おしらせ


2015/04/12

Fuzhou Cheng-An Optelect. Tech., ABF CCTV Lens 25mm F1.4 (ABF-F2514MV)












僅か20ドルで購入できる
監視カメラ用高速レンズ
Fuzhou Cheng-An Optoelectronic Technology Co., Ltd.
 (福州诚安光电技术有限公司/福州成安光電技術社)
ABF CCTV Lens 25mm F1.4(C mount)

新品レンズが2千円強で購入できるという気になる噂を耳にしたので、早速その真相を確かめるべくeBayを覗いてみたところ・・・出るわ出るわと僅か20ドルにも満たないレンズが数多く売り出されていた。噂の正体は中国福建省福州市に拠点を置くFuzhou Cheng-An Optoelectronic Technology Co.,Ltd.(福州诚安光电技术有限公司)が製造と販売を手がける監視カメラ用レンズのABF CCTVシリーズである。同シリーズには焦点距離の異なる5種類のモデル(6mmF2, 12mmF1.2, 25mmF1.4 35mmF1.7, 50mmF1.4)があり、25mm以上の長焦点レンズにはブラックカラー(基本色)のモデルに加えシルバーのモデルが用意されている。また、鏡胴のデザインが僅かに異なるFUJIAN (福建)ブランドのOEM製品としても供給されており、eBayにはブラックとシルバーのモデルに加え、ピンク、ゴールド、グリーンのカラーバリエーションも出ている。今回はABF CCTVシリーズの中から25mm F1.5のシルバーカラーをチョイスし、20ドルのレンズに秘められた潜在力を試してみることにした。レンズは2015年4月にeBayを介し中国のセラーから送料込みの即決価格18.63ドル(2200円程度)で購入、箱に入った状態で届き、オマケでCマウント用のマクロエクステンション・リングが付属していた。レンズの定格は1/2インチ(6.4×4.8mm)のCCTVフォーマットなのでPentax Qで用いるのが画質的に安定感のある組合せである。一方、イメージサークルはこれよりも広いマイクロフォーサーズ(M4/3)センサーをカバーでき、オリンパスPEN でもケラれることなく使用できる。私はPentax Qを所持していないので PEN E-PL6で用いることにした。レンズの構成は3群3枚のトリプレットである。
 
Fuzhou Cheng-An Optoelectronic Technology Co., Ltd.
(福州诚安光电技术有限公司/福州成安光電技術社)
同社は中国福建省福州市で2000年に創業した従業員規模51人以上100人以下(2015年現在)の光学電子機器メーカーである。監視カメラ用レンズの製造と販売を手がけ、製造品の51-60%を北米、南米、西ヨーロッパ、東南アジア、アフリカに輸出している。同社のホームページにはレンズ製品の絞り羽とCCDチップに日本製の部品を用いることでクオリティを維持しているとの解説があった。ただし、今回紹介するレンズは廉価製品のためか絞り羽のクオリティはイマイチ。ガラスにはグレードAの光学ガラスを使用しておりプラスティックは一切使用していないとのことである。
 
参考:メーカー公式サイト http://fuzhou-cheng-an.en.ywsp.com
 
重量(公式データ)78.4g, 最短撮影距離 50cm, 絞り F1.4-F8 (ただし、絞りリングをF8まで回すと絞り羽根が完全に閉じ光路が塞がってしまう・・・なんで), イメージフォーマット 1/2 inch (定格画角11度), モデル番号 ABF-F2514MV-Y, Cマウント監視カメラ用レンズ, 光学系は3群4枚のヘクトール型, フィルターネジは30mm弱


 
撮影テスト
使用機材:Olympus Pen E-PL6 +  Cマウント → M4/3マウントアダプター(CCTV用)
レンズ構成は4枚玉のヘクトールである。中心部は開放でもしっかりとシャープに写りヌケもよい。カラーフリンジ(軸上色収差に由来する色ズレ)が目立つもののコントラストは良好である。ただし、オリンパスPENのイメージセンサーはさすがに広すぎるようで、四隅での画質の破綻はかなり大きなものとなり背景にグルグルボケも出る。周辺光量落ちが絶妙で、とても印象的な画作りができる点は素晴らしい。このダメっぷりはハマると癖になる。
収差を積極的に利用する場合はこのままでもよいが、安定した画質を求めたいならばカメラの設定メニューでアスペクト比を3:4に選び有効イメージサイズを小さくしておくのがよいだろう。本来は1/2インチのCCTVフォーマット(6.4×4.8mm)で使用することを前提に設計されているため、これでもまだ撮像部の面積は規格より4倍も広いが、撮影テストでは実用的な画質が得られている。条件が悪いと開放では温泉の湯煙のような物凄いハレーションが出ることもあるので、フードを装着しハレ切り対策に万全を尽くすことをおすすめする。

F1.5(開放), Pen E-PL6(Aspect ratio 3:4): オリンパスPENで用いる場合は画像のアスペクト比を3:4にして、できる限り小さなイメージフォーマットで撮影するのがおすすめである。中心解像力は開放でも良好で犬の毛並みやヒゲの生え際の様子までしっかりととらえている。コントラストも良いが、ややカラーフリンジが目立つ



F1.5(開放), Pen E-PL6(M4/3 format, Aspect ratio 4:3): 今度はイメージフォーマットを一回り大きなマイクロフォーサーズ規格にしてみたが四隅まで画質を維持できず、何だか少し酔いそうだ

F1.5(開放), Pen E-PL6(Aspect ratio 3:4): 再び3:4のアスペクト比に戻した。十分に明るいレンズなので、この設定でもボケ量は大きく表現力は充分である

2015/03/27

Schneider Kreuznach AV-Xenotar 90mm F2.4 HFT











クセノタールブランドのプロジェクター用レンズで写真を撮る
AV-XENOTAR 90mm F2.4(Rolleivision用)
3年前にブログ記事で紹介したLeitz ColorplanとLeitz Hektorに続きプロジェクター用レンズを写真撮影に用いるのは今回で3度目である。この種の転用は海外のマニア層の間で一昔前から行われており、インターネットで検索するとかなりの数の写真作例が出てくる。Schneiderの製品以外にもDallmeyer, Taylor-Hobson, Angenieux, ISCO, Bell & Howell, Meopta, Voigtlander, Carl Zeiss, Boyer, Leitzなど有名メーカーがレンズの供給元として名を連ねており、絞りやヘリコイドが省かれいるため写真用レンズに比べると手頃な値段で入手できる。ただし、改造し転用することができるのはフランジバックか長くイメージサークルの広い製品に限られるので何でもオーケーというわけではない。
実は最近、ここに至る間に2本のプロジェクターレンズを写真用に転用しようと試みたが敢え無く失敗した。1本目はAngenieux 50mm F1.2であったが、届いたレンズをみたところバックフォーカスが8mm程度しかない。創意工夫で何とかカメラに搭載できたとしてもシャッターに干渉してしまうため断念。このレンズは16mmスライドプロジェクター用であるが、APS-Cセンサーのカメラでは四隅がケラれていた。もう1本は超高速レンズのMeopta Meostigmat 70mm F1.0である。インターネットにAPS-Cカメラによる作例が出ていたので淡い期待を寄せていたが、バックフォーカスは17mm程度と短い上に鏡胴の後玉側が太いため間口の広いSony Eマウントでも収まりきらない。無限遠のフォーカスを拾うには後玉側を削らなければならず断念した。こうして、プロジェクターレンズの改造がハードルの高い行為であることを痛感することになったのだが、懲りない性分の私は今回こそはと3度目の正直を念じながら、このAV-Xenotar(AVクセノタール)に辿り着いたのである。
Xenotarと言えばリンホフやローライフレックスなど高級カメラに供給されたSchneider社のフラッグシップ・ブランドである。今回みつけたAV-XenotarについてはRolleivision(ローライビジョン)というスライド・プロジェクターに搭載するレンズの上位モデルという位置づけで供給されていた。同レンズのシリーズには35mmスライド・プロジェクターのRolleivision 35(1894年登場)に搭載されたAV-Xenotar 90mmF2.4に加え、中判スライドプロジェクターのRolleivision 66(1986年登場)に搭載されたAV-Xenotar 150mmF2.8、AV-Xenotar 250mmF4などがある。さらに1993年からはRolleivision 35の後継製品であるRolleivision MSC300シリーズにバリフォーカルレンズのVario-Xenotar 70-120mm F3.5も供給されている。AV-Xenotarの一部には何と絞りのついたモデルも存在し、絞りの無い今回のモデルよりも若干値は張るが、eBayにはちょくちょく出てくる製品である。このモデルをヘリコイドに搭載すれば写真用レンズとして何不自由なく使用できるであろう。本当はこちらを手に入れたかったのだが縁がなかった。
重量(実測) 140g, 後玉側の鏡胴径は42.5mm, 設計構成 4群4枚, コーティング HFTマルチコーティング, 写真・左は52mm-43mmステップダウンリングをはめM52-M42フォーカッシングヘリコイドに搭載したところで写真・右はヘリコイド搭載前のレンズを後玉側からみたところ
光学系は4群4枚構成で、いわゆる4群5枚のXenotarタイプではない。構成に関する資料は見当たらないものの、開放F値がF2.4と明るいことを考えると、おそらくエルノスター型であろう。ガラス表面にはマルチコーティングの一種であるローライ製HFTコーティングが施されており、逆光にはある程度まで耐えそうである。このレンズをカメラで使用するには、まずフォーカッシング・ヘリコイドに搭載しなければならない。AV-Xenotarは鏡胴径が42.5mmなので43mm径のステップダウンリングをはめるのが手っ取り早く簡単である。例えば52mm-43mmステップダウンリングをはめM52ーM42ヘリコイドに載せるも良いし、46mm-43mmステップダウンリングをはめM46-M42ヘリコイドに搭載するのでもよいであろう。あとはM42マウントアダプターを用いれば各種カメラにマウントできる。
 
入手の経緯
レンズは2015年2月にドイツ版eBayを介しインター・フォト・ジャンクという写真機材商から入手した。オークションの記述は「スライドプロジェクターのローライビジョンに用いられているレンズ。鏡胴にスレはなく、ガラスに傷、カビ、クモリはない。1ヶ月間の返品・返金保障に対応している」とのこと。35ユーロで入札し放置したところ15人が入札し32ユーロ(+送料12ユーロ)で私が落札していた。1週間程度で届いた現物はホコリや拭き傷すらない非常に良好な状態であった。おそらく未使用のデットストック品だったのであろう。美しい紫色のHFTコーティングが誇らしげに輝いていた。

撮影テスト
解像力はポートレート域が一番良好で、人の肌の質感や細い髪の毛先まで緻密にとらえている。遠方撮影でも良好だが、反対に近接域になると急にソフトになり、急激に増大する収差により四隅まで画質を維持できなくなる。どうもマクロ撮影は苦手なレンズのようである。ボケは四隅まで良く整っておりグルグルボケや放射ボケなどは距離によらず全くみられない。後ボケはスッキリとしているが前ボケはモヤモヤとしたフレアにつつまれている。ピント部の近くではボケ味が硬くなることもあるが、ピント部から離れたところでは前ボケ・後ボケとも柔らかく拡散し綺麗にボケている。遠方を撮影する場合は球面収差がやや過剰補正気味になり後ボケはザワザワしはじめるが、ボケ量は既に小さいので実写でザワツキが目立つことは殆ど無い。コントラストは概ね良好だが、ピント部前方で発生するフレアの有無に左右され乱高下する。マルチコートレンズにしては逆光に弱くハレーションが出やすい。おそらくコーティングがプロジェクターランプの光の波長帯域に最適化されているためであろう。もともとインドア系レンズなので、これは仕方のないことである。
Sony A7 digital(AWB): 近接域では四隅の画質を維持するのが難しい。これもレンズの個性だと思って使いたい
Sony A7 digital(AWB): ボケ味はピント部の前方、後方とも柔らかく綺麗に拡散している
Sony A7 digital(AWB): このとおり近接撮影ではソフトな描写である

Sony A7 digital(AWB):ピント部の近くはこのとおりザワザワすることもある。近接域での激しい収差も表現としては面白い
Sony A7 digital(AWB):コントラストは基本的に良い。ポートレート域での解像力は良好で肌の質感まで良く出ている
Sony A7 digital(AWB): 今度は少し遠方を撮ってみた。悪くない解像力である。ピントは若干外れ手前のステップ辺りにきている
Sony A7 digital(AWB): 逆光ではハレーションが顕著に出る。あまり逆光には強くはないようだ



Sony A7 digital(AWB): 枝の先までよく解像している。この距離でもピント部前方にはフレアが纏わりついている
Sony A7 digital(AWB): 収差変動によるボケ味の変化をみてみた。1m先の近接撮影(左)では前ボケ、後ろボケとも硬すぎず柔らかすぎずノーマルな拡散である。3m先の中距離(中央)では前ボケが更に柔らかくなりフレアを顕著に纏うようになっている。反対に後ろボケはピント部のそばのみやや硬めだが、ピント部から離れたところでは依然として柔らかい。10m先の中遠方(右)では前ボケが更に柔らかくなり後ろボケはやや硬く輪郭にエッジが立ち、玉ボケになりかかっている