MAKINONは1967年に創業し、東京・品川区五反田に本社のあったマキナ光学が1974-1975年頃に発売したレンズのブランドである。主に海外で販売されていたため国内ではあまり知られていないが、24mmから1000mmまで14ものラインナップが存在する。安くて高性能なレンズという位置づけで販売されていたようだ。創業当時のマキナ光学はOEM生産を中心とし、研究・開発/製造/品質管理/販売・輸出の5つの部署を持っていた。このうち販売・輸出部門を専業化するため、1974年にマキナ・トレーディング・カンパニーを設立し、自社ブランドの輸出販売に力を入れるようになる。1983年時点では社員総数が400人前後、日本各地に9箇所の支社を持つ程に成長し、北米や欧州を中心に世界55ケ国で貿易を行っていた。北米の販売には特に力を入れており、独自の販売網とサービス体制を確立していた。MAKINONに関する貴重な資料本であるStephen Bayley著のMAKINON LENS PHOTOGRAPHYにはレンズ工場の生産ラインの様子が写真に収録されている。写真を見ると、働いている労働者はパートタイムの主婦ばかりである。MAKINONのレンズ群の高いコストパフォーマンスは、低賃金で働いていた主婦達のおかげなのだ。互換マウントはM42, OLYMPUS, CONTAX/YASICA, CANON, MINOLTA, NIKON, PENTAX, KONICA, FUJICA X, ROLLEIとたいへん多い。今回テストするAUTO MAKINON 28mm/F2.8はガラス面にマルチコーティング処理が施されフレアやゴーストが出にくい仕様になっている。逆光時でもコントラストの低下が少なくクリアな撮影結果が得られる。マルチコーティングがカメラのレンズ対して本格的に採用され始めたのは1970年前後である。そのおかげで光の透過性能が向上し、レンズの描写性能が格段に向上したわけだ。MAKINONも当時の先端技術を採用して作られたレンズ・・・なかなか性能が良さそうだ。
★MAKINONラインナップ
- 単焦点レンズ:24mm/F2.8; 28mm/F2.8; 50mm/F1.7; 135mm/F2.8; 300mm/F5.6; 500mm/F8; 1000mm/F11
- ズームレンズ:24-50mm/F3.5; 28-80mm/F3.5; 28-105mm/F3.5; 35-70mm/F3.5; 35-105mm/F3.5; 80-200mm/F4.5; 75-150mm/F4.5

★相場と流通量
輸出販売が中心であったためか、国内の中古市場ではあまり手に入らないレアなブランドだ。eBayなど海外のオークションのほうが流通量は多い。MAKINON 28mm/F2.8は即決価格でも40~80ドル程度と安く売られている。WEB上には1975年の発売当時、フランスでの販売価格が360フランス・フラン(当時の1FF を50円として18000円)だったとの回想記録が見つかる。本品は、かなり前に相場よりも少し高く売られていたものを落札した。未使用品であることを証明する検品シールがはられていた。いくらだったか思い出せない・・・・。
★試写テスト
輸出販売が中心であったためか、国内の中古市場ではあまり手に入らないレアなブランドだ。eBayなど海外のオークションのほうが流通量は多い。MAKINON 28mm/F2.8は即決価格でも40~80ドル程度と安く売られている。WEB上には1975年の発売当時、フランスでの販売価格が360フランス・フラン(当時の1FF を50円として18000円)だったとの回想記録が見つかる。本品は、かなり前に相場よりも少し高く売られていたものを落札した。未使用品であることを証明する検品シールがはられていた。いくらだったか思い出せない・・・・。
★試写テスト
描写に定評のあるマキノンだけのことはあり、癖の無い素直な撮影結果が得られる。コントラストは高く、発色は鮮やかでボケも綺麗。チープだが予想以上に期待に応えてくれるというのが、このレンズに対する大方の評価ではないだろうか。ただし、この時代の他社のレンズと比較し、特に秀でた光学性能や描写特性を持っているわけではない。被写体への最短撮影距離は30cmと若干寄れる程度。重量は少し重め。製品としての作りは良いが、デザインは極めて地味。まるでジャージついているような、あの意味不明な3本線は好みが分かれる。他社にはほぼ同じスペックで、もっと寄れるレンズがあるし、もっと軽いレンズもある。一流ブランドメーカーには渋い発色、鮮やかな発色など個性が人気を呼んでいる高性能なレンズがあることを考えると、マキノンの描写にももう少し個性や味が欲しい。基本性能は高いものの良く言えば極めて素直。悪く言えば平凡という印象だ。
F11 EOS kis digital, AWB: ケヤキ並木の道。久々のマルチコーティングレンズに興奮し高コントラストな写真を狙ってみた。どうやらマキノンは定評どうりの高性能なレンズだ
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F5.6 EOS kiss x3 AWB: 発色は鮮やか。シャープネスも高い。なかなか優秀なレンズだ |
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F4 Eos kiss x3, AWB: 日枝神社の狛犬。ボケは安定している
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F2.8 EOS kiss x3 digital, AWB: ジョウジョウバエのデート飛行 |
F8 EOS kiss x3 digital, AWB: 木更津の鬼瓦
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★撮影環境: AUTO MAKINON + EOS Kiss x3 + Petri Hood
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左:Makinon純正キャンプ 右:PETRI metal hoodを装着したところ |
マキノンというレンズにはシリアル番号がついていない。そのことからもブランド志向があまり高くなかったようだ。マキナ光学は高性能なマキノンレンズ群を中古市場に残したまま、その後、淘汰の波に飲み込まれ静かに消滅した。