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2017/05/17

Petri Camera Co. High-Speed Petri part 3: KURIBAYASHI C.C. Petri Orikkor 50mm F2(M42 mount)


ペトリカメラの高速標準レンズ part 3
ペトリブランド初の一眼レフ用レンズ
KURIBAYASHI C.C. Petri Orikkor 50mm F2(M42 mount)
ペトリの一眼レフ用レンズの特徴はシャープな開放描写と独特な背後のボケ味であることを繰り返し伝えてきたが、今回はこの描写傾向のルーツを求めオリコール(Orikkor) 50mm F2の前期型を取り上げることにした。オリコールはペトリカメラが栗林写真機製作所時代の1959年に世に送り出した同社では初となる一眼レフカメラのペトリペンタ(Petri Penta)に搭載された交換用レンズである。これから一眼レフの分野に参入しようと意気込む同社が知力を尽くして開発し、後の1960年代に高い評価を得るペトリブランドの標準レンズ群を生み出す礎となった。レンズの設計構成は独特で、ガウスタイプの変形であることは間違いないが、後群に3枚のレンズをはり合わせた独特なレンズユニットを持ち、4群7枚の構成になっている(下図)。このレンズユニットは一眼レフ用オリコールの初期型のみに採用されたもので、バックフォーカスを確保しながら50mmの標準画角を達成する役割があったと伝えられている[文献1-2]。ただし、1961年発売のPetri Penta V2用に供給されたOrikkor 50mm F2(後期型)とこれ以降の後継モデルではオーソドックスなガウスタイプ(4群6枚)の構成に戻っている[文献3]。
レンズを使ってみたところ、予想に反して開放ではピント部に絶妙な柔らかさが漂い、人物のポートレート撮影で力を発揮できる繊細な質感表現のレンズであることがわかった。一方、ペトリならではの絵画のようなボケ味はこの頃のレンズから既に備わっており、過剰気味の収差補正と適度な残存収差による独特な味付けが、このレンズにおける大きな魅力となっている。戦後のメイヤーのレンズにもどこか通じる味付けではないだろうか。


Kuribayashi C.C. Petri Orikkor 50mm F2: 7 elements in 4 groups(文献[1,4]からのトレーススケッチ)
参考文献・資料
[1]写真工業 7月号(1959年)写真工業出版社
[2]Petri@wiki 「ペトリ一眼レフ交換レンズの系譜 標準レンズ編」
[3]Petri Penta V2 取扱説明書; PETRI PENTA V2 Instruction Book(英語);
[4]Petri Penta Instruction Book, P15
Kuribayashi C.C. Petri Orikkor 50mm F2(前期型): フィルター径 49mm, 重量(実測) 180g, 絞り羽 10枚構成, 絞り F2-F22プリセット式, 最短撮影距離 約0.5m(1.75 feet弱), 設計構成 4群7枚変形ガウス型,  M42マウント, Petri Penta用の標準レンズとして供給された。なお、レンズのガラス表面には同社が独自にコンビネーション・コーティング(C.C)と呼んでいるシングルコーティングが蒸着されている。また同レンズの初期ロットにはC.Cとは別のAmber-magenta combination Coating(A.C)が蒸着されている場合もある。C.Cではレンズエレメントごとにアンバー系とマゼンダ系のコーティングが複合的に用いられているが、A.Cでは全てのエレメントがアンバー系のコーティングとなっている[Thanks to Rikiya Kawada]



 ★入手の経緯
ネットオークション(ヤフオク)での相場は5000円程度とペトリのF2級レンズとしては高めの値段で取引されている。マウントがM42なので使えるカメラが多く、設計構成が特殊なうえ、流通量もペトリのレンズにしては少な目だからであろう。今回のレンズは知人からの借用品である。硝子に大きな問題はなく、少し傷がある程度で実用十分のコンディションであった。

撮影テスト
これまで本ブログの特集記事で紹介した2つのモデル(55mm F1.8や55mm F2)とは開放での描写傾向が若干異なることがわかった。近接撮影時は開放からシャープであるものの、遠方撮影時になるとピント部に絶妙な柔らかさが漂う。肌の質感表現は素晴らしく、ポートレート撮影にも充分に対応できる繊細かつ上品な味付けといえる。絞ればもちろんシャープでヌケの良い描写となる。背後のボケはいかにもペトリらしく、開放付近では線描写が激しくバラけながらフレアを纏い、輪郭をとどめながら質感表現のみを潰したような独特なボケ味が、絵画のような背景描写をつくり出している。グルグルボケや放射ボケが目立つことはない。2線ボケもここまで過度だと見事としか言いようがない。この味付けは栗林時代に既に確立していたのである。

F8, sony A7(WB: 晴天): 過剰補正傾向の強いレンズなので、ある程度の近接撮影にも画質的に耐えてくれる
F2(開放), sony A7RII(WB:曇天)  迫力のあるボケ味はやはりペトリのレンズならではのもの
F2(開放), sony A7RII(WB:曇天) 絵画と写真の融合・・・全部写真です
F2(開放), sony A7(AWB):近接撮影の場合は開放からシャープに写る

F4, sony A7(WB: 晴天):  ポートレート域はもとより、近接撮影でも依然としてボケ味が硬く、独特の味付けになるのは、ペトリレンズならではの特徴といえるだろう。凄い!
F2(開放), sony A7(WB:曇天):ポートレートになるとピント部の描写傾向は柔らかく、絶妙な質感表現となる
F4, sony A7(WB:曇天):絞ったときの引き画。スッキリとヌケが良く、シャープネスな描写だ

4 件のコメント:

  1. おはようございます。
    ガッチリしたボケが主被写体を見事に浮き上がらせてますね。
    >絵画と写真の融合・・・実に的確な表現だと思います。モネっぽいです。

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    1. 絵画の世界のハイパーリアリズムに、写真の側から接近しているという何とも不思議な行為ですよね(笑)。

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  2. Thank you for reviewing this lens. It is one of the most interesting designs of its era, but mostly forgotten today.

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    1. >one of the most interesting designs
      Yes. I think so, too.

      This lens was probably designed by Ryouzo Tomita who was the chief designer of Kuribayashi Co., but there is no evidence proving that.

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