おしらせ

 
イベント案内

オールドレンズ女子部 撮影散歩&お茶会
10月15日 場所は横浜イングリッシュガーデン
参加資格 オールドレンズに興味のある女性 詳しくはこちら 

オールドレンズ写真学校 写真展
11月3ー5日 場所は原宿 申込制:定員13名(参加資格有) 詳しくはこちら スタッフとして参加予定です。

2011/08/26

Kamerabau-Anstalt-Vaduz Kilfitt-Makro-Kilar E(APO)
4cm F2.8 (M42) Rev.2 改訂版

マクロキラーは今日のマクロレンズの原型となるレンズである。フィルター枠にある赤・青・黄色の3色の刻印は本品が高級なアポクロマートレンズであることを印している。アポクロマートとは特殊な硝材で作られた3枚のレンズを組み合わせによって色収差を補正する仕組み
鋭い描写と色のりの良いクッキリとした発色、軽く小さなボディが魅力。熱狂的なファンがいる

カメラとレンズの設計者で知られるHeintz Kilfitt[ハインツ・キルフィット] (1898–1973)は1898年にドイツのHöntropという町に時計メーカーの息子として誕生した。若いころの彼は時計の修理工であったが、写真機やレンズにも興味を持ち、後にカメラ産業に乗り出していった。彼の最初の成功は1933年で学生の頃に設計した超小型カメラである。このカメラはスプリングモーターによる自動巻上げの機能を内蔵し、24x24mmの小型フレームフォーマットを持つというもので、後の1934年に発売されるRobot Iというカメラのプロトタイプとなった。彼が考案したRobot Iの優れた機構やコンパクトな設計には当時のLeitzも衝撃を受けたといわれている。彼は1941年にドイツ・ミュンヘンの小さい工場を買収し光学・精密機器の生産を開始、1947年には欧州の小国リヒテンシュタインでKamerabau-Anstalt-Vaduz(KAV)という会社を創設すると、レンズやカメラの生産を本格化させるようになった。KAV社は後発の光学機器メーカーであったが、1955年に世界初のマクロレンズMakro-Kilar 3.5/40を開発、1959年には米国Zoomar社と協力し、世界初のスチルカメラ用ズームレンズとなるフォクトレンダー社Zoomar 36-82mmをOEM生産するなど前衛的な製品を世に送り出し一躍有名企業へと成長した。その後、会社はドイツのミュンヘンへと移転され、社名もKAVからKilfittへと変更されている。Heintz Kilfittは1968年に70歳で引退を決意し、会社を米国のZOOMAR社へと売却、その5年後に死去している。
今回、再び紹介するのはKAV社がKilfitt-Makro-Kilar 40mm F3.5/の改良モデルとして1958年にリヒテンシュタインにて製造した同ブランド2代目のKilfitt-Makro-Kilar 40mm F2.8である。F3.5の初期モデル同様、リヒテンシュタインで製造されており、フィルター枠には当時の社名であるKamerabau-Anstalt-Vaduzのロゴが刻まれている。F2.8の2代目は後に会社がドイツ・ミュンヘンに移転した頃を境にデザインが変わり、さらにKilfitt社がZoomar社へ買収された後は、Zoomar社製マクロズーマター銘に変わるなどマイナーチェンジにを繰り返し、複数のモデルが存在している。ただし、レンズの製造は一貫してミュンヘンのkilfitt工場が担い、zoomar社傘下においても生産ラインは1971年まで続いた。
2代目Kilfitt-Makro-Kilar 2.8/40には最大撮影倍率が0.5倍となるシングルヘリコイド仕様のモデルEと、等倍でダブルヘリコイド仕様のモデルDの2種が存在する。モデルEとモデルDの差異はヘリコイドの繰り出し長のみであり光学系は同一(3群4枚のテッサータイプ)である。フィルター枠に刻まれた極小のロゴがいかにもマクロ撮影用レンズらしい雰囲気を醸し出し、まるでミクロの世界にカメラマンを誘っているかのようにみえる。カラーバリエーションには黒と銀の2タイプが存在し、流線型の美しい鏡胴には、とても50年前のものとは思えないモダンなデザインセンスを感じる。対応マウントはM42以外に少なくともエキザクタ、アルパ、コンタレックス、レクタフレックスがある。これらのマウントをM42用に変更できる交換改造マウントが存在し、これを用いた改造品が中古市場に多く流通している。なお、マクロキラーには中望遠の90mmの製品も存在し、こちらは40mmのレンズよりもお値段がだいぶ高い。
最大撮影倍率 x0.5(model E), x1.0(model D), フィルター径 29.5mm, 重量(実測値) 144g, 焦点距離40mm , 開放絞り値 F2.8, 最短撮影距離 10cm, プリセット絞り(絞り値:2.8-22), プリセット後は無段階での絞り設定となる。マウント部に絞り連動ピンはついていないので、ピン押しタイプのマウントアダプターを用いる必要性はない。カラーバリエーションは銀と黒, 本品はリヒテンシュタイン製で純正M42マウント用。左の写真は回転ヘリコイドを最大まで繰り出したところ。本品はType-Eなのでシングルヘリコイド仕様だが、Type-Dの場合はヘリコイドが2段構造(ダブルヘリコイド)であり鏡胴はさらに延びる。左の写真のように後玉がせり出しているので、銀塩カメラやフルサイズセンサー機で使用する場合の多くでは、遠方撮影時にミラー干渉を起こすので要注意。ミラーの動作がパラレルリンク方式のα900やミラーの小さいPENTAX SVなどでは、ひょっとしたらセーフかもしれない
★入手の経緯
Makro-kilar 40mmは後玉が大きく飛び出しているため、APS-Cセンサー機やミラーレス機の登場までまともに使えるカメラが無く、安値で取引されていたが、最近は相場も人気も急上昇し高値で安定している。私が手に入れた個体は2009年9月29日にeBayを介してドイツの中古レンズ専門業者から落札した。商品の解説は「エクセレントコンディションのマクロキラー。ガラスは少しの吹き傷がある程度で綺麗。絞りとフォーカスリングの動作はパーフェクト」。出品者紹介には二枚目の若いお兄ちゃんの写真が写っている。フィードバックスコア1900件中99.8%のポジティブ評価なので、この出品者を信頼することにした。いつものようにストップウォッチを片手に持ちながら締め切り数秒前に250ユーロを投じたところ、206ユーロ(2.7万円弱)にて落札できた。送料・手数料込みの総額は216ユーロ(2.82万円)である。なお本品のヤフオク相場は3万円前後、海外相場(eBay)は300-400㌦(2.7-3.6万円)。商品は落札から10日で手元に届いた。恐る恐る状態を精査すると、中玉端部のコーティング表面にヤケ(コーティングの経年劣化)がある。他にもレンズ内にチリがパラパラとあり、お約束どうり薄っすらとヘアライン状の吹き傷もある。年代物とはいえ説明不足は明らかで、本来ならば完全に返品となる状況だが、今回はこれが欲しかったので、返品は避けオーバーホールに出すことにした。ガラスの不具合が改善しますようにと近所の神社にお参りしたのが効いたのか、2週間後に修理業者から返ってきたレンズはかなり改善し、チリも除去され、実力を見るには十分なレベルとなっていた。

★撮影テスト
Makro-Kilar 40mmの撮影テストは今回で2回目となる。オールドレンズは発色に癖のあるものが多いが、本レンズは1950年代に造られた製品とは到底思えない実にニュートラルな発色特性を示す。テッサー型レンズらしく、コントラストの高さと階調変化の鋭さ、色彩の鮮やかさと色のりの良さが際立っている。黒潰れに強いデジカメの特性にも助けられ、シャドー部がカリカリに焦げ付くことはなく良好な階調表現が得られる。黒潰れが避けられないケースは真夏日の晴天下でF11以上深く絞る場合のみであった。本品も含めテッサータイプのレンズでは銀塩カメラよりもデジタルカメラの方が相性が良いのかもしれない。解像力はテッサータイプ相応であり、お世辞にも類似スペックのガウス型マクロ撮影用レンズと肩を並べる性能とは言い難い。開放絞りの場合、中遠方はスッキリと写るが近接ではやや像が甘く、ポワーンとした柔らかい描写を楽しむことができる。1~2段絞れば被写体の輪郭が締まり、近接撮影でもスッキリと写るようになる。絞りこんだときの解像力はF11まで向上し、回折効果による画質の低下はF16以上深く絞ったところでようやく表れる。最小絞りがF22まで用意されているのは、単なる飾りではないようだ。グルグルボケや四隅の流れなどはなくアウトフォーカス部の像は概ね安定している。球面収差の補正が過剰気味なのか中距離域で2線ボケに遭遇することがあったが、近接撮影では収差の増大に助けられ柔らかく綺麗なボケ味が得られている。前評判どうりに欠点の大変少ない優れた描写力を備えたレンズのようで、これなら人気があるのもうなずける。解像力よりも鋭い階調表現で勝負するレンズといえるのだろう。
F8 NEX-5 digital:近接撮影時のボケ味には不安材料は全く無い。`色のりもよいしボケも綺麗だ
F5.6  NEX-5 digital: テッサータイプらしい安定した描写だ
F5.6 NEX-5 digital, AWB: 真夏日の強い日差しであるが、シャドー部が黒つぶれせずに階調がよく残っている

F11, -1.7EV EOS Kilss x3, AWB:  深く絞るときの像の鋭さは流石にマクロレンズ。ただし、絞りが深いと、少し階調表現が硬めになる

上段F2.8/ 下段F8, EOS kiss x3, AWB: マクロレンズとはいえ開放絞りでは像がやや甘くなるので柔らかい描写表現が可能。1度で2度おいしい類のレンズだ

F5.6  EOS kiss x3, AWB これくらい絞れば最短撮影距離でもスッキリと写る
★2011年8月に洞窟遺跡の調査に同行しspiralが撮影係を担当した。以下は、その中からの作例。洞窟内は背景が暗闇に支配されているため「ボケ味」が表現しにくい。多くの場合、深く絞りこんで撮影することになる。
F11 NEX-5digital, AWB, BULB撮影モード: 調査で見つかった祭壇のような構造物(鍾乳石)。長い年月が経ち、床面と一体化している。手前に転がっているのは12世紀頃に造られたとみられる土器の破片。この場面では絞り値F8でも撮影したが、F11の方が像がシャープな結果となった。本レンズの場合、回折による解像力の低下はF16よりも深い絞り値で起るようだ

F11 NEX-5 digital AWB, BULB撮影モード: 土器の破片群。一つの土器が砕け斜面を流れるように砕け散っている。この場面では2方向からLEDライトを照射し、バルブ撮影で写している。


F5.6 NEX-5 digital AWB: カタツムリやキセル貝等の死骸の堆積。こちらも三脚を立てて撮影している。照度が低く階調表現が軟らかい場合、解像力の高低がはっきりと視認できるようになる。やはりこのレンズには解像力が高いという印象を持つことができない
★撮影機材
KAV Kilfitt-Makro-Kilar E 2.8/40(M42) + Sony NEX-5 / EOS kiss x3


KilfittがMecaflex用に生産したTele-Kilar 4/105という名の美しい望遠レンズがある。デザインセンスの良いkilfitt社ならではの製品であり、私にとって喉から手が出るほど欲しい憧れの一本である。このレンズを手に取るチャンスにいつか巡り合うことはあるのだろうか・・・。

6 件のコメント:

  1. オールド・ヴィンテージ・マクロながら、
    すばらしく豊饒な色彩表現能力を秘めたレンズですね。
    これからの季節は日本の柿に金赤か照柿とか、
    彼岸花は猩々緋から深緋の色変化をたのしめそう。

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  2. Akiyanさん
    こんばんは。綺麗な色の出るいいレンズです。
    これから秋にかけて、様々な色に遭遇できる
    シーズンがきます。今から待ち遠しいですね。
    かきこみありがとうございました。

    返信削除
  3. こんばんは
    50年以上前に世界初のマクロレンズを開発し、Zoomar 36-82mmをOEM生産しているところなどから察するにKilfittは随分と斬新で技術力のあったメーカーだったんですね。デザインも秀逸でカッコイイです。(^^)
    Tele-Kilar 4/105の方も検索して見て来ましたがこれは何とも個性的で素敵ですなあ。

    ところでspiralさんCavingの方はまだ現役でやってられるんですか。山登りからとっくの昔に足を洗った私ですので尊敬しちゃいます。(^^)

    返信削除
  4. 魔術師さん
    おはようございます。

    >Kilfittは随分と斬新で技術力のあった
    >メーカーだったんですね。

    普通のレンズと引き延ばしレンズの間に、マクロレンズ
    という新しいジャンルを切り拓いたのはkilfittの
    功績かな?なんて思っています。シュタインハイルは、
    このアイデアを採用しマクロ用レンズをたくさん出しました。大御所のツァイスは、この分野を中途半端と
    考えたのか、最期まで認めることはなく、ずーっと
    そっぽを向いていました。最期までマクロ用レンズ
    という名目ではレンズを造りませんでした。でも、
    FlektogonやPancolarなどで最短撮影距離の
    短いモデルを出すようになり、多かれ少なかれ
    影響は受けていなのではないかと察しています。

    >Tele-Kilar 4/105の方も検索して見て来ましたが
    >これは何とも個性的で素敵ですなあ

    ご覧になりましたか!美しいレンズです。eBayでも
    全く出てきません。

    >ところでspiralさんCavingの方はまだ現役で

    泥臭い遊びですので、尊敬されるようなものでは
    ないのですが(笑)、一応はまだ現役です。
    でも体力ありません20代の若い頃は年に1~2回、
    2泊3日程度で群馬、山梨、長野方面を
    縦走していました。今は直ぐにゼーゼーとなり、
    グキッ、ゴキッとなります。
    山なんか到底登れません。。。シクシク

    魔術師さんが写真を始められたきっかけは、やはり山ですか??

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  5. >写真を始められたきっかけは、やはり山ですか??
    いいえ違います。若い頃、山登りを一生懸命やってた頃は、もったいないことに写真には全く興味がありませんでした。私がカメラを本格的に触りだしたのは数年前に職場のHP担当に無理矢理させられてからであります。HP用の写真を写メで撮るのに限界を感じて(笑)、初デジタル一眼を買いました。ま、それまでも銀塩EOSは家族写真を撮るために使ってはいたんですけど、ドップリと沼にはまっちゃったのはこの時からですね。(^^;)

    >グキッ、ゴキッと
    あはは、それでもCavingに行こうとされるところが尊敬に値します。私なんぞ最近は走ったこともありません。

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  6. 写真を撮るのに山はいい場所だと思います。私みたいに山に強い愛着の無い人間には、ある意味で都合のいい場所です。なぜなら写真を撮る以外にする事が無い(笑)。

    >数年前に職場のHP担当に無理矢理させられて・・・

    なんと、魔術師さんはまだ実質数年のキャリアでしたか!
    もう長く写真をやっている方かと思っていました。

    デジタル一眼が出てくれたおかげで、アマチュアのレベルが急激に向上しましたよね。魔術師さんの写真ブログも相当レベル高く数年のキャリアとは思えません。

    デジタル一眼は偉大だ。そういう私は銀塩に回帰してますが・・・。

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