こちらに改訂版があります
(2017年1月改定)
Flektogon 25mm/F4 (M42-Mount): 最短撮影距離:0.18m フィルター径: 77mm 重量:358g, 設計者はWolf Dannberg
Flektogon 20mm/F4(M42-mount): 短撮影距離: 0.16m フィルター径: 77mm 重量: 320g
撮る楽しさを盛り上げてくれる
圧倒的な存在感が魅力
フレクトゴンは旧東ドイツの名門カール・ツァイス・イエナ社によって製造された広角レンズのブランド名である。20㍉/F4, 25㍉/F4, 35㍉/F2.8の3種のラインナップが存在し、フレクトゴン広角3兄弟の愛称で親しまれている。今回テストする25㍉と20㍉のフレクトゴンはそれぞれ1959年と1961年に登場した。大きな前玉と太く短い鏡胴、お洒落なゼブラ柄のリングが外観の特徴である。両者は大きさやデザインがよく似ているため、一見して区別がつかないが、20㍉版のほうがピントリングの縦幅がやや長く前玉の鏡胴がやや短い。25㍉版は1967年に製造を終了している。一方、20㍉版は35㍉版とともに、ガラス面にマルチコーティングを施した黒い鏡胴としてモデルチェンジし、1976年から1981年まで製造が継続される。フルサイズセンサーを搭載したEOS5Dでも後玉がミラーに干渉することなく使用できるようだ。
写真左:フレクトゴンの舌 右:25mm/F4の後玉
フレクトゴンはマクロレンズなみの近接撮影能力を持つのが特徴で、草花や虫をアップで撮影すると肉眼では見ることのできない凄い世界が撮れる。またパンフォーカス撮影にも向いており、近接から遠景に渡る構図において極めて深い被写界深度が得られる。鏡胴の迫力と存在感が撮影者のモチベーションを高揚させるオールドレンズ界の王者である。
★入手の経緯
フレクトゴン20㍉/F4は現在もたくさん流通しており、中古店やオークションでの入手は容易だ。今回テストするレンズは2008年夏にeBayにてウクライナの中古カメラ業者から落札購入した。それまで270㌦程度の上限額を用意し何度か落札しようと試みたが、ことごとく失敗した。しかし、この時だけはどういうわけか入札数が少なく、価格が高騰しなかったのだ。新品同様(MINT状態)との触れ込みの品をたった202㌦+送料で手に入れることができた。届いた商品は文句のつけようがない極上品であり、美品の場合の国内相場は4万円程度なので本当にラッキーな買い物であった。デザインに迫力があるため重くてデカそうな印象を抱いていたが、実際に手にしてみるとそれほどでもなく、「あ~こんなもんか」という実感であった。重量320g強というのは、現代の20mm単焦点レンズが250-300gであることを考えると突出して重いというわけではないし、サイズも写真などで見ていたよりはだいぶ小さく感じた。発送元がポーランドになっていたが、たぶん業者が現地で商品を買い付け発送しているのだろう。
一方、フレクトゴン25mm/F4は2009年2月にドイツ版eBayにてスナイプ入札で落札した。ドイツ国内向けの商品であったため、入札者数は少なかった。入札の締切1分前に130ユーロの値を付けていたところに、「えいっ!」と250ユーロを投入したところ160ユーロ(約2万円)であっさり落札できてしまった。25㍉版はもともと製造数が少ない珍品のため20㍉版や35㍉版よりも高額で取引されている。eBayでの相場は350㌦以上、国内相場だと4万5千円はする高価なレンズである。じっくり腰をすえ何度もトライした甲斐があったと思われた。ところが届いた商品は後玉のコーティングにポツポツとした焼けつきがあった。古い品なので仕方ないがオークションの記述にはなかった。一瞬、返品も考えたが実写には影響が無い程度のため我慢することにした。
★試写テスト
フレクトゴンの前評判をまとめると・・・
●優れた近接撮影能力を持ち、最短撮影距離は20㍉版で15cm, 25mm版で20cmとマクロレンズ並みである。花や虫を撮るのが楽しそうだ。
●被写界深度がたいへん深く、パンフォーカス撮影に向いている。
●画像中央だけでなく周辺部まできっちりシャープに写り、独特のヌケの良さと透明感のある発色が得られる。
●周辺画像の歪みや光量の低下がたいへん少ない。
●モノコート仕様のため逆光に弱く、コントラストが低下する。
●優れた近接撮影能力を持ち、最短撮影距離は20㍉版で15cm, 25mm版で20cmとマクロレンズ並みである。花や虫を撮るのが楽しそうだ。
●被写界深度がたいへん深く、パンフォーカス撮影に向いている。
●画像中央だけでなく周辺部まできっちりシャープに写り、独特のヌケの良さと透明感のある発色が得られる。
●周辺画像の歪みや光量の低下がたいへん少ない。
●モノコート仕様のため逆光に弱く、コントラストが低下する。
かなり優秀なレンズのようである。
flektogon 20mm/F4: 最小絞りf22による撮影結果。手前の花と遠景の両方が被写界深度内に収まっている。本レンズならではの構図だ
左は25mm、右は20mm。奥の電灯や紫色の発砲スチロールの色具合など、両レンズの発色はたいへん良く似ている。f8
flektogon 25mm:梅干の赤をきちんと再現できた。f8
flektogon 20mm: やはり25mm版と発色が似ている f8
flektogon 25mm/F4: 紫は若干淡いが、水色、ピンク、緑色はほぼ見た目どおりの発色である。ボケも綺麗。周辺光量の低下も無い。さすがツアィスだ。 f5.6flektogon 20mm: f5.6でボケを強調した
flektogon 20mm: F16で今度はパンフォーカス気味にした
広角レンズは設計上あまりボケてくれないので、ある意味において表現力の乏しいレンズと評されることがある。しかし、フレクトゴンの多才ぶりを知ると、そんなことはどうでもよくなってしまう。フレクトゴンは広い景色を守備範囲とし、小さな虫に大接近し、パンフォーカス撮影をこなす。さまざまな撮影シーンで高い能力を発揮する楽しいレンズなのだ!
★撮影環境: Calr Zeiss Flektogon 25mm & 20mm + EOS Kiss x3 + HAKUBA wide metal Hood
フレクトゴンを持ってスナップ撮影をしていたら、あるとき道行く人に訪ねられた。
What's this? Is this a camera?
No, this is the FLEKTOGON.