おしらせ


おしらせ

2018年6月13日(水)~6月24日(日)にナダールで行われる「オールドレンズ 女子・男子展」に
オールドレンズ女子部からも4名が出展します。

2018年6月17日
オールドレンズ写真学校
初回限定版ワークショップ@新宿御苑
ただいまキャンセル待ちのみ受け付けているそうです。

2018年6月30日
オールドレンズ写真学校@多摩動物公園
ただいまキャンセル待ちのみ受け付けているそうです。

2009/11/16

LZOS INDUSTAR 61L/Z-MC 50mm/F2.8 (M42)
インダスター61L/Z-MC


きらきらと輝く六芒星(ろくぼうせい)
カメラ女子の間で人気沸騰中の星ボケレンズ
LZOS INDUSTAR 61L/Z-MC 50mm/F2.8 (M42 mount)
いまカメラ女子の間でこのレンズがブームとなっており、ブログのアクセス解析にも、その過熱ぶりがハッキリとあらわれている。ロシア(旧ソビエト連邦)のLZOS(リトカリノ光学ガラス工場)が1960年代から2005年頃まで製造したIndustar (インダスター) 61 L/Zである。このレンズはアウトフォーカス部の点光源が星型の形状にボケる、いわゆる「星ボケレンズ」として知られている[文献1]。
去る10月のある日、私はJR山手線のシートに腰かけ、東京駅から上野駅を目指していた。気が付くと目の前に若い2人のカメラ女子が立ち、何やらインダスターの話題になっていた。しばらく耳を傾けていると・・・

「A: ねぇ、メール見た?例の星ボケが出るヤツ(レンズ)なんだけど。」
「B: みたよ。インダスターでしょ?でも、あれってフィルターでも同じことできるんじゃないの?」
「A: うんそうなんだけど、やっぱフィルターとは効果が全然違うんだよねぇ~」
「B: そうなんだ。どこかで試せるといいけど」
「A:ネットにはいっぱい写真出てるから参考になるとおもうよ。スパイラルっていうブログみた?」
「B: あぁ。みたみた。マニアのブログでしょ。なんか難しい事がいっぱい書いてあったわ(←spiral補足:偏差値上げてね)」
「A: ヤフオクに出てるけど、1万円くらいからあるみたい。でもやっぱり現物を見ないと、状態はわからないわ。取引も怖いし。店で試せるといいんだけどね。10月8日の代官山は行ける?」
「B: 即売会だっけ?(←spiral補足:恐らく北村写真機店の体験即売会のことでしょう)。ちょっと予定が入ってるんだよね。友達と映画。何時からやってるの?」

おおよそ、こんな内容のやり取りであった。レンズが少し気になりヤフオクで相場を検索してみると、中古美品が18000~25000万円程度の額で取引されている。ちなみに6年前~1年前の相場は10000~14000円程度で安定していたので、レンズの相場が上昇したのはごく最近になってからのことだ。あるショップの店員によると、レンズを購入するのは主にカメラ女子なのだとか。今になってカメラ女子達がザワつきはじめたのは、紛れもなく写真家・山本まりこさんが9月に出した著書「オールドレンズ撮り方ブック」が発端であろう[文献2]。本ブログもフルサイズ機の普及に合わせ、過去のブログエントリーを刷新している最中なので、これはいい機会である。黒船の放つ波にのり、このレンズを再び取り上げてみることにした。

インダスター61L/Zのルーツは、ロシアの光学研究を統括するGOI(Gosudarstvennyy Opticheskiy InstituteまたはVavilov State Optical Instituteでもある)という研究機関が1958年から1960年まで少量のみ生産したプロトタイプレンズのIndustar-61 5.2cm f2.8(Zorki-M39 mount)である[文献3-5]。レンズを設計したのはG.スリュサレフ(G.G.Sliusarev)とW.ソコロフ(W.Sokolov)という名のエンジニアで、1958年に正のレンズエレメントに希土類のランタンを含む新種光学ガラスSTK-6を用いることで、それまでのインダスターシリーズに比べ、光学性能を飛躍的に高めたとされている。Industar-61は設計の古いFED-2用Industar-26M 50mm F2.8(1955年登場, Zenit-M39マウント)の後継製品として1962年に登場している[文献5]。この頃のIndustar-61は主にFED(ハリコフ機械工場)とMMZ(ミンスク機械工場)が製造し、焦点距離52mmや53mmなどのモデルが供給されていたが、1964年頃からはLZOS(リトカリノ光学ガラス工場)がレンズの生産に参入し、焦点距離を50mmとするIndustar-61Lを生産するようになった。
Industar 61L/Zの光学系(文献4からのトレーススケッチ): 左が前玉で右がカメラ側である。構成は3群4枚のテッサー型で、肉厚ガラスが用いられているのが特徴である。ランタン系の新種ガラスSTK-6が導入され正エレメントの屈折力が旧来からのガラスの倍にまで向上、ペッツバール和と色収差の同時補正が可能になり、F2.8の口径比が無理なく実現されている
Industarというレンズの名は1929年にロシアで始まった工業化5か年計画のIndustrizationから来ており、これにテッサータイプのレンズで共通して用いられる接尾語の"-AR"をつけてIndustarとなったそうである。61はロシア製レンズの中で用いられる通し番号で、テッサータイプの61番目の製品であることを意味している。
1960年代後半にはレンズをZenit-M39/M42マウントの一眼レフカメラに適合させたLZOS製Industar 61L/Z 50mm F2.8が登場し、この頃から絞り羽を閉じたときの形状が六芒星になった。レンズ名の末尾に付いている頭文字Lはガラスに用いられているランタンを差し、ZはZenitカメラ用を意味しているとのこと[文献6]。現在の市場に出回っている製品は大半がM42マウントであるが、比較的少量ながらZenit-M39マウントの個体も流通している。
Industar 61L/Zはガラス面に用いられているコーティングの種類に応じ、3種類のモデルに大別することができる。1つめは初期の1960年代から1970年代に製造されたモデルで、ガラス面には単層コーティングが施されていた。一方で1980年代初頭からはマゼンダ色のマルチコーティングが施されるようになっている。ただし、1980年代後期に製造された一部の個体からはアンバー系のコーティングが施された変則的なモデルもみつかる。Industar 61L/Zがロシアでいつまで生産されていたのか正確なところは定かではないが、市場に出回る製品個体のシリアル番号からは、少なくとも2005年まで生産されていたことが明らかになっている。
 
参考文献
  • 文献1 「OLD LENS PARADISE」 澤村徹著 和田高広監修 翔泳社(2008)
  • 文献2 「山本まりこのオールドレンズ撮り方ブック」 山本まりこ著 玄光社(2016)
  • 文献3 GOI lens catalogue 1963
  • 文献4 A. F. Yakovlev Catalog The objectives: photographic, movie, projection, reproduction, for the magnifying apparatuses, Vol. 1(1970) ロシア製レンズが全て網羅されているカタログ資料
  • 文献5 SovietCams.com
  • 文献6 レンズに付属した取り扱い説明書
入手の経緯
ロシアのカメラ屋から新品(オールドストック)を99ドル(送料込み)で購入した。レンズには純正のプラスティックケースとシリアル番号付きのレシート、ロシア語で書かれたマニュアルが付属していた。このセラーは2004年製の新品をかなりの数保有しているようであった。インダスター61L/Zは絞り羽に油シミの出ている個体が大半であるが、今回入手した2004年製の個体は比較的新しいためか油染みが全くみられなかった。レンズはヤフオクの転売屋が中古品を数多く取り扱っており、流通量も豊富である。ヤフオクでの相場は中古美品が18000~20000円程度、海外では中古美品が6000円~8000円、新品が8000円~10000円程度で取引されている。国内市場で新品はなかなか出ないようだが、出れば20000円~25000円あたりの値が付くのであろう。人気が過熱気味の日本だけの相場なので、現在は送料を加味しても海外から入手したほうがお得であることは間違いない。
最短撮影距離:30cm, 絞り機構 プリセット式,  焦点距離 50mm, 絞り値 F2.8-F16, 撮影倍率1:約3.5, フィルター径 49mm, 重量(実測):212g, 設計構成 3群4枚テッサー型
撮影テスト
50mmの焦点距離を考えると星ボケを効果的に出せるのは被写体に近づいて接写を行う時のみに限定される。撮影方法はバブルボケの時と全く同じで、まずはじめにピカピカ光る光源をみつけ、フォーカスリングを回してボケ具合を決定する。ちなみに星型にボケるのは絞りを少し絞った時である。続いてピント部を飾るメインの被写体を見つけピントを合わせる。このとき被写体へのピント合わせはフォーカスリングを用いるのでなく、手でカメラを前後させて行うのがポイントである。こうすれば一度決定した背後のボケ具合に大きな変化はない。
昼間の撮影は夜間のイルミネーション撮影よりもテクニックが求められる。星ボケを効果的に発生させるには太陽光の反射を利用するわけだが、肝心なのは太陽に対して半逆光の条件で撮影することである。カメラの露出補正は+1EV程度オーバーに設定しておいたほうが、星ボケがクッキリと写るのでおススメである。あと、今回は人に見せられるような作例が見当たらなかったものの、前ボケを利用するのもよい。
レンズはシャープな描写で知られるテッサータイプである。開放でもスッキリとぬけたクリアな像が得られ、解像力こそ平凡だが、鮮やかな発色とメリハリのある高いコントラストを特徴としている。ボケは四隅まで安定しており、グルグルボケや放射ボケは出ない。同じF2.8のテッサー型レンズでも本家ツァイスのテッサーやフォクトレンダーのカラースコパーなどは背後に僅かにグルグルボケがみられるが、このレンズに関しては四隅までボケの乱れが一切みられない。ピント部の画質は四隅まで安定しており、像面も平らで平面性は高いが、そのぶん立体感には乏しい。ゴーストやハレーションは逆光時でも全くと言ってよいほどでない。F2.8のテッサータイプとしては、かなり優秀なレンズである。
F5.6, sony A7(AWB)
F5.6, sony A7(AWB): 

F5.6, sony A7(WB:電球)

F5.6, sony A7(WB:白色電球)

8 件のコメント:

  1. こんにちは。
    こちらの記事を楽しみに読ませていただいております。
    これほど詳しく情報をご紹介いただいていてとても参考になります。
    さて、こちらのINDUSTAR 61L/Z-MC 50mm/F2.8 ですが、私も「ダビデの星」が撮影して
    みたくなりebayを探しておりましたところ、2012製と思われる個体でNEWとされているものが
    証明書付で出品されているのを見つけました。
    http://tinyurl.com/lrjkxvw
    他の方の記事などを見ていますと、ロシアレンズについてはソビエト崩壊前の製品の方が
    品質が良いと書いていらっしゃる方もおられるようですが、管理人様ではそのあたり
    製造時期による品質の違いはどのようにお感じでしょうか?
    参考にさせていただければ幸いです。

    製造年月は1970年代から2012年

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  2. このレンズに関しては新旧で品質の差を感じたことはありません。絞り羽根に油がでやすい持病がありますが、最近つくられた個体ですと、そうした問題は未だでていないと思います。2012年製は珍しいですね。値段にもよりますが、私ならばこれを入手したいです。

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  3. 管理人spiral様

    ご丁寧に回答いただきありがとうございました。
    ロシアの出品者で高評価(100%Positive)でしたので今回この商品を購入することにしました。
    デッドストックで8台ほどまとめて出品されたようです。
    2012年製は証明書付ですので間違いないと思います。
    値段はUS$99+送料US$20 でした。
    http://tinyurl.com/jwgg7sw

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  4. 初めまして。

    最近、古いキャノンEOS10Dを入手しまして写真を始めました。

    こちらのHPとても参考になりありがたいです。

    ロシアのレンズが面白そうなので
    M42アダプターを使い試そうと
    初めにHELIOS-44-2 2/58 を買って試してみました。

    こちらは無限が出て普通に使えます。


    次に星型ボケの撮れるINDUSTAR 61L/Z-MC 50mm/F2.8をeBayで購入しました。

    1981年製造の未使用品です。

    このレンズをEOS10Dで試してみたところ
    近くの30cm以内位のところしかピントが合いません。

    作例を拝見いたしますと
    EOS Kiss x3をお使いで問題なく使用できているようですね。

    両カメラでフランジバックの距離は同じかと思いますが
    アダプターの精度の問題でしょうか。

    購入時に付属していたものと持っていたもの
    2商品で試しました。

    無限が出ないとしても数十メートルくらいは
    ピントは合いそうですが・・・・

    レンズの個体の問題もあるのでしょうか。

    星ボケの写真を撮るのが楽しみでしたので
    少し困っています。

    お忙しい中申し訳ございませんが
    よろしくお願いいたします。



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    返信
    1. こんにちは。不良品でしょうね。
      やれることはやってみましょう。

      後玉側はゆるんでいませんか?
      ねじの切りかけのある後玉枠を回して締めてみてください。

      30cmとはズレすぎですね。たぶん中のレンズエレメントの
      一つが前後逆になっているレベルでしょう。

      新品とはいえ、切りかけに傷があれば、
      一度中を開けた跡です。メンテナンス時に誤ってレンズのどれかを逆に
      据え付けたのかもしれません。おそらく中玉の凹レンズか後玉のどちらかでしょう。

      返品するか、自己責任でご自身で開けて修正するということに
      なるのでしょうね。

      eBayで買った場合、レンズは安いので返送料を払うほどの値段では
      ないはずです。ヤフオク等で知識・経験のある方に譲ってしまい、
      買いなおすのも一つの手でしょう。

      こういうトラブルは、ロシアレンズといえども
      ごく稀です。運が悪かったのだと思います。改善を祈ります。

      削除
  5. 早速の回答ありがとうございます。


    後ろ玉の切掛けですが
    本に少し傷がついているようにも見えますが
    良くわかりません。

    分解されていてレンズの向きが
    違っている可能性が高そうなのですね。


    レンズを最大カメラ側へ動かした場合
    ヘリオスはマウント面からセンサー側へ
    約5mm位入り込むようですが
    インダスターはマウント面から
    若干ですがレンズ側で止まるようです。

    このレンズはこのような設定になっていますでしょうか。

    よろしくお願い致します。

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    返信
    1. レンズが手元にないのでわかりませんが、ヘリコイドの合体地点の問題にも
      目を向けているということですよね。正しい判断です。
      お力になれず、すみません。

      削除
  6. 大変申し訳ございません。
    初心者の私の勘違いでした。


    自分のレンズとヤフオクで販売しているレンズの
    写真を見比べてマウント側の形が違うと気がつきました。


    付属でマクロのアダプターセットがついていたのですが
    そのひとつで5mm位のものがセットされたままになっていました。

    それを外して確認しましたところ大丈夫のようです。


    これから花火大会もありますので
    このレンズで撮影するのが楽しみです。


    お忙しい中、お騒がせ致しまして
    大変申し訳ございませんでした。

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