おしらせ


MAMIYA-TOMINONのページに写真家・橘ゆうさんからご提供いただいた素晴らしいお写真を掲載しました!
大変感謝しています。是非御覧ください。こちらです。

2020/09/18

TOPCON AM/RE TOPCOR 55mm F1.7 and MAMIYA-SEKOR CS 50mm F1.7

解像力(分解能)を重視したTOPCOR(トプコール)は線の細い繊細な描写を持ち味としています。これに対し、コントラストを重視したマミヤのSEKOR(セコール)は線の太い力強い描写で、スッキリとした透明感のある写りと高いコントラストが持ち味です。解像力とコントラストを高いレベルで両立させれば優れた質感表現を可能とするシャープなレンズになりますが、これらをレンズ設計で両立させるのは難しく、突き詰めるとトレードオフの関係になってしまいます。両者のどちらにどれだけの重みを置くのかは光学メーカーそれぞれの設計理念で決まりました。この設計理念こそがオールドレンズの性格、描写の味を決める決定要因の一つとなっているわけです。ベストな解の無い事がレンズの描写設計に多様性をもたらしているというのは、たいへん興味深いことだと思います。さて、今回とりあげる2本は全く異なる性格のレンズですので、これらの比較からも様々な事が学べそうです。

トプコールとセコール

対極的な設計理念でつくられた2本のレンズ

Topcon RE/AM TOPCOR 55mm F1.7 vs Mamiya SEKOR CS 50mm F1.7

TOPCOR 55mm F1.7はTOPCON(旧・東京光学)が設計し、下請けメーカーのシマ光学(後のシィーマ)がOEM生産した標準レンズです。TOPCONはこのモデルを最後にカメラ事業から撤退していますので、実質このレンズが復刻版を除く最後のトプコールとなりました。レンズはシマ光学が製造した一眼レフカメラのTOPCON RE200(1977年発売)/RE300 & RM300(1978年発売)とともに市場供給されています。これらのカメラには異なるマウント規格が採用されており、旧来からのエキザクタ・マウントを採用したRE TOPCOR (RE200/RE300用)と、ペンタックスKマウントを採用しガラス面にマルチコーティングが施されたAM TOPCOR (RM300用)があります。

AM TPCOR MC(左)とRE TOPCOR(右):デザインは同じだが、AM TOPCORはマルチコート化されている

レンズ構成は下図のような4群6枚のオーソドックスなガウスタイプで、前玉に肉厚レンズを配置して屈折力を稼ぐことでF1.7の明るさを実現しています。このレンズ構成で口径比をF1.7まで明るくしたレンズは大きく膨らんだ球面収差(輪耐球面収差)を過剰補正で抑え込む設計が多く、反動で開放ではフレアが多めに出ますが、芯のある緻密で繊細な開放描写を特徴とし、1~2段絞ったあたりで極めて高性能レンズへと化けるなどの長所もあります。本レンズにもこうした性質が備わっており、解像力を重視した設計理念を公言していた東京光学らしい味付けとなっています。ただし、レンズ設計の潮流は解像力からコントラストやヌケの良さを重視する時代へとシフトしていましたので、このレンズに対するカメラ雑誌の評価は酷いものでした[1]。古臭い前時代的な描写設計といった評価だったのでしょう。

近年、デジカメの高画素化とともに、この種の線の細い描写設計が再評価されるようになりました。これは本当に素晴らしいことだと思います。高コントラストで高解像、レンズの描写が画一化してしまった現代において、オールドレンズを使う人々は、こうした古い描写設計のレンズにも価値観を見出し、活路を拓こうとしているのです。 

続いてはMAMIYA SEKOR CSシリーズですが、このレンズはマミヤ光機(現マミヤ・デジタル・イメージング)が1978年に発売した一眼レフカメラのMAMIYA NC1000/ NC1000Sに搭載する交換レンズとして市場供給されました。マミヤの標準レンズと言えば1961年に登場したSEKOR FCが開放値F1.7で他社よりも早く登場しています。

レンズ構成は口径比F1.7のレンズの典型と言える5群6枚の拡張ガウスタイプで、前群の張り合わせを外すことで球面収差の膨らみ(輪帯球面収差)をある程度まで効果的に補正できます。写真用レンズの解像力に関してMAMIYA設計部には銀塩カラーネガフィルムの記録密度(25線/mm)を下回らなければ十分だという理念がありましたので、解像力よりもコントラストやその他の補正を重視している点が同社のレンズ設計のカラーなのかもしれません[2]。このレンズもバランス重視の安定した描写で、現代のレンズに近い高性能な製品となっています。レンズ設計のカラーについては、今後マミヤのレンズをいろいろ試す中で検証してゆきたいと思います。

MAMIYAは頻繁にマウント規格を変更したカメラメーカーでもありました。このNC1000シリーズにも独特でマイナーなバヨネットマウントが採用されており、アダプターの入手には一苦労しました。

SEKOR CSを搭載したMAMIYA NC1000S(左)とAM TOPCORを搭載したTOPCON RM300(右)







参考文献・資料

[1] カメラ毎日別冊『カメラ・レンズ白書1979年版』毎日新聞社

[2] 朝日カメラ(別冊)「郷愁のアンティークカメラIII」レンズ雑学辞典 1993年12月: 小穴教授のXenotarの記事中に参考になる情報があります

[3] カメラレビュー別冊「クラシックカメラ専科」36号「マミヤのすべて」

[4] MAMIYA NC1000 Instructions (製品カタログ)

[5] TOPCON CLUB


入手の経緯

AM TOPCORは2020年3月にスペインのカメラ屋がeBayに一眼レフカメラのRE300とセットで出品していたものを入手しました。このカメラとレンズは海外への輸出用モデルでしたので、国内市場で見つけるのは困難です。購入価格は送料込みで15000円とややお高めの設定でしたが、カメラ・レンズともにオーバーホールされており、コンディションもMINT (美品)とのことでしたので迷わず購入しました。国内ではシングルコート版のRE TOPCORが流通しており、オークションでの相場はコンディションの良い個体(レンズ単体)で5000円~10000円程度です。

SEKOR CSは2020年3月にヤフオクにて一眼レフカメラのMAMIYA NC1000Sとセットで5000円で購入しました。カメラとレンズはともに綺麗な状態でしたが、レンズの方はヘリコイドがスリップするようなトルク感でグリス抜けの状態でした。ヤフオクでの相場はカメラとセットでも5000円程度、程度の良い個体でも10000円以内で買えます。アダプターの市販品が入手困難のため、あまり人気のない商品のようです。


撮影テスト

TOPCON AM TOPCOR MC 55mm F1.7:  開放では前ボケ側にフレアがたっぷりと発生する柔らかい描写傾向で、ハイライト周りも滲みが出ますが、直ぐにこれが計算された描写である事に気づかされます。ピント部は中央のみならず広い範囲まできっちり解像しており、繊細な画作りができます。驚いたのはコントラストで、これだけフレアが出ているのにも関わらずコントラストは依然良好で発色も鮮やかです。有名な同社のRE TOPCOR 58mm F1.4にも通じる描写理念をこのレンズからも感じることができます。ボケには安定感があり、背後のボケは四隅まで乱れる事はありません。一段絞るとフレアが劇的に消滅しスッキリとしたヌケのよい描写に変わります。絞りのよく効くレンズです。

AM TOPCOR @ F1.7(開放) sony A7R2(WB:日陰)コントラストは開放でも高く発色も鮮やかです

AM TOPCOR @ F1.7(開放) sony A7R2(WB:曇天)


AM TOPCOR @ F1.7(開放) sony A7R2(WB:曇天)
AM TOPCOR @ F1.7(開放) sony A7R2(WB:曇天)中心解像力は突出して高いレベルではありませんが、画面の広い範囲にわたり良好な解像力が出ています。一部を拡大した写真を下に示します
中央と上部の隅を拡大したもの。解像力は写真の広い範囲にわたり十分なレベルです


AM TOPCOR @ F1.7(開放) sony A7R2(WB:日陰)




説明を追加


AM TOPCOR @ F1.7(開放) sony A7R2(WB:日光)
AM TOPCOR @ F1.7(開放) sony A7R2(WB:日光)

AM TOPCOR @ F1.7(開放) sony A7R2(WB:日光)前ボケ側にフレアがたっぷり出ます。ピント部はやっぱり解像力があります
AM TOPCOR @ F1.7(開放) sony A7R2(WB:日光)一部を拡大したのが下の写真
上の写真を100%クロップで拡大した写真。フレアは出ていますが、十分に高い分解能で、解放から緻密な描写のレンズであることがわかります


 
MAMIYA-SEKOR CS 50mm F1.7 :開放でも滲みは全く見られず、スッキリとしたヌケの良い描写と鮮やかな発色を特徴とする高コントラストなレンズです。解像力は控えめで、絞ればエッジの効いたカリカリ描写になります。現代レンズにも通じる味付けですので、オールドレンズユーザーには好みの分かれるところかと思います。発色は逆光時にクールトーンにコケる傾向があります。背後のボケは柔らかく素直で、ポートレート域でもザワザワすることはあまりありませんし、グルグルすることもありません。無理のない完全補正型レンズの優等生です。
SEKOR CS @ F1.7(開放) + SNY A7R2(WB:曇天) 開放でも滲みはなく、コントラストも良好で発色も鮮やかです。歪みもほぼありません



SEKOR CS @ F1.7(開放) + SNY A7R2(WB:曇天) 天候が崩れ気味で曇空でしたが、緑が鮮やかに写っています
SEKOR CS @ F1.7(開放) + SNY A7R2(WB:曇天)  バランスを重視した完全補正型のレンズのため、背後のボケは綺麗。背後の玉ボケも光の強度が均一です

SEKOR CS @ F1.7(開放) + SNY A7R2(WB:曇天) 

SEKOR CS @ F1.7(開放) + SNY A7R2(WB:曇天) ずーっと開放です




SEKOR CS @ F1.7(開放)+sony A7R2(AWB) 
 

SEKOR CS @ F1.7(開放) + SNY A7R2(WB:曇天) 逆光にもある程度耐えます
SEKOR CS @ F1.7(開放) + SNY A7R2(WB:曇天) 
SEKOR CS @ F1.7(開放) + SNY A7R2(WB:曇天) ボケの綺麗なレンズですね
SEKOR CS @ F1.7(開放)+sony A7R2(WB:日陰) 
SEKOR CS @ F1.7(開放)+sony A7R2(WB:日陰) 

SEKOR CS @ F8+sony A7R2(AWB) 深く絞るとちょっと逆光でちと回折気味になり、中央にややハレーションが出ます

SEKOR CS @ F8+sony A7R2(AWB)  絞るとカリカリ描写。なんだかジオラマみたい





両レンズの解像感(シャープネス)の比較
今回も木馬を使って両レンズのピント部の解像感(シャープネス)を比較しました。ポートレート域で人物を撮影する事を想定し、被写体までの撮影距離を1.5m程度に設定して撮影しています。マクロ用レンズではありませんから近接撮影で比較しても意味がありません。画質の評価には下の写真内の赤枠部を100%にクロップした拡大写真を用いました。高画素機として知られるSONY A7R2を使いましたので、画像の記録密度は一般的な銀塩カラーネガフィルムの4倍程度です。両レンズとも絞りは開放とし、シャッタースピード等の条件を固定して撮影しています。
AM Topcor @ F1.7(開放) SONY A7R2(WB:日陰)

コントラストが高ければ発色も鮮やかですし、スッキリとしたヌケの良い描写のレンズとなりますが、それだけではシャープな像にはなりません。今さら言うのも諄いのですが、高い解像力(分解能)とコントラストが両立した時に、はじめて解像感に富むシャープな像が得られます。
上の写真の一部を切り出したのが下の写真です。TOPCORほど解像力はありませんが、MAMIYAのカリカリ描写は見た目には十分な解像感を与えています。ただし、フィルムの記録密度を想定した解像力のため、例えば目の周りの質感に目を向るとトーンのつなぎ目が飛んでおり質感表現がベッタリとしているなど、既に分解能が限界に達しています。一方、TOPCORの解像力にはまだ余裕があり、もう一歩拡大しても緻密な質感表現を維持できそうです。コントラストも素晴らしいレベルです。
 
解像力はTOPCORの勝ち、コントラストは引き分け。TOPCORの方がトーンのつなぎ目がなく階調がよく出ており、細部までキッチリと描き切る解像感に富んだ像ですが、エッジの効いたSEKORの画も見た目には十分な解像感を与えます。SEKORは解像力がSONY A7R2の4240万画素を活かしきれずにサチっているようです。ただし、このように大きく拡大でもしない限り、両レンズのシャープネスに大きな差は見出せません。
評価は互角ですがトーナメント方式ですので、ジャッジしないといけません。フレアを容認しながらも解像力を重視したTOPCORでしたが、コントラストはMAMIYA CSと比べ遜色ありません。この点(踏ん張りどころ)は考慮すべきでしょう。TOPCORに軍配を挙げたいとおもいます。

2020/08/19

鳳凰光学 Phenix 50mm F1.7 vs KMZ Zenitar-M 50mm F1.7


F1.7の領域に踏み込んだ中国とソ連のレンズ
鳳凰光学 PHENIX 1.7/50 vs KMZ ZENITAR-M 1.7/50
PHENIX 50mm F1.7は中国江西省に拠点を置く鳳凰光学(Phenix Optical Group Co.)が日本のシーマー(旧シマ光学)のMC CIMKO MT Series 50mm F1.7(5群6枚)を参考に開発・生産した標準レンズです。CIMKOの図面は1980年代にシーマから哈爾浜電錶儀器廠が買い取っており、本レンズは図面を有する同社の協力のもとで誕生しました。鏡胴のデザインはCIMKOにそっくりで特徴的な名板まわりの赤ラインもそのままなのですが、CIMKOの完全なコピーではなく、光学系は中国国内で調達できるガラス硝材を使い製造できるよう再設計されました。レンズを設計したのは吴俊というエンジニアです[1]。PHENIXの設計はCIMKO同様に5群6枚と記録されていますが(下図)、私が入手した個体は後群の貼り合わせを外した6群6枚構成でしたので、どこかの時点で再び再設計されたようです。レンズは鳳凰光学が1985年に日本の京セラから技術供与を受けて開発した一眼レフカメラのDC303 (1991年発売)に搭載する交換レンズとして市場供給されました。ちなみに、DC303は機械式高速シャッターの名機Yashica FX-3 Super 2000をベースに開発されています[1]。
鳳凰光学といえば1965年に江西省徳興市創業した江西光学儀器総廠を前身とする中国最大規模の光学メーカーで、レンジファインダー機の同国ベストセラーである海鴎(Seagull)205シリーズを製造していたことで知られています。1983年に自社ブランドの鳳凰(Phenix)を立ち上げ、社名も鳳凰光学(Phenix Optical Group Co.)に改称しました[2]。
続いて紹介するZENITAR-M 50mm F1.7はロシアのモスクワに拠点を置くKMZ(クラスノゴルスク機械工場)が1977年から1987年頃まで一眼レフカメラのZENIT-18/19に搭載する標準レンズとして市場供給しました。レンズは1975年にKMZのKvaskova V.G.(Kvaskova V.G.)というエンジニアによって設計された5群6枚構成で[3]、コニカの下倉敏子氏が設計したKonica Hexnon AR 1.8/40(1978年設計)に極めてよく似た光学系です[4]。ちなみに、本レンズには設計の異なるZENITAR-ME1という同一構成・別設計の姉妹品(ME1の"E"は電子接点を持つという意)があります[5]。このレンズは絞り羽が僅か4枚しかなく、少し絞ったところで開口部が真四角になることで知られています。
Phenix(5群6枚型)とZenitar-Mの構成図トレーススケッチ。左が被写体側で右がカメラの側です。私が入手したPHENIXは6群6枚で、後群が貼り合わせではなく、これとは少し異なる構成でした(もちろん、バルサム剥離ではありません)


参考文献
[1]吴俊.DC-303单镜头反光照相机光学设计. 江西光学仪器,1992,(第1期).
[2]鳳凰光学グループ公式WEBサイト:沿革
[3]ZENIT cameraアーカイブズ: Zenitar-M
[4]Toshiko Shimokura, US.Pat. 4,214,815 1980(Filed in 1978)
[5]ZENIT cameraアーカイブズ: Zenitar-ME1

入手の経緯
PHENIXは2020年3月にeBayにて中国のセラーから中古品を50ドルの即決価格で入手しました。同オークションでの流通量は豊富ですが、新品が売られていることは無いようです。様々なマウント規格のモデルがあり、私が入手したNikon Fマウント以外ではPentax K, Minolta MD, Yashica/Contaxマウントがありました。届いたレンズには光学系に小さなカビがありましたので、分解・清掃し綺麗にしました。
ZENITAR-Mは2020年3月にeBayを介し、ロシアのVintage Camerasから79ドルの即決価格で手に入れました。新型コロナウィルスの流行でロシア国内の配送網が麻痺し、レンズを受取ったのは購入から4ヶ月半後の7月下旬でした。レンズの相場は状態の良い個体で、70~80ドル(送料別)といったところでしょう。eBayでの流通量は豊富です。
届いたレンズはガラスこそ綺麗でしたが、ヘリコイドがカッチンコッチンに重く、グリスの交換が必要でした。


今回のロケ地は2014年にユネスコ世界遺産(近代産業遺産)に登録された富岡製紙場(群馬県)です





撮影テスト
ZENITAR-M:開放から線の太い力強い描写で、本特集でこれまで取り上げてきた標準レンズの中ではフレアが最も少ないクラスのレンズです。スッキリとしたヌケの良い写りが特徴です。コントラストはやや低めで中間階調のトーンは良く出ているなど、オールドレンズらしい味付けを堪能できます。背後のボケは距離によらず安定しており、グルグルボケや放射ボケはありません。ポートレート撮影においても背後のボケが硬くなることは無く、完全補正タイプの描写設計のようです。解像力よりも描写面でのバランスを重視したレンズなのでしょう。なだらかなトーンで勝負できる点はガウス型というよりもゾナー型に近い印象を受けます。ロシア製らしい堅実な描写が特徴の、高性能なレンズだと思います。
ZENITAR-M @ F1.7(開放) sony A7R2(WB:日陰)トーンが良く出ていて綺麗な写真が撮れます




ZENITAR-M @ F1.7(開放) sony A7R2(WB:日陰)
ZENITAR-M @ F8 sony A7R2:アダプターの調子が悪く遠方のピントが拾えませんでした。絞って撮影しましたが奥はピンぼけしているとおもいます
ZENITAR-M @ F2.8 sony A7R2(WB:日陰)

ZENITAR-M @ F1.7(開放) sony A7R2(WB:日陰)ニッサンHR型自動繰糸機の一部
ZENITAR-M @ F1.7(開放) sony A7R2(WB:日光)


ZENITAR-M @ F1.7(開放) sony A7R2(WB:日光)



ZENITAR-M @ F4 sony A7R2(WB:日陰)

続いてPHENIX: 開放ではフレア(コマフレア)が多めの柔らかい描写で、
逆光にさらしてシットリ感を演出することができるなど演技派の性格を楽しむことができます。こちらのレンズもコントラストは低めで発色はあっさり気味です。背後のボケはポートレート撮影時にややグルグルすることがあり、近接撮影時には球面収差が大きくアンダーに転じて背後のボケがソフトフォーカスレンズのような綺麗なフレアを纏います。中玉のレンズエレメントの側面にコバ塗りが無いためか、条件が悪いとハレションが生じ、コントラストがガタっと低下、色も濁り気味になりますので、逆光撮影時には注意が要ります。解像力はZENITAR-Mと大差なく、普通のレベルです。
PHENIX @ F1.7(開放) sony A7R2(WB:日陰) 近接撮影時は球面収差が大幅にアンダーとなり、ソフトフォーカスレンズのようにフレアをまとう綺麗なボケ味になります



PHENIX @ F1.7(開放)  sony A7R2(WB:日光)

PHENIX @ F1.7(開放) sony A7R2(WB:日光)

PHENIX @ F1.7(開放) sony A7R2(WB:曇天)




PHENIX @ F1.7(開放) sony A7R2(WB:日陰)
PHENIX @ F1.7(開放) sony A7R2(WB:曇天)
PHENIX @ F1.7(開放) sony A7R2(WB:日陰)

PHENIX @ F1.7(開放) sony A7R2(APS-C mode, WB:日光)
両レンズのシャープネスの比較
両レンズの解像力(分解能)に大差はありません。ただし、ZENITAR-Mの方がフレアが少なくスッキリと写り、コントラストもより良いので、解像感(シャープネス)という意味においてはPHENIXよりも優れています。これを良しとするならオールドレンズは捨て、現代レンズに走るのが正解となりますが、写真はそう単純なものでないことは皆さんもご存知の通りです。PHENIXのような柔らかい描写のレンズにも価値があります。




2本のレンズの勝負ですが、ZENITAR-Mの方が解像感に富むシャープな像が得らるのは明らかで、より現代レンズに近い高性能なレンズであることがわかります。日本製のF1.7系オールドレンズは多くが解像力を重視し代償として開放では微かに滲む性質を持っていますが、ZENITAR-Mは画質のバランスを重視したのか解像力は控えめで、開放でも滲みが全く見られない完全補正タイプのレンズのようです。いきなり恐ろしいダークホースが登場してしまいました。
PHENIXについても、せめてもう少し解像力があれば、線の細い描写でZENITAR-Mときわどい勝負をしていたのでしょう。