おしらせ


2011/04/27

トロニエの魔鏡2:不遇の最速レンズ
Leitz Xenon/Summarit 5cm F1.5



Schneider社が1932年に開発したLeitz Xenon 5cm F1.5(写真・上)。稀代の名設計士A.W. Tronnier (トロニエ博士)が世に送り出した2作目のガウス型レンズであり、1936年のレンズの発表当時で写真用レンズとしては最も明るいF1.5を実現していた。下の写真は後継製品として1949年に登場したLeitz Summarit 5cm F1.5である。



トロニエの魔鏡2
不遇の最速レンズ
Leitz XENON 5cm F1.5 and SUMMARIT 5cm F1.5 
1923年にErnemann(エルネマン)社のL.J.Bertele(ベルテレ)とA.Klughardt(クルーグハルト)が発明したErnostar(エルノスター)は世界最高速のレンズとして登場し、光学機器メーカーの各社に衝撃を与えた。1925年に映画用として登場したErnostarは何と開放絞りがF1.0と圧倒的な明るさを誇り、写真用レンズとしても1929年に実用的な画角を40度まで広げたF1.6のモデルが登場、さらにErnostarを大幅に改良した新型レンズのSonnar(ゾナー)F2を発表するなど、1930年代に起こる大口径レンズの開発競争に拍車を掛ける大きな出来事が起こっていた。1926年にErnemann社はBerteleもろともZeiss-Ikon(ツァイス・イコン)社の設立母体としてCarl Zeiss財団に吸収されている。Ernemannの技術を手中に収めたCarl Zeissが自社のカメラに超大口径レンズを搭載する日もそう遠くはなかった。Schneider(シュナイダー)社の首脳陣もこの事態を軽視するわけにはゆかず、1925年にXenon F2を開発したTronnier博士の設計チームに対抗製品となる新型レンズの開発を要請したのである。この新型レンズとは紛れもなく後のSummarit (ズマリット) 5cm F1.5へと改称されるガウス型レンズのLeitz Xenon (クセノン) 5cm F1.5である。
ガウス型レンズは高い収差補正能力を持つ反面、空気境界面の少ないErnostarやSonnarに対し、コントラストで不利な立場にあった。かつて、ガウス型レンズのOpic(1920年Taylor-Hobson社) がErnostarとのシェア争いに敗れ滅んだ経緯を繰り返さないためにはレンズの構成枚数を抑え、口径比でErnostarやSonnarを超える世界最高速の写真用レンズを開発する必要があり、Tronnierの設計チームはこのテーマに全知全能で取り組んだのである。
Schneider社の若いレンズ設計者A.W.Tronnier
の想像図.イラストレーター・Achaさんのスケッチ
Carl Zeissが発表したSonnar F2は3群6枚(9面構成)という驚異的な設計構成を持つレンズであった。それは、8面構成のErnostarよりも収差の補正効果を高めながら、空気とガラスの境界面を減らすことで、本来トレードオフの関係にあるコントラストと解像力の向上を同時に実現してしまったのである。Schneiderの首脳陣はSonnarの口径比が軽くF2を超えてしまったことに相当なプレッシャーを受ていたようである。首脳陣がTronnierに提示した当初の開発方針は6枚のレンズ構成で口径比F1.5を実現するという無理難題であった。仮にこの構成で明るいF1.5のレンズを実現したいならレンズエレメントを肉厚に設計し、かつ屈折面のカーブ(曲率)を大きくすることになるが、各エレメントからは大きな収差が発生する。6枚のレンズ構成では実用的な性能を得ることなど到底困難であり、後に開発方針は7枚の構成(5群7枚・12面)で屈折面のカーブを緩めるアプローチへと見直されている。
新型Xenonは構想から3年の時を経てついに完成した。ErnostarやSonnarに触発されることで生まれた無茶な経緯からも、このレンズの開発はTronnierがそれまで経験したことの無い、極めて難易度の高いミッションとなった。Berteleの発明したSonnarは設計開発に3200ページにも渡る膨大な量の光線追跡計算を要したが、TronnierのXenonは構成面がSonnarより更に2面も多かったのである。Tronnierは収差を徹底的にキャンセルする光学計算を日夜繰り返し、膨大な労力を費やすことで、製品として成立するギリギリの瀬戸際を見極めたのだろう。こうして1932年に完成した新型Xenonは、ダブルガウス型レンズとしては未踏のF1.5の明るさを実現することに成功したのだ。ところが、そこには口径比をF1.5まで高めたZeiss-Ikon社の新型Sonnarが立ちはだかっていたのである。
左はLeitz Xenon 5cm F1.5(1932年設計/1936年登場)で右はLeitz Summarit 5cm F1.5(1949年登場)。両者を見比べると前群の各エレメントの厚みや曲率に改良のあとがみられ、Summaritの方が第2群が薄く、曲率(カーブ)も小さめに設計されている。レンズ構成は5群7枚であり、4群6枚のスタンダードなダブルガウスタイプの構成の後部に正の凸レンズを一枚追加し、屈折力(パワー)を補強することでF1.5の明るさを実現している





新型Sonnarの華々しいデビューによって、Xenon F1.5は活躍の機会を奪われてしまった。ようやく量産される機会を掴んだのは発表から4年後の事である。Sonnarを搭載したCONTAXへの対抗心に燃えるライバルのErnst Leitz(エルンスト・ライツ)社がLeica IIIaに搭載する大口径レンズとして、Xenonを指名したのである。こうして、Xenonは1936年からLeitzへのライセンス供給という形で世に出ることになった。しかし、Sonnarとの勝負は最初から見えており、あまり売れることはなかった[注1]。大口径ガウス型レンズがゾナー型レンズに対し、対等の立場を築くには、コーティング技術の普及と新種ガラスの登場が不可欠であり、当時はまだ機が熟していなかったの
Leitz Xenonには1936年~1937年頃に生産された前期モデルと1938年から1950年まで生産された後期モデルがある。前期モデルはピントリングに滑り止めのギザギザが2本ありガラスはノンコート、後期モデルはギザギザが3本となり一部コーティングの施されたモデルが存在している。今回紹介する製品個体は1938年に製造された後期モデルで、硝子表面には薄いブルー系のコーティングが施されている。1949年になると光学系の一部に新種ガラスが導入され、絞り羽を閉じた際の開口部がより真円に近い形状になった。名称はXenonからSummaritへと変更されている。Xenonからの名称変更はSchneiderの保有していた特許が切れ、ライセンス契約が不要になったためと言われている。Summaritの初期モデルはXenonと同一設計であるという説もあり、Summaritの製品個体を丹念に調べて行くと、ある時期を境にしてコーティング色が変化していると言われている。また、Xenonのシリアル番号帯が刻印されたSummaritも存在するそうである(世界のライカレンズpart 4参照)。事実ならばXenonとSummaritの初期ロットは全く同一製品であり、ブランド名のリニューアルは設計の変更と無関係だったということになる。この部分には慎重な検証が必要である。
なお、Summaritは一部にカナダのMidlandで製造された個体があり、そちらはフィルター枠にErnst Leitz Canada Ldt. Midlandと記されている。

注1・・・Xenon F1.5がシュナイダー社のカタログに初めて登場したのは1935年である。ただし、製造台帳を見る限り、レンズが生産されたのは1936年から1950年までである。総生産数は6190本という説を本やWEBなどで多く見かけるが、シュナイダーの台帳で数えると戦前(1936-1939年)だけで6505本が製造されたことになっている。開戦中は生産ラインがストップしていたが、1943年から生産を再開。ただし、多くても年間トータルで50本止まりの出荷数であった。一方、ライツの台帳によるとSummarit(1949-1957)はその10倍以上の69000本が製造されている。
Leitz Xenon 5cm F1.5:フィルター径 41mm, 最短撮影距離 1m, 絞り値(大陸絞り) F1.5 /F1.6 /F2.2 /F3.2 /F4.5 /F6.3 /F9, 重量(実測) 276g, 絞り羽の枚数 6枚, 製造期間 1936-1950, 対応マウントはLeica L,  本品はシリアル番号426495から1938年製の後期モデルである。各エレメントには薄いブルーのコーティングが入っている。ちなみに前期モデル(1936-1937年製造)はノンコートでピントリングまわりのギザギザが2本(後期型は3本)となっている。レンズ名の由来は原子番号54のキセノン原子、あるいはこの原子の語源となったギリシャ語の「未知の」を意味するXenosと言われている
Leitz Summarit 5cm F1.5:フィルター径 41mm, 最短撮影距離 1m, 絞り値 F1.5-F16, 重量(実測) 320g, 絞り羽の枚数 15枚, 製造期間 1949-1957, 製造年1956年 , 製造本数 69000, 対応マウントはLeica L/Mの2種のみで本品はLeica M。レンズ名はラテン語の「最高の」を意味するSummaを由来としている

レンズの入手
Leitz Xenonは2015年9月にヤフオクを介し練馬のスマートカメラから送料込みの即決価格60000円で落札購入した。状態の良い個体をリーズナブルな値段で入手するのに時間がかかり、トロニエの魔鏡シリーズは4年もストップしてしまった。でも、悪いことばかりではない。その間にSony A7が発売され、フルサイズセンサーでこのレンズの良さを充分に堪能できる時代が到来している。オークションにおける商品の解説は「超美品。目立つような傷はなくクモリも無い。コンディションは大変良好。絞りの開閉やピント機能も良好でヘリコイドはスムーズ。状態の良いXenonは少なくなってきているのでお見逃しなく」とのこと。リアキャップが付属していた。このレンズはガラス硝材がやわらかいようで、中古市場に出回っている個体は硝子表面にパラパラとキズのあるものが多い。生産数も少ないうえクモリの発生している個体も多いため、状態の良いレンズを見つけだすのは至難の業である。半信半疑で購入してみたところ届いた個体は前玉裏側の周辺部にメンテ液の拭き残しによる小さな汚れがあるのみで、かなり良好な状態であった。eBayでの中古相場はクモリのない個体で80000円~100000円程度で、キズがなく綺麗なら150000円程度で取引されている。届いた製品個体には薄いブルーのコーティングがあった。絞り指標が今とは異なり1.6, 2.2, 3.2, 4.5, 6.3, 9と変則的で、大昔の「大陸絞り」と呼ばれる面白い規格になっている。
Summaritの方は2011年2月にヤフオクを介して札幌の写真機店から落札購入した。このレンズもガラスがやわらかく痛みやすいようで、中古市場に出回っている個体のほぼ大半にクモリが発生している。前玉にパラパラと傷のある品が多く、状態の良いレンズを入手するのはやはり至難の業だ。私は最初からクモリ入りのレンズを安く入手し修理して使うつもりでいた。入手したレンズに対するオークション出品者の解説は「中玉に薄っすらとクモリのあるレンズ。カビや傷はなく、ヘリコイドリングの回転トルクは適正。状態の良い実用品はいかがでしょうか」とのこと。写真を見る限り外観は新品に近い優れた状態で、何よりも傷が無いとのことなので即購入を決めた。入札締め切り10秒前にに35000円でスナイプ入札を試みたところ、私以外には誰も入札しなかったため、出品時の最低価格32000円で手に入れることができた。届いた商品は確かに中玉1面に薄っすらとしたクモリがあり、撮影結果は白っぽかった。オークションの記述にはなかった軽度の小さく薄い傷が前玉に1つあったが、実写への影響は全く心配ないので、これで妥協することにした。ヤフオクでの国内中古相場は状態の良いもので60000円前後、ガラスにクモリや傷のある品では30000円前後となっている。本品は国内中古市場よりも海外市場の方が高値で取引されているようだ。eBayでは状態の良いものに1000ドルを超える値がつく。最近もアクセサリー付の新品同様品が2000ドルという高値で落札されていた。さて、レンズの方は後日メンテナンスに出したところ、クリーニングのみで綺麗になり素晴らしい状態で帰ってきた。傷も前玉周辺部に見られた前述の1本だけで他には拭き傷すらない。ズマリットとしては奇跡のコンディションである。
  
撮影テスト
XenonにせよSummaritにせよ、クモリや傷などガラスの表面に深刻なダメージを抱えている個体が多く、それが原因で描写に対する世評はあまり高くない。しかし、本来は性質の良いレンズであり、状態のよい個体には驚くほどの優れた描写力が備わっている。
大きな特徴としては、絞りを大きく開けた時に発生する美しいコマフレアと軟らかくなだらかな階調表現である。フレアが特に美しいのはピント部から僅かに外れた領域で、ハイライト部が薄い絹のようなベールを纏う。ただし、ピント部にはしっかりと解像力があるので精確に合焦させれば開放絞りでも緻密な結像が得られる。柔らかさの中に緻密さがあり、線の細い繊細で美しい描写を楽しむことができる。
一方、深く絞り込んでゆくとコマフレアが消失しシャープな描写へと豹変する。F2.2~F2.8あたりまで絞るとフレアは消失し、ピント面はスッキリとヌケの良い画質でコントラストや発色は良好になる。またアウトフォーカス部の像も良く整い、ややコマフレアを残存させた穏やかで安定感のあるボケ味となる。F4-F8まで絞るとアウトフォーカス部のコマも消滅しコントラストは更に向上、シャープネスな像が得られる。ただし、中間階調は依然として豊富で、なだらかなトーン変化による丁寧な質感表現が可能である。
ボケは開放でやや硬く、ポートレート域では背景がザワザワと煩くなることがあり2線ボケも出るが、近接域では球面収差の補正がアンダーに変化するため背後のボケ味は柔らかくなる。
注意しなければならない点はハレーション・コントロールとグルグルボケである。特にXenonは逆光に敏感で階調の安定性が弱く、条件が厳しいとコントラストが過度に下がり発色が濁り始める。コントラストの低下自体はライトなトーン描写を実現するための写真表現としてむしろ歓迎できるが、発色の濁りは軽やかなライトトーンと折り合わない事が多い。ただし、F2.2まで一段分絞れば解消される。この点についてはSummaritの方がハレーションに対する耐性が高く、ちょっとやそっとの逆光でも鮮やかな発色を維持でき、開放から写真として破たんのない安定した結果を吐く。また、この時代のダブルガウスレンズには、ほぼ例外なくグルグルボケが顕著に発生する。今回取り上げるXenonとSummaritも例外ではない。レンズの非点収差曲線を見る限りでは、F2よりも深く絞れば目立たないレベルにまで改善し、F2.8まで絞ればボケ味は常に穏やかで素直になる。もちろん効果的に使う分には全く問題ではない。


Leitz Xenon 5cm F1.5+ Sony A7
娘の七五三。アンティーク着物の晴れ着姿をトロニエ設計のLeitz Xenonで撮る・・・。なんて贅沢なことであろう。それにしても、Leitz Xenonは品のある開放描写で本当に良いレンズだ。
XENON @F1.5(開放), Sony A7(AWB):あらら。開放なのに、これは凄い・・・。予想以上の美しく繊細な開放描写である。緻密なピント部を薄い絹のベールのようなコマフレアが覆っている。ライバルのゾナーとは求める描写理念が全く異なる印象をうける。背後のボケ味はかなり特徴的である

XENON @F1.5(開放), Sony A7(AWB): 解像力は充分。素晴らしいレンズだ。前ボケは柔らかく拡散しフレアを纏っている
XENON @F2.2, Sony A7(AWB): ため息が出る。1938年にここまで凄いレンズが登場していた事が驚きなのである。少し絞ればボケは安定しグルグルボケは目立たなくなる

XENON @F1.5(開放), Sony A7(AWB):開放F1.5を積極的につかうべし!。しっとりとした質感を見事に表現できる。線の細い描写だ
XENON @F1.5(開放), Sony A7(AWB): こんどは低めのポジションから逆光を入れ、ハレーションを強めに加える。コマフレアとハレーションで辺りはモヤにつつまれて真っ白に。しかし、ちゃんと写真として成立しているところに、このレンズの懐の深さを感じる
XENON @F2.2, Sony A7(AWB):微妙な光の変化にも対応している
XENON @F3.2, Sony A7(AWB):絞るとコントラストが上がり発色も鮮やかになる。写りは現代的だ

 銀塩撮影
Camera  Bessa-T(Voigtlander by COSINA)
銀塩カラーネガFILM  AGFA VISTA PLUS 200 / KODAK GOLD 200 
XENON @F2.2, 銀塩ネガ(Agfa Vista plus 200): Agfaのフィルムとの相性はとてもいいみたいだ。少し絞ればコントラストは良好である
XENON @F2.2, 銀塩ネガ(Agfa Vista plus 200):
XENON @F3.2, 銀塩ネガ(Agfa Vista plus 200):

XENON @F1.5(開放), 銀塩ネガ(Kodak Gold 200): 開放ではコントラストが少し落ちるが許容範囲だ





Leitz Summarit 5cm F1.5+ Sony NEX-5
Xenonよりもコントラストは良好で発色も鮮やか。フレアの発生レベルはXenonよりも控えめだが、開放ではしっかりと出るので、ハイキーでとると美しい開放描写が得られる。ハレーションはXenonよりも出にくく逆光時でも発色が濁りにくい。作例を撮りためていた2011年頃はまだフルサイズセンサーのデジカメが登場していなかったのでAPS-C機での作例のみとなっている。いずれ機会があればレンズを買い戻し、本来の画角でレンズの写りを堪能してみたいと思う。
 
SUMMARIT@ F2.8, NEX-5 digital(AWB), ピント面の結像は緻密でコントラストも良好、階調変化はなだらかで心地よい。よいレンズではないか!
SUMMARIT @F1.5(開放), NEX-5 digital(AWB),  開放絞りでもピント部にはしっかりと芯があり、髪の毛の一本一本をきっちりと捉えている。解像力のある緻密な描写だ。衣服や頬の辺り(近フォーカス域)には極薄いコマフレアが発生し、美しい写真効果が得られている
SUMMARIT@F1.5 (開放), NEX-5 digital(AWB)  この時代のダブルガウス型レンズは、どれも力強いグルグルボケが出る。このレンズも例外ではない。ただし、F2まで絞ればかなり抑制され素直なボケになる。色のりは開放絞りから大変良好で力強い。F1.5の開放絞りでここまで緻密な描写なのだから、このレンズは大したものだ
ひとつ前の写真の一部を拡大したもの。ハイライト部の白髪が綺麗に滲んでいる。ちなみに被写体はいつもの婆ちゃん。今度、お茶をご馳走してくれることになった
SUMMARIT@F1.5 (開放), NEX-5 digital (AWB) Summaritはハイライト部の階調表現には粘りがないのか、屋外での撮影時には白トビを起こすことがしばしばあった。光を効果的に暴れさせるための表現だと思い、元気良く活用することをおすすめしたい
トロニエの前には、またしても巨人Carl Zeissが立ちはだかっていた。新型Xenonを生み出した彼の技術力が既に当時の世界最高水準に達していたことは、誇り高きライツがシュナイダーにライセンス契約を持ち掛けたことからも明らかであった。しかし、ベルテレの技術力は更にその上をゆくものであったのだ。Sonnarという画期的なレンズを世に送り出した天才設計者ベルテレは後世にその名を轟かせることになる。この形勢を変えるには、それまでの正攻法な設計思想を捨て、常識に囚われない独創的なアイデアを生み出す必要があった。
やがて、第二次世界大戦が勃発し、光学機器メーカーは生産活動をストップ。ドイツは敗戦しCarl Zeissは東西両ドイツの双方に分断されてしまう。戦時中のトロニエは写真用レンズの開発から離れ、ゲッチンゲンの子会社(ISCO)で航空偵察機用レンズや双眼鏡、照準器用の広角アイピースなど軍需品の生産を指揮していたと言われている。終戦間際の1944年にSchneider社を離れフリーとなり、Voigtländer(フォクトレンダー)社と契約を結んでいる。この間のブランクで彼はそれまでの写真レンズの描写設計に欠けていた新しい着想を得ることになる。トロニエは1947年にXenonとは設計の異なる超大口径レンズNokton (ノクトン)を発表[Noktonのスイス特許(1947)]、新型レンズでCarl Zeissに巻き返しを図るのである。

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謝辞
シリーズ1・2を作成するにあたり
ブリコラージュ工房NOCTOのスタッフ皆様方
台湾のCAPSさんから
多大なるご協力をいただきました。
深く御礼申し上げます。




15 件のコメント:

  1. はじめまして。
    どのエントリーも素晴らしい考察で大変感激いたしました。
    リエントリーになってしまったようですが
    Leitz Summicron-R 50/2 は特に参考にさせていただきました。
    ありがとうございました。
    これからも楽しみにしております。
    よろしくお願いいたします。

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  2. アントニオ・F2・夏樹 さん

    早速の書き込み、ありがとうございました。人物シリーズは執筆にエネルギーを使いますので疲れました。あまり深い事を考えずにレンズだけの内容でブログを書いている方が私には合っているのかもしれません。これからもお楽しみください。

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  3. SPIRALさん 初めまして。匿名希望の瀬戸際の魔術師と申します。m(_ _)m
    トロニエの魔鏡2楽しみにしておりました。以前からこのブログの読者でしたが、SPIRALさんの鋭い解析と深い考察の賜である各エントリーのおかげで、す~っかりM42の魔力に吸い寄せられてしまいまして、気がつけばツアイスを中心にM42玉が身の回りにごろごろ…純正レンズより本数が多くなってしまいました。(笑)
    ところで、おとといブリコラージュ工房NOCTOさん(あちらのトップページにここの紹介があってちょっと驚きました。)の「M42改造アンジェニュー50mm F2.8」をポチッてしまったのは私です。(笑)で、先ほどブツが届きましたので5DIIにつけて試し撮りをしてきました。どんなのが撮れてるか楽しみです。
    では、これからも時々おじゃましますので、よろしくお願いします。

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  4. 瀬戸際の魔術師さん、こんばんは。

    M42改造アンジェニュー2.8/50 ですか。いいレンズのようですね。
    NOCTOの棚に出ていた1か月ほど前に、店長さんから
    これはいいレンズだと手に取りながら紹介され、
    ちょっと気になっていました。そのレンズが
    魔術師さんのモノになったのですね。羨ましいです。

    アンジェニュー2.8/50は本ブログに書き込みをいただく、
    こぎとさんという方にも作例を見せていただいたことが
    あります。素晴らしい描写でした。
    こちらに作例が出ています。

    http://www.nocto.jp/board/board.html?code=ogmosp015_image2&page=4&type=v&num1=999634&num2=00000&lock=N

    いつでもいらしてくださいね♪

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  5. 瀬戸際の魔術師です。
    こぎとさんの作例見せていただきました。
    アンジェニュー2.8/50を手にして2日目。5DIIにつけた感じは完全にパンケーキレンズです。天気予報によれば今日はいいお天気だということでしたので、ハロの出そうな白い花を探しては開放で撮ってきましたが、西風と黄砂がひどくてなかなか条件に恵まれず。アンジェニューは開放では全体にソフトですのに、ますますソフトなタッチの写真になっちゃいました。でも少し絞るととても繊細な描写です。特にピントがビシッと決まるとアウトフォーカスのボケと相まって何ともいい感じです。
    少し撮ってみただけですが、このレンズの味は凹みUltron ともPlanarやFlektogonともまたちがって、如何にもおフランスといった感じですねー。(^^;)

    次はベス単フード外し?SPIRALさんのレポート読んでからにします。ではでは~。m(_ _)m

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  6. 瀬戸際の魔術師さん
    こんばんは

    Angenieux 2.8/50は構成が何であるのか、ちょっと
    WEBでサーチしてみましたが、見つかりませんでした。
    フワッと綺麗にボケますね。素性のいいレンズだと思いました。Noctoの棚にも作例(勉強をする少女)つきで載っていました。手前側の机がグワ~っと前ボケし、普通の作例なら
    あそこで切れて終わるのでしょうが、その隅に少女の
    手がチョロっとジャスピンで写っているのが印象的です。
    なんか、勉強中の少女の手とは思えない鋭い手です。その後の人生を暗示しているか、あるいは何かをつかみ取ろうとしている手なのか・・・。

    ついにベス単に行きますか!
    私はまだまだ自信ありませんので。

    ではでは

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  7. 瀬戸際の魔術師あらため「崖っぷちの魔術師」です。たびたびお邪魔して申し訳ありません。m(_ _)m
    あのペチャンコ具合から察するにAngenieux 2.8/50はテッサ-型(そんなのあるのか?)でしょうか?Angenieuxは実にいろんなタイプがありますので私も気になって調べてみたんですが、このレンズの構成はよくわかりませんでした。
    Noctoさんの勉強をする少女の作例のような柔らかいけど芯のある写真が撮れるようになりたいものです。

    ベス単面白そうです。ああ、だんだん難しいレンズに向かってしまう自分が怖い…。どうです?ご一緒に…。(笑)

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  8. こんばんは!
    崖っぷち魔術師さん

    >あのペチャンコ具合から察するにAngenieux
    >2.8/50はテッサ-型(そんなのあるのか?)で
    >しょうか?

    うーん。
    テッサーはカリカリの描写が長所であり短所でも
    ありますので、短所の部分がアンジェニューらしさで
    カバーされているのだとすると、かなり個性的な
    レンズなのかもしれません。

    うーん。やはり構成が気になるところです。
    海外のサイトをあたってみます。

    ベッ、ベス単は・・・まだ覚悟がありません。
    では、良いGWをお過ごしください。

    返信削除
  9. こんばんは!
    崖っぷち魔術師さん

    NOCTOに別件で用がありまして、その際に
    構成を尋ねましたところ、他所に問い合わせ、
    追跡調査をしてくださいました。
    3枚(トリプレット)だそうです。驚きました。
    このレンズ、よく写るんですね。

    NOCTOでアンジェニューに関する記事を
    見せていただきました。アンジェニューは
    シンプルなトリプレットに対してさえも、
    独自の工夫を盛り込む製品造りをするのだそうです。
    いつか、設計構成図を見てみたいものです。

    返信削除
  10. 崖っぷちの魔術師です
    うーん。NOCTOで尋ねて下さったんですか!ありがとうござい
    ます。このレンズはトリプレットだったんですね。
    トリプレットと言えば英国のクック社のレンズ設計者だった
    ハロルド・デニス・テーラーが発明し、精密機器メーカー
    「テーラーホブソン社」が製造販売した3群3枚ですよね。テッ
    サ-はこれに1枚足してますから、テッサ-より更にシンプ
    ル!アンジェニューがこの単純な構造のレンズにどのように
    独自の工夫を施したのか私にもわかりませんが、写りは完全
    にフランス映画調になってます。(^^)

    返信削除
  11. 崖っぷちの魔術師さん
    こんにちは


    > NOCTOで尋ねて下さったんですか!ありがとうござい
    > ます。

    いえいえ。ついででしたもので。構成については、
    どこにも資料がなく、NOCTOでさえ情報収集にはかなり
    手こずっていました。店長さんがあちこち電話を
    かけ尋ねてくださいましたので、かなり迷惑
    だったかもしれません(反省反省・・・)。

    シンプルといえども、サイデルの5収差全てを
    コントロールできるわけで、収差を生かした描写
    という意味では、荒削りな補正を行うトリプレットの
    方がテッサーよりも個性は出しやすいのかもしれません。

    それから、最近のコンピュータ設計で作られた
    トリプレットはかなり高性能のようです。携帯電話にも
    多く搭載されているそうです。

    テッサーでフランス映画的な描写が出せるとしたら、
    あるいみ驚きでしたが・・・。


    > レンズにどのように
    >独自の工夫を施したのか

    そうですね。NOCTOでアンジェニュー特集という
    雑誌の切り抜きを見せてもらい、その中の一説に、
    そう記されていました。


    ベールが1枚かかったような描写は、レンズのタイプを
    問わず、アンジェニューの目指した、一貫した描写理念
    なのかもしれません。

    返信削除
  12. はじめましで。僕は台湾人です。

    Your lens invention schedule has some errors. Dr. Tronnier did not invent a 5群6枚 lens in 1925, but just 4群6枚, another Planar design. Schneider did it to avoid the patent of Taylor Hobson Opic.

    The 5群6枚 was invented in 1950, used on Voigtlander Ultron 50/2 [US Pats 2627204]. In that patent, Tronnier described clearly how he changed the design from 4群6枚 to 5群6枚.

    The model A was invented in 1950 also, not in those years of 1920s. As your list [US Pats 2645155], that patent was filed on the date of Sep-12 1950.

    返信削除
  13. Hello 台湾の人

    Thank you for the comment.

    I know there are several websites describing that optical formula of Tronnier's xenon F2 is 6 elements in 4 groups(4群6枚). 

    But i do NOT think that my description is error.

    I have ever seen Schneider's catalog published in 1938. This catalog shows clearly with figure that Xenon F2 has 6 elements in 5 groups. If you decostruct the lens, you can really find this construction. The following webpage supports you to understand much more. The website owner deconstructed xenon F2 and reported with photos that the optical formula of the lens was definitely 6 elements in 5 groups.

    http://www.ksmt.com/eos10d/eos_nikki_body29.htm

    As is clearly shown in Schneider's catalog, Edixa-xenon F1.9, which was designed later,
    has 6 elements in 4 groups(4群6枚).



    > The model A was invented in 1950 also, not in
    > those years of 1920s. As your list [US Pats 2645155],
    > that patent was filed on the date of Sep-12 1950.

    Some person doing research on old lenses told me that the optical formula of Nokton has already completed in 1947(not in 1950). He also told me that 1950 and 1947 do not necessary mean the first cogitations of the idea(NOKTON) specified in "MODEL A". As is easily imagined, it was very difficult to take a patent in Germany during and just after the 2nd World War. Please note that Tronnier has already found advantages to separate the structure of front optical elements in 1920's.

    Anyway, do you know anything about Xenotar? Some website shows that this lens was designed by Tronnier. But i cannot find its evidence. You seem to have much knowledge about the old lens.

    I thanks to your writing.

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  14. こんにちは。

    The time line of Schneider lens should be:
    1925 4-group Xenon
    1935 5-group Xenon

    Schneider has shown their Xenon design in 1925 catalog, Deutsche Pats 439556. But Mr. ksmt's lens was made in 1942. That's why it has 5G design. Tronnier modified a Taylor Hobson design and invented the early 5G type, as late as in 1930s. It was a little different to the later Ultron type. So when Ultron type became popular, Schneider also applied a new 5G lens in 1951 [US Pats 2683396].

    As you said, it is very hard to get patent in Germany when the war just over. Nokton was first patented in Swiss, also 1950.

    The Xenotar was invented later by Klemt [US Pats 2683398]. At that time, Dr. Tronnier has left Schneider and worked for Voigtlander.

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  15. こんにちはMr Caps

    Your description does not have any contradiction, and resolves one of my question for German Patent #DE439556(1925). I believe your knowledge that Xenon was modified to 5G in 1935. I will change the story of my description in this entry and previous one. Would you tell me how you got the date of 1935 modify? Is it related to the patent expiration of Taylor Hobson? I have been waiting for a person like you who can brush up my description.
    Thank you

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