジャンクコーナーに数多く並ぶようになりました。そうした中から、レンズの状態が良好と思われる数台を拾い上げ、カメラ本体からレンズを摘出し、改造を施して再利用することにしました。
搭載されているレンズは、描写力に定評のあるヤシノンDX 45mm F1.7です。とりわけ青の再現性に優れ、「ヤシカブルー」と称される美しい発色が、かねてより気になっていました。ロモグラフィーの公式サイト[1]に掲載された作例写真を目にしたとき、その青の深みと透明感に心を奪われ、興味がさらに高まったのをよく覚えています。
このレンズは先代機YASHICA MINISTER 700に固定レンズとして初めて採用され、その後、Electro 35シリーズに継承されました[2,3]。Electro 35は世界的なヒット商品となり、1975年の最終モデルまでに累計約500万台が販売されたとされています。往年の名機に搭載されていたこの名レンズを蘇らせ、現代のデジタル撮影に活用できるようになったのは、レンズ交換が可能なミラーレス機の登場による恩恵です。
レンズの設計者については確定的な情報はありませんが、藤陵嚴達氏によるものとされており[4]、藤陵氏自身も回顧録[5]の中で「ヤシノン交換レンズ群、エレクトロ35用レンズ等を設計」と述べています。藤陵氏は、八洲光学工業からズノー光学(旧・帝国光学工業)を経て、1961年にヤシカへ移籍。国友健司氏とともに、有名なZUNOW 50mm F1.1の後期型(1953年発売)の設計を手がけた人物としても知られています。
[2] ヤシカ・ミニスター700 デラックス マニュアル
[4] 光学設計者 藤陵嚴達 ~ズノー、ヤシカ、リコー~, 脱力測定(2021) 坂元辰次著
[5] 藤陵嚴達「六十年の回想」
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Yashinon 45mm F1.7の構成図:設計構成は4群6枚のガウスタイプ |
★撮影テスト
定評あるレンズだけに開放からシャープで抜けがよく、すっきりとした描写が印象的です。発色は鮮やかで、コントラストの高さがその描写力を裏付けています。一方で、開放時には周辺光量の低下がやや目立ちます。ボケは大きく乱れることなく、ぐるぐるボケや放射ボケが目立つことはありません。歪曲収差は良好に補正されており、構図の安定感に寄与しています。逆光下では、角度によってシャワー状のゴーストが盛大に現れることがあり、使い方次第では印象的で遊び心のある画づくりが可能です。
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F1.7(開放) Nikon Zf(WB: 日光) |
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F1.7(開放) Nikon Zf(WB:日光) |
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F2.8 Nikon Zf(WB:日光) |
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F1.7(開放) Niokon Zf(WB:日光) def |
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F1.7(開放) Nikon Zf(WB:日光)abc |
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F1.7(開放) Nikon Zf(WB:日陰) |
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F1.7(開放) Nikon Zf(WB:日陰) |