おしらせ


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2015/04/13

Boyer Paris Saphir 《B》 85mm F3.5

1895年にフランスのパリで創業したレンズ専門メーカーのBOYER(ポワイエ)社。同社でレンズの開発を率いていたのはSuzanne Lévy-Bloch (スザンヌ・レビー・ブロッホ) [1894-1974] という名の女性設計士である[脚注1]。Boyer社のレンズには宝石や鉱物の名称が当てられることが多く、Saphir (サファイア/蒼玉)、Topaz (トパーズ/黄玉)、Perl (パール/真珠)、Beryl (ベリル/緑柱石)、Emeraude (エメラルド)、Rubis (ルビー)、Jade (ジェード/ひすい)、Zircon (ジルコン/ヒヤシンス鉱)、Opale (オパール)、Corail (サンゴ)、Onyx (カルセドニー)などレンズの構成や用途ごとに異なる名がつけられている。Boyer社の詳細については2008年に公開されたDan FrommとEric Beltrandoのたいへん詳しい解説があり、この記事のおかげで長い間謎だった同社の歴史や製品ラインナップの詳細が明らかになった[文献1]。Danは世界的に有名なオールドレンズの研究家である。今回はこの記事を参考にしながらBoyer社が1970年代に生産したPlasmat/Orthometar (プラズマート/オルソメタール)型レンズのSaphir 《B》を紹介する。
 

パリで生まれた宝石レンズ 2
Boyer Paris SAPHIR《B》(サファイア《B》85mm F3.5

SAPHIR 《B》は4群6枚の構成を持つPlasmat/Orthometarタイプの引き伸ばし用レンズである(下図参照) [文献1]。このタイプのレンズは口径比こそ明るくないが画質には定評があり、大判撮影用レンズや引き伸ばし用レンズなどプロフェッショナル製品の分野では今も活躍を続ける優れた設計構成として知られている。代表的なレンズとしてはMeyerのDouble Plasmat F4とSatz Plasmat F4.5 (P.Rudolph, 1918年 DE Pat.310615) [文献2]、ZeissのOrthometar F4.5 [W.W.Merte, 1926年 DE Pat. 649112]、現行モデルではSchneiderのComponon-S F4(コンポノンS)とSymmar F5.6(ジンマー)がある。光学設計の特許としては1903年にSchultz and Biller-beck社のE.Arbeit(アルベルト)がDagor(ダゴール)の内側の張り合わせをはがし空気レンズを入れることで明るさを向上させたEuryplan(オイリプラン)[文献3]が最初である。Schultz and Biller-beckは1914年に当時すでに緊密な協力関係にあったMeyerに買収されており、Euryplanの設計特許は当時Meyerのレンズ設計士だったP.Rudolph (ルドルフ博士)の手によって前後群を非対称にしたPlasmatの開発に再利用されている[文献4]。この種のレンズは写真の四隅まで解像力が良好なうえ色ずれ(カラーフリンジ)を良好に抑えることができ、広いイメージフォーマットの隅々までフィルムの性能を活かしきることが求められる大判撮影や中判撮影にも余裕で対応することができる。また、絞っても焦点移動が小さいため引き伸ばし用レンズとしても優れた性能を発揮でき、この製品分野ではワンランク上の高級モデルに使われる構成となっている。明るさはF4程度までとなるため高速シャッターで手持ちによる撮影を基本とする35mm判カメラの分野で広まることはなかったが、Saphir 《B》は頭ひとつ飛びぬけたF3.5を実現し、同型レンズの中ではFujinon-EP 3.5/50とともに突出した明るさとなっている。レンズの名称はもちろん宝石のサファイア(蒼玉)である。SaphirはBoyer社がレンズにつける名称として最も多用した宝石名で、この名をもつレンズのみGauss型、Tessar型、Plasmat型、Heliar型(APO仕様)など光学系の構成が多岐にわたる[文献1]。設計士スザンヌが最も好んだ宝石だったのではないだろうか。今回入手したレンズ名の末尾に《B》の記号がついているのはTessarタイプのSaphirと識別するためである。《B》の表記があるものがPlasmat型で、無表記のものがTessar型またはGauss型となっている。《B》の表記が引き伸ばし用レンズを意味しているわけでないことはTessarタイプのSaphirにも引き伸ばし用モデルが存在し《B》の表記が無いことから明らかである。第二次世界大戦前の1939年までに少なくとも6種類のノンコート・モデル(焦点距離85mm, 100mm, 110mm, 120mm, 135mm, 210mm)がF4.5の口径比で発売され、戦後は1970年代初頭にBoyer社が倒産した後、同社の商標と生産体制を引き継いだCEDIS-BOYER社から口径比F3.5を持つ少なくとも9種類のモデル(焦点距離25mm, 35mm, 50mm, 60mm, 65mm, 75mm, 80mm, 85mm, 95mm)と、口径比F4.5を持つ少なくとも6種類のモデル(100mm, 105mm, 110mm, 135mm, 150mm, 210mm)、および300mm F5.6が供給された。なお、このレンズにはSAPHIR 《BX》という名で1970年代に発売された後継製品が存在する。レンズの生産と供給は1982年まで続いていた。

[脚注1]Suzanne Lévy-Bloch(スザンヌ・レビ-・ブロッホ)[1894-1974] ・・・パリで活動していたアルザス人建築家Paul Bloch(ポール・ブロッホ)の娘。数学で学位を取り、シネマスコープの発明者として名高い天文学者Henri Chrétien(アンリ・クレティアン)に師事、P.Angenieux(ピエール・アンジェニュー)もHenriに師事した同門生である。その後、Henriが創設に協力したパリの光学研究院(Institut d'optique théorique et appliquée)のエンジニアとなっている。夫のAndréが1925年に創業者Antoinr Boyer(アントワーヌ・ポワイエ)の一族からBoyer社を買い取り経営者につくと31歳で同社の設計士となり、その後はAndréと死別する1965年まで数多くのレンズ設計を手掛けている。(M42 MOUNT SPIRAL 2013年2月28日でまとめた記事を要約)

Boyer Saphir 《B》(1931)の構成図トレーススケッチ。本レンズは引き伸ばし用なので光学系の左右の位置関係が普通のレンズとは逆で、銘板のある側が後玉となる。上図で言うと光はフィルムを通過後に左側(マウント側)から入り、矢印に沿って進み、銘板のある右側へと抜けたあと印画紙へと届く。構成は4群6枚のPlasmat/Orthometar型である。非点収差と倍率色収差の補正効果が優れ、写真の四隅まで高解像なうえ、色ズレ(カラーフリンジ)を良好に抑えることができるという特徴を持つ。また画角を広げてもコマ収差がほとんど変化しないため広角レンズにも向いており、かつては航空撮影用や写真測量用の広角レンズにも使われていたことがある。絞っても焦点移動が小さいため引き伸ばし用レンズにも好んで用いられる設計である。各エレメントを肉厚にすることが収差的に上手く設計するコツなのだそうである[文献5]









参考文献
重量(実測) 270g, F3.5-F16, 絞り羽 16枚, 焦点距離85mm(実効焦点距離 87.3mm), マウント形状 L39/M39, 引き伸ばし用レンズ(エンラージングレンズ)


入手の経緯
レンズは2013年12月にebayを介して米国のロスチルド4さんから落札購入した。このセラーは同型レンズのデットストック品を次々と売り続ける人物のため、少し前からマークしていた。私は過去4回にわたりこのセラーから売り出された同一モデルのレンズに対して落札を試みたが、5回目にしてようやく入手に成功することができた。過去5回の落札額は250~300ドル+送料48ドルである。届いた品はやはり状態が良く、元箱とオリジナルキャップがついてきた。Boyer製レンズは最近になって広く認知されるようになり、エンラージングレンズであるにも関わらず、ここ1年間の推移を見ても相場価格が急激に高騰している。eBayでは2015年4月現在で同じ型のレンズが450ドルから600ドル程度で取引されている。
 
カメラへの搭載
引き伸ばし用レンズは一般にヘリコイド(光学部の繰り出し機構)が省かれており、一眼レフカメラやミラーレス機の交換レンズとして用いるにはヘリコイドユニットを別途用意し、これと併用する必要がある。レンズは通常マウント部がライカスクリューと同じM39/L39ネジになっており、変換リングを介してM42マウントの直進ヘリコイドに搭載することができ、M42レンズとして各種一眼レフカメラやミラーレス機等で使用することができる。M39-M42変換リングや直進ヘリコイドは一部の専門店に加えヤフオクやeBayで入手できる。なお、本レンズが包括できるイメージフォーマットは35mm判よりも広く中判6x6フォーマットでもケラれることなくカバーできるので、今回はレンズを中判カメラのBronica S2でも使用した。この場合は35mm判換算で46mm F1.9相当の画角とボケ量が得られる。レンズをカメラにマウントするには香港のレンズワークショップから入手した特製Bronica M57-M42マウントアダプターを用いている。ただし、フランジ長の関係で無限遠のフォーカスを拾うことができないので、撮影は近接域のみに限られている。 

撮影テスト
引き伸ばし用レンズとはフィルムに記録された細かいディテールを印画紙に正確に投影するために用いられるレンズである。写真用レンズとは異なり、そもそも平面であるフィルムの記録を同じく平面である印画紙に焼き付けることを目的とするため、撮影用レンズを上回る解像力を持つことは当然ながら、印画紙上で四隅まで均一な投影像が得られるよう収差補正されていることが重要である。例えばカラーフリンジや歪みは極限まで少ないことが好まれるし、像面湾曲も出来る限り小さくなるよう設計されている。このような用途の性格上、結果として立体感のやや乏しい平面的な写りになることは仕方のない事である。また、ワーキングディスタンスが近接領域に限られるので、収差の補正基準は普通の写真用レンズのように無限遠に取られているわけではなく近接域になっているのが普通で、マクロ撮影では非常に良く写る。画質設計にボケ味は考慮されておらず、どう写るかレンズを実際に使ってみないとわからない面白さがある。
Saphir《B》は流石に引き伸ばし用レンズというだけのことはあり、歪みや色収差は目立たないレベルまで抑えられている。また、近接撮影では良好な解像力を示し四隅まで画質には安定感がある。階調はなだらかに推移しながらもコントラストは良好でよく写るレンズである。発色はやや青みがかる傾向があり、偶然なのかはわからないが、まさにサファイアブルー!。そういえばBoyerにはルビーというレンズもあるが、このレンズの場合には赤みがかるのであろうか・・・そんなはずはないか。ボケは前後ともたいへん美しく、近接からポートレート域では背後にフレアが入るため滑らかなボケ味となっている。ポートレート域では僅かに背後にグルグルボケが出ることもあるが、目立つ程ではない。
以下では中判カメラによる銀塩撮影とデジタル一眼カメラによる作例を示す。



中判銀塩カメラ(6x6 format)による作例

使用機材
CAMERA: Bronica S2, 露出計: セコニック・スタジオデラックスL-398, FILM: Fujifilm Pro160NSカラーネガ, Kodak Portra 400(カラーネガ)
 
F8 銀塩撮影 Fujifilm PRO160NS + Bronica S2(6x6 format):さすがにエンラージングレンズ。近接撮影用を想定しているだけのことはあり、マクロ域でもピント部の描写は安定している。絞っても階調は軟らかく推移し、とても美しい描写である

F3.5(開放) 銀塩撮影 Fujifilm PRO160NS + Bronica S2(6x6 format):開放なので被写界深度はとても浅い。ピント部には十分な解像力があり、フィルム撮影で用いるには十分な性能である









F3.5(開放) 銀塩撮影 Fujifilm PRO160NS + Bronica S2(6x6 format): こちらも開放。これだけ写るのだから、素晴らしいとしか言いようがない。高解像なピント部とフレアに包まれる美しい後ボケが見事に両立している。 F5.6まで絞った同一作例はこちら



F11 銀塩撮影 Kodak Portra 400 + Bronica S2(6x6 format): 絞るとやはりシャープである。開放での同一作例はこちら


F8 銀塩撮影 Kodak Portra 400 + Bronica S2(6x6 format)

F8, 銀塩撮影(階調補正:黒締め適用),  Fujifilm PRO160NS + Bronica S2(6x6 format)
















35mm判カメラによるデジタル撮影
CAMERA: Sony A7
F8, Nikon D3(AWB): こんどはデジタル撮影。背景はコマフレアに覆われ美しいボケ味である


F8, Sony A7(AWB): 質感表現もバッチリでマクロ撮影用レンズとしても十分な性能だ。開放での描写(→こちら)はピント部にも僅かにフレアを纏うようになるが、解像力やコントラストは維持されている

上の写真の一部を拡大クロップしたもの。近接撮影での解像力は高く、質感を緻密に表現している
F3.5(開放), Sony A7(AWB):ポートレート域でも背景にモヤモヤとコマフレアが入り美しいボケ味を演出している。一方でピント部はスッキリとヌケが良い。器用な描写特性を持つレンズだ






F3.5(開放), Sony A7(AWB): コントラストは良く、ピント部はシャープである

F5.6, Sony A7(AWB): 

F3.5(開放), Sony A7(AWB): 開放でもコントラストは良好

F8, Sony A7(AWB): 強い日差しでも階調硬化はみられない








F5.6, Sony A7(AWB): フィルターねじが無いレンズなのでフードはつかないが、屋外での使用時でもゴーストやハレーションはあまり出なかった
F5.6, Sony A7(AWB): この日は小学校の入学式。記念撮影です

2015/04/12

Fuzhou Cheng-An Optelect. Tech., ABF CCTV Lens 25mm F1.4 (ABF-F2514MV)












僅か20ドルで購入できる
監視カメラ用高速レンズ
Fuzhou Cheng-An Optoelectronic Technology Co., Ltd.
 (福州诚安光电技术有限公司/福州成安光電技術社)
ABF CCTV Lens 25mm F1.4(C mount)

新品レンズが2千円強で購入できるという気になる噂を耳にしたので、早速その真相を確かめるべくeBayを覗いてみたところ・・・出るわ出るわと僅か20ドルにも満たないレンズが数多く売り出されていた。噂の正体は中国福建省福州市に拠点を置くFuzhou Cheng-An Optoelectronic Technology Co.,Ltd.(福州诚安光电技术有限公司)が製造と販売を手がける監視カメラ用レンズのABF CCTVシリーズである。同シリーズには焦点距離の異なる5種類のモデル(6mmF2, 12mmF1.2, 25mmF1.4 35mmF1.7, 50mmF1.4)があり、25mm以上の長焦点レンズにはブラックカラー(基本色)のモデルに加えシルバーのモデルが用意されている。また、鏡胴のデザインが僅かに異なるFUJIAN (福建)ブランドのOEM製品としても供給されており、eBayにはブラックとシルバーのモデルに加え、ピンク、ゴールド、グリーンのカラーバリエーションも出ている。今回はABF CCTVシリーズの中から25mm F1.5のシルバーカラーをチョイスし、20ドルのレンズに秘められた潜在力を試してみることにした。レンズは2015年4月にeBayを介し中国のセラーから送料込みの即決価格18.63ドル(2200円程度)で購入、箱に入った状態で届き、オマケでCマウント用のマクロエクステンション・リングが付属していた。レンズの定格は1/2インチ(6.4×4.8mm)のCCTVフォーマットなのでPentax Qで用いるのが画質的に安定感のある組合せである。一方、イメージサークルはこれよりも広いマイクロフォーサーズ(M4/3)センサーをカバーでき、オリンパスPEN でもケラれることなく使用できる。私はPentax Qを所持していないので PEN E-PL6で用いることにした。レンズの構成は3群3枚のトリプレットである。
 
Fuzhou Cheng-An Optoelectronic Technology Co., Ltd.
(福州诚安光电技术有限公司/福州成安光電技術社)
同社は中国福建省福州市で2000年に創業した従業員規模51人以上100人以下(2015年現在)の光学電子機器メーカーである。監視カメラ用レンズの製造と販売を手がけ、製造品の51-60%を北米、南米、西ヨーロッパ、東南アジア、アフリカに輸出している。同社のホームページにはレンズ製品の絞り羽とCCDチップに日本製の部品を用いることでクオリティを維持しているとの解説があった。ただし、今回紹介するレンズは廉価製品のためか絞り羽のクオリティはイマイチ。ガラスにはグレードAの光学ガラスを使用しておりプラスティックは一切使用していないとのことである。
 
参考:メーカー公式サイト http://fuzhou-cheng-an.en.ywsp.com
 
重量(公式データ)78.4g, 最短撮影距離 50cm, 絞り F1.4-F8 (ただし、絞りリングをF8まで回すと絞り羽根が完全に閉じ光路が塞がってしまう・・・なんで), イメージフォーマット 1/2 inch (定格画角11度), モデル番号 ABF-F2514MV-Y, Cマウント監視カメラ用レンズ, 光学系は3群4枚のヘクトール型, フィルターネジは30mm弱


 
撮影テスト
使用機材:Olympus Pen E-PL6 +  Cマウント → M4/3マウントアダプター(CCTV用)
レンズ構成は4枚玉のヘクトールである。中心部は開放でもしっかりとシャープに写りヌケもよい。カラーフリンジ(軸上色収差に由来する色ズレ)が目立つもののコントラストは良好である。ただし、オリンパスPENのイメージセンサーはさすがに広すぎるようで、四隅での画質の破綻はかなり大きなものとなり背景にグルグルボケも出る。周辺光量落ちが絶妙で、とても印象的な画作りができる点は素晴らしい。このダメっぷりはハマると癖になる。
収差を積極的に利用する場合はこのままでもよいが、安定した画質を求めたいならばカメラの設定メニューでアスペクト比を3:4に選び有効イメージサイズを小さくしておくのがよいだろう。本来は1/2インチのCCTVフォーマット(6.4×4.8mm)で使用することを前提に設計されているため、これでもまだ撮像部の面積は規格より4倍も広いが、撮影テストでは実用的な画質が得られている。条件が悪いと開放では温泉の湯煙のような物凄いハレーションが出ることもあるので、フードを装着しハレ切り対策に万全を尽くすことをおすすめする。

F1.5(開放), Pen E-PL6(Aspect ratio 3:4): オリンパスPENで用いる場合は画像のアスペクト比を3:4にして、できる限り小さなイメージフォーマットで撮影するのがおすすめである。中心解像力は開放でも良好で犬の毛並みやヒゲの生え際の様子までしっかりととらえている。コントラストも良いが、ややカラーフリンジが目立つ



F1.5(開放), Pen E-PL6(M4/3 format, Aspect ratio 4:3): 今度はイメージフォーマットを一回り大きなマイクロフォーサーズ規格にしてみたが四隅まで画質を維持できず、何だか少し酔いそうだ

F1.5(開放), Pen E-PL6(Aspect ratio 3:4): 再び3:4のアスペクト比に戻した。十分に明るいレンズなので、この設定でもボケ量は大きく表現力は充分である

2015/03/27

Schneider Kreuznach AV-Xenotar 90mm F2.4 HFT











クセノタールブランドのプロジェクター用レンズで写真を撮る
AV-XENOTAR 90mm F2.4(Rolleivision用)
3年前にブログ記事で紹介したLeitz ColorplanとLeitz Hektorに続きプロジェクター用レンズを写真撮影に用いるのは今回で3度目である。この種の転用は海外のマニア層の間で一昔前から行われており、インターネットで検索するとかなりの数の写真作例が出てくる。Schneiderの製品以外にもDallmeyer, Taylor-Hobson, Angenieux, ISCO, Bell & Howell, Meopta, Voigtlander, Carl Zeiss, Boyer, Leitzなど有名メーカーがレンズの供給元として名を連ねており、絞りやヘリコイドが省かれいるため写真用レンズに比べると手頃な値段で入手できる。ただし、改造し転用することができるのはフランジバックか長くイメージサークルの広い製品に限られるので何でもオーケーというわけではない。
実は最近、ここに至る間に2本のプロジェクターレンズを写真用に転用しようと試みたが敢え無く失敗した。1本目はAngenieux 50mm F1.2であったが、届いたレンズをみたところバックフォーカスが8mm程度しかない。創意工夫で何とかカメラに搭載できたとしてもシャッターに干渉してしまうため断念。このレンズは16mmスライドプロジェクター用であるが、APS-Cセンサーのカメラでは四隅がケラれていた。もう1本は超高速レンズのMeopta Meostigmat 70mm F1.0である。インターネットにAPS-Cカメラによる作例が出ていたので淡い期待を寄せていたが、バックフォーカスは17mm程度と短い上に鏡胴の後玉側が太いため間口の広いSony Eマウントでも収まりきらない。無限遠のフォーカスを拾うには後玉側を削らなければならず断念した。こうして、プロジェクターレンズの改造がハードルの高い行為であることを痛感することになったのだが、懲りない性分の私は今回こそはと3度目の正直を念じながら、このAV-Xenotar(AVクセノタール)に辿り着いたのである。
Xenotarと言えばリンホフやローライフレックスなど高級カメラに供給されたSchneider社のフラッグシップ・ブランドである。今回みつけたAV-XenotarについてはRolleivision(ローライビジョン)というスライド・プロジェクターに搭載するレンズの上位モデルという位置づけで供給されていた。同レンズのシリーズには35mmスライド・プロジェクターのRolleivision 35(1894年登場)に搭載されたAV-Xenotar 90mmF2.4に加え、中判スライドプロジェクターのRolleivision 66(1986年登場)に搭載されたAV-Xenotar 150mmF2.8、AV-Xenotar 250mmF4などがある。さらに1993年からはRolleivision 35の後継製品であるRolleivision MSC300シリーズにバリフォーカルレンズのVario-Xenotar 70-120mm F3.5も供給されている。AV-Xenotarの一部には何と絞りのついたモデルも存在し、絞りの無い今回のモデルよりも若干値は張るが、eBayにはちょくちょく出てくる製品である。このモデルをヘリコイドに搭載すれば写真用レンズとして何不自由なく使用できるであろう。本当はこちらを手に入れたかったのだが縁がなかった。
重量(実測) 140g, 後玉側の鏡胴径は42.5mm, 設計構成 4群4枚, コーティング HFTマルチコーティング, 写真・左は52mm-43mmステップダウンリングをはめM52-M42フォーカッシングヘリコイドに搭載したところで写真・右はヘリコイド搭載前のレンズを後玉側からみたところ
光学系は4群4枚構成で、いわゆる4群5枚のXenotarタイプではない。構成に関する資料は見当たらないものの、開放F値がF2.4と明るいことを考えると、おそらくエルノスター型であろう。ガラス表面にはマルチコーティングの一種であるローライ製HFTコーティングが施されており、逆光にはある程度まで耐えそうである。このレンズをカメラで使用するには、まずフォーカッシング・ヘリコイドに搭載しなければならない。AV-Xenotarは鏡胴径が42.5mmなので43mm径のステップダウンリングをはめるのが手っ取り早く簡単である。例えば52mm-43mmステップダウンリングをはめM52ーM42ヘリコイドに載せるも良いし、46mm-43mmステップダウンリングをはめM46-M42ヘリコイドに搭載するのでもよいであろう。あとはM42マウントアダプターを用いれば各種カメラにマウントできる。
 
入手の経緯
レンズは2015年2月にドイツ版eBayを介しインター・フォト・ジャンクという写真機材商から入手した。オークションの記述は「スライドプロジェクターのローライビジョンに用いられているレンズ。鏡胴にスレはなく、ガラスに傷、カビ、クモリはない。1ヶ月間の返品・返金保障に対応している」とのこと。35ユーロで入札し放置したところ15人が入札し32ユーロ(+送料12ユーロ)で私が落札していた。1週間程度で届いた現物はホコリや拭き傷すらない非常に良好な状態であった。おそらく未使用のデットストック品だったのであろう。美しい紫色のHFTコーティングが誇らしげに輝いていた。

撮影テスト
解像力はポートレート域が一番良好で、人の肌の質感や細い髪の毛先まで緻密にとらえている。遠方撮影でも良好だが、反対に近接域になると急にソフトになり、急激に増大する収差により四隅まで画質を維持できなくなる。どうもマクロ撮影は苦手なレンズのようである。ボケは四隅まで良く整っておりグルグルボケや放射ボケなどは距離によらず全くみられない。後ボケはスッキリとしているが前ボケはモヤモヤとしたフレアにつつまれている。ピント部の近くではボケ味が硬くなることもあるが、ピント部から離れたところでは前ボケ・後ボケとも柔らかく拡散し綺麗にボケている。遠方を撮影する場合は球面収差がやや過剰補正気味になり後ボケはザワザワしはじめるが、ボケ量は既に小さいので実写でザワツキが目立つことは殆ど無い。コントラストは概ね良好だが、ピント部前方で発生するフレアの有無に左右され乱高下する。マルチコートレンズにしては逆光に弱くハレーションが出やすい。おそらくコーティングがプロジェクターランプの光の波長帯域に最適化されているためであろう。もともとインドア系レンズなので、これは仕方のないことである。
Sony A7 digital(AWB): 近接域では四隅の画質を維持するのが難しい。これもレンズの個性だと思って使いたい
Sony A7 digital(AWB): ボケ味はピント部の前方、後方とも柔らかく綺麗に拡散している
Sony A7 digital(AWB): このとおり近接撮影ではソフトな描写である

Sony A7 digital(AWB):ピント部の近くはこのとおりザワザワすることもある。近接域での激しい収差も表現としては面白い
Sony A7 digital(AWB):コントラストは基本的に良い。ポートレート域での解像力は良好で肌の質感まで良く出ている
Sony A7 digital(AWB): 今度は少し遠方を撮ってみた。悪くない解像力である。ピントは若干外れ手前のステップ辺りにきている
Sony A7 digital(AWB): 逆光ではハレーションが顕著に出る。あまり逆光には強くはないようだ



Sony A7 digital(AWB): 枝の先までよく解像している。この距離でもピント部前方にはフレアが纏わりついている
Sony A7 digital(AWB): 収差変動によるボケ味の変化をみてみた。1m先の近接撮影(左)では前ボケ、後ろボケとも硬すぎず柔らかすぎずノーマルな拡散である。3m先の中距離(中央)では前ボケが更に柔らかくなりフレアを顕著に纏うようになっている。反対に後ろボケはピント部のそばのみやや硬めだが、ピント部から離れたところでは依然として柔らかい。10m先の中遠方(右)では前ボケが更に柔らかくなり後ろボケはやや硬く輪郭にエッジが立ち、玉ボケになりかかっている

2015/03/24

【続】Schneider Kreuznach Xenotar 80mm F2.8 撮影テスト第2弾(中判6x6フォーマット編)

Xenotarは開放からシャープでヌケが良く、四隅まで解像力があり、背後のボケにユラユラとした不思議な特徴のでるレンズである。リンホフやローライフレックスなど一部の高級カメラにのみ供給されていた経緯もあり、マニア層を中心に熱狂的な愛好者がいることでも知られている
清涼感のある上品な写りが魅力の高性能レンズ
Schneider Kreuznach XENOTAR(クセノタール)80cm F2.8
Lens Test by Medium format CAMERA
3年前に書いたXenotarのブログ記事ではレンズの撮影テストに35mmフォーマットのデジタルカメラと銀塩カメラを用いたが、今回はいよいよ中判カメラによる撮影テストである。このレンズは推奨イメージフォーマットが中判フィルム(6x6フォーマット)に指定されており、規格どうり用いると35mm版換算で焦点距離43mm相当の標準レンズとなる。また、口径比F2.8は画質的に無理がなく、35mm換算でF1.5相当の大きなボケ量が得られるなど表現力も充分である。中判カメラで用いればレンズの潜在力を存分に引き出すことができるであろう。
 
Compur #1マウント, 重量(実測)184g,  S/N: 115*****(1970年に製造された157ロットの中の1本), フィルター径 49mm, 絞り羽 19枚, 絞り値 F2.8-F22(手動絞り機構), 構成は4群5枚のクセノタール型。このレンズはシャッターを内蔵していない仕様のため、おそらくフォーカルブレーンシャッターを持つフォールディングカメラ(Speed Graphic等)に搭載され使用されていたのであろう

今回、レンズをはじめて中判カメラで用いたところ、自分の知っているシュナイダーらしい色味がこのXENOTARでも顕著にみられるようになった。それは、ほんのりと青味がのり上品で清涼感のあるクールトーンなまとまり方をする描写のことである。この描写傾向はシュナイダー製レンズではクセノンの戦後型にもよく見られる。上手く使いこなせば見慣れた日常のワンシーンを良く晴れた日の清々しい朝の風景に変えてくれるに違いない。階調描写は中判カメラで用いる方がなだらかで軟らかく、35mm版カメラで用いる方が鋭くシャープな写りであった。では、写真作例を見てみよう。
  
撮影機材
CAMERA: BRONICA S2(中判6X6フォーマット)
FILM(ブローニー判・銀塩カラーネガ): FUJIFILM PRO160NS / KODAK PORTRA 400
露出計: SEKONIC Studio Delux L-398
クセノタールのフランジバックはブロニカ本体の規格より短いため無限遠のフォーカスを拾うことはできず、撮影は近接域のみとなる。無限遠のフォーカスを拾うにはレンズをカメラ本体の内部に沈胴させるかテレコンを使うなどの工夫が必要である。沈胴させる場合は鏡胴の細い前期型のみ可能で、鏡胴の太い後期型ではブロニカのマウント開口部に収まらない。
F5.6, 銀塩撮影( Fujifilm Pro160NS, 6x6)+Bronica S2:マクロ域にもかかわらず解像力は良好で四隅まで安定感のある写りである。階調はなだらかに推移しており暗部には締りがある



F5.6, 銀塩撮影(Fujifilm Pro160NS, 6x6)+Bronica S2:全体的にほんのりと青味がのり美しい仕上がりになっている。このネガフィルムは本来はノーマルな発色で知られているものの、クールな仕上がりとなった




F2.8(開放), 銀塩撮影( Fujifilm Pro160NS, 6x6) +Bronica S2:開放で近接域にも関わらず、収差的に安定しており、滲みの付け入る隙がない




F8, 銀塩撮影( Kodak Portra 400, 6x6)+Bronica S2:近接域に限定した撮影では一般に収差変動の結果からボケ味はどの作例でも柔らかくなる。Xenotar本来のボケ味を見るにはポートレート域で撮影しなければならないが、今回はその願いはかなわなかった。ポートレート域ではもう少しザワザワするものと思われる




35mm版カメラでの作例
2年前に撮影した35mm版カメラによる撮影結果も参考までに少しだけ示しておこう。1枚目が銀塩カラーネガによる作例、2枚目がデジタルカメラによる作例である。
F5.6 Black model,銀塩撮影(Fujicolor Superior 200, pentax MX) : やはり35mm判カメラでは、より鋭くシャープな写りになる印象をうける
F4, Compurシャッター搭載モデル, Nikon D3 digital, AWB: 一段絞るだけで衣類の質感やホコリなどが細部までしっかりと解像されている

2015/03/13

Handsome Optical engineer 紙上アンケート:決定!ハンサム設計士ランキング

美しい世界の光学エンジニアたち!
今年も恒例の紙上アンケートを実施する時期になりました。テーマは「ハンサムなイケメン設計士」です。今も昔もその地味な存在のため、ほとんど認知されることのなかった光学エンジニア達ですが、中には絶世の容姿をもつとんでもないイケメンがいるとの情報を各方面からいただきました。そこで、あらかじめノミネートしたハンサムな男性エンジニア10人の中からアンケート方式で決選投票をおこない、ハンサムのなかのハンサムを決めるという何の役にも立たない投票企画を実行することにしました。エンジニア達の容姿にスポットライトをあて、カメラやレンズに対する認識を更に深めてみたいと思います。本当に深まるのか?

なお、回答者が男性であるか女性であるかは集計結果に大きな相違を生じさせる可能性があります。これはハンサムな男性に対する女性側の価値観と男性側の価値観が一致する保障がないためでです。

そこで、今回は回答者を性別ごとにわけアンケートを実施することにしました。それぞれの集計を独立に行うことで、男女間の趣味嗜好の差異についての理解にも迫りたいのです。本ブログの訪問者は男性で、しかもマニア層が多いので、本来ならばその特殊性を考慮しなければならないのですが、回答者がマニアであるか否による美意識や価値観、ハンサムな男に対する反応度の差異までは考慮しません。

ハンサムな光学エンジニアを発掘する

エントリーNo.1 ハリー・ツェルナー(H. Zöllner) 1912-2007
参考:Marco Cavina's Home Page, where the photo is supplied by Larry Gubas
ドイツ人。カールツァイスのレンズ設計士。ビオメタールやフレクトゴン 2.8/35,  パンコラー 1.8/50などを設計した。新種ガラスを導入しテッサーF2.8の性能を大幅に向上させたのも彼の著しい功績です
 
エントリーNo.2 ハインツ・キュッペンベンダー(H. Kueppenbender) 1901-1989
参考:Zeiss Historica, Zeiss Historical Soc.
ドイツ人。ツァイス・イコン社のカメラ設計士。オーバーコッヘンに移ってからコンタックス開発のプロジェクトのリーダーとしてカール・ツァイスの再建に尽力、西ドイツのツァイスの社長も務めた。ゾクッとする甘いマスクに釘付けか!?
 
エントリーNo.3 エルハルト・グラッツエル(E. Glatzel) 1925-2002
参考:Arndt Müller, Legendäre Objektive und ihre Konstrukteure / Dr. Glatzel und das Zeiss Planar 50mm/f0.7, Samstag, 6. August 2011
ドイツ人。カール・ツァイスのレンズ設計者。コンピュータを用いたレンズの自動設計方法(グラッツェル法)を確立し、レンズ設計の可能性の新たな境地を築いた。ホロゴン、ディスタゴン、カラーウルトロンなどを設計した。笑顔が素敵
 
エントリーNo.4 アルベルト・ウィルヘルム・トロニエ(A.W. Tronnier) 1902-1982
参考:Frank Mechelhoff's Home page: Rollei Rolleiflex 350
戦前はシュナイダーでクセノン、クセナー、アンギュロンを設計。戦後はフォクトレンダーに移籍しノクトン、ウルトロン、ウロトラゴン、カラーへリアー、カラースコパー、テロマーなど数々の名玉を残した謎の多いレンズ設計士。カラーウルトロンや凹ウルトロンの開発時はツァイスに協力もした。ダブルガウス型レンズを実用域まで高め、現代の明るいレンズの基礎を築いた人物。天才設計者の象徴的存在
 
エントリーNo.5 トーマス・ダルマイヤー(T. Dallmeyer) 1859-1906
参考: Wikipedia: Thomas Rudolphus Dallmeyer
ドイツ系英国人で老舗レンズメーカーDallmeyer社の創始者ジョン・ダルマイヤーの長男(あと継ぎ)。立派なお髭です。パパのお髭も立派です
 
エントリーNo.6 フーゴ・マイヤー(H. Meyer) 1863-1905
参考: Wikipedia: Meyer-Optik
ドイツ人。マイヤー光学(フーゴ・マイヤー)社の創始者。レンズとしては、アリストスティグマートを開発しヒットさせるが42歳の若さで世を去る。ジャニーズ系の容姿です
 
エントリーNo.7 シャルル・ルイ・シュバリエ(C.Chevalier ) 1804-1859
参考: Wellcome Images
フランス人。光学機器商のシュバリエ商会を運営し、レンズの製作にも取り組んだ。19世紀にフランスで絶頂期を迎えたフランスの光学機器産業を語る際には必ず登場する人物。名前がステキ
 
エントリーNo.8 ウィリー・ウォルター・メルテ(W.W. Merte) 1889-1948
参考: Rudolf Kingslake, A History of the Photographic Lens, Academic Press 1989
ドイツ人。カールツァイスのレンズ設計士。ビオター, ビオテッサー , テレテッサー,オルソメタールなどを開発。バンデルスレプとともにテッサーの高速化にも貢献した。眼が生き生きしてる
 
エントリーNo.9 ピエール・アンジェニュー(P.Angenieux) 1907-1998
参考: 「アンジェニューの歴史1907-1950」 nac image technology web site
フランス人。ズームレンズやレトロフォーカスレンズの開拓者として知られている。フランス映画界とも深いつながりのあった人物
 
エントリーNo.10 オスカー・バルナック(O.Barnack) 1879-1936
参考: Wikipedia:オスカー・バルナック
ドイツ人。いわずと知れたライカの生みの親。カリスマ性は抜群です

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では投票に移りたいと思います。

あなたがハンサムだと感じる光学エンジニアを選択肢から最大3名まで選び投票して下さい。1~2名でもかまいません。

Please choose, in the following sheet, camera/lens designers you feel handsome up to a maximum of 3 people.   Note that the left side sheet is for women and the right side is for men.


結果発表
約半年間の投票で45名(男性35名・女性10名)の方から投票をいただきました。ありがとうございました。予想していたことですが男性と女性では結果が異なるようです。投票結果の集計は以下の通りです。

男女を問わずハンサムであると評価された光学エンジニア

 トロニエ(男女計20票)、マイヤー(男女計20票)

男性からのみハンサムであるという支持を得た光学エンジニア

 T.ダルマイーアー(35%の男性がハンサムであると回答、女性は14%)

 アンジェニュー(26%の男性が支持、女性は12%)

特に女性からのみハンサムであるという支持を得た光学エンジニア

 バルナック(46%の女性がハンサムでると回答、男性は12%)

 ツェルナー(42%の女性がハンサムであると回答、男性は9%)
 
とても面白い結果です。



2015/02/24

Meyer-Optik Görlitz Primagon 35mm F4.5



たかがレトロフォーカス、されどレトロフォーカス
Meyerらしくない優等生レンズ
Meyer-Optik Görlitz PRIMAGON 35mm F4.5
Primagon(プリマゴン)はドイツのゲルリッツに拠点を置くMeyer-Optik社(メイヤー光学社)が1952年から1964年にかけて生産し、一眼レフカメラのExakta, Contax S, Praktinaおよびレンジファインダー機のAltixに搭載した広角レンズである。前玉に大きな湾曲凹レンズを据えバックフォーカスを延長させることで一眼レフカメラに適合させる「レトロフォーカス」と呼ばれる設計法を取り入れている(下図)。この設計法はメガネをかける近視矯正にも似ているため、「画質的には何らメリットはない」とか「本来は不要な補正レンズだ」などネガティブな認識を持つ方も多く、私もそんな一人であった。しかし、レンズ設計者の本をいろいろ読むにつれ、どうもその認識は間違いであることに気付かされた。前玉に据えた凹レンズには光学系のバランスを調える役割があり、四隅の解像力を向上させボケを安定させる素晴らしい働きがあるというのだ。更には周辺光量落ちを抑える効果もあり、デメリットどころか広角化に有利な性質を幾つも引き出してくれる素晴らしい添加物なのである。そういう観点を踏まえ過去に取り上げたレトロフォーカス型広角レンズを思い返してみると、確かにボケが穏やかでピント部も四隅まで均一に写る製品が多かった。今回取り上げるPrimagonもシンプルな構成ながら開放から良く写るレンズとして高く評価されている。
では、改めてPrimagonの設計を見てみよう(下図)。プリマゴンは3枚玉のトリプレットを設計ベース(マスターレンズ)とし、その前方に大きな凹レンズを据えた4枚構成のレトロフォーカス型広角レンズである。マスターレンズが広角化には向かないトリプレットなので、このまま包括画角を広げても実用的な画質を維持することは到底できない。しかし、前玉に据えた凹レンズたった1枚のおかげで一眼レフカメラに適合し、広角化にも耐え、しかも開放から良く写るレンズへと大変身を遂げている。
 
Primagonの構成図をトレースしたもの。後方(右側)のトリプレット(3枚玉)をマスターレンズとし、その前方(左側)に大きな湾曲凹レンズを据えた4群4枚の構成である。凹レンズを追加したことで光学系のバランスが改善、ペッツバール和が抑えられ非点収差が容易に補正できるようになっている。前玉の後方に広い空気間隔を設けることで樽型歪曲収差を抑えている。正の第2レンズが異様なほど分厚いのはこれ以降のレトロフォーカス型レンズによくみられる性質であるが、1952年登場のPrimagonには早くもその形態がみられる。一見したところ広角レンズとは無縁にも思われたトリプレットをマスターレンズに起用しているあたりが、とても大胆で興味深い設計構成である
重量(実測):158g, フィルター径:49mm, 構成:4群4枚(トリプレットベースのレトロフォーカス型), 対応マウント:M42, EXAKTA, Praktina, Altix, 絞り:F4.5-F22, プリセット絞り,  絞り羽: 10枚構成,  最短撮影距離:0.4m, 焦点距離:35mm, 本品はEXAKTAマウント。前玉のみコーティングのない初期のモデルと、前玉を含む全てのレンズにコーティング(単層コーティング)の施された後期のモデルが存在する。後期モデルにはフィルター枠の銘板にはドイツの国産コーティングであることを誇示するVマークが記されている


 
入手の経緯
eBayを介して2014年3月にドイツのプライベートセラーから落札購入した。オークションの記述は「フォーカスリング、絞りリングともにスムーズで軽快に回る。絞り羽に油シミはなく開閉はスムース。ガラスはクリーンでクリア。パーフェクトなコーティングでキズ、カビ、クモリはない」とのこと。eBayでの中古相場は85-100ユーロ前後である。スマートフォンの入札ソフトで寝ている間に自動入札したところ、翌日になって53ユーロ(+送料10ユーロ)で落札していた。安い!ラッキー。届いた僅かにホコリの混入と微かな汚れがみられる程度で実用充分な状態であった。
 
撮影テスト
Primagonの設計は3枚玉のトリプレットをレトロフォーカス化した構成である。マスターレンズがトリプレットなので当初は四隅の画質に不安を感じていたが、使い始めてみるとかなりの優等生であることがわかり正直驚いた。トリプレットならではの長所である中心解像力の高さとヌケの良さを受け継ぎながら、短所である四隅の画質を大幅に改善、口径比がやや暗いことと絞ったときに微かに周辺光量落ちがみられることを除けば、弱点らしい弱点は見当たらず開放から良く写るレンズとなっている。ボケも安定しておりグルグルボケや放射ボケなどトリプレットによくある像の乱れは目立たないレベルまで抑えられている。階調はたいへん軟らかく絞ってもなだらかなトーン描写を維持している。発色はややあっさりとしていて癖がなく、どことなく品のある写りは私の好みである。ただし、口径比をF4.5と控えめに設定しているあたりはMeyerらしくない堅実で大人しい設計と言わざるを得ない。

撮影機材
Camera: sony A7
Hood: 広角ラバーフード(49mm径用)
F4.5(開放), Sony A7(AWB): 淡い発色がとても美しく、軟調レンズの良さがとても良く出ている。中心解像力は開放でも良好でヌケも良い。グルグルボケもよく補正されている

F8, Sony A7(AWB): 絞っても階調はなだらかでシャドーにむかってトーンが丁寧に描かれている

F8, sony A7(AWB): 発色はあっさりとしている。癖などなくノーマルだ


F8, sony A7(AWB): 良く見ると若干の周辺光量落ちがみられる。気にしなければよい


F4.5(開放), Sony A7(AWB): グルグルボケは出てもこの程度・・・堪えている。前玉の凹レンズが荒治療ながらもよく奮闘している様子が伝わってくる