ぺンタレフカメラのパイオニア
ミランダの交換レンズ群 part 4
ミランダのハイスピード・スタンダード
AUTO Miranda E 50mm F1.4 ( 2nd Generation )
AUTO Miranda EC 50mm F1.4 ( 3rd Generation )
1966年にAUTO MIRANDA 50mm F1.4(第1世代・初期型)を豪華な8枚構成で製品化したミランダカメラですが、1972年に同社が発売した一眼レフカメラのSENSOREX IIとSENSOREX EEでは新設計の後継製品(第2世代)を投入します[1,2A-2C]。第2世代での変更箇所は鏡胴がやや太くなりフィルターのネジ径が46mmから52mm変更されている点と、レンズ設計が同クラスの標準レンズとしては一般的な5群7枚構成に変更された点です(下図を参照)。8枚構成から7枚構成への設計変更は製造コストを削減し利益率を引き上げるためと思われがちですが、そうではありません。2つのレンズを使い画質を比べてみると後継製品には明らかに改良が見られます。初期型の設計構成(8枚玉)には長所・短所がそれぞれありますが、それらを差し引いても総合的なアドバンテージはあまり大きくはないと判断されたのでしょう。8枚玉は補正パラメータが多いことや各屈折面の曲率を緩めることができるなど長所もあり中心解像力は良好でしたが、ペッツバール和が大きく、高価な新種ガラスを用いても非点収差を十分に抑える事ができませんでした[4]。初期型では背後に回転ボケが顕著にみられることがありますし、鏡胴が細長い分だけ四隅の光量落ちがそれなりに目立ちました。一方で1枚少ない7枚構成でも合理的な設計を行えば、諸収差を十分に補正することができたのです[5]。8枚玉から7枚玉への変遷はミランダカメラのレンズ設計技術の成熟を意味しているのでしょう。ちなみに同時代のMinoltaやKonicaの同クラスのモデルは7枚構成から6枚構成へと変更されています。これらのレンズを使ってみればわかることですが、6枚構成の後継モデルでは明らかなフレアの増大がみられます。合理性の追求というよりはコストの削減を目的とした設計変更であったのでしょう。もちろん、この種の柔らかい描写がオールドレンズフリークには大歓迎である事は間違いありません。
Auto MIRANDA 50mm F1.4(2nd Gen.)構成図:文献[2B]からのトレーススケッチ(見取り図)です。構成はF1.4クラスの高速レンズの典型である5群7枚(ガウス発展型) |
★レンズの相場
第2世代(タイプE)のeBayでの値段は100ドルから150ドル程度(送料は別)で、第3世代のタイプECはこれよりも若干安い80ドルから100ドル程度でしょう。日本国内でのレンズの流通は海外よりも少な目なのですが、それにも関わらずレンズの値段は日本国内で買う方が確実に安いです。裏技としてカメラとセットで買うとレンズ単体で買うよりも安く入手できることがあります。カメラが不要なら売ってしまえばよいわけです。ただし、レンズ単体て購入する場合よりも博打性が高いことは覚悟しなければなりません。コンディションの悪いレンズが来てしまった場合に自分でガラス等のメンテナンスができる人ならばよいとおもいます。
第2世代の2本はeBayにて米国のレンズセラーから購入しました。両方とも状態の良い個体でした。2本ともレンズ単体で110ドル前後でした。第3世代のMIRANDA ECはブロガーの伊藤浩一さんにお借りしました。いつもありがとうございます。
Auto MIRANDA 50mm F1.4(2nd Generation): フィルター径 52mm, 最短撮影距離 0.43m, 絞り羽 6枚構成, 絞り値 F1.4-F16, 設計構成 5群7枚(ガウスタイプからの発展型), 重量(実測)315g, S/N: 28XXXXX |
Auto MIRANDA E 50mm F1.4(2nd Generation): フィルター径 52mm, 最短撮影距離 0.43m, 絞り羽 6枚構成, 絞り値 F1.4-F16, 設計構成 5群7枚(ガウスタイプからの発展型), 重量(実測)340g S/N: 139XXXX |
Auto MIRANDA EC 50mm F1.4(3rd Generation): フィルター径 49mm,最短撮影距離 0.43m, 絞り羽 6枚構成, 絞り値 F1.4-F16, 設計構成 5群7枚(ガウスタイプからの発展型), 重量(実測)275g, S/N: 256XXXX, フィルター枠の内側に振出式の内蔵フードが隠されています |
★参考文献・資料等
[1] MIRANDA研究会
[2A] MIRANDA SENSOMAT manual (英語版) :構成図引用元
[2B] MIRANDA SENSOREX II Instructions (英語版)
[2C] Miranda SENSOREX EE Instructions (英語版)
[3] Miranda dx-3 Instructions (英語版)
[4] 「レンズ設計の全て」辻定彦著 電波新聞社(第一版)P96頁 2006年
[5] ニッコール千夜一夜物語 第七十七夜: Nikkor-S 50mm F1.4
[6] カメラ毎日 別冊「レンズ白書」1969年
[7] カメラ毎日 別冊 カメラ・レンズ白書 1971年 : 寒冷色
[8] 「幻のカメラを追って」白井達男著 現代カメラ新書
[9] クラシックカメラ専科(1982年) 「ミランダカメラのすべてとその歴史」 日比孝著
[10]クラシックカメラ専科 (2004年)「ミランダの系譜」
[11]カメラスタイル13:今語る初期ミランダカメラ開発秘話:小さな町工場が踏み出した大きな一歩:ミランダを創った男たち
[12]ペトリカメラ元社員へのインタビュー(2013年) 2chペトリスレ リバースアダプター氏
★撮影テスト
第1世代(初期型)に比べ、第2世代と第3世代には画質における改良点がみられ、よりバランスを重視した画質設計になっています。非点収差が無理なく補正できるようになり、
★AUTO MIRANDA 1.4/50(第2世代) x SONY A7R2★
2nd GEN @ F1.4(開放) sony A7R2(WB:⛅) 背後のボケがグルグルと回転しないのは初期型からの改善点です |
2nd GEN @ F1.4(開放) SONY A7R2(WB:⛅) 開放でも中心部の解像感は、なかなかのものです |
★AUTO MIRANDA E 1.4/50(第2世代) x SONY A7R2★
2nd GEN @ F1.4(開放) SONY A7R2(WB:⛅)コントラスとは良好で、開放からスッキリとヌケのよい描写です |
2nd GEN @F1.4(開放) SONY A7R2(WB:⛅)初期型に比べて開放での周辺光量落ちが、だいぶ改善されています |
2nd GEN @F1.4(開放) SONY A7R2(WB:⛅) |
★AUTO MIRANDA EC 1.4/50(第3世代) x SONY A7R2★
F1.4(開放) SONY A7R2(WB: 日陰) 夏らしいぼんやりした絵を狙い、開放にて前ボケのフレアを生かしました。絵画風な仕上がりを楽しむことができます |
F1.4(開放) SONY A7R2 (WB: 日陰)薄いフレアが覆いボンヤリと写りで、雰囲気があります |
F8 SONY A7R2(WB:日陰)もちろん絞ればカッチリとフツーによく写ります |
F1.4(開放) SONY A7R2(WB:日光)開放の柔らかい雰囲気が好きです |
F8 SONY A7R2(WB:日陰) |
ピントの位置はパンダの左目です。この距離では両レンズの描写の違いが全くわかりません。 |