おしらせ


MAMIYA-TOMINONのページに写真家・橘ゆうさんからご提供いただいた素晴らしいお写真を掲載しました!
大変感謝しています。是非御覧ください。こちらです。

2018/01/03

KMZ VEGA-9 50mm F2.1, converted from Krasnogorsk-1・2・3 to Leica L/M





ロシアの16mmシネマムービー用レンズ part 2
35mmフォーマットをカバーできる
ユニライトタイプの映画用レンズ
KMZ VEGA-9(ベガ9) 50mm F2.1(ライカL改造
16mmフィルムの映画用カメラに供給されたレンズはイメージサークルが小さく、使用できるカメラが限られるため、35mmフィルムの映画用レンズに比べ手頃な価格で手に入れることができるが、中には16mmフィルムを大幅に超える広いイメージサークルを持つレンズがあり、マイクロフォーサーズセンサーやAPS-Cセンサーを搭載したミラーレスカメラでも撮影を十分に楽しむことができる。ロシアのKMZ(クラスノゴルスク機械工場)がソビエト時代の1965年から1989年にかけて映画用カメラのKrasnogorsk-1・2・3とともに市場供給したVEGA-9(ベガ9)50mm F2.1は、まさにそういう類のレンズであろう。このレンズを搭載したKrasnogorsk-3は生産台数10万台を超える記録的なヒット商品となり、映画撮影はもとよりテレビ局のニュース取材などにも使われた映画用カメラの名品として知られている。現在でも流通価格の安さからアマチュア映画界では高い人気を集めており、このカメラを取り巻く幅広い付属品と活動的なコミュニティが存在する。Krasnogorskマウントのレンズについては、ロシアのRafCameraやCameraGunからミラーレス機用のマウントアダプターが市販されており、eBayで手に入れることができる。
Vega-9のレンズ構成は下図に示すような4群5枚で、英国Wray社のC.G.Wynee(ワイン)が1944年にガウスタイプからの発展形として考案したUnilight(ユニライト)を源流としている。ガウスタイプよりレンズを1枚減らしコスト的に有利としながらも、口径比F2では収差的にガウスタイプに肉薄する高い性能を実現できる[文献1]。一般にユニライトタイプはガウスタイプに比べ、画角を広げる際に四隅で色滲み(倍率色収差)と像面湾曲が目立つ特徴がある。歪み(歪曲収差)についてもガウスタイプは樽型であるのに対し、ユニライトタイプは糸巻き型となっている[文献2]。

VEGA-9のレンズ構成図:GOI lens Catalog[文献3]に掲載されていた構成図からの見取り図(トレーススケッチ)である。設計構成は4群5枚のUnilight型で、ガウスタイプの後群側にあるはり合わせユニットが一枚の凹メニスカスに置き換わっている
入手の経緯
eBayにはかなりの数の個体が流通しており、相場は実用レベルが50~60ドル、美品が60~80ドル程度からとこなれている。本品は2017年12月にウクライナの個人セラーがeBayに出品していたものを4800円(送料込み)の即決価格で落札購入した。コンディションは「ガラスはクリーンで傷はない。新品のようなコンディション」とのこと。届いたレンズはホコリも少なく良好なコンディションであった。

VEGA-9(Krasnogorskバヨネットマウント):絞り羽根 10枚構成,  絞り F2.1-F22, 焦点距離 50mm, フィルター径  40.5mm, 最短撮影距離 0.9m, 設計構成 4群5枚ユニライト型, 推奨イメージフォーマット 16mmシネマフィルム, 本品はMIR-11(ミール11) 12.5mm F2.2やVEGA-7 (ベガ7) 20mm F2、ズームレンズのMeteor 5-1(メテオール5-1) 17-69mm F1.9などと共に市場供給された


VEGA-9を取り上げようと思ったのは、イメージサークルが一回り広いシネマ用35mmフィルム(APSCフォーマット相当)を包括できるという事前情報を得たからである。デザイン的にもゼブラ柄の絞り冠が美しく、スペックは50mm F2.1と申し分ない。ここまで条件の揃ったシネレンズならば、本来はもう少し高値で取引されてもおかしくないが、ユーザーレビューが極めて少なく、中古市場の取引相場は状態の良い個体でも3500円程度からとジャンクレンズ並みの扱いをうけている。いったい何が不人気なのかと試しに買ってみたところ、原因は何となく理解できた。最短撮影距離が0.9mと長いことに加え、これを克服するための直進ヘリコイドへの移植(改造)にかなり手こずるのである。レンズは後群側の鏡胴径が43mmと微妙に太く、バックフォーカスも短かいなど、このままの市販のM42直進へリコイドに搭載するのは不可能であることがわかる。代わりに太いM46ヘリコイドやM52ヘリコイドに搭載するという手もあるが、バランス的にみるとミラーレス機との相性が悪く、外観もヘリコイドの部分が大きくなるため、スマートな改造には見えない。通常、こういう場合にはレンズ本体のヘリコイドを捨て、レンズヘッドだけの状態にしてからM42直進ヘリコイドに移植するのだが、これは同時に美しいゼブラ冠を捨てることにもなる。スッキリとした解決策が見当たらない所に不人気の原因があるのだろう。それでも太いヘリコイドに乗せ不格好になるよりはマシなので、レンズヘッドのみをM42ヘリコイドに移植することにした。ところが、鏡胴からレンズヘッドを抜き出してみたところ、更なる困難が待ち構えていた。なんと絞り冠の制御をレンズヘッドに伝える連動部が前玉側ではなく後玉側についており、直進ヘリコイドに移植しても、このままでは絞りの制御ができないのである。久々にエグい難問を突き付けられプルプルと悶絶してしまった。何かよい改造方法はないものかとノギスを片手に試行錯誤を繰り返していたところ、メシを食べ終わったあたりで良いアイデアが浮かんできた。うまくゆけば一連の問題がいっぺんに解消できる。ならば、さっそく実践だ!
アイデアとはレンズヘッドをM42直進ヘリコイドの奥の方にマウントするというものだ。ヘリコイドの内部には新たにマウント用の土台を設置する必要があるが、こうすることで絞りの制御はフィルター枠を回すだけとなり、同時にフランジバックも稼げるので、カメラとの互換性において有利になる。計算上では直進ヘリコイドに乗せることで最短撮影距離を0.9mから0.4mまで短縮させることができ、ライカLレンズとして使用可能になる。素晴らしい!。そして、最後の極めつけはVEGA-9本体のヘリコイドからとりだしたゼブラ冠を、移植先である直進ヘリコイドのM42ネジ(レンズ側)に取り付けてしまうというアイデアだ。以下では改造手順のヒントを写真で示してゆく(あくまでもヒントなので細い所は質問せずにご自身で考えてください)。

改造の手順
まずは、VEGA-9本体の鏡胴からレンズヘッドを抜き出す。鏡胴の後群側を手で押さえ、フィルター枠を持って前群側を手で回すと、鏡胴が真っ二つに分離でき、下の写真のようなレンズヘッドが取り出せる




次に移植先のM42直進ヘリコイド(最短15mmのタイプ)に手を加え、カメラ側のマウント部分をM42ネジからL39ネジ(ライカスクリュー)に変換する。一つ重要なポイントを言い忘れたが、直進ヘリコイドは内部に天板を持ち鏡胴内が途中で少しくびれているタイプを選ばなければならない(理由はあとでわかる)。M42ネジの「呼び長さ」(←ネジ用語)を棒ヤスリあるいはグラインダーで削り(写真・左)、ある程度まで短くしたら(写真・中央)、M42-M39マウントステップアップリング(1mmピッチ)を被せる(写真・右)。削りすぎずにネジ山をいくらか残す程度にとどめておくのがポイントだ。削りくずが出のでヘリコイドを一度分解してから削り、最後に洗浄したほうがよいだろう。ステップアップリングが根元まで回せることを確認したら、取れないようエポキシ接着剤で固定する。このステップアップリングはeBayで極限られたセラーから入手可能である。
余談ではあるが、ステップアップリングを装着した分だけマウント部が嵩上げされているので、話題のAFアダプターTECHARTのLM-EA7に搭載した場合にもモーターカバーに干渉することなく、問題なく使用できる。


続いて、下の写真の左側のように直進ヘリコイドの内壁にフェルトを貼りつけ内径を少し狭くしておき、ヘリコイドの奥の天板にステップダウンリングを逆さ向きの状態でエポキシ接着する。接着の際は接着面にサンドペーパーをかけエタノールで油分を除去しておけば接着強度が向上する。エポキシ接着剤は軽金属用を用意し、安物ではなく溶接の代用にもなる最強レベルのものを使用することをオススメする。恐らくこれで大人が力いっぱい引っぱっても、あるいは木槌で叩いてもビクともしない耐急性になっているが、強度がまだ不安だという方はドリルで下穴をあけたあとハンドタップでネジ山を作り、ネジで固定するとよいだろう。さて、接着が十分に硬化したら、今度は写真の右側のように39-40.5mmフィルターステップアップリングとM39-M42マウント変換リングを組み合わせた部品を直進ヘリコイドのM42ネジに装着する。







そろそろゴールは近い。VEGA-9本体から取り出したヘリコイド冠を先ほど取り付けた39-40.5mmステップアップリングの上に被せ、ネジ止めまたは接着により固定する(下の写真・左および中央)。最後にVEGA-9のレンズヘッドを内部の27mm径のネジに据え付ければ完成だ。レンズヘッドとゼブラ冠の間に隙間ができてしまうので、40.5-38mmステップダウンリングをレンズヘッド側にエポキシ接着剤で固定しておくと仕上がりが綺麗になる(下の写真・右)。





悩むだけの価値はあった。デザインの美しさを継承しながらも、本体のヘリコイドを捨て直進へリコイドに搭載したことで十分な近接撮影能力を獲得、しかもライカLマウントに変換できているので、ミラーレス機との互換性は高い。さっそくレンズをカメラに取り付け試写してみたところ、イメージサークルはやはり広く、確かにAPS-Cセンサーをフルカバーしていた。久しぶりにスカッとする気持ちの良い改造ができた瞬間であった。不遇な扱いを受けてきたこのレンズにも少しは光が差すに違いない。

VEGA-9(L39改):最短撮影距離(改造後)0.4m, 絞り羽 10枚構成, 絞り F2.1-F22, 重量(改造後) 164g, ライカLマウント改造, フィルター径 40.5mm




さて、完成したレンズを眺めていると、前玉まわりの銘板をクルクルと手で回して外せることに気が付いた(写真・下)。この銘板は取り付け方から察するに、どうもイメージサークルをトリミングする働きがあるように思えてきた。銘板を外してみたところ、何とイメージサークルが拡大し、フルサイズセンサーをギリギリでカバーしてしまったのだ。最後に訪れた想定外の衝撃に、目から鱗が飛び落ちた。

前玉まわりの銘板を外すとフルサイズセンサーをカバーできるレンズへとブーストアップする。四角で僅かにケラれるが許容範囲だ



参考文献
[1] Rudolf Kingslake, A History of the Photographic Lens/キングスレーク著「写真レンズの歴史」朝日ソノラマ
[2]「レンズ設計のすべて―光学設計の真髄を探る」 辻定彦(電波新聞社)
[3] Catalog Objectiv 1970 (GOI): A. F. Yakovlev Catalog,  The objectives: photographic, movie,projection,reproduction, for the magnifying apparatuses  Vol. 1, 1970

撮影テスト
ピント部のど真ん中はたいへん緻密で解像力があるものの、中央から少し外れると途端に描写が甘くなるのは、いかにもシネレンズらしい写りだ。線の細い美しい描写はこのレンズ最大の長所といえる。開放からすっきりとしていてコントラストは良好だが、トーンはなだらかで階調描写には適度な軟らかさがある。ボケは硬くザワザワとしており、フルサイズ機で用いる場合には距離によって背後に若干のグルグルボケが出ることもある。同じ硬めのボケでもペトリのレンズような質感を潰したボケではなく、表面の質感を残した細かいボケ味となっている。カラーバランスは癖などなく至ってノーマル。歪みは確かに糸巻き状であった。フルサイズ機で用いると四隅に僅かなケラれがみられるが、趣味で写真を撮る分には全く問題のないレベルであろう。光量の落ち方がたいへんなだらかなので、使い方ひとつで中央を引き立たせる素晴らしいグラデーション効果を得ることができる。欲を言えばもう少し立体感が欲しいところだ。まずはフルサイズ機のSONY A7R2による写真作例から見てみよう。
F2.8, sony A7R2(WB:日陰 ISO1600) 四隅の光量落ちは積極的に活用するのがよい。線が細い描写だ







F2.8, sony A7R2(WB:日光 ISO1600)  トーンもシャドーからハイライトまで全域でよく出ている




F2.8(開放), sony A7R2(WB:日光 ISO1600) フルサイズ機で用いる場合、距離によっては少しグルグルボケがでることもある。

F2.1(開放) sony A7R2(AWB)+Techart LM-EA7: 開放でもスッキリとしていて透明感のある描写だ。背後のボケはザワザワとざわついている
F8, sony A7R2(WB: 日光)+Techart LM-EA7: 充分に絞って遠方を撮るとケラれは顕著に目立つはずだが、この写真が示すようにVEGA-9では、それほど目立つものにはならない。フルサイズ機との組み合わせでも十分に運用できるレンズだ

F2.1(開放), sony A7R2(WB: 日陰)+Techart LM-EA7: ど真ん中はシャープで緻密。開放でこのレベルとは大した性能だ


続いて、APS-C機あるいはマイクロフォーサーズ機での写真作例だがレンズを貸している知人達から提供してもらう予定だ。

2017/11/20

G.Rodenstock Doppel-Anastigmat HELIGONAL 6cm F5.2








歴史の淀みを漂う珍レンズ達 part.4
クアドラプレットを組み込んだ
幻の広角レンズ
G.Rodenstock Doppel-Anastigmat HELIGONAL 6cm F5.2(ドッペル・アナスティグマート ヘリゴナル)
レンズの設計構成は描写の性格を決める重要はファクターなので、構成が特異なレンズには俄然興味が沸いてくる。1905年に登場したドイツ・ミュンヘンの光学メーカー、ローデンストック(G. Rodenstock)社のヘリゴナル(HELIGONAL)は、まさにそんなマニア心をくすぐるレンズの一つであろう[1]。このレンズは現存する個体数が極めて少ないため、レンズフリーク達が探し求める幻のレンズとして指名手配されている[3]。私も以前から気になりマークしていたが、ある日、偶然にも入手できたのでレポートしてみたい。
ヘリゴナルは1905年に登場し、少なくとも1911年まではエストニア向けのカタログに掲載があったため確かに供給されていた[3]。レンズについての資料は極めて少なく、キングスレークの本[4]に簡単な記載がある以外には、専門誌に掲載されていたチラシがネットで見つかる程度である[5,6]。しかも、チラシにはスペックに関する詳細が何一つ記されておらず、推奨フォーマットはおろか搭載されていたカメラが何であったかなど不明な点が多い。文献[7]には広角レンズと記されており、35mm換算で焦点距離21mmから30mm辺りの推奨画角とあるが、根拠となる資料がないうえ、どうも使用してみた感触では、30mmから40mm(中判6x6フォーマットか645フォーマット)あたりではないかと考えるようになった。
レンズの設計は前群にダブレット(2枚玉)、後群にプロターリンゼ型のクアドラプレット(4枚玉)を配置した独特な構成形態をとっており(下図)、前群を外した後群だけの状態でも、口径比F12のアナスティグマートとして撮影に使用できる。黎明期の広角レンズには珍しく前・後群が非対称のため、発売当初は専門誌からかなり酷評された[1,3]。当時の広角レンズはまだ対称型が主流で時代が早すぎたのであろう。しかし、実際には開放から充分な画質が得られることから、評価は次第に良くなっていったそうである。
G.Rodenstock Heligonal F5.2(1905-1911)構成図: 文献[2]からのトレーススケッチ(見取り図)。全群は2枚のはり合わせによるダブレット、後群はCarl Zeiss(パウル・ルドルフ設計)が1895年に発売した4枚玉のプロターリンゼ型クアドラプレットである




ヘリゴナルのような接合面を多く持つ密着タイプの設計構成はこの時代以前の主流であったが、レンズ設計の軸足はテッサーやダイアリートなど明るいレンズを設計するのに有利な分離タイプにシフトしてゆき、このレンズも短い期間の供給のみで、1912年の同社の輸出カタログでは姿を消している[8]。第一次世界大戦後にも同社から全く同名のレンズが発売され1925年頃まで供給されていたが、そちらはよくあるラピッドレクチリニアタイプのポートレート用レンズで、海外のオークションにも度々登場する[3]。

入手の経緯
今回のモデル(広角ヘリゴナル)を購入する場合、ポートレート用ヘリゴナルとの識別が大きなポイントになるが、ネットオークションでの識別は容易なことではない。唯一のヒントはローデンストック社のカタログに掲載されていたイラスト[3]であろう。これをみて鏡胴のデザインで判断することと、鏡胴側面に記載されたF5.2の口径比のみが確かな糸口となる。同社の製品台帳には1934年よりも前の情報が欠落しているため、シリアル番号から製品個体の製造年を割り出す事はできない[9]。
ある日、日本のヤフー・オークションに広角ヘリゴナルと思われる個体が登場。みるとシリアル番号が8000番台と極めて初期のレンズであったので、期待は一気に高まった。ポートレート用ヘリゴナルとの違いを知るマニアは日本にいくらもいないので、これは千載一遇のチャンスと入札、レンズは3万円ちょっとで私のものとなった。届いたレンズが広角ヘリゴナルであることを判断するには現物の後群がクアドラプレットである事を確認するだけだ。「レンズ神よ。これまで何度も幸運を分け与えてくれたが、今もう一度チャンスを分け与えたまえ~」。後群を覗き込むと思わず溜め息が出た。暗い反射が3個に明るい反射が2個のクアドラプレット。紛れもなく広角ヘリゴナルであった。
G.Rodenstock  Doppel-Anastigmat Heligonal 60mm F5.2: 絞り羽 10枚構成, 構成2群6枚ヘリゴナル型, 絞り 5.2/6.3/7.7/9/11/16/22/31/?, フィルターネジなし



参考文献
[1]Johnson, George Lindsay, Photographic Optics and Colour Photography: Including the Camera, Kinematograph, Optical Lantern, and the Theory and Practice of Image Formation., New York: D. Van Nostrand Company(1909)
[2]  構成図の掲載雑誌:Forsner's Fotografiska Magasin, Priskurant I, 1910-11, Stockholm Örebro
[3] camera-wiki, HELIGONAL
[4] 「写真レンズの歴史」キングスレーク著 朝日ソノラマ
[5] Rodenstock社の広告(1906年) フランス語(LINK)
[6] "LES ANASTIGMAT RODENSTOCK sont superieurs, Representant"  L.CAVALIER, PARIS (1908年)フランス語(LINK
[7] Lens Collectors Vade Mecum, 3rd edition
[8] G. Rodenstock Lenses of Quality Catalog 1912 for USA
[9] Rodenstockの台帳には1934年よりも古い記録がないため、いったい何本のレンズが作られたかなど、このレンズに関する確かなデータを得ることはできない

撮影テスト1
中判 6x9 format (PaceMaker SPEED GRAPHIC)
文献[7]にはレンズのイメージサークルが中判6x9フォーマットを余裕でカバーできるとあったものの、四隅の光量落ちが目立つ結果となった。ちなみにレンズを中判6x9フォーマットで用いた場合の撮影画角は、35mm判における焦点距離26mm相当とかなり広い。光量落ちを狙う場合はこれでもよいが、避けたいならば6x6よりも小さな撮影フォーマットがよいだろう。
開放から滲みやフレアは見られず堅実な写りで歪みもたいへん小さい。ボケは安定しており、グルグルボケや放射ボケなどは見られない。
F7.7, 銀塩カラーネガ6x9 format(Kodak Portra 400/彩度・減) 四隅の光量落ちがやや強い。好きか嫌いかと言われれば勿論すきだ
F7.7, 銀塩カラーネガ6x9 format(Kodak Portra 400)
F7.7, 銀塩カラーネガ6x9 format(Kodak Portra 400/彩度・減) 雰囲気を出すためシャッタースピードを上げて露出を少し落とし、光量落ちを目立つようにしている。また、フォトショップで彩度を少し下げている。中心は緻密に描写されている
F5.2(開放), 銀塩カラーネガ 中判6x9 format(Kodak Portra 400) 今度は露出をあげ、開放で撮影した。フレアは少なく、歪みは小さい








撮影テスト2
中判6x7フォーマット (PaceMaker SPEED GRAPHIC)
四隅に顕著な暗角が出たため、今度は中判6x7フォーマットで撮影してみた。依然として光量落ちの目立つ撮影結果であるが、かなり改善されている。
F8, 銀塩カラーネガ 中判6x7format(FUJIFILM PRO160NS)  太陽を入れたド逆光。この時代のレンズにしては、なかなかの逆光耐性で濁りはそれほどきつくない


F8, 銀塩カラーネガ 中判6x7 format(FUJI PRO160NS) 階調描写はドッペルプロタ―によく似ており、この時代のBテッサーF6.3に比べても明らかに軟らかい

F8, 銀塩カラーネガ 中判6x7 format(FUJI PRO160NS) まだ四隅の暗角はきつめだ。6x6でも広いということかな

F5.2(開放)銀塩カラーネガ 中判6x7format(FUJIFILM PRO160NS)  ボケ味は素直だ。
撮影テスト3
フルサイズフォーマット
CAMERA:  SONY A7RII
6x7フォーマットでも暗角は目立っていたので、645フォーマットあたりがジャストサイズのように思えてきた。最後にフルサイズフォーマットでの作例もみてみよう。
写りは中判カメラの時よりも明らかに軟調。開放から滲みやフレアなどはなく、少し淡いあっさりとした発色傾向とともに軽やかな心地よいトーンに仕上がる。フルサイズフォーマットでも画質的に無理はない。
F7.7, sony A7R2(WB:晴天) 発色は淡く、軽い仕上がりになる

F5.2(開放)  sony A7R2(WB:晴天, ISO1000) 35mmフォーマットでも無理のない撮影結果が得られる

F5.2(開放)  sony A7R2(WB:晴天, ISO1000)


F7.7, sony A7R2(WB:晴天、ISO1000) 逆光も平気






F7.7, sony A7R2(WB:晴天)

F11, sony A7R2(WB:晴天)

2017/11/01

オールドレンズ写真学校展Vol.4(ご案内第2報)+体験イベントのご案内



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オールドレンズ写真学校展 Vol.4

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オールドレンズ写真学校参加者によるグループ展示会です。ぜひお立ち寄りください。

【場所】
原宿 デザインフェスタギャラリーEAST201/202
http://www.designfestagallery.com

【展示スケジュール 】
2017年11月3日(金/祝)~5日(日)

11月3日 16:00〜20:00
11月4日 11:00〜20:00
11月5日 11:00〜19:00


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ジョイントワークショップ:イルミナー体験会

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日時11/4(土) 13:00より1時間程度
集合場所は展示会会場です。
参加費・無料

オールドレンズ写真学校が開発したイルミナーの体験会を行います。レンズをご用意いたしますので、ご自身のカメラに装着し、展示会の会場周辺でレンズを使用していただくことができます。また、数量限定ですがカメラやマウントアダプターの貸し出しも可能です。気に入ったレンズはその場で購入することも可能です。貸出レンズは

イルミナー・アメジスト 25mm F1.4
イルミナー・ペリドット 25mm F1.4
イルミナー・ブルートパーズ 25mm F1.4

です。マイクロフォーサーズ機での使用を推奨します(フジやEOS-Mでの仕様も可)。


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ジョイントワークショップ:オールドレンズ体験会

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日時11/5(日) 13:00より1時間程度
集合場所は展示会会場です。
参加費・無料

オールドレンズ写真学校で推奨しているレンズの体験会を行います。レンズをご用意いたしますので、ご自身のカメラに装着し、展示会の会場周辺でレンズを使用していただくことができます。また、数量限定ですがカメラやマウントアダプターの貸し出しも可能です。気に入ったレンズはその場で購入することも可能です。貸出レンズは

Pentacon Prakticar 50mm F2.4
MC Pentacon 50mm F1.8
Pentacon AV 80mm F2.8
ILLUMINAR 25mm F1.4
PETRI 55mm F1.8/F2
HELIOS-44M/44-4 58mm F2

各レンズの紹介はこちらです。

その他、裏メニューも多数ありますので、会場にてスタッフにお尋ねください。私もシネレンズのTair-41M 50mm f2(ライカMマウント、ゼブラ柄の美品)を1本レンタル用に提供します。欲しいか方がいましたらお声がけください。

2017/09/25

LZOS TAIR-41M 50mm F2 (Kiev-16U mount)




ロシアの16mmシネマムービー用レンズ part 1
独特な設計構成から繰り出される
四角の破綻と緩やかな光量落ちが
中央の被写体をドラマチックに演出する
リトカリノ光学ガラス工場(LZOS) TAIR-41M 50mm F2

レンズの設計構成は描写の性格を決める重要なファクターなので、構成が特殊なレンズに出会うと俄然興味が沸いてきます。ロシアのリトカリノ光学ガラス工場(LZOS)がソビエト時代の1960年代中期から1980年代中期にかけてシネマムービーカメラのKiev-16U用交換レンズとして供給したタイール41M(TAIR-41M)は、まさにそういう類のレンズです。このレンズには1960年代から1981年まで生産されたゼブラ柄の前期モデルと、1982年から少なくとも1984年まで生産されていた黒鏡胴の後期モデルの2種が存在します[1]。設計の基本構成は第二次世界大戦中にロシアの光学設計士David Volosov教授と彼の共同研究者であるGOI(State Optical Institute)のエンジニアたちの手でトリプレットからの派生として開発されました[3,4]。軍からの要望で暗い場所でも使用できる高速望遠レンズを開発することが目的でしたが、終戦後はシネマ用望遠レンズの基本構成としても積極的に採用されています。既存のレンズのどの構成にも似ていないロシア発祥の設計形態の一つといえますが、こんなヘンテコな設計でも実によく写ります。不思議だなぁ。
TAIR-41M 50mm F2の構成図(左が前方で右がカメラ側):文献[2]からのトレーススケッチ(見取り図)。構成は3群4枚(タイ―ル型)で、絞りは2群目と3群目の間に入る。何かに似ていると思っていたが、わかった。土偶だ。同種の構成を持つタイールシリーズのレンズとしては、他にもTAIR-11 135mm F2.8、OKC2-75-1 75mm F2.8, , OKS1-200-1 200mm F2.8,  TAIR-3S 300mm F4.5, OKS1-300-1 300mm F3.5がある。レンズ名の由来はわし座の一等星のアル・タイル(Al-tair)。ロシアのレンズは光学系の種類ごとに星の名称(Sirius, Orion, (Sirius, Orion, Helios, Jupiterなど)をあてる習慣があり、このレンズの名称も伝統的な命名法から来ている[3]
タイ―ル41Mは広角レンズのMIR-11M 2/12と標準レンズのVEGA-7-1 2/20とともに3本セットで市場に流通していることが多く、3本をKIEV-16Uのターレット式マウントに同時に搭載することができました。マウント形状は特殊なM32スクリューネジ(ネジピッチ0.5mm)ですが、マウントアダプター(ロシア製と中国製)の市販品がeBayで流通しており、ミラーレス機で使用可能です。イメージサークルはビルトイン・フードの装着時にマイクロフォーサーズをギリギリでカバーできる広さがあり、フードを外すとAPS-Cをギリギリでカバーできます。レンズ本体の相場はeBayで50ドルからと焦点距離50mmのシネマ用レンズとしては破格の値段なので、これで写りが面白ければ言うことなし。
 
入手の経緯
レンズはeBayに比較的数多く出ており、送料込みで50ドル程度からと、50mmのシネマ用レンズとしては求めやすい価格です。アダプターは中国製とロシア製の市販品(マイクロフォーサーズ用、Nikon 1用、EOS-M用)がeBayに30~45ドル辺りの値段で出ていました。
ゼブラ柄の前期モデルは2017年8月にウクライナのレンズセラーから 即決価格45ドル(フリーシッピング)で落札購入しました。オークションの記載は「レンズはとても良いコンディションで清掃およびテストをおこなった。ガラスは綺麗でカビはない。絞りリングはスムーズに回り、フォーカスリングもスムーズかつ正確だ」とのこと。届いたレンズはガラスに油が付着しており、汚れがひどく、絞りリングも緩んでいたので、自分でオーバーホールする事になりました。あ~面倒くさい。
続いて黒鏡胴の後期モデルは2017年9月にウクライナの個人セラーから50ドル(送料込み) の即決価格で購入した。オークションの記載は「ガラスはクリーンでカビはない。フォーカスリングと絞りリングはスムーズで、全ての制御機構が健全です。外観の状態は写真で見てください」とのこと。届いたレンズは前玉にごく薄い吹き傷がパラパラみられましたが、実用品としては悪くないコンディションでした。

参考文献
[1] 古いものは1967年製のシリアル番号を持つ個体、新しいものは1984年製の個体を確認している。また、1981年製のゼブラ柄モデルと1982年製の黒鏡胴モデルを確認したので、この間にモデルチェンジがあったのでしょう
[2] Catalog Objectiv 1970 (GOI): A. F. Yakovlev Catalog,  The objectives: photographic, movie,projection,reproduction, for the magnifying apparatuses  Vol. 1, 1970
[3] REDUSER.NET: Ilya O."Tair-11 lens diagram/scheme and appearance"(2016 Nov.)
[4] TAIRの光学系特許:USSR Pat. 78122 Nov.(1944)

LZOS Tair-41M 50mm F2( 前期モデル): 絞り羽根 13枚構成, フィルター径 フードの先端 35.5mm/34mm(フードの根元), 最短撮影距離 0.7m, 絞り F2-F22, 16mmシネマムービーカメラ用Kiev-16Uマウント(M32x0.5スクリュー, フランジバック31mm), 設計構成 3群4枚(Tair type)


LZOS Tair-41M 50mm F2(後期モデル): 絞り羽根 13枚構成, フィルター径 35.5mm(フード先端・中継)/ 34mm(フード根元), 最短撮影距離 0.7m, 絞り F2-F22, 16mmシネマムービーカメラ用Kiev-16Uマウント(M32x0.5スクリュー, フランジバック31mm), 設計構成 3群4枚(Tair type)




SONY Eマウントへの改造例
タイ―ル41M(後期型)に元々ついていたヘリコイドでは最短撮影距離が長いので、撤去し高伸長なフォーカッシングヘリコイドに乗せ換えミラーレス機で使用することにしました。はじめにSONY Eマウント化の改造例を提示しましょう。

まず鏡胴の後群側を手で押さえ絞り冠のある前群側を回すと、上の写真のように鏡胴が真っ二つに分離できます。前側の溝にはM42-M39ステップアップリングがピッタリと収まりますので(下の写真・中央)、このままエポキシ接着剤を用いてステップアップリングをガッチリと固めます。この時、ネジの頭が少し出るので、ここに適当な操出量のM42フォーカッシング・ヘリコイドを装着します。私はeBayで手に入れたM42-M39ヘリコイド(繰り出し範囲が変則的な22.5-48.5mmのタイプ)を用いました。最後にフォーカッシングヘリコイドのカメラ側にM39-M42ステップアップリングとM42-Sony Eスリムアダプターを装着し、Sony Eマウントに変換して完成です

[改造に用いた部品]
タイ―ル41M後期モデル
エポキシ接着剤 ホームセンターで金属用を購入
M39-M42ステップアップリング x2個 アマゾンで175円(送料無料)
M39-M42フォーカッシングヘリコイド 最短が22.5mmのタイプ eBayで3000円程度
M42-NEX(sony E)スリムアダプター アマゾンで540円(送料無料)



改造後の様子。ヘリコイドが高伸長タイプ(22.5mm-48.5mm)なので、最短側の撮影距離は改造前の0.7mから0.25mまで短くなった






SONY Eマウントで使用する場合にはイメージサークルの関係からビルトインフードを外すことが多くなります。上記の改造を行うと絞りの開閉はフードをつまんで回すことになりますが、フードの撤去により絞り開閉ができなくってしまいます。これでは困るので、ビルトインフードが付いていたフィルターネジに34mm-37mmのステップアップリングを装着します。ステップアップリングの更に先にネジ径37mmの標準レンズ用フードを装着すれば、絞りリングの取り回しは更によくなります。

マイクロフォーサイズマウントとフジXマウントへの改造例
マイクロフォーサーズマウントへの変換とフジXマウントへの変換例はよく似ているので、いっぺんに解説します。

[改造に用いた部品]
タイ―ル41M後期モデル
エポキシ接着剤 金属用をホームセンターで購入
(1)M42フォーカッシングヘリコイド (最短17mmのタイプ) eBayで2500円程度
(2)39mm-52mmステップアップリング
(3)M39-M42ステップアップリング
(4)マクロリバースリング(フィルター側のネジ径が52mmのもの)、フジXマウント用またはマイクロフォーサーズ(PEN)用のいずれか

(1)-(4)の4つの部品を組み合わせ、下の写真・右のようなヘリコイドを制作します。M42フォーカシングヘリコイド(1)のメスネジ(レンズマウント側)を39-42mmステップアップリング(2)とM39-M52ステップアップリング(3)を用いて52mmフィルターのメスネジに変換します。つづいてリバースリング(4)を用いて、その先をカメラマウントに変換します。これで完成ですが、最後にフォーカッシングヘリコイドのM42マウントネジの頭にエポキシ接着剤を塗布しておきます。
この改造の工夫点はリバースリングを利用しているところと、M42フォーカッシングヘリコイドが逆さ付けになっているところです。奇抜なアイデア(工夫点)だと思っています。正攻法でゆくと17mmのヘリコイドではフランジ調整が困難ですが、リバースアダプターを使うことで、この問題を簡単に解決しています。







続いて、下の写真・左のようにTAIR-41Mの鏡胴の後群側を手で押さえ前群側を回すと、後群と前群に真っ二つに分離できます。前群側(写真・中央)の溝にはM42フォーカッシングヘリコイドのオスネジ側(エポキシ接着剤を塗布した部分)がピタリとハマりますので、エポキシ接着でガッチリと固めて同化させます。無限遠のフォーカスが拾えることを確認し完成です。固める際には絞り指標が上にくるように注意しましょう。
後期型は前期型(ゼブラ柄)と絞りの機構が少し異なり、ビルトインフードのフィルター枠を回して絞りの開閉をおこないます。しかし、フジのミラーレス機で使用する場合にはケラレ予防のため、ビルトインフードを外すことがあります。絞りの開閉を助けるためフードを外す場合には34-37mmステップアップリングを装着することをお勧めします。この上から汎用品のフード(ネジ径37mm)を装着すれば、取り回しは更によくなります。














影テスト
開放ではややフレアが生じ適度に柔らかい描写となりますが、シネマ用レンズらしく中心部は高解像で密度感に富み、デジカメの広い撮影フォーマットでは像面湾曲が目立つためか立体感にも富んでいます。一段絞るとフレアが完全に消失しスッキリとヌケが良くなるとともに、たいへんシャープな描写へと変わります。コントラストは高く、発色にも鮮やかさあります。ただし、逆光にはきわめて弱く、ハレーションの影響によりコントラストが落ち発色も濁りますので、適切な深いフードを装着することをおすすめします。被写体の背後では距離によっては弱いグルグルボケが発生します。写真の四隅で玉ボケが細長く潰れてゆく効果(強い口径食)と相まって、なかなか妖しいボケ味を醸し出しています。反対に前方では放射ボケが目立つこともあり、四隅で強いフレアを纏います。歪曲収差は巻き状でした。ピント部中央の高い描写性能はまさにシネマ用。使いでのあるレンズだと思います。
 



TAIR-41M(後期型)x SONY A7R2: APS-C mode  アスペクト比 16:9
ビルトインフードを装着するとAPS-C機ではトイカメラのような光量落ちを楽しむことができます。光量の落ち方がとてもなだらかなので、敢えてフードを装着しますと中央を際立たせる素晴らしい効果が得られます。フードを外しますと光量落ちはかなり緩和されますが、深く絞り込む際には四隅がケラれます。
TAIR-41M後期型@F5.6(without Built-in Hood フード外し) sony A7R2(APS-C mode, AWB)  発色は鮮やかでコントラストも良好




TAIR-41M後期型@F5.6(without Built-in Hood フード外し) sony A7R2(APS-C mode, WB:晴天)  マクロでもよく写る

TAIR-41M後期型@F2(開放 without Built-in Hood フード外し) sony A7R2(APS-C crop mode, AWB)  はっきりとしたグルグルボケにはならない背後では像の流れがみられる。
TAIR-41M後期型@F2(開放, Built-in Hood installed フード装着) sony A7R2(APS-C crop mode, Aspect ratio 16:9, WB:晴天) 被写体の前方では放射ボケが発生する事もあります。強いフレアを纏っていますので、うまく利用することで素敵な描写になります

TAIR-41M後期型@F2(開放, installed Built-in Hood フード装着) sony A7R2(APS-C crop mode, Aspect ratio 16:9, WB:晴天) 優れた描写力だ。ポートレート域では適当な距離で背後にグルグルボケが出る。ビルトインフードを装着してみたが、APS-Cフォーマットでは、いい塩梅で周辺光量落ちがみられた。光量落ちが好きならばフードはこのままでよし。避けたければ外せばよい

TAIR-41M後期型@F5.6(without Built-in Hood フード外し) sony A7R2(APS-C crop mode, AWB) 







TAIR-41M後期型@F2(開放, Built-in Hood installed フード装着) sony A7R2(APS-C crop mode, Aspect ratio 16:9, WB:晴天)




TAIR-41M後期型@F2(開放, Built-in Hood installed フード装着sony A7R2(APS-C crop mode, Aspect ratio 16:9, WB:晴天)


フィルター径が34mなので、レンズの先端にステップアップリング 34-37mm(セパレート式フードの場合は中継部に35.5-37mm)などを取り付けると、絞りの開閉が容易になるうえサードパーティのフードやキャップ等を付けやすい

TAIR-41M  x  Olympus PEN
16mmムービーシネマフォーマットのレンズですので、ミラーレスカメラで用いる場合にはAPS-C機よりもマイクロフォーサーズ機で用いる方が安定した画質を得ることができます。ビルトインフードは付けっぱなしでもケラレが問題になることはありません。タイ―ル41Mの前期モデルを所有している写真家のemaさん(Oo.ema.oO)に撮影したばかりの写真を提供していただきました。
TAIR-41M前期型@Olympus PEN E-P5(Oo.ema.oO)、ビルトインフード装着



TAIR-41M前期型@Olympus PEN E-P5(Oo.ema.oO)、ビルトインフード装着
TAIR-41M前期型@Olympus PEN E-P5(Oo.ema.oO)、ビルトインフード装着
TAIR-41M前期型@Olympus PEN E-P5(Oo.ema.oO)、ビルトインフード装着

2017/08/16

AIRES Camera Tokyo, CORAL lenses(AIRES 35-V mount) part 0:Prologue


アイレスカメラが1958年に発売した最高級機Aires 35-V。旧西ドイツのフォクトレンダー社がかつて生産したプロミネントを彷彿とさせる、レンズ交換の可能なビハインドシャッター機である。シャッターにはこのクラスにしては大型のセイコー社製0番シャッターが搭載され、交換レンズ群には広角で4枚構成のW Coral 35mm F3.2, 6枚構成のH Coral 45mm F1.9とH Coral 45mm F1.8, 7枚構成のS Coral 45mm F1.5, 望遠で5枚構成のTele Coral 100mm F3.5が供給されている[1]
 

アイレスカメラの高速標準レンズ 
part 0 (プロローグ) 
かつて、東京にはアイレス(正式名:アイレス写真機製作所)という名の小さなカメラメーカーが存在した[2]。1950年から1960年の僅か10年間で自社ブランドのレンズはもとより、中判二眼レフカメラ、35mmレンジファインダー機、一眼レフカメラなど一貫生産で何でも作ったメーカーだ。AIRES(アイレス)という名はスペイン語の「風」または「空気(エア)」という意味からとったとされている。10年の歳月を風のように猛スピードで駆け抜け、ユーザーの要求を全てみたした一台の名機Aires 35-V(写真)を送り出したものの、採算が取れずに命取りとなって倒産したのだ。このカメラにはコーラル(Coral)という美しい名(珊瑚の意味)の交換レンズ群が供給された。中でも高速標準レンズにはフォクトレンダー社の銘玉ノクトン(Nokton)を手本に設計されたSコーラル45mmF1.5や、シュナイダー社のクセノン(Xenon)を手本に設計されたHコーラル45mm F1.9/1.8など、魅力溢れるラインナップが揃っていた。本ブログでは数回にわたりAires 35-Vの高速標準レンズを取り上げる。

参考文献
[1] Camera New Product Report, Aires 35-V, 1958
[2]「アイレスのすべて」~アイレスカメラの歴史~ 萩谷剛 クラシックカメラ専科No.22(朝日ソノラマ)

なお、アイレス35-Vの交換レンズを各種ミラーレス機で使用するためのマウントアダプターが存在する。米国のある個人工房がeBayにソニー用とフジ用の改造品を若干数出しているのだ。この工房はペトリやミランダ、アーガスC44/C3、フトゥーラ、ペンティナ、プラクティナFXなどの交換レンズをミラーレス機で使用できるようにするニッチな改造アダプターを作っており、他にもFastax用やUV Topcor用、Norita66用、M37-M42変換リングなど面白い商品を出している(品質には要注意)。値段はAires 35V--SONY Eアダプターが90ドル(送料別)であった。毎回、若干数のみが出品され、供給量は安定していない。オークションブースに出品がない期間もあるので、そういう時には気長に待つ必要がある。