OKC1-22-1はロシアのロモ(LOMO :レニングラード光学機械連合)が1950年代のLENKINAP(
Leningrad Kino Apparatus:レニングラードシネマ器機)時代から少なくとも1992年頃まで生産していた、APS-
C相当のセンサーサイズまでをカバーできる35mm映画用レンズです。レンズの設計構成は下図のような5群6枚で、
ビオメタールからの発展形として旧東ドイツZeiss Jenaが供給したレトロフォーカスタイプの広角レンズFlek
togon(フレクトゴン)を手本にしています。
初期のレトロフォーカスタイプの中では開放からシャープでヌケ
がよく、
フレアの少ない抜群の描写性能を備えた優れた設計構成として知
られています。
レンズはヘリコイドを持たないレンズヘッドの状態で売られていま
すので、このままではピント合わせができません。デジカメでの撮影に用いるには、いったんライカMマウントに変換し、ヘリコイド付きアダプターに搭載するのがよいでしょう。
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1950年代後期のLOMO設立前にLENKINAPファクトリーで生産された初期型のOKC1-22-1。経年による使用でこすれた部分から真鍮の地金が出ている。和のテイストを感じさせるカッコイイデザインだ |
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OKS(OKC) 1-22-1の構成図: Catalog Objectiv 1970 (GOI)からトレーススケッチした見取り図。設計構成は5群6枚のフレクトゴン型 |
★入手の経緯
レンズは2017年12月にeBayを介してウクライナのセラーからレンズヘッド
の状態のものを119ドル+送料の即決価格で購入しました。オークションの記載は「MINT CONDITION(美品)。
レンズの性能はコリメーターでチェックしている」とのこと。
届いたレンズは充分に綺麗な状態でした。
レンズヘッドはeBayに豊富に流通しており、
価格も美品が150ドル(+送料)辺りからの値段で手に入ります。LENKINAP製やKONVASマウントの個体は珍品のためか、これよりも値が張りました。
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LOMO OKC1-22-1 22mm F2.8: 絞り羽根 8枚構成, 最短撮影距離(ヘリコイドアダプター5mm繰り出し使用時) 0.2m, 5群6枚レトロフォーカスタイプ(フレクトゴン型), 実焦点距離21.1mm, 重量(レンズヘッドのみ)45g, 推奨イメージフォーマットはAPS-C相当(35mm映画フォーマット) 製造期間1950年代より1990年代 |
★マウントアダプター
レンズにはヘリコイドが付いていませんしマウント形状はM21(
0.5mmピッチ)ネジですから、
このままでは撮影に使うことはできません
。デジタルミラーレス機で使用するにはウクライナの
ua-artprojectcomというセラーがeBayで販売している「HELICOID FOCUSING PART FOR OKS1-22-1 F/2.8 22mm」を購入するか、ロシアのRafCameraがeBayで3000円程度で市
販しているM21x0.5 - M39x1アダプターを手に入れ、マウント部をライカL39マウン
トに変換します。
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HELICOID FOCUSING PART FOR OKS1-22-1 F/2.8 22mm (ua-artprojectcom) |
続いてライカLMリング(eBayでは500円程度)を使いマウント部をライカMマウントに変換、最後にライカMマウントレンズ用のアダプター、もしくはRafCameraのアダプータを用いた場合にはライカMマウントレンズ用のヘリコイド付きアダプターに搭載します。アダプターまで含めると予算総額は高くなってしまいますが、ミラーレス機ユーザーにとって、ライカLMリングやライカMマウント用のアダプターは他のレンズにも流用できる使用頻度の高い必須アイテムですので、揃えておいて決して損ではありません。ヘリコイドアダプターの繰り出し量は僅か5mm程度ですが、それでも、このレンズを搭載すると20cmまで寄れ、充分な近接撮影力が得られます。なお、私は下の写真に示すような自作カプラーで対応しました。参考までにカプラーづくりの材料は(1)26-28mmステップアップリング(28mm側のネジ山をルーターで削る)、(2) C-mount > Leica Lステップアップリング、(3)ライカLM変換リング、(4)エポキシ接着剤です。
このレンズにはフィルターネジがありませんので、被せ式のレンズキャップをつける必要があります。ホームセンターにゆくと椅子の足に被せるゴムキャップ(内径31mm)が100円程度で買えますので、丈もぴったりでおススメです。
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LENKINAP OKC1-22-1 22mm F2.8:絞り羽 8枚構成, 絞り値 T3.1-16, 最短撮影距離(ヘリコイドアダプター5mm繰り出し使用時) 0.2m, 5群6枚レトロフォーカスタイプ(フレクトゴン型), 推奨イメージフォーマットはAPS-C相当(35mm映画フォーマット), 赤紫のPコーティングが蒸着されている |
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LOMO OKC1-22-1 22mm F2.8: 絞り羽根 8枚構成, 最短撮影距離(ヘリコイドアダプター5mm繰り出し使用時) 0.2m, 5群6枚レトロフォーカスタイプ(フレクトゴン型), 実焦点距離21.1mm, 重量(レンズヘッドのみ)45g, こちらは1978年製の個体で、コーティングはシアン系と紫の混合。逆光で虹のシャワーのようなハレーションが豪快に出る |
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こちらは、1966年製造の個体でLOMO銘が入っている。LENKINAP製の個体と同じ赤紫色のコーティングが施されており、逆光でも虹のハレーションが出ない |
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LOMO OKC1-22-1: 重量(実測) 125g, 絞り羽 8枚構成, 絞りF2.8-F16, 最短撮影距離(規定) 1m, ヘリコイド付 フィルター径 55mm: こちらはKONVAS(OCT-18)マウント用に作られた珍しい個体。KONVASは市販のアダプターがあるので、無改造のままミラーレス機で使用することができる。私が入手したのはeBayでポーランドのセラーが販売していたOCT18 - LEICA Mアダプターです(下の写真)。 |
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eBayにてポーランドのセラーから9500円で入手したOCT18 - LEICA Mカスタムアダプター。造りはとてもよいが、たまにしか売っていない |
★撮影テスト
プロフェッショナル向けの映画用レンズには設計に無理のない堅実な描写の製品がそろっています。本品も開放からスッキリとヌケがよく、四隅まで滲みの少ないシャープな描写です。コントラストは良好でどこまでも優等生なレンズですが、逆光になるとシャワーのような美しいハレーションが爆発的に発生し、豹変します。発色はノーマルで歪みは極僅かに樽型。工夫次第で素晴らしい写真効果が得られる、とても楽しいレンズです。
ちなみに、LENKINAP製の個体は逆光でもシャワーのハレーションが出ることがありませんでした。コーティングの違いからでしょうか。
★LOMO製 OKC1-22-1での写真作例★
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F3.5辺り, Fujifilm X-T20(AWB): |
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F3.5辺り, Fujifilm X-T20(AWB): |
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F3.5辺り, Fujifilm X-T20(AWB): |
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F2.8(開放), FUJIFILM X-T20(AWB): 逆光ではゴーストに加え、シャワーのような美しいハレーションがビシバシと出る |
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F4辺り, Fujifilm X-T20(AWB): |
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F3.5辺り, Fujifilm X-T20(AWB): ガラスが1枚入っており、太陽光が写り込んでいる |
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F4, FUJIFILM X-T20(AWB): |
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F4, FUJIFILM X-T20(AWB): |
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F2.8(開放) FUJIFILM X-T20(AWB): |
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F4, FUJIFILM X-T20(AWB): |
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F2.8(開放), FUJIFILM X-T20(AWB): |
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F4, FUJIFILM X-T20(AWB): |
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F5.6, Fujifilm X-T20(AWB) |
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F4辺り, Fujifilm X-T20(AWB) |
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F4辺り, Fujifilm X-T20(AWB): |
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F2.8(開放)FUJIFILM X-T20(AWB):逆光時のハレーションは開放では放射状だが・・・。 |
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F16辺りFUJIFILM X-T20(AWB) : 深く絞ると、このようになる。ハウルの動く城か? |
★LENKINAP OKC1-22-1での写真作例★
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F2.8(開放)FUJIFILM X-T20(AWB) |
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F2.8(開放)FUJIFILM X-T20(AWB) |
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FUJIFILM X-T20(AWB) |
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F5.6, Fujifilm XT-20(AWB) |
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F2.8(開放) FUJIFILM X-T20(AWB) |
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F5.6 FUJIFILM X-T20(AWB) |
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F5.6 FUJIFILM X-T20(AWB) |
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F5.6 FUJIFILM X-T20(AWB) |
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