おしらせ

 
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上野由日路x伊藤弘 オールドレンズ写真学校 写真展 vol.4
11月3-5日 場所は原宿 詳しくはこちら スタッフとして参加予定です。

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TAIR-41Mのブログエントリーに写真を追加
Oo.ema.oOさんにオリンパスPENで撮影したタイ―ル41M(前記モデル)の写真を提供していただきました。

2013/11/04

Voigtländer COLOR-SKOPAR X 50mm F2.8(DKL)




銘玉の宝庫Deckelマウントのレンズ達
PART1: COLOR-SKOPAR X
フォクトレンダー・デッケル機のエントリーレンズ
「なぜならレンズがとても良いから」。1756年に創業した世界最古のカメラメーカーVoigtländer(フォクトレンダー)社がカメラの宣伝に用いたキャッチコピーには自社の高性能なカメラについてではなく、レンズの素晴らしい性能を称える文句が使われた。Color-Skopar(カラー・スコパー)は同社が戦後に生産した多くのカメラに標準搭載され、写りが良いことで世間から高い評価を得ていたテッサータイプの標準レンズである。レンズを設計したのはNoktonやUltronなどの銘玉を設計した人物として知られるA.W.Tronnier(トロニエ博士)で1949年と1954年にそれぞれF3.5とF2.8のモデルを世に送り出している(文献2)。トロニエ博士は戦前のSchneider社に在籍していた頃に同じTessar型レンズのXenarを開発した経験があり、Color-SkoparにはXenarの開発で培ったノウハウが生かされている。一般にColor-SkoparはXenarよりも更に硬階調でシャープ、高発色なレンズと評されることが多く、鋭い階調性能と高いコントラストを持ち味とするTessar型レンズの長所が最大限に引き出されていると考えてよい。技巧性に富むVoigtländer社のマニアックなカメラに相応しい尖がった性格のレンズである。
重量(実測) 138g, 最短撮影距離 1m, 絞り羽 5枚, 3群4枚テッサー型, フィルター径 40.5mm, 製造年:1959-1967年(DKLマウント),製造本数 20万本弱(DKLレンズのみカウント), EOS5D/6D系に搭載する場合もミラー干渉は起こらない。このレンズはビハインドシャッター方式のカメラに搭載するレンズであり絞りリングは標準装備されていない。マウント側についている黄色マークは、このレンズがウルトラマチックで使用する際にカメラ本体に開放F値を伝える細工がしてあることを意味している。このマークがついている製品ロットは後期型の比較的新しい個体である






Skoparブランドが初めて世に登場したのは1926年である。最初のモデルはTessar型ではなく前後群をひっくり返した珍しい構成の反転Tessar型(あるいはアンチプラネット型とも言う)で口径比はF4.5であった。この種の構成を持つレンズにはSteinheil社のCulminar 85mmF2.8がある。Tessarタイプのレンズに比べやや軟調で発色もあっさりとしており、シャープネスでは一歩及ばなかった。直ぐに設計が見直され、翌1927年にTessarタイプへと構成が変更されている。その後、1930年代後半に口径比がF3.5まで明るくなり、初代Vito(1939-1949)などの35mm判小型カメラに搭載されるようになっている。1949年にはTronnier博士の再設計によりカラー撮影にも対応したColor-Skopar F3.5に置き換えられ、モデルチェンジを間近に控えたVitoの最終ロットに搭載された。1953年にはF2.8の更に明るいモデルもProminent用として登場し、F3.5のモデルとともに後継カメラのVito Bなどに標準搭載されている。なお、Color-SkoparはVoigtländer社が最も多く製造したブランドであり、デッケルマウント用は1959年から1967年までに20万本弱もの数が生産されていた。現在でも中古市場に数多くの製品個体が流通しており相場は安値で安定している。ちなみに同社で2番目に多く製造されたデッケルレンズはSkoparexで製造本数は6万本強、3番目はSepton(ゼプトン)で製造本数は5万2千本弱である。
Color-Skopar F2.8の構成図(左が前で右がカメラ側)。Vitessa T用として文献1のP112に引用掲載されていたものをトレーススケッチした。構成は3群4枚のTessar型で、第1レンズに厚みがあるのが特徴である
デッケル機は絞りの開閉をカメラの側でコントロールする仕組みになっている。デッケルレンズは絞りリングが省略されており、マウント部の近くに絞り羽根を制御するためのブラケットが突き出ているのみである(上の写真)。このブラケットを矢印の方向にスライドさせることで絞りを開閉させることができる。デッケルレンズ用のマウントアダプターにはブラケットをスライドさせるための制御ピンがついており、アダプターに内蔵された絞りリングとブラケットが制御ピンを介して連動できるようになっている
デッケルレンズ用のマウントアダプター。絞りリング(赤矢印)を回すと制御ピン(青矢印)が連動して動き、レンズのブラケットを引っ掛けながらスライドさせることができる
デッケル-M42マウントアダプターをレンズに装着したところ。装着時はアダプター側の固定ピン(赤矢印)をレンズのマウント部にある窪みにはめロックする。解除するには手前のレバーを青矢印の方向に押せばよい
コードXの謎を追う
レンズの銘板に誇らしげに刻まれたXのアルファベット。このコードは何を意味しているのだろうか。Color-Skopar Xに興味を持つきっかけは、そうした些細なところからであった。ちなみにSkoparというレンズ名はギリシャ語で「見る、観察する」を意味するSkopeoを由来としている。末尾に「X」のつく固有名詞と言えば、トヨタ自動車の「マークX」や「MAC OS X」などがあり、これらは通産10作目の製品ということを意味している。他にも「ミスターX」や「惑星X」「Xデー」「プロジェクトX(NHKのTV番組)」などがあり、これらには未知であるという意味が込められている。おそらく方程式の変数Xあたりが由来なのであろう。しかし、COLOR-SKOPARの場合は、これらのどれにも該当しない。レンズの場合にはこの種のアルファベットがガラス面に蒸着されたコーティングを意味する場合もあり、Zeiss製レンズのT(Transparent)コーティングやMeyer製レンズ等のVVergütung)コーティングなどがその典型である。また、Kodak社のレンジファインダー機Retina IICの交換レンズ(コンバージョンレンズ)にはCのイニシャルが記されている。レンズに関して言えば直ぐに思い当たるのはこんなところであるが、「X」なんてのは今まで聞いたことがない。イニシャルだと仮定してもXで始まる単語なんてそう多くはない。しばらくこのコードの謎に考えを巡らせ知人を巻き込みながら盛り上がっていたのだが、浅草のハヤタさんが答えを持っていた。このレンズはSyncro Compur X(シンクロコンパーX)というシャッターに搭載するためのレンズなのである。Compur Xシャッターはフラッシュにシンクロできる機構を内蔵しており、シャッターが降りるとX接点を介して信号が放たれフラッシュが発光する仕組を持っていた。ただし、レンズ自体にはこの機構に応じるための細工が何一つ無いとのことで、わざわざ銘板にXを明記した意図についてはハヤタさんも首を傾げていた。
最後にここからは全くの想像だが、Spiral説を述べてみたい。レンズが造られた当時のVoigtländer社にはProminentマウント(1954年~)、Vitessa-T(旧デッケル)マウント(1956年~)、Bessamatic/Ultramatic(新デッケル)マウント(1959年~)の3種のマウント規格が存在し、混乱が避けられない状況であった。そこで、Prominent用に供給された交換レンズがSkoparon, Ultron, Nokton, Color-Skopar, Dynaron, Super-Dynaronなど末尾が"ON"でほぼ統一されていたのに乗じ、1956年に登場するBitessa-Tの交換レンズでは末尾を"T"で統一することにして混乱を避けた。Skoparet, Dynaret, Super-Dynaletなどである。ただし、Color-Skoparだけは戦前から供給されていたブランド名なのでルールから外れてしまったのである。Prominent用レンズと間違えVitessa-T用レンズを持ち出すという混乱はやはり起こった。そこで、新しいデッケルマウントの規格であるBessamatic/Ultramatic用レンズ(1959年~)では末尾を"X"で統一するルールが徹底された。Skoparex, Dynarex, Super-Dynarexなどである。ところがColor-Skoparの末尾にXを付けると、今度はSkoparexとの識別ミスが起こるため、仕方なくColor-Skopar Xとしたのである。ちなみにSepton、Skopagon、Color-LantharはBessamatic/Ultramatic用レンズから新たに導入された名称なので、この手の混乱を避けることができた。もし、次の新しいマウント規格が出ていたら、Septon Xとでもするつもりだったのであろうか。

参考資料
  • 文献1:「ぼくらのクラシックカメラ探検隊:フォクトレンダー 第2版」Office Heliar 1996年初版、2000年3月改定版発行
  • 文献2:Color-Skoparの米国特許:US-Patent 2.573.511
レンジファインダー機に対応するため設けられた距離計連動用のカム。手元のレンズの中ではColor-Skopar XとTele-artonにこの機構を確認することができる。このカムは初期のデッケルレンズに多く見られるが、やがてデッケルマウントのレンジファインダー機がなくなり不要になたっため消滅している
入手の経緯
本品は2012年夏にeBay(UK版)を介してイギリスのコレクターから70ドル+配送料15ドルの合計85ドルで落札し入手した。このセラーはコレクションの整理と言いながら他にもいろいろなレンズを出品していた。コレクターであれば検査の精度については下手な業者よりもマトモなケースが多い。レンズはEX+++コンディションとのことである。1週間後に届いたレンズは写りに影響の無いレベルのホコリの混入があったが、ガラス自体は傷の無い綺麗な状態を維持しており問題なしの品であった。eBayでの相場は60~80ドル程度と求めやすい価格である。中古市場に多く出回っているレンズなので、じっくり待って状態の良い品を購入するとよいであろう。

撮影テスト
四隅まで破綻無くクッキリと鮮やかに写す。Color-Skoparの描き出す画にはTessarタイプのレンズならではの特徴がよくあらわれている。軟らかいトーンによるドラマチックな演出効果を期待することはできないが、代わりに鋭くシャープな階調描写で被写体を力強く鮮やかに表現できるのが、このレンズの本領である。収差はよく補正されており開放でもハロやコマに由来するフレアは殆んどみられないことから、スッキリとヌケのよい写りで、ややコッテリ感のある高彩度な発色である。コントラストは高く、特にハイライト域の階調が豊富で、白がクリアに写るところがとても印象的に感じる。一方、シャドーの階調は硬めで、ネガフィルムを用いた撮影では暗部にむかってグラデーションがストンと急激に落ちる傾向が顕著にみられた。こういうのをカリカリの描写と呼ぶらしい。ただし、デジタルカメラで使う場合にはトーンが幾らか持ち直し丁寧に表現されているようで、フィルム撮影の時よりも暗部が持ち上がり、なだらかな階調変化をとりもどしている。解像力自体は平凡で、鋭い階調描写による見た目の解像感は高いもののディテールの再現性は高くない。この様子はピクセル等倍まで拡大表示するとベタッとした絵になっていることからもよくわかる。優れた設計者の手で生み出されているとはいえTessarタイプはどう転んでもTessarタイプ。鳶が鷹を生むようなことはない。ただし、ピント部の画質の均一性は高く、四隅で解像力不足を感じることは無かった。ボケは概ね安定しているが距離によっては像が四隅で少し流れる傾向がみられる。口径比F2.8のテッサー型レンズとしてはこの程度の像の流れは普通のレベルであろう。ボケ味は若干硬めで僅かに2線ボケが出ることもある。TessarタイプのレンズにとってF2.8は安定した描写力を維持できる設計限界ギリギリのラインであるが、Color-Skoparの描写力は開放から概ね安定しており、どの撮影条件においても大きく転ぶことがない。値段が安い割に優れた描写力を持つレンズではないだろうか。

F4, 銀塩(ネガFjicolor S400):  クッキリと鮮やかで高彩度な発色である。階調描写は硬く鋭い。ヌケのよいクリアな描写である
F2.8 銀塩(ネガFujicolor S400): 開放でもハイライト部からハロやコマが出ずコントラストは高い。このレンズは濁りのない発色のためか白がとても綺麗に写る。やはりダブルガウス型レンズのようなフワフワとした軟らかいトーンを期待することはできないが、被写体を力強く鮮やかに表現することができるのは、この種の硬く鋭い描写を持ち味とするレンズならではの性質である
F2.8(開放), EOS 6D(AWB): 今度はデジタル撮影。ピーカンの晴天下だが、シャドー部が潰れず階調には適度な軟らかさが残っている。距離によっては四隅でアウトフォーカス部の像が僅かに流れるがグルグルボケには至らない。ピント部は四隅まで高画質である。ボケはやや硬めで、奥の手すりには2線ボケの傾向が出ている。F2.8の口径比を持つテッサータイプのレンズとしては、かなり優秀な描写力だ

3 件のコメント:

  1. たまらないぐらいですね~これはいいぞ----------------参考になりました・・ありがとうございました・・これですね・・

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  2. コメントありがとうございます。

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  3. うーん、末尾の「X」にこんな由来があったとは・・・。知りませんでした。

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