おしらせ


MAMIYA-TOMINONのページに写真家・橘ゆうさんからご提供いただいた素晴らしいお写真を掲載しました!
大変感謝しています。是非御覧ください。こちらです。

2021/02/03

KONICA HEXANON AR 40mm F1.8

逆光に弱いからこそ活かす。

コニカのパンケーキ風レンズ

KONICA HEXANON AR 40mm F1.8

このところブログでコニカの1960年代~1970年代のレンズを取り上げていますが、同社のレンズに共通する繊細で柔らかい描写にすっかり魅了されてしまいました。フレアを許容しながらも解像力を重視する設計理念は1950年代のレンズによくあるセッティングで、オールドレンズを扱う現代のカメラ女子達にはたいへんな人気です。現代のレンズとは程遠い素晴らしい味付けを提供してくれます。しかし、時代の潮流はカラーフィルムの普及とともに、解像力よりもコントラストに偏重した味付けに変わっていきました。HEXANONの描写設計は、よく言えば古風、悪く言えば時代錯誤ともとれるものです。いったい、どういう価値観を持った人物が設計していたのでしょう。

コニカのレンズ設計士を調べてみると、興味深い情報が出てきました[1]。この時代のレンズ設計を手掛けていたのは下倉敏子氏という女性設計士で、女性ならではの感性がレンズの描写設計に活かされているというのです。前回のブログ記事で扱ったHEXANON AR 50mm F1.7も下倉氏の設計でした。これは、もっと取り上げないといけません。そこで、今回は下倉氏の代表作と言われているHXANON AR 40mm F1.8を手に入れて紹介することにしました。このレンズはARマウントを採用した一眼レフカメラKonica FS-1 の交換レンズとして1979年に登場しました。下倉氏の特許資料を読んてみると、開発当時はコンパクトで明るい準広角レンズがスナップ用に使いやすいとレンジファインダー機の分野でブームだったので、一眼レフカメラでも同様のレンズを実現したいという願いがあったようです[2]。ただし、一眼レフにはミラーの可動域がありますので、バックフォーカスを長く保たなければなりません。設計をレトロフォーカスにすることでも広角レンズは実現できますが、レンズの全長が長くなり前玉が巨大になるなどコンパクトなレンズは不可能です。また、F2~F1.8程度の明るさを確保する場合、前群側の屈折力の不足分を後群側で補いますが、これですとサジタル像面の補正が困難になり、背後のボケが乱れるのだそうです[2]。一眼レフ用には困難極まりない条件ですが、下倉氏は才能豊かなエンジニアだったのでしょう。シンプルな6枚構成でこの難局を乗り切る落しどころを見つけてしまいます。レンズはニコンの設計者からも大絶賛されたそうです。

Konica Hexanon AR 40mm F1.8の光学系。構成は5群6枚の独特な変形ガウス型で、前群の2枚目と3枚目のレンズ配置が通常のガウスとは異なり正負が逆になっています。下倉氏の特許資料には準広角レンズとしての本設計の意義が強調されており、はじめからスナップ撮影向きに開発されたレンズであることがわかります

レンズの設計構成は5群6枚の変形ガウスタイプをベースにしており(下図)、前群の正エレメントと負エレメントの位置関係がひっくり返った独特な形態です。この構成を採用したレンズとしては、下倉氏とほぼ同じ時期の1975年にモスクワのKMZ(クラスノゴルスク機械工場)でKvaskova V.G.(Kvaskova V.G.)というエンジニアによって設計されたZENITAR-M 1.7/50があります[3]。ただし、ZENITAR-Mは標準レンズですので、準広角レンズをつくりたいとする下倉氏とは開発時の背景が異なります[1]。

焦点距離40mmはスナップ撮影に使いやすく、心地よい画角を提供してくれます。軽くて小さな本レンズは口径比もF1.8と明るく、使い出がありそうです。


重量(実測)140g, 絞り羽 6枚, 絞り 1.8-22, 最短撮影距離 0.45m, KONICA ARマウント, フィルター径 55mm, 構成 5群6枚(変形ガウス型)



参考文献・資料

[1]光学産業開花期の一断面:コニカにおける技術発達し(~1960) 笠原正, Konica Technical Report VOL.12(1999)

[2]Toshiko Shimokura, US.Pat. 4,214,815 1980(Filed in 1978)

[3]ZENIT cameraアーカイブズ: Zenitar-M


入手の経緯

レンズはヤフオク等に常時出ており流通量は豊富です。ヤフオクでの取引相場は7000円~8000円程度ですが、コンディションの悪い個体ばかりですので、良好なものにはもう少し高値がつくものとおもいます。私は2021年1月中旬にヤフオクで7500円(送料込)で購入しました。この時点で状態の良い個体が1本も出ていなかったので、仕方なくカビ入りの個体を購入し、自分でオーバーホール、綺麗な状態になりました。ヘリコイドもグリスを入れなおし快調になっています。


撮影テスト

開放では写真全体が薄いフレアに覆われ、繊細な写真になります。逆光に弱くハレーションやゴーストが出やすいので、弱点を上手に活かせばオールドレンズらしい雰囲気のある画作りができると思います。絞るとヌケがよくなりコントラストも向上し、メリハリが出ます。歪みは大変よく補正されており、微かに樽型ですが全く問題ありません。シャドーがストンと潰れやすいので、暗い場所で撮る場合には露出を少し上げてやる方がよいとおもいます。とにかくレンズ任せカメラ任せには撮らないことでしょうね。背後のボケは若干硬めでザワザワしますが、距離によらず安定しており、グルグルボケや放射ボケが目立つ兆候はみられません。特許資料にもかかれているように、非点収差に配慮した設計であることがよく判ります。

F1.8(開放) sony A7R2(WB:日陰)逆光ではハレーションが出やすいので、活かせば、ぼんやりとした雰囲気のある写真も撮ることができます



F2.8 sony A7R2(WB:日陰) 室内では焦点距離40mmのアドバンテージがとても大きいと痛感します


F1.8(開放) sony A7R2(WB:日光)シャドー部の粘りが弱いので、暗いところを撮る場合の露出補正には細心の注意が必要です。デジカメ時代で本当によかった・・・









F1.8(開放) 祖nyA'R2(WB:日陰)

F1.8(開放) sony A7R2(WB:日陰)
F1.8(開放) sony A7R2(WB:曇)
F1.8(開放) sony A7R2(WB:日光) 開放では写真全体が薄いフレアに覆われ、柔らかい写傾向になります

F2.8 sony A7R2(WB:日光)
F2.8 sony A7R2(WB:日光)

2020/12/31

KONICA HEXANON AR 50mm F1.7 and MINOLTA MC ROKKOR-PF 55mm F1.7

 

揺るぎない設計理念を感じる

光学メーカーの2本

Konica HEXANON AR 50mm F1.7 vs Minolta ROKKOR-PF 55mm F1.7

F1.7レンズの特集は第1回戦の最終組となりました。今回もコニカとミノルタの対決です。この2社のレンズは前回のF1.4の記事でも取り上げ比較しましたが、改めて考えさせられたのは、光学メーカーには描写の味付けと言いますかレンズの描写設計に、一貫した揺るぎない理念があるという事です。コニカの設計は解像力を重視した過剰補正で、フレア(滲み)を許容しながらも線の細い繊細な画作りを持ち味としています。レンズが登場したのは1971年で、コニカの一眼レフカメラNew FTA に搭載する交換レンズとして発売されました。この時代のレンズは大方どのメーカーも、解像力重視から抜け出しコントラストにも配慮したバランス志向の描写設計に軸足を移しています。時代の潮流に流されることなく、個性をはっきりと打ち出した製品を堂々とリリースできたコニカというメーカーには、きっと強い自社哲学があったのでしょう。レンズを設計したのは、有名なKonica 40mm F1.8を設計した下倉敏子氏と言われています。オールドレンズ女子達に受け入れられやすい柔らかい開放描写のレンズです。対するミノルタはコントラストにも配慮した画質設計で、Konicaほど過剰な補正はかけず、スッキリとしたヌケの良さと力強い発色を持ち味としています。Hexanonほどの緻密な画作りはできませんが、線の太いキリッとした画作りが特徴です。Minoltaは何と言っても世界で初めてマルチコーティングを実用化した光学メーカーですので、その強みを最大限に生かした描写設計に至ったのでしょう。レンズは同社の一眼レフカメラSR-Tに搭載する交換レンズとして1966年に発売されました。これはHEXANONより5年も古い発売ですが、いかにもミノルタらしい前衛的で革新性に富む描写設計です。両レンズともレンズ構成は下図に示す5群6枚で、前群の貼り合わせを外し球面収差の補正力を向上させた拡張ガウスタイプの典型です。設計自由度が高く、メーカー独自の味付けができる構成と言えます。アプローチの異なる2本なので、描写に対する評価は難しそうですが、どうにか頑張りたいと思います。






入手の経緯
HEXANON AR:ネットオークションでは状態の良い品を4000~5000円程度と手ごろな値段で入手することができます。流通量が豊富なのでコンディションの良い個体のみに照準を絞り、その中から買いやすい値段のものを選ぶのがよいとおもいます。アダプターはKONICA ARマウントから各種ミラーレス機に接続するための市販品が入手できます。オススメはAR-LMアダプターでいったんライカMマウントに変換することです。ライカMマウントから各種ミラーレス機用のアダプターにジョイントしミラーレス機にマウントします。
ROKKOR-PF: ネットオークションではコンディションの良い個体が5000~8000円程度から入手できます。このレンズも流通量は豊富ですが、中古市場には状態の悪い個体が安値でゴロゴロと犇めいていますので、そいつらを掻き分けコンディションの良い個体を狙い打ちすることをおすすめします。安易に安値で探しても無駄なので、適正価格帯の中で良いものを探すことが肝心です。アダプターはminolta MDマウントから各種ミラーレス機に接続するための市販品を選びます。いったんライカMマウントを経由する事もできますが、この場合、中国製の安価なアダプターには無限の出ないものが多いと噂なので、安全のためK&Fブランドなどを選ぶとよいでしょう。

撮影テスト
HEXANON AR 1.7/50: 開放で引き画を撮る際はフレア(滲み)を伴う柔らかい描写傾向になります。少しボンヤリする時もありますが、これがオールドレンズならではの何とも言えない雰囲気を醸し出してくれます。一方でポートレート域で人物を撮る際には不思議とボンヤリ感が収まり、適度な柔らかさと緻密さが被写体を美しく描き出してくれます。バストアップくらいの撮影距離になると、ヌケの良い描写となります。たぶん、収差変動が起こり過剰補正が緩むのでしょう。計算高いしたたかなレンズですね。コントラストはミノルタに比べると低めで、発色も少し淡くなる傾向がありますが、解像力は高く緻密な画作りができます。繊細な味付けと軟調なトーンで勝負する味わいのあるレンズだとおもいます。ボケは安定しており、グルグルボケや放射ボケが気になる事はありませんでしたが、開放で像面湾曲と光量落ちが感じられる場面がありました。

Konica HEXANON AR 50mm F1.7
+
SONY A7R2

HEXANON @F1.7(開放)+sony A7R2(WB:日光) 柔らかく緻密・・・いいレンズです。中央の一部を拡大したのが次の写真

上の写真の中央部を拡大したもの。オールドレンズならではの柔らかい描写です

HEXANON @F1.7(開放) +SONY A7R2(WB:日陰) 階調もまんべんなく良く出ています。引き画で少しボンヤリとする開放描写が、何とも言えない雰囲気を出します。でも中央は緻密ですね
HEXANON @F1.7(開放)+sony A7R2(WB:電灯)
HEXANON @F8 + SONY A7R2(WB:日陰)


ROKKOR-PF 1.7/55: ミノルタは革新性を売りにしていたメーカーで、レンズの描写設計にも10年先を行く味付けを感じます。解像力は控えめですがコントラストを重視した時代の潮流の先頭を走っています。開放からフレアは出ず、スッキリとした写りと発色の鮮やかさのある力強い描写傾向のレンズで、絞ればカリッと写ります。半逆光で帯状のゴーストが出やすい点はROKKOR-PF 1.4/58に似ていますが、はっきりとした虹になるのはF1.4のモデルの方ですボケは安定しており、背後の像が乱れることはありませんでした。HEXANONよりも、より現代的な味付けに近いレンズと言えます。
 
Minolta ROKKOR-PF 55mm F1.7
+
SONY A7R2
 
ROKKOR-PF @F1.7(開放)+sony A7R2(WB:日陰) 開放からコントラストは良好で滲みもありませんが、解像力は控えめです。フィルム写真で使うには充分な解像力でしたが、デジタル高画素機ですと、HEXANONに比べ細部の質感表現で差がでます

ROKKOR @F1.7(開放) + Sony A7R2(WB:日陰) 薄いのですが、よく見ると虹のゴーストが出ていました。

ROKKOR @F1.7(開放)+ sony A7R2

ROKKOR @F1.7(開放)+ sony A7R2

ROKKOR @F1.7(開放)+ sony A7R2(セピア)
ROKKOR @F1.7(開放)+ sony A7R2(セピア)
ROKKOR @F1.7(開放)+ sony A7R2(セピア)
ROKKOR @F1.7(開放)+ sony A7R2(セピア)


HEXANON AR  vs ROKKOR-PF

さて、ジャッジの時間です。両レンズは描写設計が異なるため、解像感(シャープネス)へのアプローチも全く異なります。判断は微妙になる事は間違いありません。

まず引き絵で比較した下の写真を見てみましょう。明らかにROKKORの方が解像感に富むシャープな描写であることがわかります。SNSでアンケートをとってみても、ROKKORの方がシャープだとする回答の方が圧倒的に大多数でした。HEXANONの方はフレアが発生しておりボンヤリとしていて、発色も少し淡い感じがします。周辺画質がやや甘く(おそらく像面湾曲)、光量落ちもみられます。引き絵ではROKKORの圧勝です。

HEXANON @ F1.7(開放), sony A7R2(WB:日陰, Aspect Ratio 16:9)
ROKKOR @ F1.7(開放), sony A7R2(WB:日陰, Aspect Ratio 16:9)   Win!

 


中央部(ピント部)を拡大した写真も見ておきましょう。下の写真です。HEXANONの方がフレアが多くモヤモヤしていますが、細かなディテールをよりよく拾っており、解像力を重視したクラシックな画づくりが特徴です。対するROKKORはスッキリとしていてコントラストがより高く、メリハリのがありますが、ディテールを省略したややベタッとした画作りです。解像力ではHEXANON、ヌケの良さとメリハリの良さではROKKORに軍配があがります。

 
続いてポートレート域での比較です。下の2枚の写真を見てください。不思議なことに、被写体にこの位の距離まで近づくとHEXANONの写真に滲みは見られず、引き画の時とは異なるスッキリとした描写になります。コントラストはやはりROKKORの方が上で発色もより鮮やかなど、どんな人がとっても理解を得やすい写真になります。ただし、HEXANONの方が解像力に富む緻密な画作りができ、適度な柔らかさと相まって、より優れた質感表現ができるように思えます。ポートレートの人物撮影で最も要視されるのは質感表現だと聞いたことがありますので、ここはHEXANONの勝利としました。

HEXANON @F1.7 + sony A7R2(WB:日陰)このままROKKORが逃げ切るかと思っていましたが、順光でポートレート撮影の場合、描写が一変し、滲みが完全に消えています。コントラストはややROKKORに及びませんが、十分な解像感が得られています Win
ROKKOR @F1.7(開放) sony A7R2(WB:日陰)ROKKORはこの通りにコントラストがより高く、スッキリとしたヌケの良さがありキリッと写ります。顔の発色もいい。端的に言えば線の太い描写と言われるものが当てはまります
 
引き画ではROKKOR、ポートレート域ではHEXANONに軍配を上げましたので、最終評価はもつれています。HEXANONにもう少しコントラストがあれば、前のRE TOPCORの記事のような判断で勝利させることができましたし、ROKKORにもう少し解像力があれば、前のZENIAR-Mの記事のように勝利させることができましたが、解像感(シャープネス)に対するアプローチの違いで今回の対決は両者互いに一歩も譲らない結果となりました。完全な引き分けです。ただし、トーナメント戦ですので勝者をどちらか一方に決めなければなりません。現代のレンズの描写理念により近い方を高性能レンズとするのが正論ですので、ROKKORを勝者にしたいと思います。オールドレンズらしい味のあるレンズとしてはHEXANONを推薦しますが、ここはトーナメントのルールを順守しなければなりません。
さて、これで第1回戦A-F組の対戦が全て終了しました。第2回戦は2021年度に実施します。より頻差の微妙なジャッジが要求されるものと思いますが、楽しみにしていてください。それでは、来年もどうぞよろしくお願いいたします。

2020/12/27

Voigtländer COLOR-ULTRON 50mm F1.8 M42/QBM muont



 
優れたガラス硝材が登場するとともにコンピュータによる自動設計技術が普及し、明るい標準レンズの代表格であるガウスタイプの設計は1970年代に成熟期を迎えます。過剰補正に頼らなくとも輪帯球面収差を無理なく補正でき、高いコントラストと解像力を両立させながら、素直なボケ、スッキリとしたヌケのよい開放描写を実現できるようになります。レンズ設計の関心はピント部からアウトフォーカス部へと移り、それまでボケ味のザワザワとしたレンズが大勢を占めていた中、ボケ味トロトロ系の美ボケレンズが各社から登場するようになります。ガウスタイプのレンズはここに来て新次元の領域に到達したわけです。

ウルトロン型レンズの集大成
グラッツェル博士のウルトロン
Voigtländer COLOR-ULTRON 50mm F1.8

カラー・ウルトロンはフォクトレンダーブランドの一眼レフカメラVSL-1に搭載する交換レンズとして1974年より供給された凹みULTRONの後継レンズです。凹みUltron同様に7枚玉の贅沢なレンズ構成を踏襲していますが、フロント部の第一レンズが凹メニスカスではなく弱い正パワーの凸レンズに変更されている点が大きな違いです(下図)。光学系の原型は1970年にZeiss Ikonから発売されたRolleiflex SL35用のCarl Zeiss Planar 1.8/50ですが、このPlanarに採用された拡張ガウスタイプの設計構成は元を辿れば凹みULTRON、さらに遡るとVoigtlander ULTRONからの流れを汲んでおり、カラー・ウルトロンが登場したことで設計構成が再びUltronブランドに回帰したわけです。Zeiss Ikonは1971年にカメラ産業から撤退し、Zeiss IkonブランドとVoigtlanderブランドの商標はシンガポール・ローライに譲渡されており、これ以降の両ブランドはレンズの設計こそドイツ本国でしたが、シンガポールで製造されました。レンズを設計したのはホロゴンやディスタゴンなど革新的なレンズの設計で知られるカール・ツァイスのグラッツェル博士(Erhard Glatzel 1925年-2002年)で、レンズの開発にあたっては前モデルまでの設計を担当したトロニエ博士の助言が反映されているそうです。
 



カラー・ウルトロンは凹みウルトロンよりもコントラストや発色の改善に力を注いでいますが、それでも解像力は十分に高く、コンピュータ設計により7枚玉の底力が遺憾なく発揮されています。天下のCarl ZeissがPlanarの名で発売したレンズと同一設計なわけですから実力は間違いありませんが、残念なのは生産国がシンガポールであたっため過小評価され、不遇な扱いをうけてきたことです。安価なわりに高性能でコストパフォーマンスは抜群に高く、マニアの間では誰もが認める隠れ名玉として一目置かれる存在となっています。
 
入手の経緯
レンズはeBayに豊富に流通しており、相場はQBMマウントのモデルが100ドル~150ドル程度、M42マウントのモデルが150~200ドル程度です。この値段の差はM42マウントのモデルの方が使用できる一眼レフカメラが多いためですが、現在はミラーレス機が主流となり、値段の安いQBMマウントのモデルでも多くのカメラで使用できます。何ら不自由はありません。日本国内では海外相場の1.5倍くらいの値段で取引されています。
 
Voigtländer COLOR-ULTRON 50mm F1.8(中央はM42マウント、右はRollei QBMマウント): フィルター径 49mm, 絞りF1.8-F16, 絞り羽 6枚構成, 最短撮影距離 0.45m, マウント規格 M42/Rollei QBM, 重量(実測)180(M42) /188g(QBM), マルチコーティング
  
撮影テスト
開放から解像力は高く、コントラストも十分で、現代のレンズに近い欠点の少ないレンズです。前モデルの凹みULTRONが持っていたシアン成分の発色の癖は完全になくなり、ハッとするような鮮やかな発色に出会えます。ボケは安定しており美しく、グルグルボケや放射ボケが目立つこともありません。ここまで高性能なレンズがこの程度の値段で入手できることは大変な驚きです。
 
F4 sony A7R2(WB:日光) マルチコーティングが良く働き、曇りの日でもコントラストは高いレベルをキープしています



F1.8(開放) sony A7R2(WB:日光)

F1.8(開放) sony A7R2(WB:日光)aaa










F1.8(開放) SONY A7R2(WB:日光) 定評どうりの凄い性能。開放でこの描写力はもう異次元です



左右接合: 左F4/ 右F1.8(開放): SONY A7R2(WB:日光) 


F1.8(開放) SONY A7R2(AWB) 

F1.8(開放) SONY A7R2(AWB) 
F1.8(開放) SONY A7R2(WB:日陰) 


F1.8(開放) SONY A7R2(WB:日陰)


F1.8(開放) SONY A7R2(WB:日陰)

F1.8(開放) SONY A7R2(WB:日陰)

F1.8(開放) SONY A7R2(WB:日陰)

F1.8(開放) SONY A7R2(WB:日陰)

2020/12/25

写真展の告知:OLDLENS GIRLS Photo Exhibition ver.5: 2021.1.6(web)-17(sun)

OLDLENS GIRLS Photo Exhibition Ver.5
場所:新宿マルイ本館8F イベントスペース
会期:2021年1月6日(水)-17日(日)
オールドレンズ女子部 写真展5

オールドレンズ女子部の特別顧問として部長以下、部員の皆様をサポートさせていただいておりますが、このたび同部のグループ写真展が、新年の1月6日から新宿マルイ本店で開催されることになりました。今回はそのご案内です。ご来場の際にはコロナウィルスへの感染に充分ご注意いただきますよう、お願いいたします。

TORUNOによる週末(土・日)のオールドレンズ試写・販売コーナーは1月も継続するそうです。