富岡光学のハーフカメラ用レンズ
TOMIOKA MAMIYA-TOMINON 32mm F1.7
カメラ屋のジャンクコーナーで目にしたハーフサイズカメラにトミノンが付いているのを見つけ、こんな富岡製レンズもあるのかと胸が熱くなりました。マミヤが1965年に発売したMYRAPIDというカメラの固定レンズとして供給されたMAMIYA-TOMINON 32mm F1.7です。レンズ自体に内蔵絞りはなく、カメラのシャッターを半空きにすることで絞りを兼ねるというコスト重視のシンプルな設計になっています。カメラからレンズを取り出すのは機能欠如を招きますので、あまり好ましくないのですが、今回はカメラが修理不能レベルでしたので、気にせず摘出、下の写真のようにライカMマウントに改造して用いることとしました。定格イメージフォーマットから考えるとAPS-Cセンサーを搭載したデジタルカメラで用いるのが相性のよい組み合わせです。ちなみにフルサイズ機のSOGMA fpLではケラれなしで使え、SONY A7、Nikon ZF、Panasonic S5IIでは四隅がしっかりとケラれました。何が起こっているのでしょう。
MAMIYA MYRAPID |
レンズ構成は5群6枚のULTRON型で、前玉(G1)と2枚目(G2)に曲率の大きな分厚い正レンズが使われています。反対に後群側は小さく、前・後群のアンバランスが著しいのが特徴です。レンズを設計したのが誰なのか確かな情報はありません。ただし、この時代ですと富岡光学の木下三郎氏であった可能性が濃厚です。ネットでは同時代に販売されていたYASHICA HALF17搭載のYASHINON 3.2cm F1.7と同一設計のレンズではないかという噂もありましたが、手元に両レンズがありましたので比較してみたところ、前玉の曲率やレンズ径などが明らかに異なっており、両者は別設計でした。この時代、ヤシカと関係の深かった富岡光学は1961年に開設されたばかりのヤシカのレンズ設計部門と、ある意味でライバル関係にありました。HALF17に自社設計のレンズが採用された代わりに、富岡光学の同等モデルが、これまたヤシカと協力関連のあったマミヤのカメラに供給された事に何か深い背後関係を感じます。
★撮影テスト
開放からシャープな描写で、滲みは遠景撮影時に拡大像で微かにわかる程度です。近接域からポートレート域にかけてはスッキリと抜けが良く、完全にシャープな像になります。解像力は中庸ですがコントラストは良好で発色も鮮やか。富岡光学の優秀さがよく伝わってきます。背後のボケは距離によらず安定しており、ポートレート域でも適度に柔らかく綺麗にボケてくれます。グルグルボケや放射ボケが大きく目立つことはありませんでした。逆光撮影時には虹の形のゴーストが出ることがあります。カメラと光源の位置関係(角度)によって出るときと出なくなる時がありますので、試行錯誤してみてください。
フルサイズ機のSIGMA fpLで用いる場合には超明るい広角レンズに化けます。まさに禁断のリミッター外しなわけですが、モンスター級のスペックと言ってよいでしょう。像面湾曲のため四隅の像が怪しくなり、中央の端正な画質とのギャップが大きくなります。四隅では光量落ちが顕著にみられますがケラレはありませんので、ダイナミックな階調表現や色コケを活かした唯一無二の写真を楽しむことができます。
今回はMAMIYA-TOMINONを愛用しているドール写真家・橘ゆうさんにお写真を提供していただきました。橘さんはオールドレンズを活かしたドールポートレートに取り組む新進気鋭の写真家です。
Photographer: 橘ゆう(@yu_Scircus)
CAMERA: SIGMA fpL
PHOTO: 橘ゆう(@yu_Scircus) , Camera: SIGMA fpL |
PHOTO: 橘ゆう(@yu_Scircus) , Camera: SIGMA fpL |
PHOTO: 橘ゆう(@yu_Scircus) , Camera: SIGMA fpL |
PHOTO: 橘ゆう(@yu_Scircus) , Camera: SIGMA fpL |
PHOTO: 橘ゆう(@yu_Scircus) , Camera: SIGMA fpL |
続いては、ドックポートレートに取り組むSPIRALの写真作例です。モデルはいつものワンコ❤(オマケね)。
Photographer: Spiral (M42 MOUNT SPIRAL)
CAMERA: Fujifilm X-PRO-1, Nikon Zf (APS-C mode)