たったの4枚の構成でこの描写性能は、
ちょっとしたサプライズかも!
Steable LINEOGON 35mm F3.5
Staeble(シュテーブル)社(正式名The Optisches Werk Dr. Staeble & Co)は1908年にドイツの物理学/数学者のフランツ・シュテーブル博士(1876-1950)、技術者のアルフレッド・ノイマン、ビジネスマネージャーのオスカー・イエーガーによってミュンヘンに設立されたレンズメーカーです[1,2]。自社ブランドのレンズに加え、様々な企業に対してOEMレンズの供給を行っていました。主に生産したレンズはカメラ用、プロジェクター用、引き延ばし用ですが、第二次世界大戦中はガンライトなどの光学軍需製品の製造にも関わっています[2]。第二次世界大戦末期、ドイツ降伏が濃厚となる1944年夏にドイツ空軍の命令(連合国の空襲を逃れるため)で会社と工場をバイエルン州のショーンガウ市に移転、はじめはチーズショップの敷地内を工場の避難地としました。その後の1953年にショーンガウ近くのアルテンシュタットにある旧軍用飛行場の航空機修理ホールへと工場の再移転を果たしています。会社は1954年にオットー・フリードルと彼の妻が所有しましたが、1969年にAGFAに買収されています。
今回紹介するレンズはStaeble社のLineogon(リネオゴン) 35mm F3.5です。このレンズはBraun社のPAXETTEという35mm版小型レンジファインダー機に搭載する広角レンズとして1950年代に供給されました。設計構成は4群4枚で、トリプレットの前方に凹メニスカスを設置してバックフォーカスを稼いだレトロフォーカスタイプのレンズです(下図)。同じ構成を採用したレンズとしてはSchneider社のRadiogon 35mm F4, Meyer-Optik社のPrimagon 35mm F4.5, Steinheil Culmigon 35mm F4.5などがあり、Lineogonはこれらの中で頭一つ飛びぬけたF3.5の明るさを実現している点が特徴です。この明るさはシュテーブル社の技術力なのでしょうか。あるいは収差を生み出す呼び水なのでしょうか。
Staeble LINEOGONの設計構成(見取り図): トリプレットの前方に空気間隔を開け凹レンズを設置することでバックフォーカスを延長させたレトロフォーカス型の構成です |
レンズが採用したマウント規格はPaxette M39と呼ばれスクリューマウントとAkaletteというレンジファインダー機に供給されたAkAマウント(スピゴットマウントの一種)、そして数が少なく市場に出回る事はほぼ無いようですが、M42マウントです[3]。Paxette M39マウントの個体は数が多く入手しやすいうえ、デジタルカメラへの搭載も容易なのでおすすめです。eBayにPaxette M39-Leica L39アダプターなど市販のアダプター製品が複数出ています。20ドル程度で手に入るM42-M39ヘリコイド(12-17mm)と1~2ドル程度で手に入るM39-M42変換リング1個を組み合わせることで自分でアダプターを作ることもできます。この場合、ヘリコイドを少し繰り出した状態で用いることになります。シルバーベースの鏡胴と反転ゼブラのデザインが個性的で、とてもカッコよいレンズですね。
★参考文献・資料
[1]camera-wiki: Staeble, http://camera-wiki.org/wiki/Staeble
[2] Hartmut Thiele (2008) Staeble-Optik. Die Geschichte des Optischen Werkes, Aufstellung der gesamten Objektivfertigung von 1917 bis 1972. München: Lindemanns Fotobuchhandlung.
[3] 同社の雑誌広告より
Steable LINEOGON 35mm F3.5: Braun Paxette用交換レンズ, 最短撮影距離 1m, フィルター径 40mm, 絞り F3.5-F16, 絞り羽 10枚構成, Paxette-M39マウント |
★入手の経緯
2021年8月に値切り交渉を経て送料込みの110ドルでドイツのeBayセラーから購入しました。コンディションの悪い個体が同じくらいの価格でeBayに2~3本出ていたのと、当時どうしても欲しいというわけではなかったので、ダメもとで65ドル安くしてほしいと無茶な交渉をしてみたところ、驚いたことに了承の連絡が来ました。レンズのコンディションは「カビ、クモリ、傷などの問題のない状態の良い個体で、僅かなホコリの混入があるのみ」とのこと。外観もレンズも、各部の動きも十分良好なコンディションでした。通常はまともなコンディションの個体がeBayでは180~250ドルあたりで取引されています。
F4.5 sony A7R2(WB:日陰) |
F4.5 sony A7R2(WB:日陰) |
★ LINEOGON x Fujifilm GFX 100S ★
F8 Fujifilm GFX100S(Aspect Ratio 3:2,WB 日光, Film Simulation Nostalgic Nega) |
F8 Fujifilm GFX100S(Aspect Ratio 3:2,WB 日光, Film Simulation Nostalgic Nega) |
F8 Fujifilm GFX100S(Aspect Ratio 16:9,WB 日光,Film Simulation: Nostalgic Nega) |
F8 Fujifilm GFX100S(Aspect Ratio 16:9,WB 日光,Film Simulation: Nostalgic Nega) |
F8 Fujifilm GFX100S(Aspect Ratio 16:9,WB 日光,Film Simulation: Nostalgic Nega) |