おしらせ


MAMIYA-TOMINONのページに写真家・橘ゆうさんからご提供いただいた素晴らしいお写真を掲載しました!
大変感謝しています。是非御覧ください。こちらです。

2017/04/07

PETRI CAMERA Co. High-speed Petri part 1: Petri 55mm F1.8



ペトリカメラの高速標準レンズ part 1
滲んだ水彩画を手でこすったような
独特なボケ味が魅力
PETRI CAMERA Co., Petri C.C Auto 55mm F1.8
ペトリカメラの代表的な高速標準レンズといえば、やはり1960年代に一眼レフカメラ用として大量に供給されたPetri C.C Auto 55mm F1.8であろう。力みの入った妖しいボケ、緻密で高解像なピント部、美しい軟調気味のトーン、温調にこけるノスタルジックな発色など、オールドレンズのツボを見事におさえており、雰囲気のよくでる描写、そして何よりも激安であることが、このレンズの大きな魅力となっている。レンズのガラス面には感染力の強いペトリ菌が高い確率で潜んでいるという報告例があり、オールドレンズファンをアッと言う間に虜にしてしまうと噂されている。アサヒカメラが1967年に掲載したレンズの解像力に関する性能評価の記事では、このレンズがクラス最高水準の測定値をたたき出し、コストパフォーマンスの良い優れたレンズであると評価された。
ペトリカメラが口径比F1.8の高速標準レンズを作りはじめたのは1962年登場のペトリフレックス7に搭載する交換レンズからで、Petri Automatic 55mm F1.8(上写真・中央)が最初である。これ以降の1960年代は一眼レフ用標準レンズに55mm F2と55mm F1.8の2種類が同時に供給された。カメラの方はペトリV6(1965年発売)やペトリFT (1967年発売)など新製品の発売が相次ぎ、これに合わせてレンズ名もPetri C.C Autoに改称されるとともに、鏡胴のデザインや光学設計が頻繁にマイナーチェンジされた。
シリーズの第1回はペトリV6用に供給されたPetri C.C Auto 55mm F1.8(上写真・右 S/N:164323)とペトリFT用に供給されたPetri C.C Auto 55mm F1.8(上写真・右 S/N:477318)の2本を取り上げてみたい。
Petri V6 instruction book(説明書)からトレーススケッチしたPetri C.C Auto 55mm F1.8の構成図。左が前方となっている。構成は4群6枚の準対称ダブルガウス型
設計構成は両モデルとも4群6枚の準対称なダブルガウス型(上図)である。インターネット上でペトリ情報の収集と分析をすすめているペトリ@wikiには同社の高速標準レンズに関する重要な記述がある[記事1 in petri@wiki]。特に興味深いのは55mm F1.8の設計構成に旧型と新型がある点で、Petri Automaticからの流れを組む旧型がどこかで新型に置き換えられた経緯についての慎重な推理が展開されている。また、新型についても後群2枚にトリウムガラスが使われたペトリFT用の最初期のモデル(ここでは新型前期モデルと呼ぶ)が、間もなくこの部分をランタンガラスで置き換えた後期モデルに入れ替わる経緯が論じられている[記事2 in Petri@wiki ]。私が今回入手した3本のレンズはペトリ@wikiのなかの「旧型(s/n 91986)」および「新型前期(s/n 164323)」と「新型後期(s/n 477418)」のそれぞれに対応している。ちなみに、C.Cの記号はペトリカメラが独自に名前をつけた、同社のガラスに使用されているコーティング「コンビネーション・コーティング」を意味している。
下の写真はこれら3本のレンズを前群側から比較したものである。光の反射パターンが旧型(写真中央)と新型(写真の左右)では大きく異なっており、新旧のモデルはレンズエレメントの曲率に差のある、異なる設計であることがわかる。一方、左右の新型モデルを比べると中玉側の光の反射色に明らかな差があり、前群側のコーティングの種類にも変更が施されていることがわかる。ガラス硝材が異なれば透過光の波長分布が変わるのでコーティング編成が変わるのは当然で、ペトリ@wikiで述べられている推理をリコンファームしたことになる。ペトリ@Wikiには私が入手したものと同型の新型前期モデルと新型後期モデルについての詳細な比較分析があり、新型前期モデルからは人体に影響のないレベルの微量な放射能を検出できることが明らかにされている。なお、レンズを設計したのは旧型が富田良三氏、新型が島田邦夫氏である[記事3 in Petri@wiki]。
中央は旧型のPetri Automatic、左右は新型のPetri C.C Auto。点光源からの光の反射を比べると旧型は反射が左右にばらけており、新型は反射が纏まっている。前群の光学設計が異なることが明らかに判る。また、新型の間にもコーティング色に差が見られ、前期モデル(右側)ではマゼンダ色に見えるコーティングが、後期モデル(左側)ではパープル色に変化している





入手の経緯
黒鏡胴(新型後期モデル)のPetri C.C Auto 55mm F1.8(S/N:477318)は2017年2月にヤフオクを介して、千葉の古物商からカメラ(ペトリFT)付きのものを1000円+送料で入手した。オークションの記述は「ジャンク品として出品している。レンズは綺麗。シャッターには不具合がある」とのこと。目的はレンズなのでカメラがジャンクでもかまわない。ペトリブランドの中古相場は総じて安く、オークションでは状態に応じて1000~5000円程度、中古店では5000円~10000円(カメラ付き)程度で流通している。ジャンクとして出回っている個体の大半でカビが発生しているので、安い個体はオーバーホールをしてから使う事が前提となる。今回はカメラがジャンク、レンズは綺麗とのことで入手したものの、届いた商品には前玉の裏と後玉にカビがあったので、自分で分解し清掃した。

Petri C.C auto 55mm F1.8 (新型後期モデル S/N:477318): 絞り羽根 6枚構成、フィルター径 52mm, 最短撮影距離 0.6m, Petriブリーチロックマウント
黒鏡胴(新型前期モデル)のPetri C.C Auto 55mm F1.8(S/N: 164323)とシルバー鏡胴(旧型)のPetri Automatic 55mm F1.8(S/N: 91986)は2017年2月にヤフオクを介してカメラ(ペトリV6)付き、ズームレンズPetri 85-200mm付き、露出計付きのセットのものを長津田のリサイクル業者から576円+送料で落札した。オークションの記述は「ジャンク。部品取りにどうぞ」とのことで詳しい記載はなかった。届いた品は黒鏡胴(新型前期モデル)が完全に綺麗なガラスであったが、ズームレンズとシルバー鏡胴(旧型)のAutomatic 1.8/55には中玉にカビがいたので分解し清掃することになった。ジャンクとはいえ、ペトリの中古価格は異様なほど安い。この値段ならオーバーホールのいい練習材料になる。
Petri Automatic 55mm F1.8(旧型モデル S/N: 91986), 絞り羽根 6枚構成, フィルター径 55mm, 設計構成 4群6枚ガウス型, 最短撮影距離 0.6m, Petriブリーチロックマウント



Petri C.C Auto 55mm F1.8(マウント部を52mmネジに改造, 新型前期モデル S/N: 164323 ), 絞り羽根 6枚構成, フィルター径 55mm, 設計構成 4群6枚ガウス型, 最短撮影距離 0.6m, トリウムガラス使用モデル, Petriブリーチロックマウント
デジタル一眼カメラで使用する
ペトリマウントのフランジバックはキャノンやニコンなど大方のデジタル一眼レフカメラよりも短い。レンズをデジタル一眼カメラで使用するにはミラーレス機に搭載する以外に方法はない。現在のところミラーレス機で使用するためのアダプターの市販品は存在せず、eBayにSony Eマウント用とFujifilm FXマウント用の改造アダプターが時々登場する程度である。レンズを使用するには工房等にマウント部の改造を依頼するのも一つのてである。あるいはペトリカメラがかつて市場供給していたPETRI-M42アダプター(下の写真)の中古品を手に入れ、レンズのマウント部をM42ネジに変換、M42ヘリコイドとミラーレス機用スリムアダプター(カメラマウント)を組み合わせSONY EマウントやOlympus マイクロフォーサーズマウント、Fujifilm Xマウントなどに搭載するという手もある。なお、最近eBayにこのPETRI-M42と同等のアダプターが出ているとの情報がある。





もうひとつのアプローチはジャンクのペトリ製カメラからマウント部を取り外し、マウントアダプターを自作するという方法である。ただし、いずれのアプローチにおいてもフランジバックは自分で微調整しなければならず、一般ユーザーには敷居が高い。また、レンズ本体を購入後に本体の値段を超える投資が必要になる。

SONY Eマウントへの改造例。M52-M42ヘリコイドを用いたダブルヘリコイド仕様なので、被写体にグッと近寄り、接写ができるようになっている

 
撮影テスト
Petri 55mm F1.8は中古相場がたいへん安いにもかかわらず、オールドレンズとしてのツボをついた楽しいレンズである。どのモデルもピント部中央は開放から緻密でシャープ、トーンは軟調気味で軟らかく、中間部の階調がよく出ているものの、淡泊にはならず発色もしっかりとしている。背後のボケはどのモデルもゴワゴワと硬く力んだ性格で、力強く描かれた絵画のようにみえるところが独特で非常に面白い。また、2線ボケが顕著にみられ、これがフレアをまといながら綺麗に滲み、妖しい雰囲気を醸し出している。安いのに、とてもワクワクするレンズだ。逆光ではゴーストやハレーションが出やすいので、コントラストを維持したいならフードをつけたほうがよいだろう。旧型よりも新型の方がピント部四隅でのフレア量が少なく、その分だけシャープでコントラストは良い。新型前期モデルはトリウムガラスを用いているため後群側のガラスに若干の黄変がみられ、他のモデルよりも発色が温調気味であった。
どのモデルも個性が強く、味わい深い素晴らしい描写のレンズでありながら、ピント部はシャープでメリハリがあるところがスバラシイ。私個人としては温調でノスタルジックな描写を楽しむことのできる新型前期モデルが3本の中では最も好きなレンズだ。



C.C auto 55mm F1.8(新型前期モデル S/N 164323)@ F1.8(開放) + sony A7(WB:晴天, ISO2000): これも凄い。近接時のみならずポートレート時にもワクワクするようなボケ味が体験できる。ピント部の解像力は良好で線の細い繊細な描写。階調は軟らかく、中間部のトーンが豊富に出ている


Automatic 55mm F1.8(旧型モデル S/N: 91986)@F1.8(開放)+sony A7(WB:auto)

Automatic 55mm F1.8(旧型モデル S/N: 91986)@F1.8(開放)+sony A7(WB:auto): 旧型の開放描写は新型よりも若干ソフトな印象だ
C.C auto 55mm F1.8(新型後期モデル S/N 477318)@ F5.6 + sony A7(WB:晴天) 後期モデルの方がスッキリとヌケが良く、さらにフレア量が少ない印象だ


C.C auto 55mm F1.8(新型後期モデル S/N 477318)@ F4 + sony A7(WB:晴天) 

Automatic 55mm F1.8(旧型モデル S/N: 91986)@F1.8(開放), ゴワゴワとした歯ごたえのあるボケ味が、絵画のような面白い雰囲気をつくりだしている。ペトリのレンズの大きな特徴だ





C.C auto 55mm F1.8(新型前期モデル S/N 164323)@ F1.8 + sony A8(WB:日陰):近接では収差変動により球面収差がアンダーになるので、背後のボケは柔らかくとろけるように綺麗だ。黄色っぽく写るのは後玉のトリウムガラスが黄変しているためだ

C.C auto 55mm F1.8(S/N 164323)@ F2.8 + sony A8(WB:日陰) やはり前期モデルは温調気味の美しい発色だ
C.C auto 55mm F1.8(S/N 477318)@ F4 + sony A7(WB:日光) レンズの元々の最短撮影距離は0.6mだが、改造時にヘリコイドに搭載したため、とても寄れるようになった
C.C auto 55mm F1.8(S/N 477318)@ F4 + sony A7(WB:日光)

Automatic 55mm F1.8(旧型モデル S/N: 91986)@F1.8(開放)+sony A7(WB:晴天), やっぱり水彩画だ!
C.C auto 55mm F1.8(S/N 164323)@ F2.8 + sony A7(WB:曇天):
C.C auto 55mm F1.8(S/N 164323)@ F4 + sony A7(WB:曇天):

上下段ともC.C auto 55mm F1.8(S/N 477318@ F1.8(開放), sony A7(AW 日陰) こっ、これはすごい。シャーマンか
C.C auto 55mm F1.8(S/N 164323)@ F4 + sony A7(WB:晴天):  逆光ではハレーションが盛大に出るも、淡泊になりすぎず堪えている。こんなに雰囲気のある描写がこんなにリーズナブルなレンズで実現できることが素晴らしい。私たちは一体、何にお金をつぎ込んでいるのであろうか




 
Fujifilm GFX100S + C.C auto 55mm F1.8(新型後期)
PETRIの標準レンズはどのモデルもイメージサークルに余裕があり、中判デジタル機のGFXセンサー(44mmx33mm)をフルカバーできる。四隅での光量落ちも全く見られない。GFXでの写真も何枚か掲載しておく。
  
C.C Auto 55mm F1.8 @ F1.8(開放) Fujifilm GFX100S(WB:⛅, Film Simulation: NN)

C.C Auto 55mm F1.8 @ F4 Fujifilm GFX100S(WB:⛅, Film Simulation: NN)



2017/03/29

写真作例の追加:VEB PENTACON 150mm F2.8

VEB PENTACON 150mm F2.8のブログエントリーに写真作例を追加しました。ブログエントリーはこちらです。



2017/03/28

High-speed Petri part 0 (prologue): ペトリの高速標準レンズ part 0(プロローグ)


ペトリカメラの高速標準レンズ 
part 0(プロローグ)
ペトリカメラ(Petri Camera Co.)は大正時代にカメラの製造をはじめた日本では古い歴史を持つカメラメーカーです。創業は1907年で、栗林庸二という人物が彼の友人や親族ら20名と東京都下谷区(現在の台東区付近)に立ち上げた栗林製作所を前身としています(文献[1-3])。この製作所の当初の事業内容はカメラや写真用品の販売と修理でしたが、1917年にカメラの開発にも着手し、社名を栗林写真機械製作所へと改称しています[2-3]。1920年代になると同社初のカメラであるスピードレフレックス(手札判乾板を使用する木製一眼レフ、1926年発売)や、これを小型化したスピードベビーレフレックス(アトム判乾板を使用、1927年発売)、アルミ合金製のミクニカメラ(ハンドカメラでレンズはコンパー付のドイツ製、1928年発売)、木製のファーストカメラ(ハンドカメラ、1929年発売)等を次々と世に送り出し、カメラメーカーとして認知されるようになります[2]。1928年に開催された大礼記念国産振興東京博覧会ではスピードレフレックスやミクニカメラが優良国産賞を受賞し[4,5]、栗林写真機械製作所の製品は一定の地位を得るようになります。1930年に創業者・栗林庸二が死去すると、事業所の経営は妻の栗林繁代に引き継がれます。この頃の栗林写真機械製作所は世界的な不況の余波を受けて経営が行き詰まり、大規模なリストラと事業規模の縮小を余儀なくされています[3]。カメラの需要が戻るのは日本経済が好転する1932年頃からで、同所はアルミ製のファーストカメラ(1932年発売)やロールフィルムに対応したファーストロールカメラ(1933年発売)など新製品を投入して事業を立て直します[2]。
第二次世界大戦が勃発すると下谷区の本工場と足立区梅島の分工場は軍の指定工場となり、同所はカメラの生産から離れて軍需品の生産を余儀なくされます。戦時中は主に潜水艦用の潜望鏡や爆撃機の距離計や照準器などを生産していましたが[3]、終戦直前の1945年に東京大空襲で下谷工場が大破し、栗林写真製作所は大きな被害をうけます。

同メーカーについてはペトリ@wikiに素晴らしい情報が掲示されており[8]、このWEBページに情報を供給している2chペトリカメラまとめサイトが現存するペトリカメラに関するあらゆる情報の整理と検証を続けています。WEBページは一般公開され誰でも閲覧できますので、本記事をまとめる際にも大いに参考にさせていただきました。このページには元ペトリの技術者や設計者の方からいただいた貴重な資料が満載されており、ペトリカメラ情報の中枢となっています。

さて、第二次世界大戦が終結すると、栗林写真機製作所は消失した下谷工場のかわりに梅島の分工場を本工場としてカメラの生産ラインを再建します。戦後はスプリングカメラのカロロン(1949年発売)や二眼レフカメラのペトリフレックス(1952年発売)などを発売しますが、徐々に35mm判のレンジファインダー機や一眼レフカメラへと軸足を移してゆきます。1959年に同社初の35mm一眼レフカメラとなるペトリペンタを世に送り出すと[3.7]、これ以降の栗林写真機製作所は一眼レフカメラの生産に力を注ぐようになります。同社がカメラの名称にペトリの商号を使うようになったのは1949年からで、ローマ法王ペトリ一世の高潔な人格と優れた才能、後世に永くその名を伝えられた故事にちなんで名づけられたとされています[7]。1962年には海外への輸出に力を入れるため梅島工場を立て直し、全長800メートルの長大な組み立てベルトコンベアーを導入して生産ラインを強化、社名も海外進出を考慮しペトリカメラへと変更しています[7]。ペトリの黄金期はこの頃で、1963年当時のペトリカメラは生産品の60%を海外(世界56か国)への輸出に当て、輸出量も前年比1.6倍~1.8倍で伸びていました。ペトリの工場では2600人の工員が働き、月産33000台以上のカメラを製造していたと記録されています[3]。

戦後の日本の一眼レフカメラはニコンFが頑丈さを武器に世界の報道分野を席巻してゆきますが、対するペトリは「ニコンのカメラと機能は一緒で価格は半値」をキャッチコピーに、アマチュア層に向けた低価格な商品を供給しています。レンズについては廉価製品ながら高級メーカーの製品に勝るとも劣らない優れた性能を誇っていました[6]。本ブログでは数回にわたり、ペトリカメラが1960年代に生産した一眼レフカメラ用の高速標準レンズを取り上げ紹介してゆきます。安いのに高性能!そんな意外性を楽しんでください。嬉しいことにクセもかなりあります。掲載予定のモデルは55mm F1.4, 55mm F1.7, 55mm F1.8, 55mm F2の4種類です。

参考文献
[1]日本写真機工業会編 戦後日本カメラ発展史 昭和46年3月1日 株式会社東興社
[2]研究報告「栗林写真機製作所の乾板カメラ(間違いだらけの文献、資料を正す)」小林昭夫 2015年5月AJCC研究会
[3]1910/1963 PETRI STORY, Petri Camera Comp. INC.:ペトリの公式資料ではあるものの記載の間違いや不可解な個所が非常に多く、全てをうのみにしないほうが良い
[4]三栄堂本店広告 アサヒカメラ(昭和3年9月)
[5]皆川カメラ店広告 アサヒカメラ(昭和4年4月)
[6]クラシックカメラ選書-22 レンズテスト第1集;クラシックカメラ選書-23 レンズテスト第2集
[7]ペトリカメラのしおり ペトリカメラ株式会社(発行年記載なし・昭和38年頃)[
[8] petri@wiki : ペトリ関連情報の中枢で、素晴らしい情報量です。  https://www52.atwiki.jp/petri/

2017/03/19

Piesker Berlin Picon 135mm F2.8 (M42) and Tele-Picon 400mm F4.5 (M42)









ピエスカー社の望遠大口径レンズ
Piesker Berlin Picon 135mm F2.8 (M42) and Tele-Picon 400mm F4.5 (M42)
ドイツのピエスカー社(Paul Piesker & Co)はベルリンを拠点に1936年から1964年まで実在した中小規模の光学機器メーカーだ。メーカーとしての実態についてあまり多くの事は知られていないが、写真用レンズやベローズなどを生産しており[文献1]、写真用レンズとしては米国向けにM42マウントやExaktaマウント、ハッセルブラッド1600/1000Fなどの一眼レフカメラ用レンズやCマウントレンズを供給していた。同社のレンズにはピコール(Picor)やピコン(Picon)、ピコナール(Piconar)などイタリア語の「小さい」を意味するPICOを接頭語に持つブランドが多く、他にはフォス(Voss)やフォタール(Votar)、カリマール(Kalimar)、テレゴン(Telegon)、アストナール(Astranar)、スピード・アストラ(Speed-Astra)、アストラゴン(Astragonなどのブランド名で供給されたレンズもあった(文献[3])。インターネットで拾い集めた実物写真つきの情報や幾つかの限られた文献からは、少なくとも18種(35mm F2.8, 40mm F4.5, 75mm F2.5, 85mm F2, 100mm F2.8, 100mm F3.5, 135mm F2.8, 135mm F3.5, 180mm F5.5, 180mm F5.6, 200mm F5.5, 250mm F4.5, 250mm F5.5, 400mm F4.5, 400mm F5.5, 400mm f6.3, 600mm f8, 800mm F5)のモデルを確認することができ、望遠レンズに力を入れていたメーカーであることがわかる(文献[1]-[3])。今回は同社の望遠レンズの中からポピュラーな大口径モデルの135mm F2.8と400mm F4.5を取り上げることにした。
ピコン135mm F2.8の構成は3枚構成のトリプレット型である。ここまで大口径ともなれば、おそらくはバブルボケの顕著に出るレンズであるに違いない。絞り羽は豪華な16枚構成で鏡胴もつくりがよく、けっしてチープなレンズではない。もう一方のテレ・ピコン400mmの構成は驚いたことにペッツバール型である。ペッツバールと言えば中心部はとても性質がよい反面、周辺部の画質は荒れ狂う収差の嵐で、強烈なグルグルボケのでる印象があるが、焦点距離は400mmとたいへん長いので恐らく画質的には素直なレンズであろう。でかいので、いざという時には護身具にもなる。絞り羽は圧巻の20枚構成だ。


入手の経緯
ピコン(Picon) 135mm F2.8 

このレンズは2016年5月にチェコのコレクターがeBayに出品していたものを競買の末手に入れた。135mmは人気のない焦点距離であるが、個性的なデザインと希少性の高さに魅せられたのかオークションには何人かが入札し、落札価格は開始時のほぼ倍の108ポンド(約17500円)になっていた。オークションの記述は「絞り羽はクリーンでフォーカスリングはスムーズ、ガラスは気泡、傷、ホコリ等のない良好な状態を保っている。コーティングの状態も良好で傷やクリーニングマーク、クモリはみられない。鏡胴は極僅かな傷がみられるのみで良好。素晴らしいコンディションである」とのこと。コンディションの良いレンズが届いた。
重量(実測)420g, 絞り F2.8-F22, 最短撮影距離 2.5m, フィルター径 52mm, 絞り羽根 16枚構成, 設計構成は3群3枚のトリプレット型, M42マウント

テレ・ピコン(Tele-Picon) 400mm F4.5
2016年12月に最近よく顔を出すオールドレンズ写真学校で参加者から「使ってみてくれ!」と突然手渡された・・・。手渡されるとは言っても、バズーカ砲のようなデカさなので苦笑してしまったが、偶然たまたま大型の登山用リュックを背負っていたので、これに入れて持ち帰ることに。こんなにデカいレンズは自分じゃ買わないのでいい機会を得た。それにしても、焦点距離400mmを超えるプロフェッショナル向けの望遠レンズをF4.5の明るさで作れのだから、このピエスカー社は無名ながらも侮れないメーカーだ。
重量(実測) 2.2kg, 絞り F4.5-F22, 最短撮影距離 20フィート弱(約6m),  フードつき,  絞り羽根 20枚構成, 設計構成は3群4枚のペッツバール型, M42マウント

両レンズともゼブラ柄で迫力満点の鏡胴のため、知らない人から声をかけられたり、ジロジロ見られたり、使っていると何だかソワソワすることの多い不思議な付加価値を持つレンズといえる。鏡胴がボールペンのように簡単に分解でき、ドライバーなど使わずとも下の写真のようにバラバラになるので、鏡胴を短縮させれば中判カメラへの搭載も容易だ。











参考文献
[1] Nummernbuch Photoobjektive - Hartmut Thiele: Objektivnummern von Agfa, Astro, Contessa Nettel, Enna, Goerz, Ica, Iloca, ISCO, Kilfitt, Laack, Ludwig, Pieskerm Plaubel, Rietzschel, Roeschlein, Rollei, ROW, Schacht, Steinheil, Will, Zeiss Ikon u.a.

[2] PHOTO BUT MORE by HORST NEWHAUS: Berliner Objektive von ASTRO, Piesker, TEWE und Dr. Weth

[3] Matthew Wilkinson and Colin Glanfield, A Lens Collector's Vade Mecum

撮影テスト
予想どうりとてもバブリーなレンズで、背後の空間に点光源をとらえると開放で強いバブルボケが発生する。F2.8の明るさを持つ大口径のトリプレット型レンズとしては、有名なトリオプラン100mm以外にプロジェクター用レンズを改造したダイアプラン(Diaplan)があるものの、Piconは更に口径の大きなトリプレット型レンズでボケ量はとても大きい。写真用としては貴重な存在ではないだろうか。開放では被写体をフレアが覆いソフトな描写傾向であるが、絞ると急変し、中心解像力は良好でスッキリとヌケがよく、カミソリのようにシャープな描写となる。絞りのよく効く典型的な過剰補正型のレンズだ。逆光には弱くハレーションが出るとコントラストが落ちるので、バブルボケを強調させたいならばフードの装着は必須となるであろう。色のりはとてもよい。中判カメラのハッセルブラッドにも供給されていたレンズなのでイメージサークルは35mm判よりもはるかに広い。今回はブロニカでも試写してみた。

Picon 135mm F2.8 x SONY A7
F2.8(開放), sony A7(AWB) 強いバブルボケがでている。トリオプラン顔負けの見事な過剰補正だ
左右ともF2.8(開放), sony A7(WB:晴天, 右はPhotoShopにて露出をプラス補正している)  開放ではフレアで柔らかい像となる。発色は良さそう

F2.8(開放), sony A7(WB:晴天) うーん。このレンズは楽しい!当たり

















F2.8(開放), sony A7(WB:晴天)
F2.8(開放), sony A7(WB:晴天)

F2.8(開放), sony A7(WB:晴天)









Fujifilm GFX100Sでの写真作例
F2.8(開放) Fujifilm GFX100S(AWB, Nostalgic Nega, Color:-2) モデルは、めめ猫妖怪さん。中判デジタルセンサーでは光量落ちが見られます。たぶん、マウント側の鏡胴でケラれているみたいで、その証拠に。この後のブロニカ(6x6)では全くケラれません

F2.8(開放)Fujifilm GFX100S(AWB, Nostalgic Nega, Color:-2) 開放では微かに柔らかいのですが、スタジオ撮影では屋外よりもだいぶシャープに写るようです。あるいは中判カメラだからかな。ポートレートで威力を発揮できるレンズです

 
 

中判6x6フォーマットでの写真作例
Picon 135mm F2.8 @F2.8(開放) + Bronica S2(6x6 format), 銀塩カラーネガフィルム(Fuji Pro160NS)  さらにイメージフォーマットが広いと、滲みはそれほど目立ちません











Tele-Picon 400mm F4.5 x SONY A7での写真作例
焦点距離が400mmともなれば流石に圧縮効果は大きく、使っていてとてもワクワクするレンズだ。軸上色収差が大きくカラーフリンジが多く発生するのは古い設計なので仕方のない事であるが、アマチュアの私には十分な画質。軟調気味でオールドレンズらしさの漂う優しい描写が特徴だ。設計構成がペッツバールなのでグルグルボケが出るかと思いきや、焦点距離が長いためボケは四隅まで安定している。ボケ味は適度に柔らかい。ピント部は四隅まで均一な画質であるものの解像力にはやや物足りなさを感じる。
F5.6, sony A7(WB 日陰)

F5.6, sony A7(WB 日陰)





F4.5(開放), sony A7(AWB)

F4.5(開放), sony A7(AWB)

F8, sony A7(AWB)
F4.5(開放), sony A7(AWB)







2017/02/25

ショップリンクの更新・移転

ショップリンクを更新・移転しました。
Doppietta-Tokyoを追加してあります。こちらからどうぞ。

2017/01/24

Steinheil München Gruppen-Antiplanet No.2(25mm dia.) 14cm F6.2




歴史の淀みを漂う珍レンズ達 part 2
大胆な設計が目を引くシュタインハイル社の極厚鏡玉
Steinheil München Gruppen-Antiplanet No.2(25mm dia.) 14cm F6.2
シュタインハイル グルッペン・アンチプラネット 
1881年に登場したシュタインハイル社のグルッペン・アンチプラネット(Gruppen-Antiplanet)。このレンズの特徴は何といっても極厚ガラスを用いた特異な設計であろう(上図・右)。その極厚ぶりときたら、19世紀のプリンと呼ぶしかない。レンズには収差を前後群でバランスさせる歴史上重要な技術が導入されており[文献2,3]、この技術は新ガラスの登場と並び、プロター1890年登場やウナー、テッサーなどの名レンズを生み出す原動力となった。キングスレークの本[2]の中にこの技術が生み出される経緯を辿ることができるので、軽くレビューしてみよう。
レンズを設計したのは同社創業者一家の2代目フーゴ・アドルフ・シュタインハイル博士(Hugo Adolph Steinheil[1832-1893]で、彼は収差理論の第一人者ザイデルの協力のもと1866年に名玉アプラナートを完成させている(下図・左)。アプラナートの登場は非点収差を除く4大収差を同時に補正できる高度なレンズが登場したことを意味しており、四隅まで歪曲の少ないレンズは当時画期的であった。この構成を採用したレンズが各社から発売され、アプラナートは大変な成功を収めている。アプラナートは前群と後群が完全対称な「複玉」と呼ばれるレンズであったが、この類のレンズでは遠方撮影時に収差のバランスが崩れ、特にコマ収差の補正が不十分になる性質があった(文献[2,3])。これに対応するため、シュタインハイルは前後群の対称性をやや崩した準対称型とすることで遠方撮影時でも充分な性能が得られるレンズを作ろうと試みた。その第一弾はアプラナートをベースに開発され、グルッペン・アプラナート(Gruppen Aplanat)という名で登場している(下図・中央,  文献[5])。彼は続いてグルッペン・アプラナートのクラウンガラスとフリントガラスの役割を逆転させてみた。すると、前群側の球面収差が大きな補正不足に陥ることがわかったので、後群側を過剰補正にすることで収差をどうにかバランスさせようと試みたのだ。その結果、偶然かどうかは定かではないが、接合面の異なる屈折作用により収差を打ち消す画期的な方法に辿りつき、この方法を採用したレンズを1881年に開発、グルッペン・アンチプラネット(Gruppen Antiplanet )の名で世に送り出している(文献[1])。ただし、前のレンズに対するアドバンテージは小さく、非点収差こそ僅かに良くなっていたがコマ収差は増大し、旧ガラスのみに頼る設計では倍率色収差も大きいと評価されている(文献[2,3])。
接合面の異なる屈折作用を利用したシュタインハイルの方法は後にツァイスのルドルフがプロターの開発に応用することで知られるようになり、設計者の名にちなんで「ルドルフの原理」と呼ばれるようになっている。

Aplanat(図・左)、Gruppen-Aplanat(図・中央)、Gruppen-Antiplanet(図・右)の構成図(カタログおよび特許資料[1,5]からのトレーススケッチ)。現代の写真用レンズは絞り羽を中心に前群と後群を向かい合わせに配置する設計形態が一般的であるが、この形態が登場したのは19世紀半ば頃と言われている。中でも前群と後群が対称な場合にはコマ収差・倍率色収差・歪曲の3収差の自動補正が可能になるため、複雑な計算を行わなくても性能の良いレンズが設計できるとあって、早期から研究がすすめられた。シュタインハイルの考案した3本のレンズは、まさにこうした潮流の中で生み育てられたレンズといえる




レンズのラインナップとカタログ記載
コマ収差や倍率色収差の補正が十分ではないという指摘[2,3]にも関わらず、シュタインハイル社のカタログには「シャープに写るレンズ」と記されており、通常の撮影に加え、ポートレート撮影、グループ撮影、建築写真、風景撮影、早撮り撮影(Instantaneous Work)、引き伸ばし撮影などマルチに使える万能レンズと紹介されている。レンズのラインナップは焦点距離 48mm(1+7/8 inch)の0番から焦点距離450mm(17+3/4inch)の7番までと、1b番と2b番までを含めた9種類のモデルが用意されていた。私が入手したのは焦点距離143mm(5+5/8inch)の2番で、推奨イメージフォーマットはポートレート撮影時が中判3x4フォーマット、無限遠(風景)撮影時が大判4x5フォーマットとのこと。おそらくポートレート撮影時において写真の四隅で収差の影響が大きくあらわれ、ボケ味にもその影響が顕著に出るのであろう。レンズは米国のAmerican Opticalが製造したSt.Louis Reversible Back Cameraという大判カメラに搭載されていた(文献[4])。
 
参考文献
[1] レンズの米国特許 US. Pat. 241437, A. Steinheil (May 10, 1881)
[2] Rudolf Kingslake, A History of Photographic Lens, Academic Press 1989
[3] 「レンズ設計の全て」 辻定彦著 電波新聞社
[4] Antique & 19th Century Cameras by R.Niederman (Click Here)
[5] グルッペン・アプラナートのドイツ特許 Pat.DE6189, A.Steinheil(1879)
[6] 「カメラ及びレンズ」 林一男 久保島信 著 写真技術講座1

焦点距離 約140mm, 口径比 約F6.2, 前玉径25mm, 絞り機構 スロット式, 鏡胴長(フード込) 38mm, 推奨イメージサークル 大判4x5インチ,  包括イメージサークル 29cm(大判8x9"ではコーナーが暗くなる), 重量(フランジリング込み) 187g
入手の経緯
今回紹介しているレンズは2016年8月にeBayを介してスペインの古典鏡胴専門セラーから275ユーロ+送料12.5ユーロの即決価格で落札購入した。オークションの記述は「1885年に製造されたシュタインハイルのグルッペン・アンチプラネット。経年にしては良い状態で外観は良好、ガラスは十分にクリアーでクリーン。支払いは銀行送金を好むが、ペイパルでの支払いにも対応できる」とのこと。届いたレンズは鏡胴こそ経年を感じるもののガラスは傷のない素晴らしい状態であった。ちなみにスロット式の絞り板が欠品だったので、自分でf9とf13の絞り板を自作することにした。


スロット式の絞り板はF9とF13を自作した。こういうのをつくるのは得意だ



 
撮影テスト
文献[3]ではコマ収差と倍率色収差が十分に補正できないレンズと解説されており、フレアやモヤモヤとした滲み、四隅でのカラーフリンジ等を覚悟していたが、実写からはこの予想とは少し違う結果が得られた。以下では中版6x6フォーマットと大判4x5フォーマットでの写真を順に見てゆく。撮影していて気付いた事だが、極厚鏡玉のため光の透過率の関係で露出がアンダーになりがちになる。撮影時にはシャッタースピードを少し遅らせると適正露出になるようだ。
 

中判カメラでの作例
機材: BRONICA S2, レンズフード装着, Sekonic L398
Film(6x6cm format): Kodak PORTRA 400/ Fujifilm PRO160NS
現像・スキャン:NORITSU QSS-3501(C41処理→16 BASE Direct Scan)

私の手に入れた焦点距離140mmのモデル(2番)は大判4x5フォーマットに準拠したイメージサークルをもつため、一回り小さな中判カメラのイメージフォーマットでは収差のよく出る四隅が切り落とされ、端正で無難な写りになる。光路の細い中判カメラでは鏡胴内部での迷い光の発生が懸念されるが、ブロニカで使ってみた限り全く問題はなく、安定した画質が得られた。大判カメラによる作例も後半に提示する。
近接から遠景まで距離によらず四隅まで安定した画質となり、背後のボケは開放でやや硬いもののよく整っている。グルグルボケや放射ボケは全くみられない。予想に反し開放でもフレアは少なく、ヌケのよいスッキリとした描写である。

F6.2(開放), 銀塩カラーネガフィルム(Kodak Portra 400, 6x6 format)


 
F6.2(開放), 銀塩カラーネガフィルム(Kodak Portra 400, 6x6 format)



F6.2(開放), 銀塩カラーネガフィルム(Kodak Portra 400, 6x6 format)

F6.2(開放), 銀塩カラーネガフィルム(Kodak Portra 400, 6x6 format)
F6.2(開放), 銀塩カラーネガフィルム(Kodak Portra 400, 6x6 format)
F6.2(開放), 銀塩カラーネガフィルム(Kodak Portra 400, 6x6 format

F6.2(開放), 銀塩カラーネガフィルム(Kodak Portra 400, 6x6 format










F6.2(開放), 銀塩カラーネガフィルム(Fujifilm Pro160NS, 6x6 format)

F6.2(開放), 銀塩カラーネガフィルム(Kodak Portra 400, 6x6 format)





大判カメラでの作例
Film: Fujifilm PRO160NS (4x5 format)
機材:Pacemaker SpeedGraphic レンズフード装着
Scan: Epson GT-9700F

このレンズの本性を見るには大判4x5フォーマットのカメラで使う必要がある。中判6x6フォーマットでの端正な描写が一変し、開放では荒れ狂う収差の嵐となる。ピント部は四隅で像面が湾曲し、妙な立体感を醸し出しており、像面も割れて被写体の背後にはグルグルボケ、前方には放射ボケがみられる。ただし、フレアや滲みは少なくスッキリとヌケのよい描写で、コントラストも良好である。予想に反し、とても良く写るレンズであることがわかった。撮影テストを終えたあと文献[6]にこのレンズの描写に関するかなり正確な評価をみつけた。非点収差がやや厳しいものの、コマ収差はそれほど酷くはないのだとおもう。
 
F6.2(開放), 銀塩カラーネガ撮影(大判4x5フォーマット,  Fujifilm Pro160NS)  SCAN: epson GT-9700F 











F6.2(開放), 銀塩カラーネガ撮影(大判4x5フォーマット,  Fujifilm Pro160NS)  SCAN: epson GT-9700F 


F6.2(開放), 銀塩カラーネガ撮影(大判4x5フォーマット,  Fujifilm Pro160NS)  SCAN: epson GT-9700F 中央は高画質。グルグルボケと放射ボケが同時に発生し、妙な立体感を醸し出している。中判撮影では見ることのなかった激しい開放描写だ
F9, 銀塩カラーネガ撮影(大判4x5フォーマット,  Fujifilm Pro160NS)  SCAN: epson GT-9700F: 一段しぼると画質は安定し、ボケも穏やかになる

2017/01/16

Article "KMZ Industar 50-2" is revised!

KMZ Industar 50-2 50mm F3.5(M42)の過去の記事をフルサイズ機による写真作例を加え、リニューアルしました。
 
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