左はKrauss Planar-Zeiss 60mm F3.5, 中央はBiotessar 10cm F2.9, 右はDoppel-Protar 147mm F7である |
光学系の構成図:左はPlanar, 中央はBiotessar, 右はDoppel-Protarである |
数奇な運命をたどった
Zeissブランドのフラッグシップレンズ達
Zeissブランドのフラッグシップレンズ達
1886年にZeissのErnst
Abbe(エルンスト・アッベ)とOtto Schott(オットー・ショット)は後のレンズ設計の分野に革命的な進歩をもたらす新しいガラス硝材の開発に成功した。その硝材は原料にバリウムを加えることで透過光の分散(色滲み)を抑え、しかもレンズの屈折率を大幅に向上させるというもので、イエナガラス(新ガラス)と呼ばれるようになっている。イエナガラスを光学系の凸レンズに用いれば像面特性を規定するペッツバール和の増大を抑えることができ、従来のクラウンガラスとフリントガラスでは困難とされてきたアナスチグマートの実現が、いよいよ現実味を帯びてきたのである。4年後の1890年にZeissのPaul Rudolph(パウル・ルフドルフ)は最初のアナスチグマートProtar(プロター)を完成させている[注1]。イエナガラスの登場はレンズ設計の分野に大きなインパクトを与え、波及効果は直ぐに広まった。それはまるで生物界に急激な多様化をもたらしたカンブリア爆発のような出来事であった。Protarを皮切りにDagor(ダゴール;1892年), Triplet (トリプレット;1893年), Protarlinse/ Doppel-protar (プロターリンゼ;1895年), Planar (プラナー;
1897年), Dialyt (ダイアリート; 1899年)など高性能なアナスチグマートが次々と誕生し、19世紀末から20世紀初頭にかけてレンズ設計の分野は黄金期とも言える彩色豊かな素晴らしい時期を迎えたのである。そして、1902年に後の光学産業の縮図を塗り替えたと言っても過言ではないたいへん高性能なレンズが開発される。ZeissのErnst Wandersleb(エルンスト・ヴァンデルスレプ)とPaul Rudolphが世に送り出したTessar(テッサー)である。
Tessarは3群4枚という比較的少ない構成にもかかわらず諸収差を強力に補正することのできる合理的なアナスチグマートであった。これより半世紀もの間、Tessarタイプのレンズはあらゆるカメラのメインストリームレンズに採用され、コストパフォーマンスの高さで市場を席巻、数多くのレンズ構成を絶滅の淵に追いやっている。本ブログでは数回にわたりイエナガラスの時代に登場し、優れた性能を持ちながらも不遇な運命を歩んだZeissブランドの高級レンズ達を紹介してゆく。取り上げるレンズはDoppel-Protar(ドッペル・プロター; 1893年登場)、Planar (1897年登場)、Tessar (テッサー;1902年登場)、Biotessar(ビオテッサー; 1929年登場)の4本である。
注1・・・Anastigmatとは非点収差の攻略によって5大収差の補正全てを合理的に完了できたレンズである。イエナガラスを用いて非点収差を補正したレンズとしてはProtarよりも先の1888年にH. L. Hugo Schroeder, Moritz Mittenzwei, and Adolph Mietherらが設計した2群4枚のレンズがあり、見方によってはこちらが世界初のAnastigmatとも呼べる。しかし、非点収差が補正されているだけで他の残存収差は多く、このレンズは不成功に終わっている。こうした事情がありProtarを最初のAnastigmatとする見解が世間一般では優位なようである。
注1・・・Anastigmatとは非点収差の攻略によって5大収差の補正全てを合理的に完了できたレンズである。イエナガラスを用いて非点収差を補正したレンズとしてはProtarよりも先の1888年にH. L. Hugo Schroeder, Moritz Mittenzwei, and Adolph Mietherらが設計した2群4枚のレンズがあり、見方によってはこちらが世界初のAnastigmatとも呼べる。しかし、非点収差が補正されているだけで他の残存収差は多く、このレンズは不成功に終わっている。こうした事情がありProtarを最初のAnastigmatとする見解が世間一般では優位なようである。
Carl Zeiss Jena Planar 10cm F4.5(初期型) |
spiralさん、古典鏡玉ファンとしてはとても楽しみです。
返信削除お陰さまで、特集の切り口が定まりました。ありがとうございます。
削除はじめまして、アキオと申します、いつも楽しく拝見しております、この度、ゼニットマウントレンズに手を出そうかと、企んで、疑問点があるのです、m39ーm42アダプターを使い、ミール1シルバーをデジタル一眼レフペンタックスkー200dにMー42アダプターを装着し、取り付けた場合撮影出来ますか?初対面なのにすみませんが、教えて頂けないでしょうか、お願い致します
返信削除アキオ様
返信削除撮影は可能です。ただし、厳密には無限遠のフォーカスが出ません。10m程度の遠方までは問題なくフォーカスが出ますので、実用上は問題ありません。無限のフォーカスを拾いたいのでしたら支障があります。
すばやい返答助かりましたありがとうございます、お手数かけました。
返信削除ミール1を買います。リンクしてもよろしいでしょうか?
リンクどうぞ。ちなみにM42の黒ミール1でしたら、無限は出ます。シルバーの方が格好はいいでしょうが。
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