おしらせ

2024/12/20

KOWA PROMINAR 70mm F11 (KOWA Kid)

興和光器の写真用レンズ part 5

トイカメラ用に設計されたシングルエレメントのプロミナー

Kowa Opt. Works , PROMINAR 70mm F11 (Kowa KID)
1960年に興和光器製作所はベスト判と呼ばれる127フィルムを用いて撮影のできる初心者向けカメラのKOWA KIDを発売します。カメラの機能とデザインは如何にもトイカメラと言える至ってシンプルなもので、シャッターはB(バルブ開放)とS(1/50s単速)、露出計の受講窓はダミーの飾り、絞りはお天気マークの3段階です。レンズにはメニスカスタイプで1群1枚(単玉)のプロミナー70mm F11が固定装着されており、ピントリングが無く、深い被写界深度でパンフォーカス撮影するのが特調でした。トイカメラ用とは言えプロミナーはプロミナー。どんなふうに写るのか気になって仕方ありません。レンズはネジ3本でカメラに固定されていますので簡単に外れます。レンズをヘリコイドに取り付け、富士フィルムの中判デジタルカメラGFXにマウントして試写してみることにしました。
ネットオークションで手にれたKOWA KID


 
 
入手の経緯
今回使用したレンズは2024年9月にヤフーオークションにて1500円+送料別で購入したKOWA KIDから取り出した個体です。カメラのコンディションはジャンクとの説明でしたが、シャッターは作動し撮影可能で、レンズも十分に綺麗な状態でした。レンズはネジ3本でカメラに据え付けられており、簡単に取り外せますし、元の状態に戻すことも容易です。取り外した後はステップダウンリングを取り付けてM42-M39ヘリコイド(12-17mm)に乗せ、ライカスクリューマウントに変換しました。

Prominar 70mm F11(Kowa KID) : 絞り 3段階, フィルター径 なし, 定格イメージフォーマットはベスト判127フィルム(4x4またた4x6.5フォーマット), レンズ構成は1群1枚のメニスカス単レンズ
撮影テスト
イメージフォーマットはベスト判127フィルムですので、中判デジタルカメラのFujifilm GFXシリーズで用いるのが相性の良い組み合わせです。像面湾曲の大きな性質に対応するため、KOWA KIDにはフィルムを湾曲させる機構がありましたが、デジタルカメラで使用する際にはこの点への配慮がないため、無限遠を撮影すると四隅でのピンボケを起こします。ただし、通常の中距離撮影では像面湾曲はそれほど気になりませんでした。開放での描写は柔らかくコントラストも低めの優しい写りですが、開放F値がF11と暗いためでしょうか、単玉にしてはスッキリとヌケの良い写りで、明らかにソフトフォーカスレンズの部類ではありません。色収差を補正していなめフリンジがそれなりに出ています。被写界深度が深くピントがどこに合っているのかわかりずらいものの、そのあたりをあまり気にしないで撮影に専念できる点が、初心者向けカメラに適していると考えられたのでしょう・・・、といいますか、そもそもカメラにはピントリングが無いのでしたね。

F11(開放)GFX100S(WB:日光, F.S CC) 初公開!私の自転車です

F11(開放) GFX100S(WB:日光, F.S CC)

1段絞り GFX100S(WB:日光, F.S CC)

F11(開放) GFX100S(WB:日光、F.S CC)






F11(開放) GFX100S(WB:日光, F.S  CC)















2024/12/01

KOWA Co. Ltd., KOWA-R 135mm F4(KOWA-SER/SETR mount)

興和光器の写真用レンズ part 4
太い、重い、でかい、コーワの望遠ゾナー
Kowa Co. Ltd., KOWA-R 135mm F4 (SER/SETR mount)
興和特集PART 4では同社が一眼レフカメラのKOWAFLEX SER (1965年発売)とSETR(1968年発売)、SETR2(1970年発売)に搭載できる交換レンズとして市場供給した望遠レンズのKOWA-R 135mm F4を取り上げます。一瞬、F2.8かと見間違えるサイズ・重量感ですが、どっこい口径比F4です。このサイズからして、かなり豪華な設計構成であることが想像できます。ガラスを覗くと確かに構成枚数は多く、下図のような4群5枚の空気レンズ入りゾナー型(通称エアゾナー)です。レンズ構成図は公表されていないようですので、下図は本レンズと同等のものを提示しました。5枚玉は望遠レンズにしては多い方ですが、それにも関わらず口径比がF4と控えめな点が本レンズの特徴です。本家ツァイス・ゾナー135mm f2.8からも明らかなように、構成的には1枚少ない4群4枚でも肉厚ガラスを用いれば一段明るくすることができ、それでも画質的に充分な性能のレンズが作れました。薄いガラスで5枚構成にするか、肉厚ガラスで4枚構成にするかが、このジャンルのレンズを設計する際の分かれ道のように思えます。どちらがコスト的に有利であったのか、私にはわかりません。
本レンズの構成図ではありませんが近いものを提示しました。設計構成は4群5枚のゾナー型です。コンタックス・ヤシカマウントのゾナー135mm F2.8と同じ構成です


KOWA-R 135mm F4: 最短撮影距離 1.7m, 重量(カタログ値) 580g, フィルター径 67mm, 絞り F4-F16, 絞り羽根 5m枚, 設計構成 5群6枚簡易ゾナー型,  KOWA SER/SETRマウント



入手の経緯
レンズは2018年ごろ新宿で撮影ワークショップを開催した際に、途中で隙を見て抜け出し、新宿の中古カメラ市場で手に入れました。時間のない中、10分足らずで購入したレンズで、店頭価格は5000円でした。レンズのコンディションが良かったうえカメラのマウント部分が付属していたので、持ち帰ってアダプターが作れるという魂胆だったのを覚えています。ちなみに同行していた上野由日路さんも短い時間で何か変なものを買っていました。何であったのかは今となっては思い出せません。
 
撮影テスト
シャープでコントラストは高く、ゾナータイプならではの線の太い描写が特徴で発色も鮮やかです。さすがに開放ではコントラストは落ちますが、それでも同クラスのレンズと比較すると、なかなかいい成績です。開放で遠方撮影を行うと、非点収差の影響からか写真の四隅で像がぼやけています。近接撮影やポートレート撮影ではあまり目立ちませんが、小さな被写体を遠方の四隅に置く場合には少し絞る必要があります。このクラスの望遠レンズによくあるフリンジ(被写体の輪郭が色づく現象)の発生量は普通のレベルです。また歪みはよく補正されており、よくある糸巻き状の歪曲は全く見られません。光学系が細長いためでしょうか、背後のボケに口径食が強めに発生し、開放では点光源が四隅で半月板のような形態になってしまいます。ボケ具合を気にする方は少し絞ったほうが良いと思います。距離によってはグルグルボケが目立つことがあります。
 
F4(開放) Nikon Zf(WB:日光A)

F4(開放) Nikon Zf(WB: 日光A)


F8  Nikon Zf(WB:日陰)

F4(開放) Nikon Zf(WB:日陰)

F4(開放) Nikon Zf(WB:日陰)
F8 Nikon Zf( WB: 日光)

F5.6  Nikon Zf(WB:日光)

F4(開放) Nikon Zf(WB:日光)

F4(開放) Nikon Zf(WB:日光)