おしらせ

2024/12/25

ZUNOW OPT. Tele ZUNOW Cine 38mm F1.9






試写記録:dマウントレンズの活路を開くリミッター外しとマウント変換

ZUNOW Opt., Tele ZUNOW Cine 38mm F1.9

都内某所にあるオールドレンズ店の店長にこんなレンズがあるのだけれどデジタルカメラで使えるように改造できないかと相談されたのが、今回ご紹介するズノー光学(ZUNOW OPT)の8mm映画用レンズTele ZUNOW Cine 38mm F1.9です。ズノー光学と言えばかつて存在した日本の光学メーカーで、1930年に設立された帝国光学研究所を前身としています。1954年に帝国光学工業、1956年にズノー光学工業に社名変更し、1961年に倒産しヤシカに買収され消滅しました。同社のレンズはコレクターズアイテムとなっており、ライカ判レンズには現在100万円もの値がつきます。今回ご紹介するレンズはYashuca-8という8mmシネマ用カメラの交換レンズとして1960年頃のズノー光学倒産期に市場供給されていたモデルです。使用できるカメラが限られていることから、現在は中古市場でかなり安い値段で取引されています。同じレンズがヤシノンブランドでも流通しており、ズノー光学がヤシカに吸収された後も、ブランド名を変更し市場供給が続いていた事がわかります。レンズの構成図は見つかりませんが、前群2枚・後群2枚の4群4枚構成です。この製品を手にしたのも何かの縁ですし、dマウントのままでは活躍の場も無いでしょう。活路を拓くにはリミッターを外しイメージサークルを拡大させるとともに、ライカマウントなど汎用性の高いマウント規格に変換するのが有効です。改造方法と試写記録を公開しておくことにしますので、どなたかのお役にたてれば幸いです。

ZUNOW, Tele Zunow Cine 38mm F1.9: 重量(実測)135g, フィルター 径30mm, 絞り F1.9-F22, 絞り羽 10毎構成, 最短撮影距離 3 feet(約0.9m),  8mmシネマムービー用(dマウント), 設計構成 4群4枚, 製造 1960年代初頭 
  

改造レシピ

私がおすすめするマウント改造方法は下の写真のように、レンズのマウント部分とヘリコイド部分を取り外し、光学ユニットの鏡胴にM33-M42変換アダプターリングを取り付け、そのままM42-M39ヘリコイド(10-15.5mm)に搭載、ライカスクリュー(L39)マウントレンズとして用いることです。マウント部分を取り外すには側面のイモネジを外せばよいだけです。マウント部を外すと、こんどはヘリコイドを固定している真鍮製のリングが見えますので、それも外します。ライカL39マウントに変換後は各社のミラーレス機で使用できます。イメージサークルに制限をかけていたマウント部分が取っ払われ(リミッター外し)、定格よりも広いイメージフォーマットをカバーできるようになりました。改造後はAPS-C機でもケラレません。

改造に要した部品は写真で提示した2点のみです。鏡胴に取り付けるM33-M42アダプターリングは内側のネジ山を棒ヤスリで削り平らにしておき。そのあとエポキシ接着剤で固定します。固定時は光軸ズレが生じないよう工夫してください
 

撮影テスト

今回はAPS-Cフォーマットの富士フィルムX-PRO1で撮影しました。はじめにお約束ですが、四隅の像は本来は写らない部分ですので、画像の乱れが顕著に出ます。中央は開放からシャープでコントラストも良好ですが、像面湾曲のためピントの合う部分が四隅にゆくほど被写体前方側に外れてゆきます。近接撮影やポートレート撮影ではあまり問題にはなりませんが遠景を撮ると四隅のピンボケが目立つようになります。また、遠方撮影時にはコマ収差によるフレアも出始めコントラストが低下します。ボケはまるで嵐のようで、ピント面の背後には強いグルグルボケ、前方には穏やかな放射ボケが出ます。光量落ちは全く問題ありません。イメージサークルにはまだ余裕があります。ただし、フルサイズセンサーを完全にカバーすることはできず、四隅でしっかりとケラれました。

F1.9(開放) X-PRO1(WB 曇天, FS S)
F1.9(開放) X-PRO1(WB 曇天, FS S)


F1.9(開放) X-PRO1(WB 曇天, FS S) 遠方撮影時にはコマ収差が出てくるみたいです。点光源のボケが尾を引き、開放では少しフレアっぽくなります





2024/12/20

KOWA PROMINAR 70mm F11 (KOWA Kid)

興和光器の写真用レンズ part 5

トイカメラ用に設計されたシングルエレメントのプロミナー

Kowa Opt. Works , PROMINAR 70mm F11 (Kowa KID)
1960年に興和光器製作所はベスト判と呼ばれる127フィルムを用いて撮影のできる初心者向けカメラのKOWA KIDを発売します。カメラの機能とデザインは如何にもトイカメラと言える至ってシンプルなもので、シャッターはB(バルブ開放)とS(1/50s単速)、露出計の受講窓はダミーの飾り、絞りはお天気マークの3段階です。レンズにはメニスカスタイプで1群1枚(単玉)のプロミナー70mm F11が固定装着されており、ピントリングが無く、深い被写界深度でパンフォーカス撮影するのが特調でした。トイカメラ用とは言えプロミナーはプロミナー。どんなふうに写るのか気になって仕方ありません。レンズはネジ3本でカメラに固定されていますので簡単に外れます。レンズをヘリコイドに取り付け、富士フィルムの中判デジタルカメラGFXにマウントして試写してみることにしました。
ネットオークションで手にれたKOWA KID


 
 
入手の経緯
今回使用したレンズは2024年9月にヤフーオークションにて1500円+送料別で購入したKOWA KIDから取り出した個体です。カメラのコンディションはジャンクとの説明でしたが、シャッターは作動し撮影可能で、レンズも十分に綺麗な状態でした。レンズはネジ3本でカメラに据え付けられており、簡単に取り外せますし、元の状態に戻すことも容易です。取り外した後はステップダウンリングを取り付けてM42-M39ヘリコイド(12-17mm)に乗せ、ライカスクリューマウントに変換しました。

Prominar 70mm F11(Kowa KID) : 絞り 3段階, フィルター径 なし, 定格イメージフォーマットはベスト判127フィルム(4x4またた4x6.5フォーマット), レンズ構成は1群1枚のメニスカス単レンズ
撮影テスト
イメージフォーマットはベスト判127フィルムですので、中判デジタルカメラのFujifilm GFXシリーズで用いるのが相性の良い組み合わせです。像面湾曲の大きな性質に対応するため、KOWA KIDにはフィルムを湾曲させる機構がありましたが、デジタルカメラで使用する際にはこの点への配慮がないため、無限遠を撮影すると四隅でのピンボケを起こします。ただし、通常の中距離撮影では像面湾曲はそれほど気になりませんでした。開放での描写は柔らかくコントラストも低めの優しい写りですが、開放F値がF11と暗いためでしょうか、単玉にしてはスッキリとヌケの良い写りで、明らかにソフトフォーカスレンズの部類ではありません。色収差を補正していなめフリンジがそれなりに出ています。被写界深度が深くピントがどこに合っているのかわかりずらいものの、そのあたりをあまり気にしないで撮影に専念できる点が、初心者向けカメラに適していると考えられたのでしょう・・・、といいますか、そもそもカメラにはピントリングが無いのでしたね。

F11(開放)GFX100S(WB:日光, F.S CC) 初公開!私の自転車です

F11(開放) GFX100S(WB:日光, F.S CC)

1段絞り GFX100S(WB:日光, F.S CC)

F11(開放) GFX100S(WB:日光、F.S CC)






F11(開放) GFX100S(WB:日光, F.S  CC)